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<font size="+1">深井 綾子、[http://researchmap.jp/7000000605 三宅 紀子]、[http://researchmap.jp/naomichimatsumoto 松本 直通]</font><br> | |||
''横浜市立大学 大学院医学研究科''<br> | |||
DOI:<selfdoi /> 原稿受付日:2012年4月25日 原稿完成日:2012年5月14日<br> | |||
担当編集委員:[http://researchmap.jp/tadafumikato 加藤 忠史](独立行政法人理化学研究所 脳科学総合研究センター)<br> | |||
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英語名:copy number variations: CNVs | 英語名:copy number variations: CNVs | ||
同義語:コピー数変動 | |||
類義語:コピー数多型、コピー数変異 | |||
{{box|text= | |||
コピー数変化とは、染色体上の1kb以上にわたるゲノムDNAが、通常2コピーのところ、1コピー以下(欠失)、あるいは3コピー以上(重複)となっている現象をいう。ヒトゲノム中の12%にわたる領域に見いだされる。正常ゲノムに多型的に存在する場合や疾患ゲノムの原因として存在する場合などがある。 | |||
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==コピー数変化とは== | ==コピー数変化とは== | ||
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NEHJは、二本鎖DNA内の修復過程において、ゲノムの一部が欠失した状態で、両断端が連結された結果、ゲノム領域の一部が欠失する場合である(図2)。この場合、断端に相同領域の存在を要しない。<br> | NEHJは、二本鎖DNA内の修復過程において、ゲノムの一部が欠失した状態で、両断端が連結された結果、ゲノム領域の一部が欠失する場合である(図2)。この場合、断端に相同領域の存在を要しない。<br> | ||
FoSTeSは、DNA複製途中で、DNA複製フォークが、微小な相同性(2-5塩基)を持つ離れた配列に乗り換えることによって、その間のゲノムが欠失する現象である(図3)。<br> | FoSTeSは、DNA複製途中で、DNA複製フォークが、微小な相同性(2-5塩基)を持つ離れた配列に乗り換えることによって、その間のゲノムが欠失する現象である(図3)。<br> | ||
NAHRは、異なった個体において独立に新たな欠失、重複が類似の構造を持つゲノム領域に生じうるのに対して、NHEJやFoSTeSでは、必ずしも特徴的なゲノム構造に依存するわけではないため、異なる個体で同様の欠失、重複が生じることはない(非常にまれ)という違いがある。 | |||
== CNVの検出方法 == | == CNVの検出方法 == | ||
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[[Image:5SNParray.png|thumb|300px|<b>図5 SNP array</b><br>検体DNAを断片化した後に蛍光色素で標識し、熱変性条件下でチップと反応させる。]] | [[Image:5SNParray.png|thumb|300px|<b>図5 SNP array</b><br>検体DNAを断片化した後に蛍光色素で標識し、熱変性条件下でチップと反応させる。]] | ||
2004年頃Affymetrix社の[[一塩基多型]](SNP)解析用arrayでコピー数解析ができるようになった。このアレイはreference genomeを必要とせず、疾患のゲノムだけで解析が可能である。アレイ上には対立遺伝子の25-merのプローブがあり、既知のSNPサイトに対して異なる塩基(例えばCもしくはT)を搭載している。相補的な配列を持つラベル化された検体DNAがプローブに結合する際、SNPサイトにミスマッチが存在すると結合しにくくなり、シグナルは弱くなる。最近のSNPアレイを用いるとgenotypeも同時に検出が可能で、更にアリルピーク(Genotype: 2 copyの場合 AA/AB/BB, 3 copyの場合 AAA/AAB/ABB/BBB, 1 copyの場合A/B) を見ることで情報性が付加されたコピー数変化としてとらえることが可能となり信頼性が増した。(図5) | 2004年頃Affymetrix社の[[一塩基多型]](SNP)解析用arrayでコピー数解析ができるようになった。このアレイはreference genomeを必要とせず、疾患のゲノムだけで解析が可能である。アレイ上には対立遺伝子の25-merのプローブがあり、既知のSNPサイトに対して異なる塩基(例えばCもしくはT)を搭載している。相補的な配列を持つラベル化された検体DNAがプローブに結合する際、SNPサイトにミスマッチが存在すると結合しにくくなり、シグナルは弱くなる。最近のSNPアレイを用いるとgenotypeも同時に検出が可能で、更にアリルピーク(Genotype: 2 copyの場合 AA/AB/BB, 3 copyの場合 AAA/AAB/ABB/BBB, 1 copyの場合A/B)を見ることで情報性が付加されたコピー数変化としてとらえることが可能となり信頼性が増した。(図5) | ||
===定量PCR法=== | ===定量PCR法=== | ||
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== CNVと疾患関連性 == | == CNVと疾患関連性 == | ||
欠失、重複などのゲノム再構成が起きる際、遺伝子そのものあるいは遺伝子発現に関与する領域を含む事がある。ヒトゲノムで一世代を経ることで点変異(SNP)は1.8~2.5x10<sup>-8</sup>、CNVは1.7x10<sup>-6</sup>~1.2x10<sup>-4</sup> | 欠失、重複などのゲノム再構成が起きる際、遺伝子そのものあるいは遺伝子発現に関与する領域を含む事がある。ヒトゲノムで一世代を経ることで点変異(SNP)は1.8~2.5x10<sup>-8</sup>、CNVは1.7x10<sup>-6</sup>~1.2x10<sup>-4</sup>の確率で起こるとされており、CNV発生はSNPのそれに比べて10<sup>2</sup>~10<sup>4</sup>倍高率であるため、遺伝子の点変異よりもCNVが原因となる遺伝性疾患が多いと推定される<ref name="ref13"><pubmed>17597781</pubmed></ref> 。CNVはいくつかの分子メカニズム(表1)を介して生じ、病気を惹起する場合もある。病的・非病的CNVがあり、例えばCNVが①罹患の血縁者に存在するか既報の疾患関連CNVに一致する、②疾患責任遺伝子や多数の遺伝子を含むか遺伝子発現領域を含む、③サイズが3Mb以上である、④増幅が3コピー以上である、などの場合、病的CNVである可能性が高いと考えられている<ref name="ref14"><pubmed>17597782</pubmed></ref>。 | ||
== CNVの検索方法 == | == CNVの検索方法 == | ||
正常人に認めるCNVsは[http://projects.tcag.ca/variation/ Toronto Database of Genomic Variants]や[http://humanparalogy.gs.washington.edu/structuralvariation/ Human Structural Variation Database] に登録・一般公開されている。また、臨床学的な情報を含む染色体異常は[https://decipher.sanger.ac.uk/ DECIPHER (Database of Chromosomal Imbalance and Phenotype in Humans Using Ensembl Resources)]、[http://umcecaruca01.extern.umcn.nl:8080/ecaruca | 正常人に認めるCNVsは[http://projects.tcag.ca/variation/ Toronto Database of Genomic Variants]や[http://humanparalogy.gs.washington.edu/structuralvariation/ Human Structural Variation Database] に登録・一般公開されている。また、臨床学的な情報を含む染色体異常は[https://decipher.sanger.ac.uk/ DECIPHER (Database of Chromosomal Imbalance and Phenotype in Humans Using Ensembl Resources)]、[http://umcecaruca01.extern.umcn.nl:8080/ecaruca/ ECARUCA (European Cytogenetics Association Reigister of Unbalanced Chromosome Aberrations)]、[https://www.iscaconsortium.org/ ISCA(The International Standards for Cytogenomic Arrays (ISCA) Consortium)]などで検索可能である。 | ||
表1. CNVと疾患関連性の代表例と分子メカニズム<ref name="ref15"><pubmed>18160035</pubmed></ref> <ref name="ref16"><pubmed>16444292</pubmed></ref> | 表1. CNVと疾患関連性の代表例と分子メカニズム<ref name="ref15"><pubmed>18160035</pubmed></ref> <ref name="ref16"><pubmed>16444292</pubmed></ref> | ||
{| cellspacing="1" cellpadding="1" border="1" | {| cellspacing="1" cellpadding="1" border="1" | ||
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| colspan="2" | 疾患の例<ref name="ref15"><pubmed>18160035</pubmed></ref> <ref name="ref16"><pubmed>16444292</pubmed></ref> | | colspan="2" | 疾患の例<ref name="ref15"><pubmed>18160035</pubmed></ref> <ref name="ref16"><pubmed>16444292</pubmed></ref> | ||
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| rowspan="2" | ① | | rowspan="2" | ① 量依存的遺伝子(dose-sensitive gene) | ||
| rowspan="2" | [[Image:コピー数変化表1.png|350px]] | | rowspan="2" | [[Image:コピー数変化表1.png|350px]] | ||
| [[Charcot-Marie-Tooth病]](CMT病1A型) | | [[Charcot-Marie-Tooth病]](CMT病1A型) | ||
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| Chr 17 p11上のPMP22を含む約1.4 Kbの領域の欠失 | | Chr 17 p11上のPMP22を含む約1.4 Kbの領域の欠失 | ||
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| ② | | ② 位置効果(position effect) | ||
| [[Image:コピー数変化表2.png|350px]] | | [[Image:コピー数変化表2.png|350px]] | ||
| [[wikipedia:Blepharophimosis|Blepharophimosis症候群]] | | [[wikipedia:Blepharophimosis|Blepharophimosis症候群]] | ||
| 責任遺伝子[[wikipedia:Forkhead box L2|forkhead box protein L2]](FOXL2)の230kb上流にある[[転写因子]]の結合部位がCNVにより欠失すると発症する。 | | 責任遺伝子[[wikipedia:Forkhead box L2|forkhead box protein L2]](FOXL2)の230kb上流にある[[転写因子]]の結合部位がCNVにより欠失すると発症する。 | ||
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| ③ | | ③ 劣性アリルの顕在化(unmasking of recessive allele) | ||
| [[Image:コピー数変化表3.png|350px]] | | [[Image:コピー数変化表3.png|350px]] | ||
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| 片方の[[wikipedia:JA:アレル|アレル]]に劣性変異が存在する個体で、野生型アレルが欠失した場合、劣性変異が顕在化する。 | | 片方の[[wikipedia:JA:アレル|アレル]]に劣性変異が存在する個体で、野生型アレルが欠失した場合、劣性変異が顕在化する。 | ||
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| ④ | | ④ 遺伝子破壊/遺伝子融合(Gene interruption/Gene fusion) | ||
| [[Image:コピー数変化表4.png|350px]] | | [[Image:コピー数変化表4.png|350px]] | ||
| 融合遺伝子:[[wikipedia:JA:急性骨髄性白血病|急性骨髄性白血病]](AML)や[[wikipedia:JA:骨髄異形成症候群|骨髄異形成症候群]](MDS) | | 融合遺伝子:[[wikipedia:JA:急性骨髄性白血病|急性骨髄性白血病]](AML)や[[wikipedia:JA:骨髄異形成症候群|骨髄異形成症候群]](MDS) | ||
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== 参考文献 == | == 参考文献 == | ||
<references /> | <references /> | ||