「カリウムチャネル」の版間の差分

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アウトラインです  
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= 1.基本的機能  =
= 基本的機能  =


カリウムイオンを優先的に透過させるカリウムチャネルはイオンチャネルスーパーファミリーの中でも、特に機能的構造的に多様性がある。  
カリウムイオンを優先的に透過させるカリウムチャネルはイオンチャネルスーパーファミリーの中でも、特に機能的構造的に多様性がある。  
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機能的に多様なカリウムチャネルが、細胞内でも局在しており、脳機能を支えている。分子機構がかなり明らかになっている。 <br>  
機能的に多様なカリウムチャネルが、細胞内でも局在しており、脳機能を支えている。分子機構がかなり明らかになっている。 <br>  


= 2.分子機能、構造による分類(種類)  =
= 分子機能、構造による分類(種類)  =


構造的には、二回膜貫通型、四回膜貫通型、六回膜貫通型の3つに分けられる。また機能的には電位依存性カリウムチャネル、カルシウム活性化カリウムチャネル、内向き整流性カリウムチャネル、Two-pore domain カリウムチャネルに分けられる。  
構造的には、二回膜貫通型、四回膜貫通型、六回膜貫通型の3つに分けられる。また機能的には電位依存性カリウムチャネル、カルシウム活性化カリウムチャネル、内向き整流性カリウムチャネル、Two-pore domain カリウムチャネルに分けられる。  


== 2.1機能構造的特徴 ==
== 機能構造的特徴 ==


カリウムチャネルに共通する構造的特徴としてはαサブユニットのホモ、あるいはヘテロマルチマーである。それぞれのサブユニットにはイオン透過経路の形成に関わるポアドメインが共通して存在する。GYGモチーフを持つ。それに加え特有の制御性ドメイン(細胞内ドメイン、電位センサードメイン)を持ち、機能的な多様性を与えている。複合体を形成した際にはサブユニットの中央に一つのイオン透過経路を形成する。また補助サブユニットを持つものもある。  
カリウムチャネルに共通する構造的特徴としてはαサブユニットのホモ、あるいはヘテロマルチマーである。それぞれのサブユニットにはイオン透過経路の形成に関わるポアドメインが共通して存在する。GYGモチーフを持つ。それに加え特有の制御性ドメイン(細胞内ドメイン、電位センサードメイン)を持ち、機能的な多様性を与えている。複合体を形成した際にはサブユニットの中央に一つのイオン透過経路を形成する。また補助サブユニットを持つものもある。  
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Kvチャネル、Kirチャネル、K2Pチャネルなど結晶構造解析が進んでいる。Kirチャネルなどではリガンドと結合した構造も解かれ始めている。  
Kvチャネル、Kirチャネル、K2Pチャネルなど結晶構造解析が進んでいる。Kirチャネルなどではリガンドと結合した構造も解かれ始めている。  


== 2.2二回膜貫通型 ==
== 二回膜貫通型 ==


=== 各種Kirチャネル  ===
=== 各種Kirチャネル  ===
37行目: 37行目:
ATP感受性Kチャネルのイオン透過経路もKirチャネルである(Kir6.xサブファミリー)。スルホニルウレア受容体(SUR)と呼ばれる補助サブユニットと4:4のヘテロオクタマー結合して機能的なイオンチャネルとして発現する。細胞外はKir6.2サブユニットに結合し、KATPチャネルを阻害する。  
ATP感受性Kチャネルのイオン透過経路もKirチャネルである(Kir6.xサブファミリー)。スルホニルウレア受容体(SUR)と呼ばれる補助サブユニットと4:4のヘテロオクタマー結合して機能的なイオンチャネルとして発現する。細胞外はKir6.2サブユニットに結合し、KATPチャネルを阻害する。  


== 2.3四回膜貫通型 ==
== 四回膜貫通型 ==


=== K2Pカリウムチャネル  ===
=== K2Pカリウムチャネル  ===
49行目: 49行目:
ハロタンなど揮発性麻酔薬の標的分子の可能性が示唆されている。  
ハロタンなど揮発性麻酔薬の標的分子の可能性が示唆されている。  


== 2.4六回膜貫通型 ==
== 六回膜貫通型 ==


=== 各種Kvチャネル  ===
=== 各種Kvチャネル  ===
59行目: 59行目:
六回(七回)膜貫通型。Caによって活性化。Caが直接結合するもの、間接的に結合するもの。Caで直接活性化されるもの、電位依存性を変えるもの。コンダクタンスの違いも。 BK、IK、SKなど。BKのみ電位依存性あり。 Ca依存性K電流は活動電位の再分極、AHPの発生、spike frequency adaptationに関与している。  
六回(七回)膜貫通型。Caによって活性化。Caが直接結合するもの、間接的に結合するもの。Caで直接活性化されるもの、電位依存性を変えるもの。コンダクタンスの違いも。 BK、IK、SKなど。BKのみ電位依存性あり。 Ca依存性K電流は活動電位の再分極、AHPの発生、spike frequency adaptationに関与している。  


== 2.5補助サブユニット ==
== 補助サブユニット ==


カリウムチャネルの機能を修飾する補助サブユニットが存在する。  
カリウムチャネルの機能を修飾する補助サブユニットが存在する。  
71行目: 71行目:
SURの説明。SURはATPase活性がある。KATPチャネルの基礎活性維持に重要である。SURは薬物の標的となっており、薬理学的、薬物治療学的にも重要である。SURの構造的なこと、薬物の標的としての役割も簡単に述べる。位置の制御も(ER retention signal関係)  
SURの説明。SURはATPase活性がある。KATPチャネルの基礎活性維持に重要である。SURは薬物の標的となっており、薬理学的、薬物治療学的にも重要である。SURの構造的なこと、薬物の標的としての役割も簡単に述べる。位置の制御も(ER retention signal関係)  


== 2.6おまけ? ==
== おまけ? ==


HCN、CNG 構造的にKチャネルの中に分類されたりもするが、カリウムイオン選択性は高くない。 (ここで取り扱うかどうかは倉智先生、尾藤さんの判断にゆだねる。HCN、CNGは脳機能の中でも重要、HCNチャネルは電位依存性チャネル、CNGはリガンド依存性チャネルで出るのかな。。)  
HCN、CNG 構造的にKチャネルの中に分類されたりもするが、カリウムイオン選択性は高くない。 (ここで取り扱うかどうかは倉智先生、尾藤さんの判断にゆだねる。HCN、CNGは脳機能の中でも重要、HCNチャネルは電位依存性チャネル、CNGはリガンド依存性チャネルで出るのかな。。)  


= 3.活性調整  =
= 活性調整  =


== 3.1ligand-gated  ==
== 神経伝達物質やシグナル伝達分子による制御 ==


=== M current  ===
=== M current  ===
95行目: 95行目:
(glucose感受性神経の話もこのあたりで) KATPチャネルは細胞内のATP濃度上昇によって機能阻害される。この機構は視床下部などで認められるいくつかの神経細胞で観察されるグルコース感受性の機構の一つであり、グルコース濃度上昇、ATP産生、KATPチャネル阻害、膜の脱分極、細胞興奮性の亢進がおこる。  
(glucose感受性神経の話もこのあたりで) KATPチャネルは細胞内のATP濃度上昇によって機能阻害される。この機構は視床下部などで認められるいくつかの神経細胞で観察されるグルコース感受性の機構の一つであり、グルコース濃度上昇、ATP産生、KATPチャネル阻害、膜の脱分極、細胞興奮性の亢進がおこる。  


== 3.2voltage-gated  ==
== 膜電位による制御 ==


膜電位の変化によってカリウムチャネルの活性化と不活性化が制御されている。特に脱分極によって活性化するカリウムチャネルを電位依存性カリムチャネルという。不活性化は電位に依存するというよりもイオンチャネルの開口やイオン透過に依存する。不活性化のカイネティクスはイオンチャネルの種類によって大きく異なり、活性化後直ぐに不活性化するために一過性にしかカリウム電流を流さないtransient-typeと、不活性化が殆どおこらないsustaind-typeに大別される。  
膜電位の変化によってカリウムチャネルの活性化と不活性化が制御されている。特に脱分極によって活性化するカリウムチャネルを電位依存性カリムチャネルという。不活性化は電位に依存するというよりもイオンチャネルの開口やイオン透過に依存する。不活性化のカイネティクスはイオンチャネルの種類によって大きく異なり、活性化後直ぐに不活性化するために一過性にしかカリウム電流を流さないtransient-typeと、不活性化が殆どおこらないsustaind-typeに大別される。  
111行目: 111行目:
活性化が遅め。不活性化が弱い、遅い。速度論的な違いによってさらにIKsやIKrなど。 TEAによって阻害。海馬においては、susteined 成分は電位依存性や薬物依存性(TEA &gt; 4-AP)Kv2サブユニットであると考えられる。  
活性化が遅め。不活性化が弱い、遅い。速度論的な違いによってさらにIKsやIKrなど。 TEAによって阻害。海馬においては、susteined 成分は電位依存性や薬物依存性(TEA &gt; 4-AP)Kv2サブユニットであると考えられる。  


== 3.3constitite-active  ==
== 常時活性型 ==


=== IKR current  ===
=== IKR current  ===
121行目: 121行目:
常時活性型。こちらも静止膜電位、興奮性の制御。いろいろな種類あり。  
常時活性型。こちらも静止膜電位、興奮性の制御。いろいろな種類あり。  


= 3.4リン酸化 =
== リン酸化 ==


PKA, PKC, MAPKがKv4.2などdendric transient K channelをリン酸化、電位依存性を変える 。でもsustained typeはあまり制御が知られていない。  
PKA, PKC, MAPKがKv4.2などdendric transient K channelをリン酸化、電位依存性を変える 。でもsustained typeはあまり制御が知られていない。  


= 4.脳内分布とその機能  =
= 脳内分布とその機能  =


== 4.1中枢神経細胞 ==
== 中枢神経細胞 ==


Kv1, Kv2, Kv3, Kv4といったカリウムチャネルサブユニットの発現が神経細胞で認められている。カリウムチャネルはヘテロマルチマーとして構成されるので、その可能な組み合わせはサブユニットの数以上に膨大な数となる。小脳Purkinje cellにおいて、Kv1.2サブユニットは明らかなsomato-dendrite distributionをしているなど、位置が制御されていることはよく理解されているが、一般化して説明することは難しい。  
Kv1, Kv2, Kv3, Kv4といったカリウムチャネルサブユニットの発現が神経細胞で認められている。カリウムチャネルはヘテロマルチマーとして構成されるので、その可能な組み合わせはサブユニットの数以上に膨大な数となる。小脳Purkinje cellにおいて、Kv1.2サブユニットは明らかなsomato-dendrite distributionをしているなど、位置が制御されていることはよく理解されているが、一般化して説明することは難しい。  
143行目: 143行目:
神経細胞の樹状突起に発現するKチャネルの種類とその役割。有髄神経と無髄神経。ランビエノードでの分付。跳躍伝導。 HodgkinとHuxleyはイカの巨大軸索でNa透過性に引き続くK透過性の亢進を計測。イオン仮説を立てた。ノーベル賞。有髄神経においてはランビエノードに局在。 I channel (current) N-type inactivation ない? Kv1.2, Kv1.1? 軸索のカリウムチャネルは高周波の神経発火に必要 シナプス前終末も。高橋研、他GのCalyxの話を要約。terminalか軸索か。 Kv7.2 KCNQ2はpresynaptic terminalに局在  
神経細胞の樹状突起に発現するKチャネルの種類とその役割。有髄神経と無髄神経。ランビエノードでの分付。跳躍伝導。 HodgkinとHuxleyはイカの巨大軸索でNa透過性に引き続くK透過性の亢進を計測。イオン仮説を立てた。ノーベル賞。有髄神経においてはランビエノードに局在。 I channel (current) N-type inactivation ない? Kv1.2, Kv1.1? 軸索のカリウムチャネルは高周波の神経発火に必要 シナプス前終末も。高橋研、他GのCalyxの話を要約。terminalか軸索か。 Kv7.2 KCNQ2はpresynaptic terminalに局在  


== 4.2末梢神経細胞 ==
== 末梢神経細胞 ==


神経細胞と異なり特記すべきことがあればここに分けて記す。  
神経細胞と異なり特記すべきことがあればここに分けて記す。  


== 4.3グリア細胞 ==
== グリア細胞 ==


astrocyte, muller cell グリアタイプのカリウムチャネル。 KirチャネルとKvチャネルも?主にアストログリアの説明だが、microgliaや他のグリアも。Kv4, 3, 1, KChIPなどのA-type currentの発現、Kv4.3がsoma、Kv3.4がprocess? (http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15738276)、 Kir2、Kir4、Kir5?.. Kir4.1血管周囲やシナプス周囲に多い(Higashi K, Fujita A, Inanobe A, Tanemoto M, Doi K, Kubo T, and Kurachi Y (2001) An inwardly rectifying K+ channel, Kir4.1, expressed in astrocytes surrounds synapses and blood vessels in brain. Am J Physiol Cell Physiol 281:C922-C931.) retinaのmuller cellにも多い (Ishii M, Horio Y, Tada Y, Hibino H, Inanobe A, Ito M, Yamada M, Gotow T, Uchiyama Y, and Kurachi Y (1997) Expression and clustered distribution of an inwardly rectifying potassium channel KAB-2/Kir4.1 on mammalian retinal Müller cell membrane: their regulation by insulin and laminin signals. J Neurosci 17:7725–7735.) K buffering アストロサイトのカリウムチャネルは静止膜電位の維持とカリウムの恒常性維持(カリウムバッファリング)に関与している (End feet of retinal glial cells have higher densities of ion channels that mediate K􏰑 buffering. Nature (Lond) 324:466 – 468.)  
astrocyte, muller cell グリアタイプのカリウムチャネル。 KirチャネルとKvチャネルも?主にアストログリアの説明だが、microgliaや他のグリアも。Kv4, 3, 1, KChIPなどのA-type currentの発現、Kv4.3がsoma、Kv3.4がprocess? (http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15738276)、 Kir2、Kir4、Kir5?.. Kir4.1血管周囲やシナプス周囲に多い(Higashi K, Fujita A, Inanobe A, Tanemoto M, Doi K, Kubo T, and Kurachi Y (2001) An inwardly rectifying K+ channel, Kir4.1, expressed in astrocytes surrounds synapses and blood vessels in brain. Am J Physiol Cell Physiol 281:C922-C931.) retinaのmuller cellにも多い (Ishii M, Horio Y, Tada Y, Hibino H, Inanobe A, Ito M, Yamada M, Gotow T, Uchiyama Y, and Kurachi Y (1997) Expression and clustered distribution of an inwardly rectifying potassium channel KAB-2/Kir4.1 on mammalian retinal Müller cell membrane: their regulation by insulin and laminin signals. J Neurosci 17:7725–7735.) K buffering アストロサイトのカリウムチャネルは静止膜電位の維持とカリウムの恒常性維持(カリウムバッファリング)に関与している (End feet of retinal glial cells have higher densities of ion channels that mediate K􏰑 buffering. Nature (Lond) 324:466 – 468.)  


= 5.位置制御機能、他の分子との相互作用  =
= 位置制御機能、他の分子との相互作用  =


= 5.1裏打ち「蛋白質」との結合 =
== 裏打ち「蛋白質」との結合 ==


主にPDZ蛋白質との結合の話。SURなどもここでもう一度?  
主にPDZ蛋白質との結合の話。SURなどもここでもう一度?  


= 5.2「脂質」との結合 =
== 「脂質」との結合 ==


ラフトなどへの局在の話。  
ラフトなどへの局在の話。  


= 6.病気との関連  =
= 病気との関連  =


チャネル病 癲癇?  
チャネル病 癲癇?  


= 7.薬理学  =
= 薬理学  =


(薬物治療の観点ではなく、基礎的な情報として)  
(薬物治療の観点ではなく、基礎的な情報として)  


== 7.1Kvチャネル阻害薬 ==
== Kvチャネル阻害薬 ==


=== TEA, 4-AP、アミロライド  ===
=== TEA, 4-AP、アミロライド  ===
179行目: 179行目:
Kvチャネルの電位依存性を変える。電位センサードメインが結合部位。  
Kvチャネルの電位依存性を変える。電位センサードメインが結合部位。  


== 7.2KCaチャネル阻害薬 ==
== KCaチャネル阻害薬 ==


=== KCaチャネルの阻害薬  ===
=== KCaチャネルの阻害薬  ===
189行目: 189行目:
KCaチャネルの開口薬opener。1-EBIO。Ca感受性を増強。 他にもいっぱいある。。 http://www.tocris.com/pharmacologicalBrowser.php?ItemId=47689  
KCaチャネルの開口薬opener。1-EBIO。Ca感受性を増強。 他にもいっぱいある。。 http://www.tocris.com/pharmacologicalBrowser.php?ItemId=47689  


= 7.3K2P (Kir)阻害薬、活性化薬  =
== K2P (Kir)阻害薬、活性化薬  ==


=== 麻酔薬  ===
=== 麻酔薬  ===
199行目: 199行目:
アルコールがカリウムチャネル機能を制御するという報告がある  
アルコールがカリウムチャネル機能を制御するという報告がある  


== 7.4中枢神経作動薬のKチャネルへの作用 ==
== 中枢神経作動薬のKチャネルへの作用 ==


中枢神経系作動薬(ハロペリドールなどの抗精神病薬やフロキセチンなどの抗うつ薬など)には副作用としてカリウムチャネルに作用するものもある。薬物治療への関与は未解明。  
中枢神経系作動薬(ハロペリドールなどの抗精神病薬やフロキセチンなどの抗うつ薬など)には副作用としてカリウムチャネルに作用するものもある。薬物治療への関与は未解明。  


= 8.参考文献 =
= 参考文献 =