「カリウムチャネル」の版間の差分

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== 電位依存性カリウムチャネル  ==
== 電位依存性カリウムチャネル  ==


電位依存性カリウム(Kv)チャネルは静止膜電位付近ではポアが閉じているが、脱分極によって活性化(開口確率が上昇)し小孔が開口するカリウムチャネルである(図4)。Kvチャネルファミリーのαサブユニットの遺伝子はKv1-12の12クラス、さらにサブファミリーも存在し40種類ほど単離されている。先に述べたように、6TM型の1次構造をとり、N末端から5番目、6番目の膜貫通領域(S5, S6)がポアドメインの形成に関与し、1番目から4番目の膜貫通領域(S1-S4)が電位センサーとして機能する構造を形成する。結晶構造が報告され、電位センサードメインが隣接するサブユニット由来のポアドメインと近接しているという特徴的なドメイン配置が明らかにされている(図1)。<br>Kvチャネルは、活性化の電位依存性や不活性化の有無、薬物感受性などから様々なタイプに細分類される。脱分極刺激による活性化後直ぐに不活性化され、一過的な電流を流す早期不活性化カリウムチャネル(A型Kチャネル)と不活性化が殆どおこらず活性化が持続する遅延整流性カリウムチャネルに分けることができる。また活性化のスピードから「早い成分」、「遅い成分」と、あるいは活性化の閾値から「低閾値(low-voltage-activated, LVA)型」、「高閾値(high-voltage-activated, HVA)型」と分類されることもある。<br>Kvチャネルの活性化の機構としては、膜電位変化に応じて電位センサードメインの構造変化が起こることが想定されている。この電位センサードメインの構造変化が、チャネルの開閉時に測定されるゲート電流と呼ばれる小さな電流を担っていると考えられている。電位センサードメインが脂質二重膜を横切る膜電位の変化をどのように感知し、そして小孔の開閉を制御する仕組みが精力的に研究されているが、その分子機構は明らかではない。近年は電位センサードメインの結晶構造が報告され、その構造変化とその結果起こる小孔の開口のメカニズムに関して議論が続いている。<br>Kvチャネルの不活性化の機構としては、活性化された後急速におこる不活性化機構としては、活性化後早い不活性化を担うN型の不活性化と、N型と比べて遅い不活性化機構であるC型の不活性化機構という異なる機構が報告されている。N型の不活性化機構にはKvチャネルのN末端のアミノ酸が関与している。また、βサブユニットがN型の不活性化機構に大きく影響を与えることも知られている<ref><pubmed>8799886</pubmed></ref>。チャネルのN型不活性化に関わる領域は、以前はボール状の構造をとりS4-S5のリンカー部分に結合し細胞のポア領域を塞ぐような機構(ball-and-chain機構)が提唱されていたが、最近の解析からはもう少し細い線状の構造がポア内に侵入してポアを塞ぐと考えられるようになってきた。一方、C型の不活性化機構にはP領域とS6(あるいはM2)の一部が関与していると見られる。この領域はポアの細胞外の入り口付近にあたり、この部分の構造変化が基盤であると考えられている。  
電位依存性カリウム(Kv)チャネルは静止膜電位付近ではポアが閉じているが、脱分極によって活性化(開口確率が上昇)し小孔が開口するカリウムチャネルである(図4)。Kvチャネルファミリーのαサブユニットの遺伝子はKv1-12の12クラス、さらにサブファミリーも存在し40種類ほど単離されている<ref><pubmed>14657415</pubmed></ref><ref><pubmed>16382104</pubmed></ref>。先に述べたように、6TM型の1次構造をとり、N末端から5番目、6番目の膜貫通領域(S5, S6)がポアドメインの形成に関与し、1番目から4番目の膜貫通領域(S1-S4)が電位センサーとして機能する構造を形成する。結晶構造が報告され、電位センサードメインが隣接するサブユニット由来のポアドメインと近接しているという特徴的なドメイン配置が明らかにされている(図1)。<br>Kvチャネルは、活性化の電位依存性や不活性化の有無、薬物感受性などから様々なタイプに細分類される。脱分極刺激による活性化後直ぐに不活性化され、一過的な電流を流す早期不活性化カリウムチャネル(A型Kチャネル)と不活性化が殆どおこらず活性化が持続する遅延整流性カリウムチャネルに分けることができる。また活性化のスピードから「早い成分」、「遅い成分」と、あるいは活性化の閾値から「低閾値(low-voltage-activated, LVA)型」、「高閾値(high-voltage-activated, HVA)型」と分類されることもある。<br>Kvチャネルの活性化の機構としては、膜電位変化に応じて電位センサードメインの構造変化が起こることが想定されている。この電位センサードメインの構造変化が、チャネルの開閉時に測定されるゲート電流と呼ばれる小さな電流を担っていると考えられている。電位センサードメインが脂質二重膜を横切る膜電位の変化をどのように感知し、そして小孔の開閉を制御する仕組みが精力的に研究されているが、その分子機構は明らかではない。近年は電位センサードメインの結晶構造が報告され、その構造変化とその結果起こる小孔の開口のメカニズムに関して議論が続いている。<br>Kvチャネルの不活性化の機構としては、活性化された後急速におこる不活性化機構としては、活性化後早い不活性化を担うN型の不活性化と、N型と比べて遅い不活性化機構であるC型の不活性化機構という異なる機構が報告されている。N型の不活性化機構にはKvチャネルのN末端のアミノ酸が関与している。また、βサブユニットがN型の不活性化機構に大きく影響を与えることも知られている<ref><pubmed>8799886</pubmed></ref>。チャネルのN型不活性化に関わる領域は、以前はボール状の構造をとりS4-S5のリンカー部分に結合し細胞のポア領域を塞ぐような機構(ball-and-chain機構)が提唱されていたが、最近の解析からはもう少し細い線状の構造がポア内に侵入してポアを塞ぐと考えられるようになってきた。一方、C型の不活性化機構にはP領域とS6(あるいはM2)の一部が関与していると見られる。この領域はポアの細胞外の入り口付近にあたり、この部分の構造変化が基盤であると考えられている。  


== Ca活性化カリウムチャネル  ==
== Ca活性化カリウムチャネル  ==


Ca活性化カリウム(KCa)チャネルは細胞質のCa<sup>2+</sup>濃度上昇によって活性が増加するカリウムチャネルである。シングルチャネルコンダクタンスの違いから大(Big)コンダクタンスカルシウム活性化カリウム(BK)チャネルと小(Small)コンダクタンスカルシウム活性化カリウム(SK)チャネル、そしてBKチャネルとIKチャネルの中間のコンダクタンスを持つ中間(Intermediate)コンダクタンスカルシウム活性化カリウム(IK)チャネルに分類されている。BKチャネルは電位依存的な活性化がおこり、アミノ酸の相同性の面からも電位依存性カリウムチャネルに分類されることも多いが、本項ではKCaチャネルの項目として扱う。BKチャネルにCa<sup>2+</sup>が結合することで電位依存的な活性化の特性が影響をうける。一方、IK、SKチャネルは電位非依存的であるが、細胞内Ca<sup>2+</sup>濃度上昇(100-600 nM)によって開口する。この機構には細胞内カルモデュリン(CaM)が必要である。<br>サブユニットの構造としてはKvチャネルと同様に六回膜貫通領域と一つのP領域を持つ6TM型である。SK、IKチャネルサブユニット(KCNN1-3, or SK1-4)はS4に正電荷を帯びたアミノ酸が揃っておらず、機能的に電位非依存的であることに関連する。またS6のC末端側にCaMに結合する領域をもつ。一方、哺乳類のBKチャネル[KCNMA1, MaxiK or Slo1(ショウジョウバエのslowpoke murtantから見つかったことに由来)]はS1-S6に加えN末端側にさらにS0膜貫通領域をもつ。S4が電位センサーの中心として機能し、C末端に二つのRCK(Regulators of the K conductance)領域はCa<sup>2+</sup>依存的な活性化機構に重要な役割を果す。これらはすべて四量体を形成しチャネルを構成する。BKチャネルのβサブユニットSlob(slowpoke channel binding protein)も同定されている。<br>BKチャネルと同じsloサブファミリーに属するSlo2(Slo2.1, 2.2)チャネルはCa<sup>2+</sup>によってではなく、Na<sup>+</sup>によって活性化される。このチャネルは神経細胞などで観察されるNa活性化カリウムチャネルの分子実体であると考えられている。  
Ca活性化カリウム(KCa)チャネルは細胞質のCa<sup>2+</sup>濃度上昇によって活性が増加するカリウムチャネルである<ref><pubmed>12678784</pubmed></ref><ref><pubmed>15378036</pubmed></ref><ref><pubmed>21942705</pubmed></ref>。シングルチャネルコンダクタンスの違いから大(Big)コンダクタンスカルシウム活性化カリウム(BK)チャネルと小(Small)コンダクタンスカルシウム活性化カリウム(SK)チャネル、そしてBKチャネルとIKチャネルの中間のコンダクタンスを持つ中間(Intermediate)コンダクタンスカルシウム活性化カリウム(IK)チャネルに分類されている。BKチャネルは電位依存的な活性化がおこり、アミノ酸の相同性の面からも電位依存性カリウムチャネルに分類されることも多いが、本項ではKCaチャネルの項目として扱う。BKチャネルにCa<sup>2+</sup>が結合することで電位依存的な活性化の特性が影響をうける。一方、IK、SKチャネルは電位非依存的であるが、細胞内Ca<sup>2+</sup>濃度上昇(100-600 nM)によって開口する。この機構には細胞内カルモデュリン(CaM)が必要である。<br>サブユニットの構造としてはKvチャネルと同様に六回膜貫通領域と一つのP領域を持つ6TM型である。SK、IKチャネルサブユニット(KCNN1-3, or SK1-4)はS4に正電荷を帯びたアミノ酸が揃っておらず、機能的に電位非依存的であることに関連する。またS6のC末端側にCaMに結合する領域をもつ。一方、哺乳類のBKチャネル[KCNMA1, MaxiK or Slo1(ショウジョウバエのslowpoke murtantから見つかったことに由来)]はS1-S6に加えN末端側にさらにS0膜貫通領域をもつ。S4が電位センサーの中心として機能し、C末端に二つのRCK(Regulators of the K conductance)領域はCa<sup>2+</sup>依存的な活性化機構に重要な役割を果す。これらはすべて四量体を形成しチャネルを構成する。BKチャネルのβサブユニットSlob(slowpoke channel binding protein)も同定されている。<br>BKチャネルと同じsloサブファミリーに属するSlo2(Slo2.1, 2.2)チャネルはCa<sup>2+</sup>によってではなく、Na<sup>+</sup>によって活性化される。このチャネルは神経細胞などで観察されるNa活性化カリウムチャネルの分子実体であると考えられている。  


== 内向き整流性カリウムチャネル  ==
== 内向き整流性カリウムチャネル  ==
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内向き整流性カリウム(Kir)チャネルは、遅延整流性カリウムチャネルの外向き整流性と明らかに異なる電位依存性を示し、カリウムの平衡電位EKよりも過分極した膜電位でコンダクタンスが増加し内向きカリウム電流を流すカリウムチャネルである(図4)<ref><pubmed>20086079</pubmed></ref>。遅延整流性カリウムチャネルの外向き整流特性はチャネルの電位依存的な活性化によるものだが、Kirチャネルの外向き整流特性は細胞内のポリアミンやマグネシウムイオンによる外向き電流のブロックによっておこる。Kirチャネルファミリーのサブユニットの遺伝子がKir1-7サブファミリー、15種類ほど単離されている。Kirチャネルサブユニットによって内向き整流特性の強さは大きく異なる。整流性が強く古典的な内向き整流性カリウム電流を担うKir2サブファミリーの他に、整流性が中程度、もしくは殆どなくカリウム輸送などに関わるKir1、Kir4、Kir5、Kir7サブファミリー、細胞の心臓の迷走神経依存的な徐脈や抑制性のシナプス伝達などに関わるG蛋白質制御K(K<sub>G</sub>)チャネルの分子実体であるKir3サブファミリーや、グルコース依存的な膵臓β細胞からのインスリン分泌に関わるATP感受性カリウム(K<sub>ATP</sub>)チャネルのポア領域もKir6サブファミリーのKirチャネルに属する。<br>Kirチャネルのサブユニットは二回膜貫通領域と一つのP領域を有し、Kvカリウムチャネルの電位センサードメイン(S1-S4)に相当する部位はもっていない。代わりにN末端、C末端で形成される大きな細胞内領域が特徴である。Kirチャネルサブユニットはホモあるいはヘテロテトラマーを形成し機能する。  
内向き整流性カリウム(Kir)チャネルは、遅延整流性カリウムチャネルの外向き整流性と明らかに異なる電位依存性を示し、カリウムの平衡電位EKよりも過分極した膜電位でコンダクタンスが増加し内向きカリウム電流を流すカリウムチャネルである(図4)<ref><pubmed>20086079</pubmed></ref>。遅延整流性カリウムチャネルの外向き整流特性はチャネルの電位依存的な活性化によるものだが、Kirチャネルの外向き整流特性は細胞内のポリアミンやマグネシウムイオンによる外向き電流のブロックによっておこる。Kirチャネルファミリーのサブユニットの遺伝子がKir1-7サブファミリー、15種類ほど単離されている。Kirチャネルサブユニットによって内向き整流特性の強さは大きく異なる。整流性が強く古典的な内向き整流性カリウム電流を担うKir2サブファミリーの他に、整流性が中程度、もしくは殆どなくカリウム輸送などに関わるKir1、Kir4、Kir5、Kir7サブファミリー、細胞の心臓の迷走神経依存的な徐脈や抑制性のシナプス伝達などに関わるG蛋白質制御K(K<sub>G</sub>)チャネルの分子実体であるKir3サブファミリーや、グルコース依存的な膵臓β細胞からのインスリン分泌に関わるATP感受性カリウム(K<sub>ATP</sub>)チャネルのポア領域もKir6サブファミリーのKirチャネルに属する。<br>Kirチャネルのサブユニットは二回膜貫通領域と一つのP領域を有し、Kvカリウムチャネルの電位センサードメイン(S1-S4)に相当する部位はもっていない。代わりにN末端、C末端で形成される大きな細胞内領域が特徴である。Kirチャネルサブユニットはホモあるいはヘテロテトラマーを形成し機能する。  


== K2Pチャネル ==
== Two-pore domainカリウムチャネル ==


2TM型(二回膜貫通領域と一つのP領域)が二個直列につながったサブユニット構造をしているのがtwo-pore domainカリウム(K2P)チャネルである。タンデム(直列)ポアドメインtandem pore domain K チャネルとも呼ばれる。すなわち、ポアの形成に関わるドメインが一つのサブユニット上に二つ存在し、二量体を形成することで一つのイオン透過経路をもったイオンチャネルとなる。これまでに15種のK2Pチャネルサブユニットが同定されており、電気生理学的特性や薬理学的な特性から6つのサブファミリー(TWIK、TREK、TASK、TALK、THINK、TRAAK)に分類されている。<br>比較的最近遺伝子が単離されたカリウムチャネルであり、他のカリウムチャネルに比べると生理的な機能や構造活性相関の解析は進んでいない。電気生理学的特性から背景(漏洩)カリウム電流を担っていると考えられ静止膜電位の形成や膜抵抗の決定に関与していると考えられている。TREK1で形成されるイオンチャネルは最もよく研究されているK2Pチャネルであり、膜電位や細胞膜のPIP2との相互作用、リン酸化、pH、膜の伸展、熱などによる制御が示され、多様式polymodalな制御を受けるイオンチャネルであると知られてきている。
2TM型(二回膜貫通領域と一つのP領域)が二個直列につながったサブユニット構造をしているのがtwo-pore domainカリウム(K2P)チャネルである<ref><pubmed>11053038</pubmed></ref><ref><pubmed>15939489</pubmed></ref>。タンデム(直列)ポアドメインtandem pore domain K チャネルとも呼ばれる。すなわち、ポアの形成に関わるドメインが一つのサブユニット上に二つ存在し、二量体を形成することで一つのイオン透過経路をもったイオンチャネルとなる。これまでに15種のK2Pチャネルサブユニットが同定されており、電気生理学的特性や薬理学的な特性から6つのサブファミリー(TWIK、TREK、TASK、TALK、THINK、TRAAK)に分類されている。<br>比較的最近遺伝子が単離されたカリウムチャネルであり、他のカリウムチャネルに比べると生理的な機能や構造活性相関の解析は進んでいない。電気生理学的特性から背景(漏洩)カリウム電流を担っていると考えられ静止膜電位の形成や膜抵抗の決定に関与していると考えられている。TREK1で形成されるイオンチャネルは最もよく研究されているK2Pチャネルであり、膜電位や細胞膜のPIP2との相互作用、リン酸化、pH、膜の伸展、熱などによる制御が示され、多様式polymodalな制御を受けるイオンチャネルであると知られてきている<ref><pubmed>17375039</pubmed></ref>。


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== 電位依存性カリウムチャネル  ==
== 電位依存性カリウムチャネル  ==


神経系において、Kvチャネルは電位依存性ナトリウムチャネルと膜電位を介して機能的に共役し、活動電位の再分極、シナプス後細胞の興奮性の制御、振動性の興奮の制御、スパイク間隔の制御など重要な役割を果たしている。Kvチャネルの多様性が様々な生理機能のそれぞれに対応できるように、多種類の遅延整流性カリウムチャネルを形成している <ref><pubmed>20519310</pubmed></ref><ref><pubmed>16791144</pubmed></ref>。<br>神経細胞にはKv1, Kv2, Kv3, Kv4, Kv7, Kv11といったカリウムチャネルサブユニットの発現が認められている。各Kvチャネルクラスはサブファミリーをもち、それらのヘテロテトラマーとしてカリウムチャネルが構成されるので、その可能な組み合わせはサブユニットの数以上に膨大な数となる。  
神経系において、Kvチャネルは電位依存性ナトリウムチャネルと膜電位を介して機能的に共役し、活動電位の再分極、シナプス後細胞の興奮性の制御、振動性の興奮の制御、スパイク間隔の制御など重要な役割を果たしている。Kvチャネルの多様性が様々な生理機能のそれぞれに対応できるように、多種類の遅延整流性カリウムチャネルを形成している<ref><pubmed>20519310</pubmed></ref><ref><pubmed>16791144</pubmed></ref>。<br>神経細胞にはKv1, Kv2, Kv3, Kv4, Kv7, Kv11といったカリウムチャネルサブユニットの発現が認められている。各Kvチャネルクラスはサブファミリーをもち、それらのヘテロテトラマーとしてカリウムチャネルが構成されるので、その可能な組み合わせはサブユニットの数以上に膨大な数となる。  


=== A電流  ===
=== A電流  ===
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=== 遅延整流性カリウム電流  ===
=== 遅延整流性カリウム電流  ===


不活性化をあまり受けない電位依存性カリウム電流は、一過性のA 電流に対して持続性のカリウム電流と呼ばれることがある。活性化の速度が早いものと遅いものがあり、また活性化の電位依存性も様々異なるものが記録される。<br>Kv1、Kv3サブファミリーは脱分極による活性化のカイネティクスが比較的早いタイプの遅延性整流性カリウムチャネルである(図5)。<br>Kv1.1-1.3は低閾値型(LVA型)で脱分極により持続した外向き電流を流す。脱分極が続くと遅い不活性化を受ける。神経細胞においては、有髄神経のランビエ絞輪(node of Ranvier)周辺にKv1.1やKv1.2が集積しており、一方ミエリン化されていない軸索にはKv1.4が均一に分布している。活動電位発生の閾値となる膜電位(閾膜電位)以下で活性化されるこのチャネルの活性は活動電位の閾値を上げる役割を果す。特に神経細胞の発火帯、軸索といった部位におけるこれらのチャネルの活性は(図5)、神経細胞の自発的な発火を抑え、神経活動依存的に発火するようになり、神経伝達の忠実性fidelityを上げるという意義がある。<br>また、Kv3サブファミリーは高閾値型(HVA型)で早く活性化されるカリウムチャネルであり、活動電位の発生後に活性化され、活動電位の振幅や活動電位活動電位持続時間 の制御を行なっている(図5)。神経細胞に広く発現するが、シナプス前終末に到達する活動電位の波形はシナプス小胞の放出に大きな影響を与えることから、Kv3は神経伝達機構を制御していると言える。Kv3は他よりもTEA感受性が高く、実際TEAによって神経細胞のKv3チャネルを阻害すると活動電位の振幅を大きくし、活動電位活動電位持続時間 を延長し、Ca2+電流を増強してシナプス伝達が亢進する。<br>Kv7(KCNQ)、Kv11(KCNH、eag/ergとも)、Kv2サブファミリーは脱分極による活性化のカイネティクスが遅いタイプのKvチャネルである。 活動電位持続時間の長い心筋細胞においては、Kv7.1(KCNQ1)はMinK(KCNE1)と、Kv11.1(KCNH、hERGとも)はMinK related protein1(MiRP)(KCNE2)と複合体を形成し、それぞれ''I<sub></sub>''<sub>Ks</sub>、''I''<sub>Kr</sub>という遅延整流性カリウム電流の早い成分と遅い成分を担い、活動電位第三相で細胞を再分極させるために働いている。しかしながら心筋細胞に比べて活動電位持続時間が短い神経細胞においては、個々の活動電位中に活性化されるわけではない。LVA型のKv7(KCNQ)は深い膜電位でも活性化される一方で不活性化はあまり受けず、閾膜電位以下の膜電位でも持続的な外向き電流を流しており、細胞の興奮性の制御に関わっている(図5)。 <br>アセチルコリンAChなどの神経活動制御因子は遅延整流性カリウム電流を抑制することで、閾膜電位付近の興奮性を高め、発火頻度やシナプス入力に対する応答性を制御する。ムスカリン性ACh受容体の活性化に共役したカリウム電流がよく研究されており、この電流はムスカリン muscarinから M電流と呼ばれている。神経系においては、主にKv7.2(KCNQ2)/Kv7.3(KCNQ3)から構成されているイオンチャネルがこの電流を担っていると考えられている。<br>このイオンチャネルの活性には細胞膜の内側に存在しているリン脂質PIP2との結合が必要であり、Gq共役型のGPCR、例えばM3 ACh受容体の刺激はPLCを活性化し、膜のPIP2を減少させることでチャネルの活性を抑制すると考えられている。<br>CA1錯体細胞の樹状突起から計測される持続性のカリウム電流は電気生理学的な特性や薬理学的な特性(4-APよりもTEA感受性が高い)からHVA型のKv2サブファミリーであると考えられている(図5)。この電流は活動電位の中の膜電位で活性化される。神経細胞の高頻度発火の際にはこの電流が活性化し活動電位間の膜電位を過分極させる。  
不活性化をあまり受けない電位依存性カリウム電流は、一過性のA 電流に対して持続性のカリウム電流と呼ばれることがある。活性化の速度が早いものと遅いものがあり、また活性化の電位依存性も様々異なるものが記録される。<br>Kv1、Kv3サブファミリーは脱分極による活性化のカイネティクスが比較的早いタイプの遅延性整流性カリウムチャネルである(図5)。<br>Kv1.1-1.3は低閾値型(LVA型)で脱分極により持続した外向き電流を流す。脱分極が続くと遅い不活性化を受ける。神経細胞においては、有髄神経のランビエ絞輪(node of Ranvier)周辺にKv1.1やKv1.2が集積しており、一方ミエリン化されていない軸索にはKv1.4が均一に分布している。活動電位発生の閾値となる膜電位(閾膜電位)以下で活性化されるこのチャネルの活性は活動電位の閾値を上げる役割を果す。特に神経細胞の発火帯、軸索といった部位におけるこれらのチャネルの活性は(図5)、神経細胞の自発的な発火を抑え、神経活動依存的に発火するようになり、神経伝達の忠実性fidelityを上げるという意義がある。<br>また、Kv3サブファミリーは高閾値型(HVA型)で早く活性化されるカリウムチャネルであり、活動電位の発生後に活性化され、活動電位の振幅や活動電位活動電位持続時間 の制御を行なっている(図5)。神経細胞に広く発現するが、シナプス前終末に到達する活動電位の波形はシナプス小胞の放出に大きな影響を与えることから、Kv3は神経伝達機構を制御していると言える。Kv3は他よりもTEA感受性が高く、実際TEAによって神経細胞のKv3チャネルを阻害すると活動電位の振幅を大きくし、活動電位活動電位持続時間 を延長し、Ca2+電流を増強してシナプス伝達が亢進する。<br>Kv7(KCNQ)、Kv11(KCNH、eag/ergとも)、Kv2サブファミリーは脱分極による活性化のカイネティクスが遅いタイプのKvチャネルである。 活動電位持続時間の長い心筋細胞においては、Kv7.1(KCNQ1)はMinK(KCNE1)と、Kv11.1(KCNH、hERGとも)はMinK related protein1(MiRP)(KCNE2)と複合体を形成し、それぞれ''I<sub></sub>''<sub>Ks</sub>、''I''<sub>Kr</sub>という遅延整流性カリウム電流の早い成分と遅い成分を担い、活動電位第三相で細胞を再分極させるために働いている。しかしながら心筋細胞に比べて活動電位持続時間が短い神経細胞においては、個々の活動電位中に活性化されるわけではない。LVA型のKv7(KCNQ)は深い膜電位でも活性化される一方で不活性化はあまり受けず、閾膜電位以下の膜電位でも持続的な外向き電流を流しており、細胞の興奮性の制御に関わっている(図5)。 <br>アセチルコリンAChなどの神経活動制御因子は遅延整流性カリウム電流を抑制することで、閾膜電位付近の興奮性を高め、発火頻度やシナプス入力に対する応答性を制御する。ムスカリン性ACh受容体の活性化に共役したカリウム電流がよく研究されており、この電流はムスカリン muscarinから M電流と呼ばれている。神経系においては、主にKv7.2(KCNQ2)/Kv7.3(KCNQ3)から構成されているイオンチャネルがこの電流を担っていると考えられている。<br>このイオンチャネルの活性には細胞膜の内側に存在しているリン脂質PIP<sub>2</sub>との結合が必要であり、Gq共役型のGPCR、例えばM<sub>3</sub> ACh受容体の刺激はPLCを活性化し、膜のPIP<sub>2</sub>を減少させることでチャネルの活性を抑制すると考えられている。<br>CA1錯体細胞の樹状突起から計測される持続性のカリウム電流は電気生理学的な特性や薬理学的な特性(4-APよりもTEA感受性が高い)からHVA型のKv2サブファミリーであると考えられている(図5)。この電流は活動電位の中の膜電位で活性化される。神経細胞の高頻度発火の際にはこの電流が活性化し活動電位間の膜電位を過分極させる。  


== カルシウム活性化カリウムチャネル  ==
== カルシウム活性化カリウムチャネル  ==


神経細胞において活動電位後過分極(after hyperpolarization, AHP)が観察される。活動電位中に細胞内に流入したCa<sup>2+</sup>イオンによってKCaチャネルが活性化しAHPの形成に一部関与する。また、ある種類の神経細胞では電流を注入した時、始めは高頻度で発火するが次第に頻度が下がる順応反応spike frequency adaptationを呈する。KCaチャネルはこの順応反応にも関与する。KCaチャネルの活性化に必要なカルシウムシグナルは電位依存性Caチャネルとリアノジン受容体の働きにより形成されるが、結合膜構造が必要であるとの結果も出ている。また、培養海馬細胞においてSKチャネルがスパインに局在していることが報告され、シナプスにおけるカルシウムシグナルによって活性化されてシナプス後電位の形成にも関与することが示されている。
神経細胞において活動電位後過分極(after hyperpolarization, AHP)が観察される。活動電位中に細胞内に流入したCa<sup>2+</sup>イオンによってKCaチャネルが活性化しAHPの形成に一部関与する<ref><pubmed>21942705</pubmed></ref>。また、ある種類の神経細胞では電流を注入した時、始めは高頻度で発火するが次第に頻度が下がる順応反応spike frequency adaptationを呈する。KCaチャネルはこの順応反応にも関与する。KCaチャネルの活性化に必要なカルシウムシグナルは電位依存性Caチャネルとリアノジン受容体の働きにより形成されるが、結合膜構造が必要であるとの結果も出ている。また、培養海馬細胞においてSKチャネルがスパインに局在していることが報告され、シナプスにおけるカルシウムシグナルによって活性化されてシナプス後電位の形成にも関与することが示されている<ref><pubmed>21942705</pubmed></ref>。


== 内向き整流性カリウムチャネル  ==
== 内向き整流性カリウムチャネル  ==
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Kir2が形成するKirチャネルは内向き整流性がとても強く古典的内向き整流カリウム(IRK)電流を担う。細胞の静止膜電位、興奮性の制御に関わる。ROMK(Kir1)、Kir4.1、Kir5.1チャネルは整流性が弱くもしくは殆ど無く、常時活性化型であり、イオンの輸送に関わっている。Kir4.1はアストログリア細胞に発現が多く、なかでも血管周囲やシナプス周囲に局在している<ref><pubmed>11502569</pubmed></ref>。<br>G蛋白質活性化カリウム(GIRK)チャネルは三量体G蛋白質のGβγサブユニットとの結合によって活性化されるカリウムチャネルである。このチャネルは心臓の徐脈に関与するイオンチャネルとしてよく知られている。中枢神経系においてはGABABRなどと機能的に共役し、抑制性シナプスにおいて観察される遅延性の抑制性シナプス後電流(slow inhibitory postsynaptic current, sIPSC)を担う。GIRKチャネルはKir3サブファミリーで構成されるKirチャネルであり、神経細胞においてはKir3.1とKir3.2とで構成されるGIRKチャネルが主要な構成要素であると考えられている。しかし生化学的にはKir3.3や心臓型のKir3.4サブユニットの発現も認められる。<br>ATP感受性K(K<sub>ATP</sub>)はチャネルのポアを形成するイオンチャネルもKirチャネルファミリーに属する(Kir6サブファミリー)。Kir6.2にATPが結合することでチャネルが閉口する。ABC蛋白ファミリーに属し、スルホニルウレア剤の標的として知られるスルホニルウレア受容体(sulfonylurea receptor, SUR)はK<sub>ATP</sub>チャネルに必須のβサブユニットであり、Kir6とSURは4:4のヘテロオクタマーを形成し機能する。<br>K<sub>ATP</sub>チャネルの細胞内ATPによる閉口は、グルコース依存的な膵臓β細胞からのインスリン分泌の分子機構として役割が最もよく知られている。加えて、視床下部などで認められるいくつかの神経細胞で観察される、膜の電気的な興奮性のグルコース感受性の機構の一つとして知られている。グルコース濃度上昇によって、細胞へのグルコース取り込み増し、細胞内ATP産生増によるK<sub>ATP</sub>チャネル阻害がおこり、結果として膜の脱分極、細胞興奮性の亢進がおこる。他にも心筋細胞、平滑筋細胞などにも発現しており、やはり細胞の代謝レベルと膜の興奮性の共役を担っている。  
Kir2が形成するKirチャネルは内向き整流性がとても強く古典的内向き整流カリウム(IRK)電流を担う。細胞の静止膜電位、興奮性の制御に関わる。ROMK(Kir1)、Kir4.1、Kir5.1チャネルは整流性が弱くもしくは殆ど無く、常時活性化型であり、イオンの輸送に関わっている。Kir4.1はアストログリア細胞に発現が多く、なかでも血管周囲やシナプス周囲に局在している<ref><pubmed>11502569</pubmed></ref>。<br>G蛋白質活性化カリウム(GIRK)チャネルは三量体G蛋白質のGβγサブユニットとの結合によって活性化されるカリウムチャネルである。このチャネルは心臓の徐脈に関与するイオンチャネルとしてよく知られている。中枢神経系においてはGABABRなどと機能的に共役し、抑制性シナプスにおいて観察される遅延性の抑制性シナプス後電流(slow inhibitory postsynaptic current, sIPSC)を担う。GIRKチャネルはKir3サブファミリーで構成されるKirチャネルであり、神経細胞においてはKir3.1とKir3.2とで構成されるGIRKチャネルが主要な構成要素であると考えられている。しかし生化学的にはKir3.3や心臓型のKir3.4サブユニットの発現も認められる。<br>ATP感受性K(K<sub>ATP</sub>)はチャネルのポアを形成するイオンチャネルもKirチャネルファミリーに属する(Kir6サブファミリー)。Kir6.2にATPが結合することでチャネルが閉口する。ABC蛋白ファミリーに属し、スルホニルウレア剤の標的として知られるスルホニルウレア受容体(sulfonylurea receptor, SUR)はK<sub>ATP</sub>チャネルに必須のβサブユニットであり、Kir6とSURは4:4のヘテロオクタマーを形成し機能する。<br>K<sub>ATP</sub>チャネルの細胞内ATPによる閉口は、グルコース依存的な膵臓β細胞からのインスリン分泌の分子機構として役割が最もよく知られている。加えて、視床下部などで認められるいくつかの神経細胞で観察される、膜の電気的な興奮性のグルコース感受性の機構の一つとして知られている。グルコース濃度上昇によって、細胞へのグルコース取り込み増し、細胞内ATP産生増によるK<sub>ATP</sub>チャネル阻害がおこり、結果として膜の脱分極、細胞興奮性の亢進がおこる。他にも心筋細胞、平滑筋細胞などにも発現しており、やはり細胞の代謝レベルと膜の興奮性の共役を担っている。  


== K2Pチャネル ==
== Two-pore domainカリウムチャネル ==


K2Pチャネルは背景漏洩(リーク)カリウム電流を担い、静止膜電位の形成や膜抵抗の制御に関わると見られる。  
K2Pチャネルは背景漏洩(リーク)カリウム電流を担い、静止膜電位の形成や膜抵抗の制御に関わると見られる。  
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= 4.病気との関連 -カリウムチャネルのチャネル病-<br>  =
= 4.病気との関連 -カリウムチャネルのチャネル病-<br>  =


心臓病、筋肉病、脳疾患、腎疾患、代謝性疾患など様々な疾患で、イオンチャネルをコードする遺伝子の異常を原因とするものが知られるようになってきた。いわゆる、チャネル病(Channelopathy)という概念が定着してきている。代表的なものとして、先天性QT延長症候群(Long QT syndrome, LQTs)を引き起こす電位依存的カリウムチャネルのαサブユニットKv7.1(KCNQ1)の遺伝子異常が多数見つかっている(タイプ1, LQT1)。また、このチャネルのβサブユニットであるminK(KCNE1)の異常がLQT5の患者から見つかっている。LQT2の場合は、Kv11.1(HERG)遺伝子から異常が見つかっている。これらの遺伝子異常により、心筋の遅延整流性カリウム電流の遅い成分(''I''<sub>Ks</sub>)や早い成分(''I''<sub>Kr</sub>)を担うカリウムチャネルは機能欠損(loss-of-function)になり、心筋細胞を再分極させる外向き電流が減少することが、活動電位の延長やQT時間の延長の原因である。また、不整脈(QT 延長)に両側性感音性難聴を伴うJervell &amp; Lange-Nielson症候群 (JLN) の機能欠損変異もKv7.1(KCNQ1) 、minK(KCNE1)で見つかっている。不整脈、突発性の筋脱力、形態異常など全身性の症状を呈するAndersen-Tawil症候群(LQT7)の患者からはKir2.1の機能欠損変異が見つかっている。逆に、KCNQ1、hERG、Kir2.1の遺伝子の機能獲得(gain-of-function)変異がQT短縮症候群(Short QT syndrome, SQTs) 患者から見つかっている。<br>脳疾患では、神経性のM電流を欠損するKCNQ2/KCNQ3の機能欠損変異が家族性良性新生児痙攣(Benign familial neonatal epilepsy, BFNE)の原因となることが報告されている <ref><pubmed>9430594</pubmed></ref><ref><pubmed>9872318</pubmed></ref><ref><pubmed>9425900</pubmed></ref><ref><pubmed>9425895</pubmed></ref>。また、Kv1.1の機能欠損変異が発作性運動失調症(episodic ataxia, EA)を引き起こすこと知られている<ref><pubmed>7842011</pubmed></ref>。さらに、KCNQ4やKir4.1の変異が難聴に繋がることも分かっている。(KCNQ4遺伝子は常染色体優性遺伝形式を取るDFNA2の原因遺伝子として報告された)<br>腎疾患、代謝性疾患で代表的なものは、腎尿細管上皮細胞頂上膜に局在するKir1.1(ROMK1)の異常が代謝性アルカローシスや低K<sup>+</sup>血症を伴うBartter症候群(II型)を引き起こすことが分かっている。さらにKir6.2、SUR1の変異による膵臓β細胞K<sub>ATP</sub>チャネルの機能獲得変異によって新生児糖尿病(permenent neonatal diabetes)で、逆に機能欠損変異で新生児持続性高インスリン性低血糖症(Persistent hyperinsulinemic hypoglycemia of infancy, PHHI)などで見つかっている。<br>チャネル病の遺伝性を解析してみると、表現型が常染色体優性遺伝で遺伝されることが多い。カリウムチャネルはα、βサブユニットの複合体であるため、異常なサブユニットが一つでも入ることで複合体の機能が欠失するドミナントネガティブ効果でイオンチャネル機能が阻害されることがあります。一方、ハプロ不全(haplo-insufficiency)で発病する場合も多く報告されている。しかもその場合、機能欠損変異のみならず機能獲得変異によるチャネル病も報告されている。このことはイオンチャネルの機能が欠損していても過剰になっていても生体にとっては不適で、言い換えると適切な発現レベルや活性の範囲が存在することを示している。<br>遺伝子異常を原因としないものとしては、様々なストレス下でおこるイオンチャネルのリモデリングが心臓不整脈などの疾患の原因となることが知られている。  
心臓病、筋肉病、脳疾患、腎疾患、代謝性疾患など様々な疾患で、イオンチャネルをコードする遺伝子の異常を原因とするものが知られるようになってきた。いわゆる、チャネル病(Channelopathy)という概念が定着してきている<ref><pubmed>16554803</pubmed></ref><ref><pubmed>22290238</pubmed></ref>。代表的なものとして、先天性QT延長症候群(Long QT syndrome, LQTs)を引き起こす電位依存的カリウムチャネルのαサブユニットKv7.1(KCNQ1)の遺伝子異常が多数見つかっている(タイプ1, LQT1)。また、このチャネルのβサブユニットであるminK(KCNE1)の異常がLQT5の患者から見つかっている。LQT2の場合は、Kv11.1(HERG)遺伝子から異常が見つかっている。これらの遺伝子異常により、心筋の遅延整流性カリウム電流の遅い成分(''I''<sub>Ks</sub>)や早い成分(''I''<sub>Kr</sub>)を担うカリウムチャネルは機能欠損(loss-of-function)になり、心筋細胞を再分極させる外向き電流が減少することが、活動電位の延長やQT時間の延長の原因である。また、不整脈(QT 延長)に両側性感音性難聴を伴うJervell &amp; Lange-Nielson症候群 (JLN) の機能欠損変異もKv7.1(KCNQ1) 、minK(KCNE1)で見つかっている。不整脈、突発性の筋脱力、形態異常など全身性の症状を呈するAndersen-Tawil症候群(LQT7)の患者からはKir2.1の機能欠損変異が見つかっている。逆に、KCNQ1、hERG、Kir2.1の遺伝子の機能獲得(gain-of-function)変異がQT短縮症候群(Short QT syndrome, SQTs) 患者から見つかっている。<br>脳疾患では、神経性のM電流を欠損するKCNQ2/KCNQ3の機能欠損変異が家族性良性新生児痙攣(Benign familial neonatal epilepsy, BFNE)の原因となることが報告されている <ref><pubmed>9430594</pubmed></ref><ref><pubmed>9872318</pubmed></ref><ref><pubmed>9425900</pubmed></ref><ref><pubmed>9425895</pubmed></ref>。また、Kv1.1の機能欠損変異が発作性運動失調症(episodic ataxia, EA)を引き起こすこと知られている<ref><pubmed>7842011</pubmed></ref>。さらに、KCNQ4やKir4.1の変異が難聴に繋がることも分かっている。(KCNQ4遺伝子は常染色体優性遺伝形式を取るDFNA2の原因遺伝子として報告された)<br>腎疾患、代謝性疾患で代表的なものは、腎尿細管上皮細胞頂上膜に局在するKir1.1(ROMK1)の異常が代謝性アルカローシスや低K<sup>+</sup>血症を伴うBartter症候群(II型)を引き起こすことが分かっている。さらにKir6.2、SUR1の変異による膵臓β細胞K<sub>ATP</sub>チャネルの機能獲得変異によって新生児糖尿病(permenent neonatal diabetes)で、逆に機能欠損変異で新生児持続性高インスリン性低血糖症(Persistent hyperinsulinemic hypoglycemia of infancy, PHHI)などで見つかっている。<br>チャネル病の遺伝性を解析してみると、表現型が常染色体優性遺伝で遺伝されることが多い。カリウムチャネルはα、βサブユニットの複合体であるため、異常なサブユニットが一つでも入ることで複合体の機能が欠失するドミナントネガティブ効果でイオンチャネル機能が阻害されることがあります。一方、ハプロ不全(haplo-insufficiency)で発病する場合も多く報告されている。しかもその場合、機能欠損変異のみならず機能獲得変異によるチャネル病も報告されている。このことはイオンチャネルの機能が欠損していても過剰になっていても生体にとっては不適で、言い換えると適切な発現レベルや活性の範囲が存在することを示している。<br>遺伝子異常を原因としないものとしては、様々なストレス下でおこるイオンチャネルのリモデリングが心臓不整脈などの疾患の原因となることが知られている。  


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