「カリウムチャネル」の版間の差分

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 実験室レベルで用いられるKvチャネルの阻害薬としてtetraethylammonium(TEA)、4-aminopyridine(4-AP)[[wikipedia:ja:ヘビ|ヘビ]]毒のdendrotoxin、[[wikipedia:ja:サソリ|サソリ]]毒の[[agitoxin]]、[[wikipedia:ja:蜘蛛|蜘蛛]]毒の[[hanatoxin]]などがある。イオンチャネルごとに異なる薬物選択性が知られており、イオン電流成分の分離や分子種の推定に薬理学的解析が行われている。阻害の機序としては、TEA、4-AP、dendrotoxin、agitoxinなどは小孔、もしくは小孔の近傍に結合し、イオン透過機能を阻害する。一方、hanatoxinなどは電位センサー部位に結合し、電位依存性を変える。
 実験室レベルで用いられるKvチャネルの阻害薬としてtetraethylammonium(TEA)、4-aminopyridine(4-AP)[[wikipedia:ja:ヘビ|ヘビ]]毒のdendrotoxin、[[wikipedia:ja:サソリ|サソリ]]毒の[[agitoxin]]、[[wikipedia:ja:蜘蛛|蜘蛛]]毒の[[hanatoxin]]などがある。イオンチャネルごとに異なる薬物選択性が知られており、イオン電流成分の分離や分子種の推定に薬理学的解析が行われている。阻害の機序としては、TEA、4-AP、dendrotoxin、agitoxinなどは小孔、もしくは小孔の近傍に結合し、イオン透過機能を阻害する。一方、hanatoxinなどは電位センサー部位に結合し、電位依存性を変える。


 [[wikipedia:ja:amiodarone|amiodarone]]や[[wikipedia:ja:nifekalant|nifekalant]]は心筋細胞の''I''<sub>Kr</sub>電流を阻害し活動電位持続時間を延長し、相対的不応期を延長することから[[wikipedia:ja:抗不整脈薬|抗不整脈薬]](第三群)として臨床使用されている。
 [[wikipedia:amiodarone|amiodarone]]や[[wikipedia:nifekalant|nifekalant]]は心筋細胞の''I''<sub>Kr</sub>電流を阻害し活動電位持続時間を延長し、相対的不応期を延長することから[[wikipedia:ja:抗不整脈薬|抗不整脈薬]](第三群)として臨床使用されている。


 近年、Kvチャネル電流を増加させる薬物も報告されており、それらは不活性化機構や脱感作機構に影響を及ぼしていると報告されている。
 近年、Kvチャネル電流を増加させる薬物も報告されており、それらは不活性化機構や脱感作機構に影響を及ぼしていると報告されている。
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 KCaチャネルのBKチャネルはサソリ毒の[[charybdotoxin]]、[[iberiotoxin]]、そして比較的低濃度のTEA(&lt;1 mM)によって阻害される。またSKチャネルはハチ毒[[apamin]]によって強力に阻害される。この薬物感受性の違いはCa活性化Kチャネルの分子種の特定に利用される。また、1-EBIOなどKCaチャネル(IK, SKチャネル)の開口薬が存在し、これらはCa<sup>2+</sup>感受性を高めることが報告されているが詳細なメカニズムは不明である。
 KCaチャネルのBKチャネルはサソリ毒の[[charybdotoxin]]、[[iberiotoxin]]、そして比較的低濃度のTEA(&lt;1 mM)によって阻害される。またSKチャネルはハチ毒[[apamin]]によって強力に阻害される。この薬物感受性の違いはCa活性化Kチャネルの分子種の特定に利用される。また、1-EBIOなどKCaチャネル(IK, SKチャネル)の開口薬が存在し、これらはCa<sup>2+</sup>感受性を高めることが報告されているが詳細なメカニズムは不明である。


 K<sub>ATP</sub>チャネルの[[阻害薬]]と[[活性化薬]]が薬物治療に用いられている。スルホニルウレア剤(tolbutamide、glibenclamideなど)は膵臓β細胞のK<sub>ATP</sub>チャネルを阻害し細胞を脱分極させ、インスリン分泌を促す作用があり糖尿病の治療に用いられる。スルホニルウレア(sulfonylurea, SU)剤の受容サイトがあることから、K<sub>ATP </sub>チャネルのβサブユニットはスルホニルウレア受容体(sulfonylurea receptor, SUR)と呼ばれる。また、[[wikipedia:ja:diazoxide|diazoxide]]や[[wikipedia:ja:pinacidil|pinacidil]]などカリウムチャネル開口薬(K channel opener, KCO)とはK<sub>ATP</sub>チャネルの開口薬である。これらは血管の緊張を緩和し、血管拡張剤として用いられている。KCOもK<sub>ATP</sub>チャネルのβサブユニットSURに作用する。
 K<sub>ATP</sub>チャネルの[[阻害薬]]と[[活性化薬]]が薬物治療に用いられている。スルホニルウレア剤(tolbutamide、glibenclamideなど)は膵臓β細胞のK<sub>ATP</sub>チャネルを阻害し細胞を脱分極させ、インスリン分泌を促す作用があり糖尿病の治療に用いられる。スルホニルウレア(sulfonylurea, SU)剤の受容サイトがあることから、K<sub>ATP </sub>チャネルのβサブユニットはスルホニルウレア受容体(sulfonylurea receptor, SUR)と呼ばれる。また、[[wikipedia:diazoxide|diazoxide]]や[[wikipedia:pinacidil|pinacidil]]などカリウムチャネル開口薬(K channel opener, KCO)とはK<sub>ATP</sub>チャネルの開口薬である。これらは血管の緊張を緩和し、血管拡張剤として用いられている。KCOもK<sub>ATP</sub>チャネルのβサブユニットSURに作用する。


 [[wikipedia:ja:吸引性麻酔薬|吸引性麻酔薬]]である[[wikipedia:ja:halothane|halothane]]がK2Pチャネルを活性化することが知られており、この作用は局所麻酔薬の分子作用機序として考えられている<ref><pubmed>10321245</pubmed></ref>。
 [[wikipedia:ja:吸引性麻酔薬|吸引性麻酔薬]]である[[wikipedia:halothane|halothane]]がK2Pチャネルを活性化することが知られており、この作用は局所麻酔薬の分子作用機序として考えられている<ref><pubmed>10321245</pubmed></ref>。


 臨床で用いられているものを含む多くの化合物の作用を詳細に調べると、主作用とは別にカリウムチャネルに対する作用を併せ持つ薬物が非常に多くあることが分かってきた。例えば[[wikipedia:ja:抗ヒスタミン薬|抗ヒスタミン薬]]の[[wikipedia:ja:terfenadine|terfenadine]]はカリウムチャネルを阻害する副作用を持ち、その為に致死的な不整脈を誘発する危険性が有り、臨床で使われなくなった。他には中枢神経系作動薬([[haloperidol]]などの[[抗精神病薬]]や[[fluoxetine]]などの[[抗うつ薬]]など)にも副作用としてカリウムチャネルに対する作用が認められる。例えば''I''<sub>K</sub>電流の阻害が知られており、hERGチャネルの阻害が報告されている。またKirチャネルに対する作用なども報告されているが、治療効果への関与は未解明である。  
 臨床で用いられているものを含む多くの化合物の作用を詳細に調べると、主作用とは別にカリウムチャネルに対する作用を併せ持つ薬物が非常に多くあることが分かってきた。例えば[[wikipedia:ja:抗ヒスタミン薬|抗ヒスタミン薬]]の[[wikipedia:terfenadine|terfenadine]]はカリウムチャネルを阻害する副作用を持ち、その為に致死的な不整脈を誘発する危険性が有り、臨床で使われなくなった。他には中枢神経系作動薬([[haloperidol]]などの[[抗精神病薬]]や[[fluoxetine]]などの[[抗うつ薬]]など)にも副作用としてカリウムチャネルに対する作用が認められる。例えば''I''<sub>K</sub>電流の阻害が知られており、hERGチャネルの阻害が報告されている。またKirチャネルに対する作用なども報告されているが、治療効果への関与は未解明である。  


== 参考文献 ==
== 参考文献 ==