「語彙」の版間の差分

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このように語は言語表現の基本的要素であるが,一般的に「語」といわれるものの多くはそれ自体が内部構造を持っていて,より小さな要素へと分解され得る.たとえば「お味噌汁」という語は「お」と「味噌汁」の2つの部分に分けることができ,さらに「味噌汁」は「味噌」と「汁」の2つの部分に分けられる,といった具合である.上のような分解を繰り返して意味的に最小となった単位のことを[[wikipedia:ja:形態素|形態素]](morpheme)と呼ぶ.語は単一の形態素,あるいは複数の形態素の結合から成る.形態素は特定の音と意味との結びつきである.言語的音声の最小単位を[[wikipedia:ja:音素|音素]](phoneme)と呼ぶが,形態素は単一もしくは複数の音素から構成される.  
このように語は言語表現の基本的要素であるが,一般的に「語」といわれるものの多くはそれ自体が内部構造を持っていて,より小さな要素へと分解され得る.たとえば「お味噌汁」という語は「お」と「味噌汁」の2つの部分に分けることができ,さらに「味噌汁」は「味噌」と「汁」の2つの部分に分けられる,といった具合である.上のような分解を繰り返して意味的に最小となった単位のことを[[wikipedia:ja:形態素|形態素]](morpheme)と呼ぶ.語は単一の形態素,あるいは複数の形態素の結合から成る.形態素は特定の音と意味との結びつきである.言語的音声の最小単位を[[wikipedia:ja:音素|音素]](phoneme)と呼ぶが,形態素は単一もしくは複数の音素から構成される.  


 私たちは状況に応じて多種多様な語を使い分けているが,使用し得る全ての語がその人の脳に記憶されているかどうかは定かでない.たとえば,「お味噌汁」は単語として記憶されているのだろうか.それとも「お」と「味噌汁」が別々に記憶されており,それらを脳内でオンライン的に組み合わせることで「お味噌汁」という表現が形成されるのだろうか.一見つまらない話と思われるかもしれないが,この問題は言語の脳科学におけるホット・トピックのひとつと深く関わっている.そこで,メンタル・レキシコンに記憶されている個々の要素を指す場合は[[wikipedia:ja:語彙項目|語彙項目]](lexical item / lexical entry)という用語を使用し,語あるいは形態素といった用語と区別することにする.語彙項目には形態素や語,あるいは語の組み合わせから成るイディオムなどがリストされ得る.
 私たちは状況に応じて多種多様な語を使い分けているが,使用し得る全ての語がその人の脳に記憶されているかどうかは定かでない.たとえば,「お味噌汁」は単語として記憶されているのだろうか.それとも「お」と「味噌汁」が別々に記憶されており,それらを脳内でオンライン的に組み合わせることで「お味噌汁」という表現が形成されるのだろうか.一見つまらない話と思われるかもしれないが,この問題は言語の脳科学におけるホット・トピックのひとつと深く関わっている.そこで,メンタル・レキシコンに記憶されている個々の要素を指す場合は[[wikipedia:ja:語彙項目|語彙項目]](lexical item / lexical entry)という用語を使用し,語あるいは形態素といった用語と区別することにする.語彙項目には形態素や語,イディオムなどがリストされ得る.


 ある語彙項目が適切に使用されるには,それがどんな音素の組み合わせから構成されるか(音韻情報,phonological information),どういう意味に対応するか(意味情報,semantic information),どのような形態素の構成を持つか(形態情報,morphological information),そして文や句を構成する時にどういう規則に従うか(統語情報,syntactic information)といった情報が少なくとも必要である.ある語彙項目の知識が脳内にあるということは,これらの情報が適切に関係づけられて保持されていることを意味している.
 ある語彙項目が適切に使用されるには,それがどんな音素の組み合わせから構成されるか(音韻情報,phonological information),どういう意味に対応するか(意味情報,semantic information),どのような形態素の構成を持つか(形態情報,morphological information),そして文や句を構成する時にどういう規則に従うか(統語情報,syntactic information)といった情報が少なくとも必要である.ある語彙項目の知識が脳内にあるということは,これらの情報が適切に関係づけられて保持されていることを意味している.
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