113
回編集
Toshikiiwabuchi (トーク | 投稿記録) 細編集の要約なし |
Toshikiiwabuchi (トーク | 投稿記録) 細編集の要約なし |
||
11行目: | 11行目: | ||
=語彙情報へのアクセス= | =語彙情報へのアクセス= | ||
ことばを発したり理解したりするには基本的に語彙情報に対するアクセスが不可欠である.この語彙アクセスがどうやって実現されるかは,ことばに対する応答や発話といった行動を詳細に分析することで間接的に調べられる.行動に基づく語彙アクセスの研究はメンタル・レキシコンの特性を調べる上で中心的な意義を担ってきた.脳内の情報を直接的に観察することは難しい,という技術的問題もその一因である.以下では語彙アクセスに関する心理学的知見やモデル研究を紹介する. | |||
==語彙アクセスに影響する要因== | ==語彙アクセスに影響する要因== | ||
語彙の認識や理解に関する心理学的研究は以前から盛んに行われてきており,単語によってアクセスのしやすさが異なるということが分かっている.このような違いを生む要因としては出現頻度(word frequency)や親密度(word familiarity)といったものがある.使用される頻度が高かったり親密度が高かったりする単語ほど,処理に要する時間は短くなる. | |||
こうした知見を得るための手法としては,たとえば言語理解中の眼球運動計測が挙げられる.この手法では,ある語に対する実験被験者の注視時間が長いほど意味的処理に時間がかかっているのだと解釈される.ほかには語彙判断課題([[wikipedia:Lexical_decision_task|lexical decision task]])と呼ばれる実験的方法もある.これは実験の被験者に文字列を提示し,それが単語であるか非単語であるかを迅速にボタン押しで判断させるものである.語彙判断課題においては出現頻度が高い単語に対するほど反応が早く,かつ正確になる.こうした出現頻度効果は提示された語の理解だけでなく,それを実際に発音する課題においても観察される.また,単語を瞬間的に提示したときの[[認知閾]] | こうした知見を得るための手法としては,たとえば言語理解中の眼球運動計測が挙げられる.この手法では,ある語に対する実験被験者の注視時間が長いほど意味的処理に時間がかかっているのだと解釈される.ほかには語彙判断課題([[wikipedia:Lexical_decision_task|lexical decision task]])と呼ばれる実験的方法もある.これは実験の被験者に文字列を提示し,それが単語であるか非単語であるかを迅速にボタン押しで判断させるものである.語彙判断課題においては出現頻度が高い単語に対するほど反応が早く,かつ正確になる.こうした出現頻度効果は提示された語の理解だけでなく,それを実際に発音する課題においても観察される.また,単語を瞬間的に提示したときの[[認知閾]](認知に要する最低の提示時間)は出現頻度の対数と直線関係があることも報告されている. | ||
単語の具体性(concreteness)あるいは心像性(imageability)と呼ばれる要因も語彙アクセスに影響する.心像性とは,ある名詞がどのくらい意味を想像しやすいかを示す指標である.基本的に「りんご」のような具体語(concrete word)ほど心像性は高く,「自由」のような抽象語(abstract word)ほど心像性は低い.そして名詞は心像性あるいは具体性が高いほどより早く正確に処理することが可能である. | 単語の具体性(concreteness)あるいは心像性(imageability)と呼ばれる要因も語彙アクセスに影響する.心像性とは,ある名詞がどのくらい意味を想像しやすいかを示す指標である.基本的に「りんご」のような具体語(concrete word)ほど心像性は高く,「自由」のような抽象語(abstract word)ほど心像性は低い.そして名詞は心像性あるいは具体性が高いほどより早く正確に処理することが可能である. |
回編集