「睡眠障害」の版間の差分

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 RBDは大きく特発性と二次性に分けることができる。二次性RBDには、[[wikipedia:JA:アルコール|アルコール]]や[[wikipedia:JA:睡眠薬|睡眠薬]]の離脱時、[[三環系抗うつ薬]]などの中枢作動薬によるもの、脳幹病変を有する神経疾患に基づくものなどがある。
 RBDは大きく特発性と二次性に分けることができる。二次性RBDには、[[wikipedia:JA:アルコール|アルコール]]や[[wikipedia:JA:睡眠薬|睡眠薬]]の離脱時、[[三環系抗うつ薬]]などの中枢作動薬によるもの、脳幹病変を有する神経疾患に基づくものなどがある。


 [[wikipedia:JA:ネコ|ネコ]]を使った実験では、REM睡眠は情動系の抑制と[[wikipedia:JA:骨格筋|骨格筋]]脱力の出現が重要であり、骨格筋脱力は、コリン系の[[中脳橋被蓋核]](pedunculopontine tegmental nucleus:PPN)と[[外背側被蓋核]](laterodorsal tegmental nucleus:LDTN)、[[アドレナリン]]系の[[青斑核]](locus coeruleus:LC)から[[延髄巨大細胞網様体]](medullary magnocellular reticular formation:MCRF)を介した系により生じることがわかっている。また、[[wikipedia:JA:ネズミ|ネズミ]]を用いた実験により、ネコのLCに相当する[[下外側背側核]](sublaral dorsal nucleus:SLD)がREM睡眠を促進する働きをもっており、反対に[[中脳水道]]周辺の[[腹外側灰白質]](ventrolateral part of the periaqueductal grey matter:vlPAG)、[[外側橋被蓋]](lateral pontine tegmentum:LPT)はREM睡眠を抑制することが示されている。ネコのLC、SLDの破壊により、RBDが生じることがわかっているが、ヒトにおいてもLCなどが主病変として注目されている。BoeveらによるRBDの発症機序のスキーマを示す(図5)<ref><pubmed>17412731</pubmed></ref>。
 [[wikipedia:JA:ネコ|ネコ]]を使った実験では、REM睡眠は情動系の抑制と[[wikipedia:JA:骨格筋|骨格筋]]脱力の出現が重要であり、骨格筋脱力は、コリン系の[[中脳橋被蓋核]](pedunculopontine tegmental nucleus:PPN)と[[外背側被蓋核]](laterodorsal tegmental nucleus:LDTN)、[[アドレナリン]]系の[[青斑核]](locus coeruleus:LC)から[[延髄巨大細胞網様体]](medullary magnocellular reticular formation:MCRF)を介した系により生じることがわかっている。また、齧歯類を用いた実験により、ネコのLCに相当する[[下外側背側核]](sublateral dorsal nucleus:SLD)がREM睡眠を促進する働きをもっており、反対に[[中脳水道]]周辺の[[腹外側灰白質]](ventrolateral part of the periaqueductal grey matter:vlPAG)、[[外側橋被蓋]](lateral pontine tegmentum:LPT)はREM睡眠を抑制することが示されている。ネコのLC、SLDの破壊により、RBDが生じることがわかっているが、ヒトにおいてもLCなどが主病変として注目されている。BoeveらによるRBDの発症機序のスキーマを示す(図5)<ref><pubmed>17412731</pubmed></ref>。


 RBDの治療としては、まず患者や家族に病態を十分理解させ、寝室環境を工夫して、患者自身およびベッドパートナーの受傷リスクを低減する必要がある。また、発症の誘因、あるいは増悪因子として、アルコール飲用や心理的ストレスが関与していると推測される場合はこれらへの対応を検討すべきである。薬物療法としては、[[クロナゼパム]]が第一選択薬とされており、0.5‐1.5 mg/日が投与される。高齢者ではふらつき、転倒といった副作用に注意が必要である。本剤の作用機序については、脳幹部の橋被蓋核付近のREM睡眠実行系への作用や、辺縁系へ働いて情動を安定化させる作用などが推察されている。これ外に、メラトニンあるいは[[ドーパミン]][[アゴニスト]]である[[プラミペキソール]]の効果も報告されている。  
 RBDの治療としては、まず患者や家族に病態を十分理解させ、寝室環境を工夫して、患者自身およびベッドパートナーの受傷リスクを低減する必要がある。また、発症の誘因、あるいは増悪因子として、アルコール飲用や心理的ストレスが関与していると推測される場合はこれらへの対応を検討すべきである。薬物療法としては、[[クロナゼパム]]が第一選択薬とされており、0.5‐1.5 mg/日が投与される。高齢者ではふらつき、転倒といった副作用に注意が必要である。本剤の作用機序については、脳幹部の橋被蓋核付近のREM睡眠実行系への作用や、辺縁系へ働いて情動を安定化させる作用などが推察されている。これらの他に、メラトニンあるいは[[ドーパミン]][[アゴニスト]]である[[プラミペキソール]]の効果も報告されている。  


[[Image:Takaスライド5.PNG|thumb|300px|'''図5.REM睡眠行動障害のメカニズム(Boeve BF et al 2007)'''REM睡眠を促進するREM on(下外側背側核、青斑核)とREM睡眠を抑制するREM off(中脳水道周辺腹側側灰白質、外側橋被蓋)が相互に干渉してREM睡眠の制御を行っている。REM睡眠時には、[[下外側側背核]]より直接、間接的に[[脊髄前角細胞]]に抑制をおこなっているが、下外側背側核の障害により情動系からの出力への抑制が弱くなり、RWAの出現、夢内容の行動化が起こる。<br>]]
[[Image:Takaスライド5.PNG|thumb|300px|'''図5.REM睡眠行動障害のメカニズム(Boeve BF et al 2007)'''REM睡眠を促進するREM on(下外側背側核、青斑核)とREM睡眠を抑制するREM off(中脳水道周辺腹側側灰白質、外側橋被蓋)が相互に干渉してREM睡眠の制御を行っている。REM睡眠時には、[[下外側側背核]]より直接、間接的に[[脊髄前角細胞]]に抑制をおこなっているが、下外側背側核の障害により情動系からの出力への抑制が弱くなり、RWAの出現、夢内容の行動化が起こる。<br>]]
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=== レストレスレッグス症候群 ===
=== レストレスレッグス症候群 ===


 [[レストレスレッグス]](restless legs syndrome:RLS)は、安静時または夕方から夜間にかけて脚の不快感が生じ、これに伴い下肢を動かしたくなる衝動感にかられる間隔運動障害であり、これによる入眠障害を来すものである。本症の50~80%に[[周期性四肢運動障害]](Pediatric Limb Movement Disorder:PLMD)の合併がみられる。RLSでは、脳内ドパミン神経系の機能異常もしくは貯蔵鉄の欠乏が2大要因として挙げられる。また、家族内発症例が少なくないことから、遺伝的要因の関与も重要視される([[むずむず脚症候群]]参照)。
 [[レストレスレッグス]](restless legs syndrome:RLS)は、安静時または夕方から夜間にかけて脚の不快感が生じ、これに伴い下肢を動かしたくなる衝動感にかられる感覚運動障害であり、これによる入眠障害を来すものである。本症の50~80%に[[周期性四肢運動障害]](Pediatric Limb Movement Disorder:PLMD)の合併がみられる。RLSでは、脳内ドパミン神経系の機能異常もしくは貯蔵鉄の欠乏が2大要因として挙げられる。また、家族内発症例が少なくないことから、遺伝的要因の関与も重要視される([[むずむず脚症候群]]参照)。


== 参考文献 ==
== 参考文献 ==