カルシウムカルモジュリン依存性タンパク質キナーゼ

提供:脳科学辞典
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英:Ca2+/calmodulin-dependent protein kinase、英略語:CaMK 同義語:カルシウムカルモジュリン依存性蛋白質リン酸化酵素、CaMキナーゼ、Ca2+/カルモジュリン依存性タンパク質キナーゼ


Calcium/calmodulin dependent protein kinase II association domain
PDB 1hkx EBI.jpg
CaMKII自己会合ドメインの結晶構造。2M6I​による[1]
Identifiers
Symbol CaMKII_AD
Pfam PF08332
InterPro IPR013543

歴史

1968年に骨格筋においてcAMPによるグリコーゲンの分解がタンパク質リン酸化により媒介されることが発見され、cAMPやcGMP、Ca2+といったセカンドメッセンジャーが細胞機能に及ぼす影響の多くが、タンパク質リン酸化により媒介されると考えられるようになりった[2][3]。Ca2+によるタンパク質リン酸化活性の促進がまず報告されたのは、ホスホリラーゼキナーゼやミオシン軽鎖キナーゼである。脳研究では、シナプトソーム膜(synaptosomal membrane) のCa2+依存的なリン酸化においてカルモジュリンが必要であることが報告されたのち、脳に豊富に存在する基質としてsynapsinIなどを用いた酵素精製が進み、Ca2+/calmodulin-dependent protein kinase I(CaMKI)とCaMKIIとが同定された[4]。このカルシウムカルモジュリン依存性蛋白質キナーゼ活性は、多組織に比べ脳において活性が高いことが示され、その後脳機能における研究が著しく展開され、神経伝達物質放出制御、遺伝子発現、受容体制御、細胞骨格制御など幅広い機能が明らかとなった。

分類

タンパク質リン酸化酵素は、特定の基質を標的とする”dedicated kinase”と、幅広い基質選択性を有した、”multifunctional kinase”に分類される。Ca2+/カルモジュリンの結合によって活性化されるカルシウムカルモジュリン依存性蛋白質キナーゼも、前者であるMLCK、EF-2キナーゼ(CaMKIII)などと、後者の多機能性CaMKであるCaMKI、CaMKII、CaMKIVに分類される。多機能性CaMKは、多組織に比べ脳内での活性が高いことが古くから知られている。その幅広い基質選択性により、複数の基質を細胞内でリン酸化することが可能と考えられ、その結果様々な神経細胞機能発揮において多彩な細胞機能修飾能を発揮できる。[5]

多機能性CaMKの構造と神経系における機能

CaMKII

CaMKVI

CaMKI

参考文献

  1. Resource not found in PubMed.
  2. Greengard, P. (1978).
    Phosphorylated proteins as physiological effectors. Science (New York, N.Y.), 199(4325), 146-52. [PubMed:22932] [WorldCat] [DOI]
  3. Nestler, E.J., & Greengard, P. (1983).
    Protein phosphorylation in the brain. Nature, 305(5935), 583-8. [PubMed:6312325] [WorldCat] [DOI]
  4. Nairn, A.C., Hemmings, H.C., & Greengard, P. (1985).
    Protein kinases in the brain. Annual review of biochemistry, 54, 931-76. [PubMed:2411213] [WorldCat] [DOI]
  5. Soderling, T.R., & Stull, J.T. (2001).
    Structure and regulation of calcium/calmodulin-dependent protein kinases. Chemical reviews, 101(8), 2341-52. [PubMed:11749376] [WorldCat]