「てんかん」の版間の差分

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<font size="+1">[http://researchmap.jp/read0082204 兼子 直]</font><br>
<font size="+1">[http://researchmap.jp/read0082204 兼子 直]</font><br>
''北東北てんかんセンター''<br>
''北東北てんかんセンター''<br>
DOI:<selfdoi /> 原稿受付日:2016年2月8日 原稿完成日:2016年月日<br>
DOI:<selfdoi /> 原稿受付日:2016年2月8日 原稿完成日:2016年3月12日<br>
担当編集委員:[http://researchmap.jp/read0141446 漆谷 真](京都大学 大学院医学研究科)<br>
担当編集委員:[http://researchmap.jp/read0141446 漆谷 真](滋賀医科大学 医学部 脳神経内科)<br>
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 不整脈には[[wj:徐脈性不整脈|徐脈性不整脈]]([[wj:洞不全症候群|洞不全症候群]]、[[wj:AVブロック|AVブロック]])、[[wj:頻拍性不整脈|頻拍性不整脈]]([[wj:上室性頻拍|上室性頻拍]]、[[wj:心室性不整脈|心室性不整脈]])があり、[[wj:心電図|心電図]]検査を要する。
 不整脈には[[wj:徐脈性不整脈|徐脈性不整脈]]([[wj:洞不全症候群|洞不全症候群]]、[[wj:AVブロック|AVブロック]])、[[wj:頻拍性不整脈|頻拍性不整脈]]([[wj:上室性頻拍|上室性頻拍]]、[[wj:心室性不整脈|心室性不整脈]])があり、[[wj:心電図|心電図]]検査を要する。


 自律神経調節性失神には[[迷走神経緊張性失神]](前駆症状は発汗、あくび、吐き気、腹痛)、[[頸動脈洞症候群]](振り向くような動作で起こる)、[[状況失神]](排尿、排便、咳、嚥下などが原因となる)がある。病歴の聴取が重要である。
 自律神経調節性失神には[[迷走神経緊張性失神]](前駆症状は[[発汗]]、[[あくび]]、[[吐き気]]、[[腹痛]])、[[頸動脈洞症候群]](振り向くような動作で起こる)、[[状況失神]]([[排尿]]、[[排便]]、[[咳]]、[[嚥下]]などが原因となる)がある。病歴の聴取が重要である。


==== 一過性脳虚血発作 ====
==== 一過性脳虚血発作 ====
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#運動徴候を呈するもの
#運動徴候を呈するもの
#体性感覚または特殊感覚症状を呈するもの
#体性感覚または特殊感覚症状を呈するもの
#自立神経症状あるいは徴候を呈するもの
#自律神経症状あるいは徴候を呈するもの
#精神症状を呈するもの<br>
#精神症状を呈するもの<br>
(多くは“複雑部分発作”として経験される)
(多くは“複雑部分発作”として経験される)
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==== 単純部分発作 ====
==== 単純部分発作 ====
意識障害を示さず、発作時脳波は脳皮質の局所性の放電である。これは発作症状から4種類に分けられる。
意識障害を示さず、発作時脳波は脳皮質の局所性の放電である。これは発作症状から4種類に分けられる。
:'''[[運動徴候を伴う発作]]'''は[[焦点性運動発作]]、[[ジャクソン型発作]]、[[回転発作]]、[[姿勢発作]]、[[音声発作]]がある。焦点性運動発作は[[前中心回]]の[[運動領野]]に焦点があり、その脳部位に関連する身体部位のけいれんが出現する。ジャクソン型発作は前中心回の一部に始まった発作発射が周囲の脳部位に波及するため手ー腕ー下肢などのように同側の身体部位を巻き込んで発作が拡大してゆく。発作後に足などの麻痺が残ることがあり、これを[[トッドの麻痺]]という。<br>'''[[回転発作]]'''は脳皮質焦点の反対側へ眼球、顔、躯幹を向ける発作である。<br>'''[[姿勢発作]]'''は[[補足運動野]]に焦点がある場合、反対側の上肢を挙上し、それを見上げるように頭部、眼球を回転させる。音声発作は前中心回の発作発射により同じ言葉を反復する、叫ぶ、あるいは言葉を話せなくなる発作である。<br>'''[[体性感覚ないし特殊感覚症状を伴う発作]]'''には[[体性感覚発作]]、[[視覚発作]]、[[聴覚発作]]、[[めまい発作]]がある。体性感覚発作は[[後中心回]]の発作発射によりその部位がつかさどる体の一部にしびれ感などの[[知覚]]異常が出現する。視覚発作は[[後頭葉]]にてんかん焦点があるとき、閃光、渦巻く雲が見えたり視野が狭くなったりする。<br>'''[[聴覚発作]]'''はてんかん焦点が側頭葉上部にあると、発作として音が聞こえあるいは逆に聞こえなくなる。鉤回に焦点があると匂いを感ずる発作が、焦点が島、弁蓋部にあると苦味、酸味などの味覚発作が出現する。側頭葉上回にあるとめまい発作が出現すると考えられている。<br>'''[[自律神経症状ないし兆候を伴う発作]]'''は、数分以内の自律神経系症状(悪心、嘔吐、頭痛、腹部不快感など)を示す発作で、血圧の上昇、[[瞳孔]]散大、くしゃみなどもみられる。成人の場合には多彩な自律神経症状は発作症状の一部として出現する。<br>'''[[精神症状を伴う発作]]''' 発作発射は[[側頭葉]]皮質から[[辺縁系]]の一部に限局するため、意識は失われない。発作症状は多彩であり、[[情動発作]]が多い。これは側頭葉下面皮質に焦点があるとき、[[不安]]、[[恐怖]]、[[怒り]]、[[多幸感]]、を感ずるものである。[[言語中枢]]付近に焦点がある場合、言葉を話せなくなる([[運動性失語]])あるいは言葉を理解できなくなる([[感覚性失語]])を起こす。<br>'''[[記憶障害発作]]'''は一過性の[[健忘]]、[[既視体験]]、[[未視体験]]などの発作症状を示し、[[認知発作]]には[[夢幻様体験]]、[[強制思考]]などがある。[[錯覚]]発作の症状として[[変形視]]、[[巨視症]]、[[小視症]]などの視覚症状と音が大きくあるいは小さく聞こえるなどの聴覚性症状がある。[[構成幻覚発作]]は人の声、動作が意味を持ち、情景が見え、音楽が聞こえるなどの複雑な幻覚を感ずる発作である。
:1. '''[[運動徴候を伴う発作]]'''は[[焦点性運動発作]]、[[ジャクソン型発作]]、[[回転発作]]、[[姿勢発作]]、[[音声発作]]がある。焦点性運動発作は[[前中心回]]の[[運動領野]]に焦点があり、その脳部位に関連する身体部位のけいれんが出現する。ジャクソン型発作は前中心回の一部に始まった発作発射が周囲の脳部位に波及するため手ー腕ー下肢などのように同側の身体部位を巻き込んで発作が拡大してゆく。発作後に足などの麻痺が残ることがあり、これを[[トッドの麻痺]]という。<br>'''[[回転発作]]'''は脳皮質焦点の反対側へ眼球、顔、躯幹を向ける発作である。<br>'''[[姿勢発作]]'''は[[補足運動野]]に焦点がある場合、反対側の上肢を挙上し、それを見上げるように頭部、眼球を回転させる。音声発作は前中心回の発作発射により同じ言葉を反復する、叫ぶ、あるいは言葉を話せなくなる発作である。<br>2. '''[[体性感覚ないし特殊感覚症状を伴う発作]]'''には[[体性感覚発作]]、[[視覚発作]]、[[聴覚発作]]、[[めまい発作]]がある。体性感覚発作は[[後中心回]]の発作発射によりその部位がつかさどる体の一部にしびれ感などの[[知覚]]異常が出現する。視覚発作は[[後頭葉]]にてんかん焦点があるとき、閃光、渦巻く雲が見えたり視野が狭くなったりする。<br>'''[[聴覚発作]]'''はてんかん焦点が側頭葉上部にあると、発作として音が聞こえあるいは逆に聞こえなくなる。鉤回に焦点があると匂いを感ずる発作が、焦点が島、弁蓋部にあると苦味、酸味などの味覚発作が出現する。側頭葉上回にあるとめまい発作が出現すると考えられている。<br>3. '''[[自律神経症状ないし兆候を伴う発作]]'''は、数分以内の自律神経系症状(悪心、嘔吐、頭痛、腹部不快感など)を示す発作で、血圧の上昇、[[瞳孔]]散大、くしゃみなどもみられる。成人の場合には多彩な自律神経症状は発作症状の一部として出現する。<br>4. '''[[精神症状を伴う発作]]''' 発作発射は[[側頭葉]]皮質から[[辺縁系]]の一部に限局するため、意識は失われない。発作症状は多彩であり、[[情動発作]]が多い。これは側頭葉下面皮質に焦点があるとき、[[不安]]、[[恐怖]]、[[怒り]]、[[多幸感]]、を感ずるものである。[[言語中枢]]付近に焦点がある場合、言葉を話せなくなる([[運動性失語]])あるいは言葉を理解できなくなる([[感覚性失語]])を起こす。<br>'''[[記憶障害発作]]'''は一過性の[[健忘]]、[[既視体験]]、[[未視体験]]などの発作症状を示し、[[認知発作]]には[[夢幻様体験]]、[[強制思考]]などがある。[[錯覚]]発作の症状として[[変形視]]、[[巨視症]]、[[小視症]]などの視覚症状と音が大きくあるいは小さく聞こえるなどの聴覚性症状がある。[[構成幻覚発作]]は人の声、動作が意味を持ち、情景が見え、音楽が聞こえるなどの複雑な幻覚を感ずる発作である。


==== 複雑発作 ====
==== 複雑発作 ====
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| style="background-color:#d3d3d3" |抗てんかん薬
| style="background-color:#d3d3d3" |抗てんかん薬
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| style="background-color:#d3d3d3" |肺性経路(<u>編集部コメント:排泄経路?</u>)
| style="background-color:#d3d3d3" |排泄経路
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|カルバマゼピン
|カルバマゼピン
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太字で示されている酵素は抗てんかん薬代謝に関与する主な[[wikipedia:Epoxide hydrolase|酵素]]である。CYP:酸化的代謝を行うチトクロームp450、EPH:エポキシド水解酵素、UGT:UDP-グルクロニールトランスフェラーゼ
太字で示されている酵素は抗てんかん薬代謝に関与する主な酵素である。CYP:酸化的代謝を行うチトクロームp450、EPH:[[エポキシド水解酵素]]、UGT:[[UDP-グルクロニールトランスフェラーゼ]]


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==関連項目==
* [[抗てんかん薬]]


==参考文献==
==参考文献==
<references /> 
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