「グルタミン酸仮説」の版間の差分

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==抗NMDA受容体脳炎==
==抗NMDA受容体脳炎==
 統合失調症の一型とされている「緊張病」の一部に、高熱、チアノーゼ、昏迷をともない急速に死に至る場合があることが19世紀から知られていた。Stauderは、18歳から26歳の若年者に生じる致死性緊張病として27例を報告している<ref>'''Stauder KH.'''<br>Die todliche Katatonie. <br>''Arch Psychiatr'' 102: 614 1934</ref>。2011年にDalmauは、辺縁系脳炎でNMDA(N-methyl D-aspartate)受容体に対する抗体を検出する病態を抗NMDA受容体脳炎と提唱した<ref><pubmed>21163445</pubmed></ref>。脳炎なので様々な精神症状も呈するが、発熱、チアノーゼ、てんかん発作などから死に至る場合もある。腫瘍をもった個体が腫瘍を非自己として抗体を産生し、腫瘍を標的とした抗体が中枢神経を抗原と誤認して交叉免疫を生じる神経症状を傍腫瘍症候群と呼ぶ。当初、抗NMDA受容体脳炎も卵巣奇形腫を合併する症例で報告されたので傍腫瘍性脳炎と考えられていた。しかし、腫瘍を伴わない自己免疫症例も報告された。2013年、Steinerらは統合失調症と診断された12例から抗NMDA受容体抗体を検出し注目された<ref><pubmed>23344076</pubmed></ref>。それは、急性致死性緊張病の一部が抗NMDA受容体脳炎だった可能性が浮上したからである。<br>このように、抗NMDA受容体脳炎が統合失調症と診断されうる状態を引き起こすことは、統合失調症のグルタミン酸仮説を支持する。
 統合失調症の一型とされている「緊張病」の一部に、高熱、チアノーゼ、昏迷をともない急速に死に至る場合があることが19世紀から知られていた。Stauderは、18歳から26歳の若年者に生じる致死性緊張病として27例を報告している<ref>'''Stauder KH.'''<br>Die todliche Katatonie. <br>''Arch Psychiatr'' 102: 614 1934</ref>。2011年にDalmauは、辺縁系脳炎でNMDA(N-methyl D-aspartate)受容体に対する抗体を検出する病態を抗NMDA受容体脳炎と提唱した<ref><pubmed>21163445</pubmed></ref>。脳炎なので様々な精神症状も呈するが、発熱、チアノーゼ、てんかん発作などから死に至る場合もある。腫瘍をもった個体が腫瘍を非自己として抗体を産生し、腫瘍を標的とした抗体が中枢神経を抗原と誤認して交叉免疫を生じる神経症状を傍腫瘍症候群と呼ぶ。当初、抗NMDA受容体脳炎も卵巣奇形腫を合併する症例で報告されたので傍腫瘍性脳炎と考えられていた。しかし、腫瘍を伴わない自己免疫症例も報告された。2013年、Steinerらは統合失調症と診断された12例から抗NMDA受容体抗体を検出し注目された<ref><pubmed>23344076</pubmed></ref>。それは、急性致死性緊張病の一部が抗NMDA受容体脳炎だった可能性が浮上したからである。<br> このように、抗NMDA受容体脳炎が統合失調症と診断されうる状態を引き起こすことは、統合失調症のグルタミン酸仮説を支持する。


==参考文献==
==参考文献==

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