「うつ病」の版間の差分

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== うつ病モデル動物 ==
== うつ病モデル動物 ==


 動物にうつ病があるかどうかは議論があるが(<ref><pubmed>'''加藤忠史'''<br>動物に「うつ」はあるのか<br>''PHP新書'' 2012年</pubmed></ref>)、これまでに、うつ病に関連した研究に多く用いられていたモデル動物を、よく引用されている順に<ref><pubmed>: 26265551</pubmed></ref>、表2に示す。
 動物にうつ病があるかどうかは議論があるが(<ref><pubmed>'''加藤忠史'''<br>動物に「うつ」はあるのか<br>''PHP新書'' 2012年</pubmed></ref>)、これまでに、うつ病に関連した研究に多く用いられていたモデル動物を、よく引用されている順に<ref><pubmed>: 26265551</pubmed></ref>、'''表2'''に示す。


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|+表2 うつ病に関連した研究に用いられたモデル動物
|+表2 うつ病に関連した研究に用いられたモデル動物
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* [[強制水泳試験]]<ref><pubmed>559941</pubmed></ref>
* [[尾懸垂試験]]<ref><pubmed>3923523</pubmed></ref>
* [[学習性無力]]<ref><pubmed>'''Maier, Steven F.; Seligman, Martin E'''<br>Learned helplessness: Theory and evidence. <br>''Journal of Experimental Psychology General'', (1976) 105: 3-46</pubmed></ref>
* [[母子分離飼育]]<ref><pubmed>8497182</pubmed></ref>
* [[慢性予測不能軽度ストレス]]<ref><pubmed>3124165</pubmed></ref>
* [[免疫賦活モデル]]<ref><pubmed>8680860</pubmed></ref>
* [[妊娠中ストレスモデル]]<ref><pubmed>18768700</pubmed></ref>
* [[社会的敗北ストレス]]<ref><pubmed>6059915</pubmed></ref>
* [[縫線核]][[セロトニントランスポーター]][[ノックアウトマウス]]<ref><pubmed>14625138</pubmed></ref>
* [[Flinders sensitive lineラット]]<ref><pubmed>15925699</pubmed></ref>
* [[嗅球]]摘除ラット<ref><pubmed>588843</pubmed></ref>
* 新生仔期[[クロミプラミン]]投与<ref><pubmed>'''Mirmiran, M., van de Poll, N., Corner, M., de Boer, G. & van Oyen, H.''' (1980). Lasting sequelae of chronic treatment with clomipramine during early postnatal development in the rat.<br>''IRCS Journal Medicine Science'', 8, 200-202.</pubmed></ref>
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 しかし、いずれも確立したものではなく、特に、最もよく用いられる強制水泳試験、尾懸垂試験は、全くうつ病モデルとは言えず<ref><pubmed>20877280</pubmed></ref>、モノアミン神経伝達を増強する薬のスクリーニング法にすぎない。


強制水泳試験<ref><pubmed>: 559941</pubmed></ref>
 多くのモデルがうつ病の危険因子であるストレスを動物に与えたものであるが、これらがうつ病と言えるかどうかについて、一致した見解には至っていない。これらのモデルでは、モデル毎に異なる行動評価法(例えば慢性予測不能軽度ストレスでは[[ショ糖嗜好性テスト]]、社会的敗北ストレスでは[[社会性相互作用テスト]])が用いられており、動物が抑うつ的かどうかを判断する一定の基準も存在しない。すなわち、確立したうつ病のモデル動物は存在しないと言って良い。
尾懸垂試験<ref><pubmed>: 3923523</pubmed></ref>
学習性無力(Maier, Steven F.; Seligman, Martin E (1976).: Learned helplessness: Theory and evidence. Journal of Experimental Psychology: General, 105: 3-46)
母子分離飼育<ref><pubmed>: 8497182</pubmed></ref>
慢性予測不能軽度ストレス<ref><pubmed>: 3124165</pubmed></ref>
[[免疫]]賦活モデル<ref><pubmed>: 8680860</pubmed></ref>
妊娠中ストレスモデル<ref><pubmed>: 18768700</pubmed></ref>
社会的敗北ストレス<ref><pubmed>: 6059915</pubmed></ref>
[[縫線核]][[セロトニントランスポーター]][[ノックアウトマウス]]<ref><pubmed>: 14625138</pubmed></ref>
Flinders sensitive line[[ラット]]<ref><pubmed>: 15925699</pubmed></ref>
[[嗅球]]摘除ラット<ref><pubmed>: 588843</pubmed></ref>
新生仔期[[クロミプラミン]]投与(Mirmiran, M., Van De Poll, N., Corner, M. , et al. Lasting sequelae of chronic treatment with chlorimipramine during early postnatal development in the rat. Volume 8, Issue 4, 1980, Pages 200-202)
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 しかし、いずれも確立したものではなく、特に、最もよく用いられる強制水泳試験、尾懸垂試験は、全くうつ病モデルとは言えず<ref><pubmed>: 20877280</pubmed></ref>、モノアミン神経伝達を増強する薬のスクリーニング法にすぎない。
 ヒトにおけるうつ病がDSM-5の診断基準を元に診断されている以上、今後は人のうつ病と同様の基準で評価を行う必要があると思われる<ref><pubmed>26481320</pubmed></ref>。
 多くのモデルがうつ病の危険因子であるストレスを動物に与えたものであるが、これらがうつ病と言えるかどうかについて、一致した見解には至っていない。これらのモデルでは、モデル毎に異なる行動評価法(例えば慢性予測不能軽度ストレスではショ糖嗜好性[[テスト]]、社会的敗北ストレスでは社会性相互作用テスト)が用いられており、動物が抑うつ的かどうかを判断する一定の基準も存在しない。すなわち、確立したうつ病のモデル動物は存在しないと言って良い。
人におけるうつ病がDSM-5の診断基準を元に診断されている以上、今後は人のうつ病と同様の基準で評価を行う必要があると思われる<ref><pubmed>26481320</pubmed></ref>。


==関連項目==
==関連項目==