「グリシン受容体」の版間の差分

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<font size="+1">[http://researchmap.jp/read0098270 赤木 宏行]</font><br>
<font size="+1">[http://researchmap.jp/read0098270 赤木 宏行]</font><br>
''広島国際大学薬学部''<br>
''広島国際大学薬学部''<br>
DOI [[XXXX]]/XXXX 原稿受付日:2013年11月27日 原稿完成日:2013年月日<br>
DOI:<selfdoi /> 原稿受付日:2013年11月27日 原稿完成日:2013年12月28日<br>
担当編集委員:[http://researchmap.jp/Bito 尾藤 晴彦](東京大学 大学院医学系研究科 神経生化学分野)<br>
担当編集委員:[http://researchmap.jp/2rikenbsi 林 康紀](独立行政法人理化学研究所 脳科学総合研究センター)<br>
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{{box|text= [[グリシン]]は、[[wikipedia:ja:脊椎動物|脊椎動物]]の神経系において[[神経伝達物質]]として機能している。[[ニューロン]]の[[シナプス]]膜に発現するグリシン受容体は、2個のαサブユニット、3個のβサブユニットから成る5量体構造であり、その中心部に陰イオンチャネルが形成される。さらに細胞質タンパク質の[[ゲフィリン]](gephyrin)が会合して、シナプス後膜に固定されている。イオンチャネルの内壁に面するαサブユニットの第2膜貫通領域には、グリシン受容体と同じく陰イオンチャネル型受容体である[[γ-アミノ酪酸(GABA)A受容体|γ-アミノ酪酸(GABA)<sub>A</sub>受容体]]の同部位と共通のアミノ酸配列がみられ、この領域が陰イオン(生理的には主にCl<sup>-</sup>)の選択的透過性を担っているものと考えられる。グリシンのαサブユニットにはα<sub>1</sub>からα<sub>4</sub>までのサブファミリーが存在し、神経系におけるそれぞれのサブユニットの発現部位や発現の時期には違いが見られる。グリシン作動性シナプスの主要な機能は、[[興奮性シナプス]]伝達の抑制であり、[[wikipedia:ja:ほ乳類|ほ乳類]]では,主に[[脳幹]]や[[脊髄]]全域で作動している。近年、α<sub>3</sub>サブユニットを含むグリシン受容体が[[wikipedia:ja:炎症性疼痛|炎症性疼痛]]の制御に関与することが示され、注目されている。}}
{{box|text= [[グリシン]]は、[[wikipedia:ja:脊椎動物|脊椎動物]]の神経系において[[神経伝達物質]]として機能している。[[ニューロン]]の[[シナプス]]膜に発現するグリシン受容体は、2個のαサブユニット、3個のβサブユニットから成る5量体構造であり、その中心部に陰イオンチャネルが形成される。さらに細胞質タンパク質の[[ゲフィリン]](gephyrin)が会合して、シナプス後膜に固定されている。イオンチャネルの内壁に面するαサブユニットの第2膜貫通領域には、グリシン受容体と同じく陰イオンチャネル型受容体である[[GABAA受容体|γ-アミノ酪酸(GABA)<sub>A</sub>受容体]]の同部位と共通のアミノ酸配列がみられ、この領域が陰イオン(生理的には主にCl<sup>-</sup>)の選択的透過性を担っているものと考えられる。グリシンのαサブユニットにはα<sub>1</sub>からα<sub>4</sub>までのサブファミリーが存在し、神経系におけるそれぞれのサブユニットの発現部位や発現の時期には違いが見られる。グリシン作動性シナプスの主要な機能は、[[興奮性シナプス]]伝達の抑制であり、[[wikipedia:ja:ほ乳類|ほ乳類]]では,主に[[脳幹]]や[[脊髄]]全域で作動している。近年、α<sub>3</sub>サブユニットを含むグリシン受容体が[[wikipedia:ja:炎症性疼痛|炎症性疼痛]]の制御に関与することが示され、注目されている。}}
{{Pfam_box
{{Pfam_box
| Symbol      = Neur_chan_memb
| Symbol      = Neur_chan_memb
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| TCDB        = 1.A.9
| TCDB        = 1.A.9
| OPM family  = 14
| OPM family  = 14
| OPM protein = 2m6b)
| OPM protein = 2m6i
}}
}}


== イントロダクション ==
== グリシン受容体とは ==
 グリシンはタンパク質を構成する重要な[[wikipedia:ja:α-アミノ酸|α-アミノ酸]]の一つであるが、それ自体が[[抑制性神経伝達物質]]して機能している。同様な作用を示す[[γ-アミノ酪酸]]([[GABA]])が[[中枢神経]]全体で広く作用するのに対し、グリシンは主に脳幹と脊髄で機能する。
 グリシンはタンパク質を構成する重要な[[wikipedia:ja:α-アミノ酸|α-アミノ酸]]の一つであるが、それ自体が[[抑制性神経伝達物質]]して機能している。同様な作用を示す[[γ-アミノ酪酸]]([[GABA]])が[[中枢神経]]全体で広く作用するのに対し、グリシンは主に脳幹と脊髄で機能する。


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 α<sub>4</sub>サブユニットの機能的役割は、今のところ明らかにされていない。
 α<sub>4</sub>サブユニットの機能的役割は、今のところ明らかにされていない。


== グリシン受容体の異常を伴う疾患 ==
== 疾患との関わり ==
 グリシン受容体の異常に起因する先天性疾患が、[[マウス]]、[[ウシ]]、ヒトや[[ゼブラフィッシュ]]で知られている<ref name=ref20><pubmed>2845573</pubmed></ref> <ref name=ref21><pubmed>7946325</pubmed></ref> <ref name=ref22><pubmed>8298642</pubmed></ref> <ref name=ref23><pubmed>15928085</pubmed></ref>。
 グリシン受容体の異常に起因する先天性疾患が、[[マウス]]、[[ウシ]]、ヒトや[[ゼブラフィッシュ]]で知られている<ref name=ref20><pubmed>2845573</pubmed></ref> <ref name=ref21><pubmed>7946325</pubmed></ref> <ref name=ref22><pubmed>8298642</pubmed></ref> <ref name=ref23><pubmed>15928085</pubmed></ref>。


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== 関連項目 ==
== 関連項目 ==
*抑制性伝達物質
*[[抑制性アミノ酸]]
*[[脊髄介在神経]]
*[[グリシン]]
*[[脊髄介在ニューロン]]
*[[シナプス伝達]]
*[[シナプス伝達]]
*[[神経伝達物質受容体]]
*[[神経伝達物質受容体]]
*[[イオンチャネル型受容体]]
*[[イオンチャネル型受容体]]
*[[GABAA受容体]]
*[[GABAA受容体|GABA<sub>A</sub>受容体]]
*[[NMDA受容体]]


== 参考文献 ==
== 参考文献 ==
<references />
<references />

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