「カフェイン」の版間の差分

提供:脳科学辞典
ナビゲーションに移動 検索に移動
編集の要約なし
編集の要約なし
 
(3人の利用者による、間の11版が非表示)
2行目: 2行目:
<font size="+1">[http://researchmap.jp/read0184751 島添 隆雄]</font><br>
<font size="+1">[http://researchmap.jp/read0184751 島添 隆雄]</font><br>
''九州大学 大学院薬学府''<br>
''九州大学 大学院薬学府''<br>
DOI [[XXXX]]/XXXX 原稿受付日:2013年8月19日 原稿完成日:2013年月日<br>
DOI:<selfdoi /> 原稿受付日:2013年8月19日 原稿完成日:2014年1月5日<br>
担当編集委員:[http://researchmap.jp/tadafumikato 加藤 忠史](独立行政法人理化学研究所 脳科学総合研究センター)<br>
担当編集委員:[http://researchmap.jp/tadafumikato 加藤 忠史](独立行政法人理化学研究所 脳科学総合研究センター)<br>
</div>
</div>


英語名:caffeine 独:koffein、仏:caféine 
英語名:caffeine 独:Koffein、仏:caféine 


{{Chembox Drug
{{Chembox Drug
72行目: 72行目:
| BoilingPtC = 178
| BoilingPtC = 178
| Boiling_notes = [[sublimation (chemistry)|subl.]]
| Boiling_notes = [[sublimation (chemistry)|subl.]]
| pKa = -0.13–1.22 protonated caffeine<ref name="pKa">This is the pK<sub>a</sub> for protonated caffeine, given as a range of values included in {{cite book |title=Profiles of Drug Substances, Excipients and Related Methodology, volume 33: Critical Compilation of pK<sub>a</sub> Values for Pharmaceutical Substances |author=Harry G. Brittain, Richard J. Prankerd |publisher=Academic Press |year=2007 |isbn=0-12-260833-X |url=http://books.google.com/?id=D3vBu5Tx4XwC&pg=PT15&lpg=PT15}}</ref>
| pKa = -0.13–1.22 protonated caffeine<ref name="pKa">'''Harry G. Brittain, Richard J. Prankerd'''<br>Profiles of Drug Substances, Excipients and Related Methodology, volume 33: Critical Compilation of pK<sub>a</sub> Values for Pharmaceutical Substances<br>''Academic Press'', 2007</ref>
| Dipole = 3.64 [[debye|D]] (calculated)
| Dipole = 3.64 [[debye|D]] (calculated)


88行目: 88行目:


{{box|text=
{{box|text=
 カフェインはメチルキサンチン類に属するアルカロイドである。紅茶、茶等に含まれるが、コーヒーに最も多い。中枢刺激作用を持つ。その作用機序としては、ホスホジエステラーゼ阻害作用、アデノシン受容体阻害作用が知られている。
 カフェインはメチルキサンチン類に属するアルカロイドである。紅茶、茶等に含まれるが、コーヒーに最も多い。中枢刺激作用を持つ。その作用機序としては、ホスホジエステラーゼ阻害作用、アデノシン受容体阻害作用などが知られている。}}


==概要==
==概要==
 カフェインは、天然に存在するメチルキサンチン類に属するアルカロイドで、コーヒー、茶など、さまざまな植物の種子、葉などに含まれるが、中でもコーヒーに最も多く含まれている。なお、天然に存在するメチルキサンチンとしては、他にテオフィリン、テオブロミンなどがある。カフェインは、1819年にドイツのフリードリヒ・ルンゲによって、コーヒーから単離された。コーヒー等の天然由来成分として摂取されている他、清涼飲料水にも含まれていることがある。また、市販の総合感冒薬、解熱鎮痛薬などにも含まれている。
 カフェインは、天然に存在する[[メチルキサンチン]]類に属する[[wj:アルカロイド|アルカロイド]]で、[[wj:コーヒー|コーヒー]]、[[wj:茶|茶]]など、さまざまな植物の種子、葉などに含まれるが、中でも[[wj:コーヒー|コーヒー]]に最も多く含まれている。なお、天然に存在するメチルキサンチンとしては、他に[[テオフィリン]]、[[テオブロミン]]などがある。カフェインは、1819年にドイツの[[w:Friedlieb Ferdinand Runge|フリードリープ・ルンゲ]]によって、コーヒーから単離された。コーヒー等の天然由来成分として摂取されている他、[[wj:清涼飲料水|清涼飲料水]]にも含まれていることがある。また、市販の[[wj:総合感冒薬|総合感冒薬]]、[[wj:解熱鎮痛薬|解熱鎮痛薬]]などにも含まれている。


== 薬理作用 ==
== 薬理作用 ==
 中枢神経刺激作用として、覚醒作用、および精神作業効率を高め、疲労感を減弱させる作用を持つ<ref><pubmed> 12204388 </pubmed></ref>。一方、離脱症状として、頭痛、易疲労感、眠気、不快気分、いらいら、集中困難、吐き気、筋のこわばりなどがある<ref>American Psychiatric Association (2013) Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders. Fifth Edition. </ref>。その他の作用としては、利尿作用、平滑筋弛緩作用、心筋刺激作用などがある<ref>http://pubchem.ncbi.nlm.nih.gov/summary/summary.cgi?cid=2519</ref>。
 中枢神経刺激作用として、[[覚醒作用]]、および[[精神作業]]効率を高め、[[疲労]]感を減弱させる作用を持つ<ref><pubmed> 12204388 </pubmed></ref>。一方、離脱症状として、[[頭痛]]、[[易疲労感]]、[[眠気]]、[[不快気分]]、いらいら、集中困難、吐き気、筋のこわばりなどがある<ref>American Psychiatric Association (2013) Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders. Fifth Edition. </ref>。その他の作用としては、[[wj:利尿|利尿]]作用、[[wj:平滑筋|平滑筋]]弛緩作用、[[wj:心筋|心筋]]刺激作用などがある<ref>http://pubchem.ncbi.nlm.nih.gov/summary/summary.cgi?cid=2519</ref>。


==作用機序==
==作用機序==
 カフェインの作用機序としては、非選択的なホスホジエステラーゼ阻害作用により[[cAMP]]を増加させる作用<ref>Weinberg, BA; BK Bealer<br>The World of Caffeine. Routledge. ISBN 0-415-92722-6, 2001</ref>、およびアデノシン受容体阻害作用などが知られている。
 カフェインの作用機序としては、非選択的な[[ホスホジエステラーゼ]]阻害作用により[[cAMP]]を増加させる作用<ref>Weinberg, BA; BK Bealer<br>The World of Caffeine. Routledge. ISBN 0-415-92722-6, 2001</ref>、および[[アデノシン受容体]]阻害作用<ref><pubmed>6309393</pubmed></ref>、および[[細胞内カルシウムストア]]への作用<ref><pubmed>3193957</pubmed></ref>などが知られている


==代謝==
==代謝==
 カフェインは、主にCYP1A2により肝で代謝を受け、3種類のジメチルキサンチン(パラキサンチン、テオブロミン、テオフィリン)になる。これらの化合物も、やはりホスホジエステラーゼを非特異的に阻害する。カフェインはCYP1A2を阻害する薬剤(シメチジン、[[フルボキサミン]][[オランザピン]]など)との併用では中枢作用が増強されることがある。また、[[モノアミン酸化酵素]]阻害作用があり、[[モノアミン酸化酵素阻害薬]]との併用では頻脈・血圧上昇が見られやすい。
 カフェインは、主に[[CYP1A2]]により肝で代謝を受け、3種類の[[ジメチルキサンチン]]([[パラキサンチン]]、テオブロミン、テオフィリン)になる。これらの化合物も、やはりホスホジエステラーゼを非特異的に阻害する。カフェインはCYP1A2を阻害する薬剤([[フルボキサミン]]など)や、他のCYP1A2により代謝される薬剤([[オランザピン]]など)との併用で、中枢作用が増強されることがある。また、[[モノアミン酸化酵素]]阻害作用があり、[[モノアミン酸化酵素阻害薬]]との併用では頻脈・血圧上昇が見られやすい。


==副作用==
==副作用==
 カフェインは中枢興奮作用を有するため、過剰摂取の代表的症状としては、不眠を誘発する。カフェインの摂取は、[[パニック障害]]を悪化させる可能性が報告されている。カフェインが依存を引き起こすかどうかについては議論がある。
 カフェインは中枢興奮作用を有するため、過剰摂取の代表的症状としては、[[不眠]]を誘発する。カフェインの摂取は、[[パニック障害]]を悪化させる可能性が報告されている。カフェインが[[精神依存]]を引き起こすかどうかについては議論がある。


== 参考文献 ==
== 参考文献 ==
<references />
<references />

2014年6月26日 (木) 11:29時点における最新版

島添 隆雄
九州大学 大学院薬学府
DOI:10.14931/bsd.3560 原稿受付日:2013年8月19日 原稿完成日:2014年1月5日
担当編集委員:加藤 忠史(独立行政法人理化学研究所 脳科学総合研究センター)

英語名:caffeine 独:Koffein、仏:caféine 

カフェイン
Caffeine molecule
Systematic (IUPAC) name
1,3,7-Trimethyl-1H-purine-2,6(3H,7H)-dione
3,7-Dihydro-1,3,7-trimethyl-1H-purine-2,6-dione
Clinical data
AHFS/Drugs.com monograph
Pregnancy cat. C(US)
Legal status Unscheduled (AU) GSL (UK) OTC (US)
Dependence liability Moderate
Routes Oral, insufflation, enema
Pharmacokinetic data
Bioavailability 99%
Protein binding 17% to 36%
Metabolism demethylation by CYP1A2
Half-life 5 hours
Excretion urine (100%)
Identifiers
ATC code N06BC01
PubChem CID 2519
DrugBank DB00201
ChemSpider 2424 YesY
UNII 3G6A5W338E YesY
KEGG D00528 YesY
ChEBI CHEBI:27732 YesY
ChEMBL CHEMBL113 YesY
Chemical data
Formula C8H10N4O2 
Mol. mass 194.19 g/mol
SMILES eMolecules & PubChem

 カフェインはメチルキサンチン類に属するアルカロイドである。紅茶、茶等に含まれるが、コーヒーに最も多い。中枢刺激作用を持つ。その作用機序としては、ホスホジエステラーゼ阻害作用、アデノシン受容体阻害作用などが知られている。

概要

 カフェインは、天然に存在するメチルキサンチン類に属するアルカロイドで、コーヒーなど、さまざまな植物の種子、葉などに含まれるが、中でもコーヒーに最も多く含まれている。なお、天然に存在するメチルキサンチンとしては、他にテオフィリンテオブロミンなどがある。カフェインは、1819年にドイツのフリードリープ・ルンゲによって、コーヒーから単離された。コーヒー等の天然由来成分として摂取されている他、清涼飲料水にも含まれていることがある。また、市販の総合感冒薬解熱鎮痛薬などにも含まれている。

薬理作用

 中枢神経刺激作用として、覚醒作用、および精神作業効率を高め、疲労感を減弱させる作用を持つ[4]。一方、離脱症状として、頭痛易疲労感眠気不快気分、いらいら、集中困難、吐き気、筋のこわばりなどがある[5]。その他の作用としては、利尿作用、平滑筋弛緩作用、心筋刺激作用などがある[6]

作用機序

 カフェインの作用機序としては、非選択的なホスホジエステラーゼ阻害作用によりcAMPを増加させる作用[7]、およびアデノシン受容体阻害作用[8]、および細胞内カルシウムストアへの作用[9]などが知られている

代謝

 カフェインは、主にCYP1A2により肝で代謝を受け、3種類のジメチルキサンチンパラキサンチン、テオブロミン、テオフィリン)になる。これらの化合物も、やはりホスホジエステラーゼを非特異的に阻害する。カフェインはCYP1A2を阻害する薬剤(フルボキサミンなど)や、他のCYP1A2により代謝される薬剤(オランザピンなど)との併用で、中枢作用が増強されることがある。また、モノアミン酸化酵素阻害作用があり、モノアミン酸化酵素阻害薬との併用では頻脈・血圧上昇が見られやすい。

副作用

 カフェインは中枢興奮作用を有するため、過剰摂取の代表的症状としては、不眠を誘発する。カフェインの摂取は、パニック障害を悪化させる可能性が報告されている。カフェインが精神依存を引き起こすかどうかについては議論がある。

参考文献

  1. Caffeine, International Occupational Safety and Health Information Centre (CIS)
  2. Caffeine (anhydrous). sigmaaldrich.com
  3. Harry G. Brittain, Richard J. Prankerd
    Profiles of Drug Substances, Excipients and Related Methodology, volume 33: Critical Compilation of pKa Values for Pharmaceutical Substances
    Academic Press, 2007
  4. Smith, A. (2002).
    Effects of caffeine on human behavior. Food and chemical toxicology : an international journal published for the British Industrial Biological Research Association, 40(9), 1243-55. [PubMed:12204388] [WorldCat] [DOI]
  5. American Psychiatric Association (2013) Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders. Fifth Edition.
  6. http://pubchem.ncbi.nlm.nih.gov/summary/summary.cgi?cid=2519
  7. Weinberg, BA; BK Bealer
    The World of Caffeine. Routledge. ISBN 0-415-92722-6, 2001
  8. Daly, J.W., Butts-Lamb, P., & Padgett, W. (1983).
    Subclasses of adenosine receptors in the central nervous system: interaction with caffeine and related methylxanthines. Cellular and molecular neurobiology, 3(1), 69-80. [PubMed:6309393] [WorldCat] [DOI]
  9. Thayer, S.A., Hirning, L.D., & Miller, R.J. (1988).
    The role of caffeine-sensitive calcium stores in the regulation of the intracellular free calcium concentration in rat sympathetic neurons in vitro. Molecular pharmacology, 34(5), 664-73. [PubMed:3193957] [WorldCat]