「オレキシン」の版間の差分

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<font size="+1">[http://researchmap.jp/read0062138 櫻井 武]</font><br>
''金沢大学 医薬保健研究域 医学系 医薬保健研究域 医学系''<br>
DOI XXXX/XXXX 原稿受付日:2012年2月28日 原稿完成日:2013年8月12日<br>
担当編集委員:[http://researchmap.jp/2rikenbsi 林 康紀](独立行政法人理化学研究所 脳科学総合研究センター)<br>
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同義語:ヒポクレチン (hypocretin)
同義語:ヒポクレチン (hypocretin)


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 オレキシンを産生するニューロンは[[摂食中枢]]として知られる[[視床下部]]外側野に限局して存在し、[[wikipedia:ja:ラット|ラット]]や[[wikipedia:ja:マウス|マウス]]に[[脳室]]内投与すると摂食量が上昇することや、絶食によって発現が亢進することなどから、当初、オレキシンは[[摂食行動]]の制御因子の一つとして注目を浴びた。その後、オレキシンやその[[受容体]]の変異動物モデルの解析、および臨床的研究によりオレキシン産生ニューロンの変性・脱落が[[ナルコレプシー]]の原因であることが明らかになり、この物質が[[覚醒]]の維持にも重要な役割を担っていることが明らかになった。さらに、各種[[遺伝子改変マウス]]の解析によるオレキシン産生ニューロンの入出力系の解明により、[[大脳辺縁系]]、摂食行動の制御系、覚醒制御システムとの相互の関係が明らかになってきた。オレキシン系は[[睡眠]]・覚醒調節機構の重要な要素であるだけでなく、[[情動]]やエネルギーバランスに応じ、睡眠・覚醒や[[報酬系]]そして摂食行動を適切に制御する統合的な機能を担っていると考えられている。
 オレキシンを産生するニューロンは[[摂食中枢]]として知られる[[視床下部]]外側野に限局して存在し、[[wikipedia:ja:ラット|ラット]]や[[wikipedia:ja:マウス|マウス]]に[[脳室]]内投与すると摂食量が上昇することや、絶食によって発現が亢進することなどから、当初、オレキシンは[[摂食行動]]の制御因子の一つとして注目を浴びた。その後、オレキシンやその[[受容体]]の変異動物モデルの解析、および臨床的研究によりオレキシン産生ニューロンの変性・脱落が[[ナルコレプシー]]の原因であることが明らかになり、この物質が[[覚醒]]の維持にも重要な役割を担っていることが明らかになった。さらに、各種[[遺伝子改変マウス]]の解析によるオレキシン産生ニューロンの入出力系の解明により、[[大脳辺縁系]]、摂食行動の制御系、覚醒制御システムとの相互の関係が明らかになってきた。オレキシン系は[[睡眠]]・覚醒調節機構の重要な要素であるだけでなく、[[情動]]やエネルギーバランスに応じ、睡眠・覚醒や[[報酬系]]そして摂食行動を適切に制御する統合的な機能を担っていると考えられている。
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==オレキシンとは==
==オレキシンとは==
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== 参考文献 ==
== 参考文献 ==
<references />
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(執筆者:櫻井武 担当編集委員:尾藤晴彦)