「カリウムチャネル」の版間の差分

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英:Potassium Channel、英略語:K<sup>+</sup> channel<br><br>カリウムチャネルはカリウムイオンを選択的に透過させるイオンチャネルである。静止膜電位の形成や細胞の電気的興奮性の制御、シナプス伝達やカリウム濃度恒常性維持に関わっている。ほとんどのカリウムチャネルはαサブユニットが四量体を形成し、中央のカリウムを通す細孔(ポア)を取り囲んでいる。αサブユニットの膜貫通領域の構造から3つのグループに大別される。六回膜貫通型の電位依存性カリウムチャネルとカルシウム活性化カリウムチャネル、四回膜貫通型のTwo-pore domainカリウムチャネル、そして二回膜貫通型の内向き整流性カリウムチャネルである。3つのグループは分散した、しかしカリウムチャネルファミリーを形成する。カリウムチャネルはイオンチャネルの中でもっとも多様性が高い。豊富なサブユニット分子種、αサブユニットのヘテロ四量体形成、補助βサブユニットとの複合体形成がその実体的な要因である。
英:Potassium Channel、英略語:K<sup>+</sup> channel<br><br>カリウムチャネルはカリウムイオンを選択的に透過させるイオンチャネルである。静止膜電位の形成や細胞の電気的興奮性の制御、シナプス伝達やカリウム濃度恒常性維持に関わっている。ほとんどのカリウムチャネルはαサブユニットが四量体を形成し、中央のカリウムを通す細孔(ポア)を取り囲んでいる。αサブユニットの膜貫通領域の構造から3つのグループに大別される。六回膜貫通型の電位依存性カリウムチャネルとカルシウム活性化カリウムチャネル、四回膜貫通型のTwo-pore domainカリウムチャネル、そして二回膜貫通型の内向き整流性カリウムチャネルである。3つのグループは分散した、しかしカリウムチャネルファミリーを形成する。カリウムチャネルはイオンチャネルの中でもっとも多様性が高い。豊富なサブユニット分子種、αサブユニットのヘテロ四量体形成、補助βサブユニットとの複合体形成がその実体的な要因である。  


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= 薬理学(薬物治療の観点ではなく、基礎的な情報として)<br>  =
= 薬理学<br>  =


カリウムチャネルは神経活動に重要な役割を果たしており、毒物や薬物によるイオンチャネルに対する作用は深刻な作用を与えうる。また実験科学的にみると毒素や薬物はチャネル研究を行なう上で重要なツールである。<br>抗不整脈薬の一部は心臓の遅延整流性カリウムチャネルを阻害することが知られている。第三群抗不整脈薬のアミオダロンやニフェカラントは遅延整流性カリウム電流、とくにIkr電流を阻害し活動電位持続時間を延長し、相対的不応期を延長することで不整脈を治療する。<br>実験室レベルで用いられるのKvチャネルの阻害薬としてtetraethylammonium(TEA)、4-aminopyridine(4-AP)サソリ毒のagitoxin、蜘蛛毒のhanatoxinなどがある。TEAを細胞の内側もしくは外側に投与した時の感受性が異なることや、4-APは Shaker型のKv1ファミリーに少し選択性があるなどイオンチャネルごとに異なる薬物選択性が知られており、イオン電流成分の分離や分子種の推定に薬理学的解析が行われている。TEA、4-AP、agitoxinなどはポアに結合しポア機能を阻害する。一方、hanatoxinなどは電位センサー部位に結合し、その電位依存性を変える。Kvチャネルを活性化させる薬物としてXXXが報告されている。不活性化機構や脱感作機構に影響を及ぼしていると考えられる。<br>Ca活性化KチャネルのBKチャネルはサソリ毒のCharybdotoxin、IberiotoxinやTEAによって阻害される。またSKチャネルはハチ毒Apaminによって強力に阻害される。この薬物感受性の違いもCa活性化Kチャネルの分子種の特定に利用される。一方、1-EBIOなどKCaチャネルの開口薬が存在し、これらはCa感受性を高めることが報告されているが詳細なメカニズムは不明である。<br>KATPチャネルの阻害剤と活性化剤が薬物治療に用いられている。スルホニルウレア剤のグリベンクラミドなどはKATPチャネルを阻害するが、これはαサブユニットであるKir6.2に対する直接作用ではなく、補助サブユニットであるスルホニルウレア受容体(SUR)に対する間接作用である。スルホニルウレア剤によるすい臓β細胞KATPチャネル阻害はインスリン分泌を促し糖尿病の治療に用いられる。またdiazoxideやpinacidilなどカリウムチャネル開口薬K channel openerとはKATPチャネルの開口薬である。これらは血管の緊張を緩和し、血管拡張剤として用いられている。この作用もSURを介した間接作用である。<br>吸引性麻酔薬ハロタンがK2Pチャネルを活性化することが知られている。そのため局所麻酔薬の分子作用機序にK2Pチャネルがあると考えられている。PMID: 10321245。<br>近年の薬理学的な解析で中枢神経系作動薬(ハロペリドールなどの抗精神病薬やフロキセチンなどの抗うつ薬など)には副作用としてカリウムチャネルに作用するものもある。例えばIK電流の阻害が知られており、hERGチャネルの阻害が報告されている。またKirチャネルに対する作用なども報告されているが、治療効果への関与は未解明である。  
カリウムチャネルは神経活動に重要な役割を果たしており、毒物や薬物によるイオンチャネルに対する作用は深刻な作用を与えうる。また実験科学的にみると毒素や薬物はチャネル研究を行なう上で重要なツールである。<br>抗不整脈薬の一部は心臓の遅延整流性カリウムチャネルを阻害することが知られている。第三群抗不整脈薬のアミオダロンやニフェカラントは遅延整流性カリウム電流、とくにIkr電流を阻害し活動電位持続時間を延長し、相対的不応期を延長することで不整脈を治療する。<br>実験室レベルで用いられるのKvチャネルの阻害薬としてtetraethylammonium(TEA)、4-aminopyridine(4-AP)サソリ毒のagitoxin、蜘蛛毒のhanatoxinなどがある。TEAを細胞の内側もしくは外側に投与した時の感受性が異なることや、4-APは Shaker型のKv1ファミリーに少し選択性があるなどイオンチャネルごとに異なる薬物選択性が知られており、イオン電流成分の分離や分子種の推定に薬理学的解析が行われている。TEA、4-AP、agitoxinなどはポアに結合しポア機能を阻害する。一方、hanatoxinなどは電位センサー部位に結合し、その電位依存性を変える。Kvチャネルを活性化させる薬物としてXXXが報告されている。不活性化機構や脱感作機構に影響を及ぼしていると考えられる。<br>Ca活性化KチャネルのBKチャネルはサソリ毒のCharybdotoxin、IberiotoxinやTEAによって阻害される。またSKチャネルはハチ毒Apaminによって強力に阻害される。この薬物感受性の違いもCa活性化Kチャネルの分子種の特定に利用される。一方、1-EBIOなどKCaチャネルの開口薬が存在し、これらはCa感受性を高めることが報告されているが詳細なメカニズムは不明である。<br>KATPチャネルの阻害剤と活性化剤が薬物治療に用いられている。スルホニルウレア剤のグリベンクラミドなどはKATPチャネルを阻害するが、これはαサブユニットであるKir6.2に対する直接作用ではなく、補助サブユニットであるスルホニルウレア受容体(SUR)に対する間接作用である。スルホニルウレア剤によるすい臓β細胞KATPチャネル阻害はインスリン分泌を促し糖尿病の治療に用いられる。またdiazoxideやpinacidilなどカリウムチャネル開口薬K channel openerとはKATPチャネルの開口薬である。これらは血管の緊張を緩和し、血管拡張剤として用いられている。この作用もSURを介した間接作用である。<br>吸引性麻酔薬ハロタンがK2Pチャネルを活性化することが知られている。そのため局所麻酔薬の分子作用機序にK2Pチャネルがあると考えられている。PMID: 10321245。<br>近年の薬理学的な解析で中枢神経系作動薬(ハロペリドールなどの抗精神病薬やフロキセチンなどの抗うつ薬など)には副作用としてカリウムチャネルに作用するものもある。例えばIK電流の阻害が知られており、hERGチャネルの阻害が報告されている。またKirチャネルに対する作用なども報告されているが、治療効果への関与は未解明である。