「Chromosome 9 open reading frame 72」の版間の差分

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=== 自然免疫応答の制御 ===
=== 自然免疫応答の制御 ===
 C9orf72ノックアウトマウスでは、[[脾腫]]や[[リンパ節]]腫脹といった免疫系組織の腫大が認められ、さらに[[Type Iインターフェロン]]などの[[炎症性サイトカイン]]や[[自己抗体]]の産生が亢進していることから、免疫系における役割が注目されている<ref name=ORourke2016><pubmed>26989253</pubmed></ref><ref name=SudriaLopez2016><pubmed>27206760</pubmed></ref>。特に、骨髄系細胞特異的C9orf72[[ノックアウトマウス]]においても、同様の異常が確認されることから、同細胞での作用が免疫系の制御に重要であると考えられる<ref name=McCauley2020><pubmed>32814898</pubmed></ref>。その詳細な機序は未解明であるものの、C9orf72タンパク質がオートファジー活性を調節することで、[[STING]]や[[mTORC1]]といった自然免疫応答に関与する分子の発現を制御する可能性が示唆されている<ref name=McCauley2020><pubmed>32814898</pubmed></ref><ref name=Shao2020><pubmed>31847700</pubmed></ref>。
 C9orf72ノックアウトマウスでは、[[脾腫]]や[[リンパ節]]腫脹といった免疫系組織の腫大が認められ、さらに[[Type Iインターフェロン]]などの[[炎症性サイトカイン]]や[[自己抗体]]の産生が亢進していることから、免疫系における役割が注目されている<ref name=ORourke2016><pubmed>26989253</pubmed></ref><ref name=SudriaLopez2016><pubmed>27206760</pubmed></ref>。特に、骨髄系細胞特異的C9orf72[[ノックアウトマウス]]においても、同様の異常が確認されることから、同細胞での作用が免疫系の制御に重要であると考えられる<ref name=McCauley2020><pubmed>32814898</pubmed></ref>。その詳細な機序は未解明であるものの、C9orf72タンパク質がオートファジー活性を調節することで、[[STING]]や[[mTORC1]]といった自然免疫応答に関与する分子の発現を制御する可能性が示唆されている<ref name=McCauley2020><pubmed>32814898</pubmed></ref><ref name=Shao2020><pubmed>31847700</pubmed></ref>。
[[ファイル:Nagai C9orf72 Fig2.jpg|サムネイル|'''図2. C9orf72連鎖性ALS/FTDの病態機序'''<br>非翻訳領域のGGGGCCリピート配列の異常伸長によって、1) C9orf72タンパク質の発現が低下し、遺伝子の機能喪失をきたす。また、2) リピートRNAはRNA結合タンパク質を巻き込みながらRNA fociとして凝集し、これらのタンパク質の生理的機能を撹乱する。さらに、3) リピートRNAから非古典的なRAN翻訳によって異常なDPRが産生される。これら3つの主要な病態メカニズムが協調的に神経変性に寄与する。]]
[[ファイル:Nagai C9orf72 Fig2.jpg|サムネイル|'''図2. C9orf72連鎖性ALS/FTDの病態機序'''<br>非翻訳領域のGGGGCCリピート配列の異常伸長によって、1) C9orf72タンパク質の発現が低下し、遺伝子の機能喪失をきたす。また、2) リピートRNAはRNA結合タンパク質を巻き込みながらRNA fociとして凝集し、これらのタンパク質の生理的機能を撹乱する。さらに、3) リピートRNAから非古典的なリピート関連非AUG依存性翻訳 (RAN翻訳)によって異常なジペプチドリピート(DPR)ペプチドが産生される。これら3つの主要な病態メカニズムが協調的に神経変性に寄与する。]]


== 疾患との関連 ==
== 疾患との関連 ==