アカシジア

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名古屋大学大学院医学系研究科精神医療学寄附講座 稲田俊也 英:akathisia 独:Akathisie 仏:akathisie

アカシジアは静座不能に対する自覚的な内的不穏症状と、身体の揺り動かし、足踏み、足の組み換えなどの客観的な運動亢進症状から成る病態の一群である。歴史的には精神症状の病態として報告が集積されてきたが、統合失調症に対して抗精神病薬が広く使用されるようになってからは、薬原性アカシジアの報告が多くなってきた。アカシジアの発症頻度は抗精神病薬を服用中の患者の5-70%と服用している薬剤の種類や用量、投与期間によってばらつきがみられる。アカシジアを引き起こす代表的な薬剤として抗精神病薬や小胞モノアミントランスポーター2阻害薬があげられる。中枢ドパミン神経系の阻害がアカシジアの主要な病態生理と考えられているが、他の作用機序の関与も想定されている。鑑別すべき病態として、不安・焦燥感・常同行動などの精神症状、むずむず脚症候群、遅発性ジスキネジアが挙げられる。薬原性アカシジアの治療は医薬品副作用に対する治療の大原則に沿って、原因薬剤の減量・中止や副作用のより少ない他の薬剤への変更を試みるが、それでも改善しない場合には、対照療法薬としてβ遮断薬、セロトニン5HT2A遮断薬、ベンゾジアゼピン系薬剤、抗コリン薬等が使用される。

Akathisia consists of subjective inner restlessness, such as awareness of the inability to remain seated, restless legs, fidgetiness, and the desire to move constantly, and of objective increased motor phenomena, such as body rocking, shifting from foot to foot, stamping in place, crossing and uncrossing legs, pacing around. Historically, akathisia has been reported as a psychiatric condition, but since the widespread use of antipsychotic drugs for schizophrenia, reports of drug-induced akathisia have increased. Its prevalence varies ranging from 5-70% depending on the dosage, duration, and the drug used. Drugs that typically cause akathisia include antipsychotics and vesicular monoamine transporter 2 inhibitors. Inhibition of the central dopaminergic nervous system is thought to be the primary pathophysiology of akathisia, although other mechanisms of action have also been postulated. Differentiating conditions include restless leg syndrome, tardive dyskinesia, and psychiatric symptoms such as anxiety, agitation, and stereotyped behaviors. The fundamental treatment for acute akathisia is the reduction or withdrawal of antipsychotic medication, then switching to medications with fewer development of akathisia. However, this is often not possible because of worsening mental conditions in psychiatric patients. For these cases, beta-adrenoceptor blockers, benzodiazepines, serotonin 2A receptor antagonists, and anticholinergic agents have been used for the treatment of this condition.

概念が誕生するまでの報告の歴史

 じっと座っていられないことに苦痛を感じる状態についての医学分野での記載は、1685年にWillisに始まり、1880年にBeardはその原因が神経衰弱にあると報告している。その後、1902年に Haškovec [1]1) がギリシャ語由来の「すわっていることができない」という意味の“Akathisie”という用語を用いて、ヒステリーまたは神経衰弱の症状としてこの病態を記載したことで、この病態に対して「アカシジア」という用語が定着するようになった。1904年にはRaymondJanetがこの症状を精神衰弱に関連づけた精神症状の病態像として報告している[2]。Bing & Sicard (1923)は脳炎後にパーキンソニズムを呈した患者に、精神症状として「アカシジア」がみられた患者を報告している[3]36)。その後、独語圏や仏語圏からもこの病態が脳炎後遺症嗜眠性脳炎の経過中にも発現することが報告され、1940年にWilsonは、この病態が脳炎後遺症やパーキンソン病の患者にもみられることに注意を喚起した[4]2)。一方、Ekbom(1945)は当初はアカシジアという用語は使っていないものの下肢限局性に内的不穏感を伴う症例を集積して、ムズムズ脚症候群として報告した[5][6]11,18)。

 薬原性アカシジアの記載はSigwaldら(1947)[7]に始まり、1950年代前半に抗精神病薬が導入されると基礎薬理学的に中枢ドパミン遮断作用を有する抗精神病薬の服用中にしばしばみられるようになり、薬原性錐体外路症状の一型として位置づけられるようになった[4]2)。

 このように、精神症状の病態像としての記述を語源としてアカシジアという用語が誕生し、その後の報告ではこの病態がさまざまな精神疾患・神経疾患でみられることが報告されてきたが、抗精神病薬の導入後は、薬剤性の錐体外路系副作用として頻繁にみられることから、この用語が広く用いられるようになった。ここでは抗精神病薬で発症する薬原性アカシジアについて述べる(表1)。

臨床診断

診断基準と下位分類

 DSM-5[8]28)における薬原性アカシジアは、遅発性アカシジア急性アカシジアに分けて記載され、急性アカシジアは薬剤の投与に関連して発症することと、代表的な臨床症状のいくつかを列記しているだけのごく簡潔な内容のみであったが、DSM-5TR[9]45)では臨床症状の補足的記述に加え、原因薬剤・有病率・鑑別疾患等の概略的な記載が追記されるようになった。アカシジアの診断にあたっては、上記の臨床症状が存在すること(症状診断)に加え、薬原性アカシジアではその原因薬剤を特定する必要がある。アカシジアは、その発症時期や経過により急性アカシジア、遅発性アカシジア、離脱性アカシジア慢性アカシジアに分類される(表3) [4][10][11]2,3,4)。

臨床症状

 主観的な内的不穏症状と客観的な運動亢進症状で構成される。主観的な自覚症状としては、静座不能に対する自覚、下肢のムズムズ感、ソワソワ感、絶えず動いていたいという衝動などの自覚的な内的不穏症状がみられ、「体や足がソワソワして、じっと座っていられない、横になっていられない、動きたくなる」、「じっとしておれず、歩きたくなる」、「体や足を動かしたくなる」、「足がムズムズする」、「じっと立っていられない」、「体が揺れる」、「足踏みしたくなる」などの訴えがみられ、重度になると不安焦燥感が顕著となり、苦痛に耐えられなくなると、自傷行為や自殺企図など危険な行為に及ぶことがあり注意を要する。自覚症状に伴って認められる客観的な運動亢進症状としては、身体の揺り動かし、下肢の振り回し、「貧乏揺すり」のような足踏み、足の組み換え、ウロウロ歩き、ベッド上での体動の繰り返しなどがみられる[12]14)。

評価尺度による重症度評価

 薬原性アカシジアの重症度評価に用いられるバーンズ・アカシジア尺度[13][14][15]8,9,39)は、客観症状、主観症状、主観症状に対する苦痛の3項目に、6段階評価の総括評価1項目を加えた計4項目で構成される。抗精神病薬による治療中にみられる副作用としての錐体外路症状の評価を行う際には、薬原性錐体外路症状評価尺度drug-induced extrapyramidal symptoms scale; DIEPSS)の個別重症度評価8項目のうちの1項目としてアカシジアの重症度評価が行われる[16][17][18]10,15,40)。

 表4はDIEPSSによるアカシジアの重症度評価と評価診断面接のポイント、および面接における典型的な患者の回答例を示したものである[11]4)。アカシジアの評価にあたっては自覚症状の程度を優先して評価し、運動亢進症状は、主観症状を支持する所見として用いることが原則である。アカシジアに特徴的な運動不穏の症状が顕著に認められても、内的不穏の自覚がない場合には、仮性アカシジアの位置づけとなる[16][18]10,40)。

鑑別疾患

 不安焦燥感常同行動などの精神症状の悪化、ムズムズ脚症候群遅発性ジスキネジアなどがしばしば鑑別すべき病態として取りあげられる[19][20]13,16)。

不安・焦燥感・常同行動などの精神症状

 アカシジアの運動亢進症状は、横断的な観察ではしばしば原疾患の精神症状の悪化や常同行動、不安・焦燥などの症状と鑑別が困難なことがある。精神症状の悪化と誤診され、抗精神病薬が増量されるとアカシジアの症状はますます悪化することから、これらの精神症状との鑑別は、抗精神病薬の増量あるいは減量を行い、縦断的に状態像の変化を観察することで判別が可能である。すなわち、不安・焦燥感などの精神症状は抗精神病薬の増量で軽減するのに対し、アカシジアは抗精神病薬の減量で改善・消失する。

 近年、抗うつ薬による中枢神経刺激様症状として不安、易刺激性軽躁、焦燥、敵意パニック発作、衝動性、不眠等を呈するActivation症候群自殺関連事象として注目されているが、Activation症状群では、歩き回らずにはいられないといった運動亢進への自覚はそれほど強くなく、またβ遮断薬が有効ではない点でも薬原性アカシジアとの鑑別は可能である。

ムズムズ脚症候群

 ムズムズ脚症候群(restless-leg syndrom, RLS)[5][17]11,15)とアカシジアはいずれも内的不穏症状と下肢の運動亢進症状という症候学的類似性から、両者の異同はしばしば鑑別診断に挙げられる。八木ら(1991)[4]2)は、広義のアカシジア概念のなかに、神経症性アカシジア下肢限局性アカシジア(ムズムズ脚症候群)、薬原性アカシジアが含まれるとし、特発性ムズムズ脚症候群と薬原性アカシジアは、広義のアカシジア概念の中に棲み分けられている。類似の臨床症状を呈する両者は同様の病態生理が考えられているが、抗精神病薬等で発症する薬原性アカシジアを狭義のアカシジアと捉え、広義のアカシジアに含まれる特発性のムズムズ脚症候群との鑑別がしばしば論じられている[21][22]30,31)。抗精神病薬服用患者の約3%は疫学的にムズムズ脚症候群素因者であると見積もられており、特発性ムズムズ脚症候群でしばしば認められる血清鉄値の低下は薬原性アカシジアの危険因子と考えられている。特発性ムズムズ脚症候群では下肢の異常感覚が一次症状としてあり、症状は夜間就床時の眠気とともに発現し、入眠困難をきたすといった特徴があるのに対して、薬原性アカシジアは日中の起きている時間に症状が増強し、「動きたい」という強い衝動が一次症状である点が異なる。抗精神病薬惹起性のアカシジアでは他の薬原性錐体外路症状と同様に睡眠中にはみられない[23]5)。

遅発性ジスキネジア

 アカシジアの自覚症状がみられなくなり、下肢の運動亢進症状だけが目立つようなケースは、しばしば遅発性ジスキネジアへの移行例として報告される[24]12)。抗精神病薬の長期投与に関連して発症する遅発性ジスキネジアは、顔面、口部、舌、顎、四肢、躯幹等に出現する他覚的に無目的で不規則な異常不随意運動である。下肢や躯幹に運動亢進症状がみられるアカシジアでは内的不穏症状を訴えるのに対し、遅発性ジスキネジアにみられる下肢や躯幹の異常不随意運動には内的不穏の自覚がないことから鑑別が可能である。

原因薬剤と発症頻度

原因薬剤

 薬原性アカシジアは抗精神病薬による発症が大多数を占めるものの、さまざまな医薬品で報告がみられる(表2[4][10][12][17][20]2,3,14-16)。最近では選択的セロトニン再取り込み阻害薬SSRI)などドパミン遮断作用を有しない薬剤での報告もみられ、このほか一般診療で使用される制吐薬胃腸薬なども含め、アカシジアを起こしうる医薬品は多岐にわたる。

発症頻度

 薬原性アカシジアの発症頻度は、服用している薬剤の種類・用量・投与期間や対象となる患者集団などによって異なり、ドパミン遮断薬服用中の患者の20-75%[25]45), 抗精神病薬を服用中の患者の5-50% [26]38)、定型抗精神病薬服用中の患者の20-40%[17][20]15, 16)、第2世代抗精神病薬を服用中の患者の2.9-13.0% [27]48)、10-30%[25]25)にみられると報告されているが、用量依存性に発現頻度が高くなるため、大量投与時には誰にでも起こり得る危険性のある副作用である。

 近年は統合失調症の薬物療法においては錐体外路症状の発現率が低い非定型抗精神病薬の投与が主流となっているが、これらの薬剤は、中枢ドパミン神経系のレベルが低いとされる気分障害圏の患者に対しても適応拡大されて広く使用されるようになり、発症頻度はそれほど低下していないと指摘されている[28]6)。また、患者が副作用ではなく精神症状と取り違える場合もあり、過小診断を危惧する報告もみられる[23]5)。わが国での長期試験における非定型抗精神病薬によるアカシジアの発症率は、リスペリドンが22.9%、ペロスピロンが40%、クエチアピンが5.2%、オランザピンが17.6%、ブレクスピプラゾールが7.8%である[10]3)。アリピプラゾールは対象疾患によって用量の違いもあり、統合失調症患者で11.7%、双極性気分障害躁病エピソード患者で30.2%、うつ病患者で28.1%と添付文書に記されており、気分障害群の疾患での発現頻度は高くなっている。小胞モノアミントランスポーター2VMAT2)阻害剤での添付文書に記載のアカシジアの発症頻度は、バルベナジンが6.8%、テトラベナジンが20.0%(米国で実施された非盲検非対照長期投与試験)である。

病態生理

 薬原性アカシジアの病態生理については、原因薬剤や治療効果のある薬剤の薬理学的機序から様々な神経系の関与が想定されている[29][19][17][20][30]7,13,15,16,,35)。

中脳辺縁系・中脳皮質系のドパミン機能低下

 薬原性アカシジアは薬原性錐体外路症状の1型として位置づけられており、その大多数がドパミン神経系を遮断する抗精神病薬の投与と関連して発現し、その減量・中止により症状は軽減ないし消失することから、中枢ドパミン神経系の機能低下がアカシジア発症の主たる要因と考えられている。急性期に発現する薬原性錐体外路症状に対しては、ドパミン・アセチルコリン不均衡仮説に基づいて抗コリン薬による治療が行われ、その有効性は80~90%と高いのに対して、アカシジアに対する抗コリン薬の反応性は50%程度と、他の薬原性パーキンソニズムに対する80~90%の有効性に比べると明らかに低いことから[23]5)、黒質線条体系の機能低下が想定されているパーキンソン症状とは異なり、中脳辺縁系中脳皮質系の機能低下がアカシジアの発症に関与していると想定されている。パーキンソン病の運動減退症状とアカシジアの運動亢進症状の併発があること、またパーキンソン病等の運動減退症状とは異なり、アカシジアでは客観的な運動亢進症状が認められることに加え、主観的な内的不隠症状も有していることから、パーキンソン病の発症機序と考えられている黒質線条体系のドパミン神経機能の低下以外にも、中脳辺縁系や中脳皮質系のドパミン神経系の低下がアカシジアの発症機序に関与していると想定されている。

セロトニン神経系(5-HT2A 受容体)の機能亢進

 選択的セロトニン再取り込み阻害薬でアカシジアの発症例が報告されていること、セロトニン5-HT2A受容体遮断作用を有する非定型抗精神病薬では薬原性錐体外路症状の発現頻度が低いこと、またセロトニン5-HT2A受容体遮断作用を有する抗うつ薬の一群がアカシジアの治療に有効であることから、アカシジアの発症要因にセロトニン5-HT2A 受容体の機能亢進が想定されている[31][32][33][34]19, 21, 37, 43)。セロトニン神経系5-HT2A受容体の機能亢進が、腹側被蓋野から中脳辺縁系と中脳皮質系のドパミン神経系に対して抑制的に働くことでアカシジアが発症すると考えられている。

γアミノ酪酸神経系の機能低下

 γアミノ酪酸 (GABA)作動薬であるジアゼパムロラゼパムなどのベンゾジアゼピン系薬剤がアカシジアの症状を軽減することから、アカシジアの発症にGABA神経系の機能低下が想定されている[29]7)。

ノルアドレナリン系の機能亢進

 プロプラノロールなどのβ遮断薬がアカシジアの治療に有効であること、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬でアカシジアの発症例がみられること、アカシジア患者において単核白血球上のβ2受容体密度の高くなっているという報告がみられること等の知見から、中枢あるいは末梢におけるノルアドレナリン系の機能亢進がアカシジアの発症に関与していると考えられている[29]7)。

鉄欠乏

 血清鉄の低下がドパミン受容体機能の低下を引き起こしアカシジアが発症するという仮説であり、症候学的に類似性の高いムズムズ脚症候群の患者に鉄欠乏性貧血がしばしば併発していることやドパミンD2受容体に鉄が含まれていることなどから想定された[35][36]32,33)。鉄欠乏はアカシジア発症の危険因子だという見方もある。

治療

医薬品副作用に対する治療の大原則

 薬原性アカシジアに対しては、米国、カナダ、オセアニア、日本等で公表されているアカシジアの治療ガイドラインにおいて最初に行うべき治療アプローチとして、医薬品副作用に対する治療の大原則に基づいて、原因と考えられる薬剤の必要性についての再検討を行い、可能な限り減量・中止を試みることから検討を始めることが推奨されている。統合失調症患者では、アカシジアの原因となった抗精神病薬の減量に伴い、精神病症状が再燃した場合には、定型抗精神病薬が使われていた患者に対しては非定型抗精神病薬に切り換えるなど、錐体外路症状の出現頻度がより少ない薬剤への切り替えを試みる。ドンペリドンメトクロプラミドなどドパミン遮断作用が強い制吐剤で発現した場合には、モサプリド等の非ドパミン系制吐剤への切り替えを検討する。

薬原性アカシジアに対する治療薬

 抗精神病薬の調整だけでアカシジアの症状がうまく軽減できない場合には、有効性が確立されている治療薬を対症療法的に投与する[31][37]19,20)。対症療法的に行われる治療薬としては、β遮断薬(プロプラノロール、カルテオロール)、中枢性抗コリン薬(ビペリデントリヘキシフェニジル)、ベンゾジアゼピン系薬剤(ジアゼパム、クロナゼパム)、セロトニン5-HT2A受容体遮断薬(ミアンセリンシプロヘプタジンミルタザピントラゾドン)、クロニジン等の薬剤が推奨されている[11][19][37]4,13,20)。抗ヒスタミン作用を有する抗パーキンソン薬で、薬剤性パーキンソニズムの治療に広く用いられるプロメタジンは、アカシジアへの治療適応はなく、ムズムズ脚症候群に対しては症状を増悪させることがある[17]15)。

β遮断薬

 プロプラノロールは脂溶性が高いβ遮断薬であり、Limaらの系統的レビュー[38]49)ではアカシジアに対するβ遮断薬の有用性については結論を出すにはエビデンスが不十分であったが、米国[25]25)、カナダ[39]29)、英国[40][41]44, 46)等の主要な治療ガイドラインでは、アカシジアに対する対症療法として薬物療法を行う際には第1選択薬として取り上げられている。初期の臨床試験では炭酸リチウム誘発性振戦に対する有効性も認められたが、薬原性パーキンソニズムや遅発性ジスキネジアには効果がないこと[42]22)から、アカシジアに対する選択的な治療薬と位置づけられている。アカシジアと他の錐体外路系副作用が併発している患者では、抗コリン性パーキンソン薬を先行して使用することを推奨する[43]23)見解もある。

ベンゾジアゼピン系薬剤

 ロラゼパム(1~3mg/日)、クロナゼパム(0.5~3mg/日)、ジアゼパム(5~15mg/日)などのベンゾジアゼピン系薬剤がアカシジアに対する対症療法的治療薬の1つとして各種ガイドラインで推奨されている。質の高い系統的レビューでは、薬原性アカシジアに対するベンゾジアゼピンの有用性は確認されたが、包括基準を満たした研究は2報のみで対象患者は27名でしかなかった[25]25)。アカシジアに対するベンゾジアゼピン系薬剤の有効性は,アカシジアの病態に特異的に対処する効果というよりも、むしろ一般的な鎮静・抗不安作用による対症療法的な症状緩和によるものと考えられている[26]38)。

セロトニン2A受容体遮断薬

 セロトニン2A受容体遮断薬(ミアンセリン、シプロヘプタジン、トラゾドン、ミルタザピン)が、アカシジアの治療薬として近年、注目されつつある[17][31][32][33][34]15,19,21,37, 43)。モーズレイ処方ガイドラインでは、第11版(2012)から、抗コリン薬の選択順位が2つ下げられた第12版(2015)[40]44)以降、最新の第14版(2021)[41]46)においてもβ遮断薬の次に少量のミルタザピン(15mg/日)やミアンセリン(30mg/日)が位置づけられるようになっている。

抗コリン薬

 抗コリン性抗パーキンソン薬は、海外ではベンズトロピンが使われているが、わが国ではビペリデンやトリヘキシフェニジルが広く使用されている。抗コリン薬の薬原性錐体外路症状に対する有効率は、パーキンソン症状に対しては80~90%あるのに対して、アカシジアに対しては50%程度と低いこと[19][20]13,16)、抗精神病薬誘発性アカシジアに対して、プラセボと比較して抗コリン薬の有用性を支持できる信頼できるエビデンスが存在しないこと[44]42)から、米国(2021)[9]425)およびカナダ(2005) [39]29)のガイドラインでは抗コリン薬の使用を推奨していない。モーズレイ処方ガイドラインでは、第12版から推奨順位を2つ下げて、掲載している。アカシジアに対する有効性のエビデンスは限られているものの、「他の錐体外路症状が併発する例では効くかもしれない。」としている。

その他の薬剤

 その他の薬剤としては、ビタミンB6アマンタジンアポモルヒネクロニジンガバペンチンプレガバリン等の薬剤で、薬原性アカシジアに対する臨床試験が行われている[45]47)。

 A型インフルエンザウィルス感染症治療薬としても用いられるアマンタジンは、神経末端からのドパミン放出促進や再取り込み阻害によって錐体外路系副作用を軽減すると考えられている[46]24)。抗コリン作用のない錐体外路症状治療薬で、効果の発現までに1週間程度を要し[47]26)、その後作用は4週間持続する[48]27)。理論的には精神病症状を悪化させる危険性もあり注意を要する。

関連項目

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