「ケタミン」の版間の差分

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(<u>編集部コメント:物性上の特徴はこちらでまとめて頂ければと思います。</u>)
(<u>編集部コメント:物性上の特徴はこちらでまとめて頂ければと思います。</u>)
== 副作用 ==
 麻酔から覚醒する際に、幻覚、悪夢、浮遊感覚などの症状が観察される。(<u>編集部コメント:この点もう少し膨らませて頂ければと思います。</u>)


== 代謝 ==
== 代謝 ==
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 2020年にブラジルの研究者が、治療抵抗性うつ病患者を対象とした(R)-ケタミン(0.5 mg/kg)のオープンラベルの予備試験を報告した。(R)-ケタミンは、静脈投与1時間後には強力な抗うつ効果を示し、1週間後でも確認された。興味深い事に、(R)-ケタミンの投与量は、上記の(S)-ケタミンの投与量(0.2 and 0.4 mg/kg)<ref name=Singh2016><pubmed>26707087</pubmed></ref> (19)より高いにも関わらず、解離症状などの副作用は殆ど観察されなかった<ref name=Leal2020><pubmed>32078034</pubmed></ref> (27)。(R)-ケタミンの即効性抗うつ効果と副作用については、今後、大規模な臨床試験が必要であろう。
 2020年にブラジルの研究者が、治療抵抗性うつ病患者を対象とした(R)-ケタミン(0.5 mg/kg)のオープンラベルの予備試験を報告した。(R)-ケタミンは、静脈投与1時間後には強力な抗うつ効果を示し、1週間後でも確認された。興味深い事に、(R)-ケタミンの投与量は、上記の(S)-ケタミンの投与量(0.2 and 0.4 mg/kg)<ref name=Singh2016><pubmed>26707087</pubmed></ref> (19)より高いにも関わらず、解離症状などの副作用は殆ど観察されなかった<ref name=Leal2020><pubmed>32078034</pubmed></ref> (27)。(R)-ケタミンの即効性抗うつ効果と副作用については、今後、大規模な臨床試験が必要であろう。
==== ケタミン異性体の副作用 ====
(<u>編集部コメント:副作用はまとめて1箇所に書いて頂ければと思います</u>)
 ケタミンはうつ病患者において即効性抗うつ作用および希死念慮低下作用を示すが、ケタミンの副作用は臨床応用を考えた場合、解決すべき大きな課題である。精神病惹起作用の指標である運動量亢進作用、プレパルス抑制障害、場所嗜好性試験、前頭皮質におけるパルブアルブミン陽性細胞の低下は、(S)-ケタミンの単回投与および繰り返し投与で起きるが、(R)-ケタミンでは起きなかった<ref name=Yang2015><pubmed>26327690</pubmed></ref>  <ref name=Chang2019><pubmed>31034852</pubmed></ref><ref name=Yang2016><pubmed>27043274</pubmed></ref> (25,28,29)。 (S)-ケタミンや(R,S)-ケタミンの投与では、ラット脳梁膨大後部皮質における熱ストレスタンパク質(神経障害マーカー)の誘導が起きるが、(R)-ケタミンの投与では起きなかった<ref name=Tian2018><pubmed>30030125</pubmed></ref> (30)。浜松ホトニクス社との無麻酔サルPETを用いた研究から、(R)-ケタミンの静脈投与は、ドパミンD2受容体に影響を与えないが、(S)-ケタミンの静脈投与はドパミンD2受容体を有意に低下することを報告した<ref name=Hashimoto2017><pubmed>27091456</pubmed></ref> (31)。この結果は、(S)-ケタミン投与により、前シナプスからドパミン放出が起きていることを示しており、ヒトにおける(S)-ケタミン静脈投与後の精神病惹起作用および解離症状<ref name=Singh2016><pubmed>26707087</pubmed></ref> (19)と関連していると思われる。このように、ケタミンの副作用は、主にNMDA型グルタミン酸受容体が関与していることから、NMDA型グルタミン酸受容体への親和性が低い(R)-ケタミンは(R,S)-ケタミンや(S)-ケタミンより副作用の少ない安全な抗うつ薬として期待される<ref name=橋本謙二2020a /><ref name=橋本謙二2020b />
 1997年に健常者を対象としたケタミン異性体の報告がスイスから発表された。この論文では、(S)-ケタミンは健常者において精神病惹起作用や解離症状を引き起こすが、同じ投与量の(R)-ケタミンはこのような症状を引き起こさず、逆にリラックスな症状をもたらしたことを報告した<ref name=Vollenweider1997><pubmed>9088882</pubmed></ref>(32)。このようにケタミンの副作用は、主に(S)-ケタミンが寄与しており、(R)-ケタミンの寄与は低いと報告されている<ref name=Zanos2018><pubmed>29945898</pubmed></ref> (33)。
 以上の結果より、(R)-ケタミンは副作用の少ない即効性抗うつ薬になると期待されている<ref name=Hashimoto2016><pubmed>27283221</pubmed></ref><ref name=Hashimoto2019><pubmed>31215725</pubmed></ref><ref name=Hashimoto2020><pubmed>32224141</pubmed></ref><ref name=Yang2019><pubmed>31699965</pubmed></ref><ref name=橋本謙二2020d>'''橋本謙二 (2020)'''<br>即効性抗うつ薬(R)-ケタミン:千葉大学から世界へ<br>Medical Science Digest 46, 70-71.</ref> (14-16,34,35)。現在、米国Perception Neuroscience社が米国FDAの承認に向けた臨床治験を実施している<ref name=Hashimoto2019><pubmed>31215725</pubmed></ref>(14)。


====抗うつ作用機序 ====
====抗うつ作用機序 ====
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 最後に、現時点でケタミンやケタミン異性体の抗うつ効果の詳細な作用機序は明らかでない。マウスを用いた強制水泳試験や尾懸垂試験は、うつ病患者の抗うつ効果を必ずしも予測しないので、注意が必要である<ref name=Abdallah2020b><pubmed>32291407</pubmed></ref> (50)。将来、ケタミンの新規治療ターゲットが同定されれば、ケタミンの副作用を有さない新規抗うつ薬の創製につながると期待される。
 最後に、現時点でケタミンやケタミン異性体の抗うつ効果の詳細な作用機序は明らかでない。マウスを用いた強制水泳試験や尾懸垂試験は、うつ病患者の抗うつ効果を必ずしも予測しないので、注意が必要である<ref name=Abdallah2020b><pubmed>32291407</pubmed></ref> (50)。将来、ケタミンの新規治療ターゲットが同定されれば、ケタミンの副作用を有さない新規抗うつ薬の創製につながると期待される。
== 副作用 ==
 麻酔から覚醒する際に、幻覚、悪夢、浮遊感覚などの症状が観察される。(<u>編集部コメント:麻酔薬として用いたときの副作用についても、もう少し膨らませて頂ければと思います。</u>)
==== ケタミン異性体の副作用 ====
(<u>編集部コメント:副作用はまとめて1箇所に書いて頂ければと思います</u>)
 ケタミンはうつ病患者において即効性抗うつ作用および希死念慮低下作用を示すが、ケタミンの副作用は臨床応用を考えた場合、解決すべき大きな課題である。精神病惹起作用の指標である運動量亢進作用、プレパルス抑制障害、場所嗜好性試験、前頭皮質におけるパルブアルブミン陽性細胞の低下は、(S)-ケタミンの単回投与および繰り返し投与で起きるが、(R)-ケタミンでは起きなかった<ref name=Yang2015><pubmed>26327690</pubmed></ref>  <ref name=Chang2019><pubmed>31034852</pubmed></ref><ref name=Yang2016><pubmed>27043274</pubmed></ref> (25,28,29)。 (S)-ケタミンや(R,S)-ケタミンの投与では、ラット脳梁膨大後部皮質における熱ストレスタンパク質(神経障害マーカー)の誘導が起きるが、(R)-ケタミンの投与では起きなかった<ref name=Tian2018><pubmed>30030125</pubmed></ref> (30)。浜松ホトニクス社との無麻酔サルPETを用いた研究から、(R)-ケタミンの静脈投与は、ドパミンD2受容体に影響を与えないが、(S)-ケタミンの静脈投与はドパミンD2受容体を有意に低下することを報告した<ref name=Hashimoto2017><pubmed>27091456</pubmed></ref> (31)。この結果は、(S)-ケタミン投与により、前シナプスからドパミン放出が起きていることを示しており、ヒトにおける(S)-ケタミン静脈投与後の精神病惹起作用および解離症状<ref name=Singh2016><pubmed>26707087</pubmed></ref> (19)と関連していると思われる。このように、ケタミンの副作用は、主にNMDA型グルタミン酸受容体が関与していることから、NMDA型グルタミン酸受容体への親和性が低い(R)-ケタミンは(R,S)-ケタミンや(S)-ケタミンより副作用の少ない安全な抗うつ薬として期待される<ref name=橋本謙二2020a /><ref name=橋本謙二2020b />
 1997年に健常者を対象としたケタミン異性体の報告がスイスから発表された。この論文では、(S)-ケタミンは健常者において精神病惹起作用や解離症状を引き起こすが、同じ投与量の(R)-ケタミンはこのような症状を引き起こさず、逆にリラックスな症状をもたらしたことを報告した<ref name=Vollenweider1997><pubmed>9088882</pubmed></ref>(32)。このようにケタミンの副作用は、主に(S)-ケタミンが寄与しており、(R)-ケタミンの寄与は低いと報告されている<ref name=Zanos2018><pubmed>29945898</pubmed></ref> (33)。
 以上の結果より、(R)-ケタミンは副作用の少ない即効性抗うつ薬になると期待されている<ref name=Hashimoto2016><pubmed>27283221</pubmed></ref><ref name=Hashimoto2019><pubmed>31215725</pubmed></ref><ref name=Hashimoto2020><pubmed>32224141</pubmed></ref><ref name=Yang2019><pubmed>31699965</pubmed></ref><ref name=橋本謙二2020d>'''橋本謙二 (2020)'''<br>即効性抗うつ薬(R)-ケタミン:千葉大学から世界へ<br>Medical Science Digest 46, 70-71.</ref> (14-16,34,35)。現在、米国Perception Neuroscience社が米国FDAの承認に向けた臨床治験を実施している<ref name=Hashimoto2019><pubmed>31215725</pubmed></ref>(14)。


==研究利用==
==研究利用==