「キネシン」の版間の差分

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==== KIF13A ====
==== KIF13A ====
 KIF13AはKinesin-3ファミリーに属し、AP-1複合体を介してマンノース-6-リン酸受容体に結合し、これを含む小胞をゴルジ装置から形質膜へ輸送する(ref32)。
 KIF13AはKinesin-3ファミリーに属し、AP-1複合体を介してマンノース-6-リン酸受容体に結合し、これを含む小胞をゴルジ装置から形質膜へ輸送する<ref name="ref32"><pubmed>11106728</pubmed></ref>。


==== KIF16B ====
==== KIF16B ====
 KIF16BはKinesin-3ファミリーに属し、Rab14を介してFGF受容体をゴルジ装置からエンドソームへ輸送することによって、胎児の発生期における初期胚形成に重要な働きを持つ(ref33)。
 KIF16BはKinesin-3ファミリーに属し、Rab14を介してFGF受容体をゴルジ装置からエンドソームへ輸送することによって、胎児の発生期における初期胚形成に重要な働きを持つ<ref name="ref33"><pubmed>21238925</pubmed></ref>。


==== KIF17 ====
==== KIF17 ====
 KIF17はKinesin-2ファミリーに属し、樹状突起でMint1(LIN10)を含む足場蛋白複合体を介してNMDA受容体サブユニットのNR2Bに結合し、これを輸送する(ref34)。また、カーゴの解離には、CaMKⅡαによるKIF17のリン酸化が重要である(ref35)。近年、遺伝子改変マウスの解析により、KIF17は単にNMDA受容体を輸送するだけでなく、転写因子CREBのリン酸化を介してKIF17及びNR2B mRNAsの転写を促進し、記憶・学習を制御していることが明らかとなった。KIF17を過剰発現させたマウスでは、空間及び作業記憶の向上が見られ(ref36)、一方で、Kif17ホモ欠損マウスでは、海馬依存的記憶の障害が認められた(ref37)。また、KIF17はNR2AとNR2Bの発現量を異なる機序で制御し、シナプスの機能や可塑性に重要な働きをしていることが示された(ref37)。
 KIF17はKinesin-2ファミリーに属し、樹状突起でMint1(LIN10)を含む足場蛋白複合体を介してNMDA受容体サブユニットのNR2Bに結合し、これを輸送する<ref name="ref34"><pubmed>10846156</pubmed></ref>。また、カーゴの解離には、CaMKⅡαによるKIF17のリン酸化が重要である<ref name="ref35"><pubmed>18066053</pubmed></ref>。近年、遺伝子改変マウスの解析により、KIF17は単にNMDA受容体を輸送するだけでなく、転写因子CREBのリン酸化を介してKIF17及びNR2B mRNAsの転写を促進し、記憶・学習を制御していることが明らかとなった。KIF17を過剰発現させたマウスでは、空間及び作業記憶の向上が見られ<ref name="ref36"><pubmed>12391294</pubmed></ref>、一方で、Kif17ホモ欠損マウスでは、海馬依存的記憶の障害が認められた<ref name="ref37"><pubmed>21521616</pubmed></ref>。また、KIF17はNR2AとNR2Bの発現量を異なる機序で制御し、シナプスの機能や可塑性に重要な働きをしていることが示された<ref name="ref37"><pubmed>21521616</pubmed></ref>。


==== KIF26A ====
==== KIF26A ====
 KIF26AはKIF26BとともにKinesin-11ファミリーに属し、ATPase活性や運動能を持たないユニークなKIFsである(ref38)。KIF26Aは、GDNF/Retシグナル伝達系の抑制因子として働くことによって腸管神経細胞の増殖を制御し、腸管の発達・形成に必須の働きを持つ(ref38)。
 KIF26AはKIF26BとともにKinesin-11ファミリーに属し、ATPase活性や運動能を持たないユニークなKIFsである<ref name="ref38"><pubmed>19914172</pubmed></ref>。KIF26Aは、GDNF/Retシグナル伝達系の抑制因子として働くことによって腸管神経細胞の増殖を制御し、腸管の発達・形成に必須の働きを持つ<ref name="ref38"><pubmed>19914172</pubmed></ref>。


==== C-KIFs(KIFC1、KIFC2、KIFC3)====
==== C-KIFs(KIFC1、KIFC2、KIFC3)====
 C-KIFsにはKIFC1、KIFC2、KIFC3の3つがあり、Kinesin-14A及び14Bファミリーに属する。これらC-KIFsは、微小管の-端方向へ動く性質を持つ。KIFC1は多様な組織で発現し、細胞分裂に関与している。KIFC2は主に樹状突起に局在し、多胞体様の膜小器官を輸送している(ref39)。KIFC3は腎上皮細胞(MDCK細胞)で頂上部形質膜へ向けAnnexinⅩⅢbを含む膜小胞を輸送している(ref40)。
 C-KIFsにはKIFC1、KIFC2、KIFC3の3つがあり、Kinesin-14A及び14Bファミリーに属する。これらC-KIFsは、微小管の-端方向へ動く性質を持つ。KIFC1は多様な組織で発現し、細胞分裂に関与している。KIFC2は主に樹状突起に局在し、多胞体様の膜小器官を輸送している<ref name="ref39"><pubmed>9115736</pubmed></ref>。KIFC3は腎上皮細胞(MDCK細胞)で頂上部形質膜へ向けAnnexinⅩⅢbを含む膜小胞を輸送している<ref name="ref40"><pubmed>11581287</pubmed></ref>。