「アフリカツメガエル」の版間の差分

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 mRNAの顕微注入による機能評価が可能であることから、1990年代には移植実験の代わりにmRNAを腹側の[[wikipedia:ja:割球|割球]]にだけ注入するという実験が行われ、[[骨形成タンパク質]](bone moephogenetic protein, BMP)シグナルを遮断する[[ドミナントネガティブ]]受容体やオーガナイザー領域で発現する[[BMP活性阻害因子]]([[ノギン]]、[[コーディン]]、[[フォリスタチン]])がオーガナイザー同様に2次軸形成能をもつことが明らかにされ、神経誘導活性をもつオーガナイザー因子の存在が分子同定によって明らかになった。
 mRNAの顕微注入による機能評価が可能であることから、1990年代には移植実験の代わりにmRNAを腹側の[[wikipedia:ja:割球|割球]]にだけ注入するという実験が行われ、[[骨形成タンパク質]](bone moephogenetic protein, BMP)シグナルを遮断する[[ドミナントネガティブ]]受容体やオーガナイザー領域で発現する[[BMP活性阻害因子]]([[ノギン]]、[[コーディン]]、[[フォリスタチン]])がオーガナイザー同様に2次軸形成能をもつことが明らかにされ、神経誘導活性をもつオーガナイザー因子の存在が分子同定によって明らかになった。


 [[wikipedia:ja:胞胚期|胞胚期]]の[[動物極]]側細胞集団([[アニマルキャップ]])は誘導因子の非存在下では[[表皮]]分化するが、解離して培養すると神経に分化することも知られていた。現在、アニマルキャップに存在するBMPが神経分化を抑制しており、その除去または活性阻害により神経分化が進むと解釈されている。このようにアフリカツメガエルは簡便な神経分化の評価系として有効である。
 [[wikipedia:ja:胞胚期|胞胚期]]の[[動物極]]側細胞集団([[アニマルキャップ]])は誘導因子の非存在下では[[wikipedia:ja表皮|表皮]]分化するが、解離して培養すると神経に分化することも知られていた。現在、アニマルキャップに存在するBMPが神経分化を抑制しており、その除去または活性阻害により神経分化が進むと解釈されている。このようにアフリカツメガエルは簡便な神経分化の評価系として有効である。


また、アフリカツメガエルは母胎外で発生するため、中枢神経系の初期形態形成を実体顕微鏡下で直接観察できるという大きな利点がある。過剰発現による機能亢進、機能阻害を用いて、とくに神経管形成のしくみを細胞レベルで明らかにするために非常に適したモデル生物であり、神経管閉鎖不全などの病因・病態解明に寄与している。
また、アフリカツメガエルは母胎外で発生するため、中枢神経系の初期形態形成を実体顕微鏡下で直接観察できるという大きな利点がある。過剰発現による機能亢進、機能阻害を用いて、とくに神経管形成のしくみを細胞レベルで明らかにするために非常に適したモデル生物であり、神経管閉鎖不全などの病因・病態解明に寄与している。