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<font size="+1">[http://researchmap.jp/read0184423 仲村 春和]</font><br> | <font size="+1">[http://researchmap.jp/read0184423 仲村 春和]</font><br> | ||
''東北大学''<br> | ''東北大学''<br> | ||
DOI:<selfdoi /> 原稿受付日:2014年1月9日 原稿完成日:2014年1月9日<br> | |||
担当編集委員:[http://researchmap.jp/fujiomurakami 村上 富士夫](大阪大学 大学院生命機能研究科)<br> | 担当編集委員:[http://researchmap.jp/fujiomurakami 村上 富士夫](大阪大学 大学院生命機能研究科)<br> | ||
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[[image:オーガナイザー1.jpg|thumb|300px|'''図1.SpemannとMangoldによるオーガナイザー発見の実験'''<br>(a) | [[image:オーガナイザー1.jpg|thumb|300px|'''図1.SpemannとMangoldによるオーガナイザー発見の実験'''<br>(a) 原腸形成期のドナーイモリ胚を背側から見た図<br>(b) 同じ胚の断面図<br>(c) ホストとなるイモリ胚の断面図<br>(d) 移植の結果の側面図<br>(e) 同断面図<br>原口背唇部(赤色で示す)を原腸形成期のドナーイモリ胚から切り取り(a,b)、同じ発生段階にある別の(ホスト)イモリ胚の腹側部(c)に移植する。成長すると二次胚が誘導され、移植された原口背唇部は神経管、脊索などに分化した。このような移植の際は移植片を識別する必要があるので、色素をもつイモリ Triturus teaniatus がドナー、色素のないイモリ Triturus cristatus がホストとして用いられた。]] | ||
[[image:オーガナイザー2.jpg|thumb|300px|'''図2.神経誘導の模式図'''<br>(a)原腸形成期に原口背唇部から神経誘導分子が分泌され、神経誘導が起こって神経板(赤色)が形成される。<BR>(b)初期原腸形成期の胚における神経誘導の模式図。コーディン、ノギンなど神経誘導分子はBMPの阻害因子であり、BMPと結合してBMPが受容体(TGFβ受容体)と結合するのを阻害する。BMPシグナルが働くと外胚葉は表皮外胚葉へと分化し、BMPシグナルが働かないと神経板へと分化する。すなわち外胚葉のデフォルト型は神経系である。]] | [[image:オーガナイザー2.jpg|thumb|300px|'''図2.神経誘導の模式図'''<br>(a) 原腸形成期に原口背唇部から神経誘導分子が分泌され、神経誘導が起こって神経板(赤色)が形成される。<BR>(b) 初期原腸形成期の胚における神経誘導の模式図。コーディン、ノギンなど神経誘導分子はBMPの阻害因子であり、BMPと結合してBMPが受容体(TGFβ受容体)と結合するのを阻害する。BMPシグナルが働くと外胚葉は表皮外胚葉へと分化し、BMPシグナルが働かないと神経板へと分化する。すなわち外胚葉のデフォルト型は神経系である。]] | ||
[[image:オーガナイザー3.jpg|thumb|300px|'''図3''']] | [[image:オーガナイザー3.jpg|thumb|300px|'''図3''']] | ||
== シュペーマンオーガナイザー == | == シュペーマンオーガナイザー == | ||
20世紀初頭に[[wikipedia:Hans Spemann|Spemann]]と[[wikipedia:Hilde Mangold|Mangold]]が、[[wikipedia:ja:原腸胚形成期|原腸胚形成期]]の[[wikipedia:ja:イモリ|イモリ]]の[[ | 20世紀初頭に[[wikipedia:Hans Spemann|Spemann]]と[[wikipedia:Hilde Mangold|Mangold]]が、[[wikipedia:ja:原腸胚形成期|原腸胚形成期]]の[[wikipedia:ja:イモリ|イモリ]]の[[原口背唇部]]を別の胚の腹側部に移植すると、2次胚が形成されることから、原口背唇部をオーガナイザーと名付けた(図1)。このオーガナイザーの働きは[[wikipedia:ja:中胚葉|中胚葉]]と[[神経系]]を誘導するもので、これを[[一次誘導]]と呼ぶ。オーガナイザーは神経を誘導するが、それ自身は[[脊索]]に[[分化]]する。そこで、オーガナイザー自身も誘導されたもので、その上流に中胚葉を誘導する部域があることが[[アフリカツメガエル]]胚を使って[[wikipedia:Pieter Nieuwkoop|Nieuwkoop]]により示された([[Nieuwkoop center]]、[[ニユーコープセンター]])。Nieuwkoopセンターは構造的にこれといってわかるものではないが、オーガナイザーはすべての脊椎動物で形態的に識別できる。[[wikipedia:ja:両生類|両生類]]では原口背唇、[[wikipedia:ja:魚類|魚類]]では[[wikipedia:ja:胚楯|胚楯]](はいじゅん、embryonic shield)、[[wikipedia:ja:ニワトリ|ニワトリ]]では[[wikipedia:ja:ヘンゼン結節|ヘンゼン結節]](Hensen's node)、[[マウス]]では[[結節]](node)、[[ヒト]]では[[原始結節]](primitive node)である。 | ||
一次誘導に働くオーガナイザーの本態は何かということは20世紀の末まで未解決であった。幅広い動物の組織のみならず、熱処理等により死んだ組織、また[[wikipedia:ja:メチレンブルー|メチレンブルー]]のような化学物質までが二次胚を誘導することができた。しかし、このオーガナイザーの発見とその後の研究により、生物の発生を支配するのは[[wikipedia:ja:生気論|生気論]]的なものではなく、体を作る化学シグナルが存在するということが明らかとなり、[[エピジェネティック]]という概念が生まれた。発生学でのエピジェネティックとは発生の過程で細胞の運命は最初から決まっているのではなく、何らかの物質が働いて、胚の細胞の運命が決まるというものである。 | 一次誘導に働くオーガナイザーの本態は何かということは20世紀の末まで未解決であった。幅広い動物の組織のみならず、熱処理等により死んだ組織、また[[wikipedia:ja:メチレンブルー|メチレンブルー]]のような化学物質までが二次胚を誘導することができた。しかし、このオーガナイザーの発見とその後の研究により、生物の発生を支配するのは[[wikipedia:ja:生気論|生気論]]的なものではなく、体を作る化学シグナルが存在するということが明らかとなり、[[エピジェネティック]]という概念が生まれた。発生学でのエピジェネティックとは発生の過程で細胞の運命は最初から決まっているのではなく、何らかの物質が働いて、胚の細胞の運命が決まるというものである。 |