「アルコール依存症」の版間の差分

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 そこで、現在は[[中間表現型]]とそれに関わる遺伝子の[[検索]]を探す試みが行われるようになってきている。アルコール依存症の中間表現型には、合併精神疾患、アルコール代謝酵素の[[遺伝子型]]、[[性格傾向]]([[反社会性]]、[[衝動性]]、[[新奇希求性]]など)、アルコールに対する反応などが提唱されている。なかでもアルコールに対する反応については、アルコールに対する反応が弱いことがアルコール依存症のリスクを高めるという実験がある。この実験は、飲酒実験をしたときの酔いの強さをアルコール依存症の[[wj:家族歴|家族歴]]の有無で比較したもので、家族歴があって依存症のリスクが高いと考えられる被験者は家族歴のない被験者と比較して酔いの強度が低いことから提唱されている<ref><pubmed>6466047</pubmed></ref>。リスクの高い者は酔った感じが弱いので多量に飲酒し、飲酒時に感じられるはずの危険信号にも鈍感なのでそのまま飲み続けるのではないかと考えられた。
 そこで、現在は[[中間表現型]]とそれに関わる遺伝子の[[検索]]を探す試みが行われるようになってきている。アルコール依存症の中間表現型には、合併精神疾患、アルコール代謝酵素の[[遺伝子型]]、[[性格傾向]]([[反社会性]]、[[衝動性]]、[[新奇希求性]]など)、アルコールに対する反応などが提唱されている。なかでもアルコールに対する反応については、アルコールに対する反応が弱いことがアルコール依存症のリスクを高めるという実験がある。この実験は、飲酒実験をしたときの酔いの強さをアルコール依存症の[[wj:家族歴|家族歴]]の有無で比較したもので、家族歴があって依存症のリスクが高いと考えられる被験者は家族歴のない被験者と比較して酔いの強度が低いことから提唱されている<ref><pubmed>6466047</pubmed></ref>。リスクの高い者は酔った感じが弱いので多量に飲酒し、飲酒時に感じられるはずの危険信号にも鈍感なのでそのまま飲み続けるのではないかと考えられた。


 このような、アルコールの反応の弱さに相関するいくつかの候補遺伝子が報告されている。[[GABAA受容体|&gamma;-アミノ酪酸(GABA)<sub>A</sub>受容体]]の中の[[GABAAα2]]サブユニットは五量体(α2β1γ1)を形成し、[[中脳]]辺縁[[ドーパミン]]神経の[[報酬経路]]に存在し、[[GABRA2]]遺伝子によってコードされる。この[[遺伝子多型]]とアルコール使用障害やアルコールの効果に関する相関研究によって、GABRA2のマイナーな遺伝子多型がアルコールに対して反応が弱いことと相関すると報告されている<ref name=ref25307600><pubmed>25307600</pubmed></ref>。  
 このような、アルコールの反応の弱さに相関するいくつかの候補遺伝子が報告されている。[[GABAA受容体|&gamma;-アミノ酪酸(GABA)<sub>A</sub>受容体]]の中の[[GABAAα2]]サブユニットは五量体(α2β1γ1)を形成し、[[中脳]]辺縁[[ドーパミン]]神経の[[報酬経路]]に存在し、[[GABRA2]]遺伝子によってコードされる。この[[遺伝子多型]]とアルコール使用障害やアルコールの効果に関する関連研究によって、GABRA2のマイナーな遺伝子多型がアルコールに対して反応が弱いことと相関すると報告されている<ref name=ref25307600><pubmed>25307600</pubmed></ref>。  


 一方、[[オピオイド]][[μ1受容体]]の遺伝子([[OPRM1]])はアルコール使用障害に相関する遺伝子のひとつであり、[[βエンドルフィン]]や[[μオピオイド受容体]]がアルコールの報酬・強化効果に重要な役割を果たしていることから注目を集めている。OPRM1遺伝子の多型が飲酒時のドーパミンの放出に関わり、アルコールへの反応を調節している可能性が示唆されている<ref name=ref25307600 />。
 一方、[[オピオイド]][[μ1受容体]]の遺伝子([[OPRM1]])はアルコール使用障害に相関する遺伝子のひとつであり、[[βエンドルフィン]]や[[μオピオイド受容体]]がアルコールの報酬・強化効果に重要な役割を果たしていることから注目を集めている。OPRM1遺伝子の多型が飲酒時のドーパミンの放出に関わり、アルコールへの反応を調節している可能性が示唆されている<ref name=ref25307600 />。