「細胞外プロテアーゼ」の版間の差分

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=== 組織プラスミノーゲンアクチベーター(tissue plasminogen activator; tPA)  ===
=== 組織プラスミノーゲンアクチベーター(tissue plasminogen activator; tPA)  ===


 tPAは神経細胞、グリア細胞、上皮細胞によって合成分泌され、海馬など様々な脳領域に高発現している。多くの研究によってtPAはシナプス機能を修飾することが示されてきた。tPAの神経機能修飾作用としてタンパク質分解活性依存的なものと非依存的なものの2種類あることが知られている。tPAのタンパク質分解活性はGluN1サブユニットの切断を介してNMDAシグナルを増強する。一方、tPAはNMDA受容体GluN2Bサブユニットと結合して、そのリン酸化を促進する。この結果EPK/MAPK経路の活性化を引き起こす。さらに、tPAはlow-density lipoprotein receptor related protein(LRP)と結合してNMDAシグナルに間接的に影響を与える可能性がある。その他tPAはアネキシンA2と結合してミクログリアの活性化を行うことが示唆されている。これらの経路を通じてtPAは神経可塑性の調節に深く関わる。海馬スライスにおいて、tPA活性を阻害するかあるいはtPA遺伝子欠損マウスを用いるとlate phase long-term potentiation(L-LTP)が阻害される。tPA欠損マウスは能動的回避反応とステップダウン型回避試験の成績の低下や新規空間と物体への反応の欠如、文脈付恐怖条件づけのすくみの低下、小脳依存的な運動学習タスクの獲得の低下など学習タスクで障害を示した。  
 tPAは神経細胞、グリア細胞、上皮細胞によって合成分泌され、海馬など様々な脳領域に高発現している。多くの研究によってtPAはシナプス機能を修飾することが示されてきた。tPAの神経機能修飾作用としてタンパク質分解活性依存的なものと非依存的なものの2種類あることが知られている。tPAのタンパク質分解活性はGluN1サブユニットの切断を介してNMDAシグナルを増強する。一方、tPAはNMDA受容体GluN2Bサブユニットと結合して、そのリン酸化を促進する。この結果EPK/MAPK経路の活性化を引き起こす。さらに、tPAはlow-density lipoprotein receptor related protein(LRP)と結合してNMDAシグナルに間接的に影響を与える可能性がある。その他tPAはアネキシンA2と結合してミクログリアの活性化を行うことが示唆されている。これらの経路を通じてtPAは神経可塑性の調節に深く関わる。海馬スライスにおいて、tPA活性を阻害するかあるいはtPA遺伝子欠損マウスを用いるとlate phase long-term potentiation(L-LTP)が阻害される。tPA欠損マウスは能動的回避反応とステップダウン型回避試験の成績の低下や新規空間と物体への反応の欠如、文脈付恐怖条件づけのすくみの低下、小脳依存的な運動学習タスクの獲得の低下など学習タスクで障害を示した。 [[Image:図tPA2.jpg|320x240px|図1 tPAのレセプターを介したシグナル伝達経路 参考:中枢神経系におけるtPAの役割 永井信夫 血栓止血誌20(1)18~22 2009]]
 
図1 tPAのレセプターを介したシグナル伝達経路 <br>参考:中枢神経系におけるtPAの役割 永井信夫 血栓止血誌20(1)18~22 2009


=== プラスミン(plasmin)  ===
=== プラスミン(plasmin)  ===
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&nbsp;MMPはヒトで24種類、マウスで23種類の遺伝子がコードされており、分泌型と膜結合型のメンバーを含み、それらがドメイン構造に従って,コラゲナーゼ,ストロメライシン,ゼラチナーゼと膜型 MMP(MT-MMP)の4つの主なサブグループに分けられている。最近のニューロンとアストロサイトでの報告によると多くのMMPは小胞で分泌されるためのシグナルペプチドを持ち、細胞外で機能すると考えられる。しかしながら、神経細胞とグリア細胞の核でのMMP-2,9,13の存在から、細胞内でのMMPの機能も報告されている。膜結合型のMT-MMPは、フューリン(furin)あるいはプラスミンによって、ゴルジネットワーク内において、つまり細胞内で活性化され、細胞外にある間は活性があると考えられる。MMPの発現は、多くの成長因子、サイトカイン、ケモカインによって転写レベルで制御されており、また一方転写後あるいはエピジェネティクス修飾によっても調節を受けている。MMPは神経生理学に関連する細胞外マトリックスタンパク質の分解や、成長因子およびそのレセプター、あるいはサイトカインの活性化、細胞外マトリックス受容体の分解も行う。MMPのうち、MMP-2、3、9は脳内でもっとも豊富に発現している。<br>&nbsp;MMP-9は、スパインに発現するβジストログリカンとintracellular adhesion molecule(ICAM)5を基質とし、神経可塑性に関わることが報告されている。ICAM5は未成熟なフィロポディアに多く発現し、切断を受けることでスパインの成熟が進む。MMP-9によってICAM5は切断され、そのN末断片がインテグリンシグナルを介してコフィリン(cofilin)のリン酸化を誘導し、アクチンリモデリングによりスパインの拡大が引き起こされると考えられている。海馬スライスにおいて、MMP-9活性を阻害するか、あるいはMMP-9遺伝子欠損マウスを用いるとL-LTPが阻害される。MMP-9 欠損マウスでは、文脈的恐怖条件付けの行動実験の結果、海馬依存的な学習が阻害され、扁桃体依存的な学習には影響が見られなかった。<br>
&nbsp;MMPはヒトで24種類、マウスで23種類の遺伝子がコードされており、分泌型と膜結合型のメンバーを含み、それらがドメイン構造に従って,コラゲナーゼ,ストロメライシン,ゼラチナーゼと膜型 MMP(MT-MMP)の4つの主なサブグループに分けられている。最近のニューロンとアストロサイトでの報告によると多くのMMPは小胞で分泌されるためのシグナルペプチドを持ち、細胞外で機能すると考えられる。しかしながら、神経細胞とグリア細胞の核でのMMP-2,9,13の存在から、細胞内でのMMPの機能も報告されている。膜結合型のMT-MMPは、フューリン(furin)あるいはプラスミンによって、ゴルジネットワーク内において、つまり細胞内で活性化され、細胞外にある間は活性があると考えられる。MMPの発現は、多くの成長因子、サイトカイン、ケモカインによって転写レベルで制御されており、また一方転写後あるいはエピジェネティクス修飾によっても調節を受けている。MMPは神経生理学に関連する細胞外マトリックスタンパク質の分解や、成長因子およびそのレセプター、あるいはサイトカインの活性化、細胞外マトリックス受容体の分解も行う。MMPのうち、MMP-2、3、9は脳内でもっとも豊富に発現している。<br>&nbsp;MMP-9は、スパインに発現するβジストログリカンとintracellular adhesion molecule(ICAM)5を基質とし、神経可塑性に関わることが報告されている。ICAM5は未成熟なフィロポディアに多く発現し、切断を受けることでスパインの成熟が進む。MMP-9によってICAM5は切断され、そのN末断片がインテグリンシグナルを介してコフィリン(cofilin)のリン酸化を誘導し、アクチンリモデリングによりスパインの拡大が引き起こされると考えられている。海馬スライスにおいて、MMP-9活性を阻害するか、あるいはMMP-9遺伝子欠損マウスを用いるとL-LTPが阻害される。MMP-9 欠損マウスでは、文脈的恐怖条件付けの行動実験の結果、海馬依存的な学習が阻害され、扁桃体依存的な学習には影響が見られなかった。<br>
[[Image:HMMP8.jpg|280x193px|図2 human neutrophil collagenase(MMP-8)の立体構造と活性ドメイン(PDB:1MNC)]][[Image:Catalytic_domain.jpg]]
図3 human neutrophil collagenase(MMP-8)の立体構造と活性ドメイン(PDB:1MNC)<br>ピンクの球体が亜鉛イオン、グレーの球体がカルシウムイオン。アミノ酸側鎖はヒスチジンを示している。
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=== A disintegrin and metalloproteinase(ADAM)  ===
=== A disintegrin and metalloproteinase(ADAM)  ===
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