「カルパイン」の版間の差分

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<font size="+1">[http://researchmap.jp/kosato 佐藤 亘]、[http://researchmap.jp/read0080235 西道 隆臣]</font><br>
<font size="+1">[http://researchmap.jp/kosato 佐藤 亘]、[http://researchmap.jp/read0080235 西道 隆臣]</font><br>
''国立研究開発法人理化学研究所 脳科学総合研究センター''<br>
''国立研究開発法人理化学研究所 脳科学総合研究センター''<br>
DOI:<selfdoi /> 原稿受付日:2015年9月8日 原稿完成日:2015年X月X日<br>
DOI:<selfdoi /> 原稿受付日:2015年9月8日 原稿完成日:2015年10月5日<br>
担当編集委員:[http://researchmap.jp/wadancnp 和田 圭司](国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター)<br>
担当編集委員:[http://researchmap.jp/wadancnp 和田 圭司](国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター)<br>
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 カルパインは主に細胞骨格系のタンパク質を限定分解することにより細胞の形態的変化を伴う現象(例えば細胞の移動など)に関与していると考えられている。
 カルパインは主に細胞骨格系のタンパク質を限定分解することにより細胞の形態的変化を伴う現象(例えば細胞の移動など)に関与していると考えられている。


 [[遺伝子改変マウス]]の解析例として、カルパイン1欠損マウスでは目立った表現型はみられないが<ref name=ref17><pubmed>16150618</pubmed></ref>、カルパイン2欠損マウスおよびCAPNS1欠損マウスでは[[wJ:胚性期|胚性期]]に致死を示すことから、カルパイン2は初期発生に必須である<ref name=ref18><pubmed>16433929</pubmed></ref> <ref name=ref19><pubmed>21791606</pubmed></ref>。また、カルパイン3の遺伝子変異は[[肢帯型筋ジストロフィー]]の原因として同定されている<ref name=ref20><pubmed>7720071</pubmed></ref>ほか、カルパイン10の[[SNP]]と[[wj:2型糖尿病|2型糖尿病]]との関連が報告されている<ref name=ref21><pubmed>11017071</pubmed></ref>。
 [[遺伝子改変マウス]]の解析例として、CAPN1欠損マウスでは目立った表現型はみられないが<ref name=ref17><pubmed>16150618</pubmed></ref>、CAPN2欠損マウスおよびCAPNS1欠損マウスでは[[wJ:胚性期|胚性期]]に致死を示すことから、カルパイン2は初期発生に必須である<ref name=ref18><pubmed>16433929</pubmed></ref> <ref name=ref19><pubmed>21791606</pubmed></ref>。


 一方、神経特異的なCAPNS1[[コンディショナル欠損マウス]]においてはカルパイン1および2の発現量低下とともに[[樹状突起]]の形態異常や[[LTP]]の減弱がみられることから<ref name=ref22><pubmed>23536090</pubmed></ref>カルパイン1および2と[[シナプス可塑性]]との関連が強く示唆されるが、その詳しいメカニズムについては不明である。
 一方、神経特異的なCAPNS1[[コンディショナル欠損マウス]]においてはカルパイン1および2の発現量低下とともに[[樹状突起]]の形態異常や[[LTP]]の減弱がみられることから<ref name=ref22><pubmed>23536090</pubmed></ref>カルパイン1および2と[[シナプス可塑性]]との関連が強く示唆されるが、その詳しいメカニズムについては不明である。


=== 病態関連因子としての役割 ===
=== 病態関連因子としての役割 ===
 カルパイン3の遺伝子変異は[[肢帯型筋ジストロフィー]]の原因として同定されている<ref name=ref20><pubmed>7720071</pubmed></ref>ほか、カルパイン10の[[SNP]]と[[wj:2型糖尿病|2型糖尿病]]との関連が報告されている<ref name=ref21><pubmed>11017071</pubmed></ref>。
 [[アルツハイマー病]]患者脳において活性化カルパイン量の上昇が報告されて以来<ref name=ref23><pubmed>8464868</pubmed></ref>、カルパインと[[アルツハイマー病]]との関連が多数報告されている。最新のアルツハイマー病モデルマウスを用いた研究からは、カルパインが[[アミロイド]]斑の形成促進と[[神経炎症]]の増悪化に関与する可能性が示されている<ref name=ref24><pubmed>24728269</pubmed></ref>。
 [[アルツハイマー病]]患者脳において活性化カルパイン量の上昇が報告されて以来<ref name=ref23><pubmed>8464868</pubmed></ref>、カルパインと[[アルツハイマー病]]との関連が多数報告されている。最新のアルツハイマー病モデルマウスを用いた研究からは、カルパインが[[アミロイド]]斑の形成促進と[[神経炎症]]の増悪化に関与する可能性が示されている<ref name=ref24><pubmed>24728269</pubmed></ref>。