「アダプタータンパク質複合体」の版間の差分

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== AP-3 ==
== AP-3 ==
=== 機能 ===
=== 機能 ===
AP-3はエンドソームからリソソームヘの輸送を制御するアダプタータンパク質複合体である<ref name=Robinson2004><pubmed>15066634</pubmed></ref> 。in vitroではクラスリンに結合することが報告されている<ref name=Dell'Angelica1998><pubmed>9545220</pubmed></ref> が、この結合と実際の小胞輸送との関連性は明らかではなく<ref name=Peden2002><pubmed>11807095</pubmed></ref> 、むしろAP-3はVPS41とも結合し、これが小胞輸送に重要であるとの報告がなされている<ref name=Asensio2013><pubmed>24210660</pubmed></ref> 。AP-3はホスファチジルイノシトール3リン酸に対する結合能を有しており<ref name=Baust2008><pubmed>18287518</pubmed></ref> 、これによりエンドソームに集積すると考えられる。AP-3が認識する積荷タンパク質の輸送シグナルはAP-1およびAP-2の認識配列と同様のアミノ酸配列である<ref name=Bonifacino2003><pubmed>12651740</pubmed></ref> 。神経細胞のシナプス後部においては、AP-3はAP-2と同様にAMPA受容体の副サブユニットであるTARPとリン酸化依存的に結合しAMPA受容体-TARP複合体をリソソームヘと輸送することで、長期抑圧の誘導に必須の役割を果たしていると考えられている<ref name=Matsuda2013><pubmed>24217640</pubmed></ref> 。またシナプス前部において、シナプス小胞前駆体からのシナプス小胞の形成に寄与<ref name=Nakatsu2004><pubmed>15492041</pubmed></ref> すると共に、神経ペプチドの有芯小胞への輸送<ref name=Asensio2010><pubmed>21149569</pubmed></ref> 、さらに線虫では軸索へのタンパク質輸送も司っていることが報告されている<ref name=Li2016><pubmed>27151641</pubmed></ref> 。
 AP-3はエンドソームからリソソームヘの輸送を制御するアダプタータンパク質複合体である<ref name=Robinson2004><pubmed>15066634</pubmed></ref> 。in vitroではクラスリンに結合することが報告されている<ref name=Dell'Angelica1998><pubmed>9545220</pubmed></ref> が、この結合と実際の小胞輸送との関連性は明らかではなく<ref name=Peden2002><pubmed>11807095</pubmed></ref> 、むしろAP-3はVPS41とも結合し、これが小胞輸送に重要であるとの報告がなされている<ref name=Asensio2013><pubmed>24210660</pubmed></ref> 。AP-3はホスファチジルイノシトール3リン酸に対する結合能を有しており<ref name=Baust2008><pubmed>18287518</pubmed></ref> 、これによりエンドソームに集積すると考えられる。AP-3が認識する積荷タンパク質の輸送シグナルはAP-1およびAP-2の認識配列と同様のアミノ酸配列である<ref name=Bonifacino2003><pubmed>12651740</pubmed></ref> 。神経細胞のシナプス後部においては、AP-3はAP-2と同様にAMPA受容体の副サブユニットであるTARPとリン酸化依存的に結合しAMPA受容体-TARP複合体をリソソームヘと輸送することで、長期抑圧の誘導に必須の役割を果たしていると考えられている<ref name=Matsuda2013><pubmed>24217640</pubmed></ref> 。またシナプス前部において、シナプス小胞前駆体からのシナプス小胞の形成に寄与<ref name=Nakatsu2004><pubmed>15492041</pubmed></ref> すると共に、神経ペプチドの有芯小胞への輸送<ref name=Asensio2010><pubmed>21149569</pubmed></ref> 、さらに線虫では軸索へのタンパク質輸送も司っていることが報告されている<ref name=Li2016><pubmed>27151641</pubmed></ref> 。
=== サブユニット構造 ===
=== サブユニット構造 ===
AP-3も2つのlarge subunit (&beta;3と)、1つのmedium subunit (&mu;3)、1つのsmall subunit (&sigma;3)からなっている<ref name=Robinson2001><pubmed>11454451</pubmed></ref> 。&beta;サブユニットと&mu;サブユニットにはそれぞれ脳特異的な&beta;と&mu;3Bサブユニットが存在する<ref name=Guardia2018><pubmed>29558740</pubmed></ref> 。
 AP-3も2つのlarge subunit (&beta;3と&delta;)、1つのmedium subunit (&mu;3)、1つのsmall subunit (&sigma;3)からなっている<ref name=Robinson2001><pubmed>11454451</pubmed></ref> 。&beta;サブユニットと&mu;サブユニットにはそれぞれ脳特異的な&beta;3Bと&mu;3Bサブユニットが存在する<ref name=Guardia2018><pubmed>29558740</pubmed></ref> 。
=== 疾患との関連 ===
=== 疾患との関連 ===
 サブユニットの欠損により10型Hermansky-Pudlak症候群が引き起こされることが報告されている<ref name=Ammann2016><pubmed>26744459</pubmed></ref> 。この疾患は重篤な神経発達遅延、小頭症、てんかん、聴覚異常、終脳萎縮といった症状を示す。また &beta;サブユニットの欠損により2型Hermansky-Pudlak症候群が引き起こされる<ref name=Dell'Angelica1999><pubmed>10024875</pubmed></ref> 。この疾患での神経発達遅延は軽微である。一方、脳特異的な&beta;3Bの欠損では早期発症型てんかん性脳症(EOEE)が発症し、重篤な神経発達遅延、知的障害、てんかん、視神経萎縮症などの症状が現れる<ref name=Assoum2016><pubmed>27889060</pubmed></ref> 。
 &delta;サブユニットの欠損により10型Hermansky-Pudlak症候群が引き起こされることが報告されている<ref name=Ammann2016><pubmed>26744459</pubmed></ref> 。この疾患は重篤な神経発達遅延、小頭症、てんかん、聴覚異常、終脳萎縮といった症状を示す。また &beta;3Aサブユニットの欠損により2型Hermansky-Pudlak症候群が引き起こされる<ref name=Dell'Angelica1999><pubmed>10024875</pubmed></ref> 。この疾患での神経発達遅延は軽微である。一方、脳特異的な&beta;3Bの欠損では早期発症型てんかん性脳症(EOEE)が発症し、重篤な神経発達遅延、知的障害、てんかん、視神経萎縮症などの症状が現れる<ref name=Assoum2016><pubmed>27889060</pubmed></ref> 。
 
== AP-4 ==
== AP-4 ==
=== 機能 ===
=== 機能 ===