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<font size="+1">山形方人</font><br>
<font size="+1">山形方人</font><br>
''Harvard University''<br>
''Harvard University''<br>
DOI:<selfdoi /> 原稿受付日:2016年6月21日 原稿完成日:2016年x月x日<br>
DOI:<selfdoi /> 原稿受付日:2016年6月21日 原稿完成日:2016年6月29日<br>
担当編集委員:[http://researchmap.jp/tsuyoshimiyakawa 宮川 剛](藤田保健衛生大学)<br>
担当編集委員:[http://researchmap.jp/tsuyoshimiyakawa 宮川 剛](藤田保健衛生大学)<br>
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 歴史的には、簡素な解剖用具などを用いて[[神経線維]]を観察することから、[[目]]と[[脳]]など神経組織同士を接続している構造が存在することは想像されていた(例:[[wj:ルネ・デカルト|デカルト]]、1677年、'''図1''')。
 歴史的には、簡素な解剖用具などを用いて[[神経線維]]を観察することから、[[目]]と[[脳]]など神経組織同士を接続している構造が存在することは想像されていた(例:[[wj:ルネ・デカルト|デカルト]]、1677年、'''図1''')。


 19世紀末になると、[[wj:サンティアゴ・ラモン・イ・カハール|Santiago Rámon y Cajal]](1852-1934)が、個々の神経細胞の形態を明確に染め出すことを可能にした[[ゴルジ染色|Golgi染色]]と[[光学顕微鏡]]を用いることで、脳が多数の神経細胞とそれらの結合によって成り立っていることを提唱した('''図2''')。以後、神経細胞の間の結合を記述する研究は盛んに行われてきた<ref><pubmed>21782932</pubmed></ref><ref>'''Larry Swanson, Jeffrey W. Lichtman'''<br>From Cajal to Connectome and Beyond<br>''Annual Reveiw of Neuroscience'', in press</ref>。Golgi染色や[[ニッスル染色|Nissl染色]]などを施した連続切片を観察する時代を経て、20世紀中頃になると脳損傷後の変性神経線維をNauta法などで染色することで、神経回路の存在を確認する時代になった。
 19世紀末になると、[[wj:サンティアゴ・ラモン・イ・カハール|Santiago Rámon y Cajal]](1852-1934)が、個々の神経細胞の形態を明確に染め出すことを可能にした[[ゴルジ染色|Golgi染色]]と[[光学顕微鏡]]を用いることで、脳が多数の神経細胞とそれらの結合によって成り立っていることを提唱した('''図2''')。以後、神経細胞の間の結合を記述する研究は盛んに行われてきた<ref><pubmed>21782932</pubmed></ref><ref><pubmed>27442070</pubmed></ref>。Golgi染色や[[ニッスル染色|Nissl染色]]などを施した連続切片を観察する時代を経て、20世紀中頃になると脳損傷後の変性神経線維をNauta法などで染色することで、神経回路の存在を確認する時代になった。


 1970年ごろになると、放射性[[wj:アミノ酸|アミノ酸]]や、[[wj:酵素|酵素]]([[西洋ワサビペルオキシダーゼ]] ([[horseradish peroxidase]]; [[HRP]]))などの[[軸索輸送]]を利用することで、神経回路の観察が簡便に行われるようになった。更に、1980年代には、脂溶性carbocyanine[[蛍光色素]]などの生体結合特性を持った蛍光色素([[DiI]]など)、[[wj:植物レクチン|植物レクチン]]([[wheat germ agglutinin]] ([[wheat germ agglutinin|WGA]])、[[phytohaemagglutinin]] ([[phytohaemagglutinin|PHA-L]])など)、[[ビオチン]]誘導体 ([[biocytin]], [[Neurobiotin]]など)、軸索を効率的に移動する[[コレラ毒素]]サブユニット等の高感度トレーサーが開発され、多くの研究者に汎用されるようになった。
 1970年ごろになると、放射性[[wj:アミノ酸|アミノ酸]]や、[[wj:酵素|酵素]]([[西洋ワサビペルオキシダーゼ]] ([[horseradish peroxidase]]; [[HRP]]))などの[[軸索輸送]]を利用することで、神経回路の観察が簡便に行われるようになった。更に、1980年代には、脂溶性carbocyanine[[蛍光色素]]などの生体結合特性を持った蛍光色素([[DiI]]など)、[[wj:植物レクチン|植物レクチン]]([[wheat germ agglutinin]] ([[wheat germ agglutinin|WGA]])、[[phytohaemagglutinin]] ([[phytohaemagglutinin|PHA-L]])など)、[[ビオチン]]誘導体 ([[biocytin]], [[Neurobiotin]]など)、軸索を効率的に移動する[[コレラ毒素]]サブユニット等の高感度トレーサーが開発され、多くの研究者に汎用されるようになった。
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 ミクロスケールなコネクトーム構築には、電子顕微鏡で観察するための多数の連続切片を失うことなく作製し、撮影し、その画像を保存し、結合性を解析していくための技術開発が行われてきている(後述)。その結果、[[マウス]][[網膜]]、[[ショウジョウバエ]]視覚系、マウス[[大脳]][[視覚野]]の部分的なコネクトームなどが構築された。これらの情報を総合的に収集しているのは、[http://www.openconnectomeproject.org/ Open Connectome project]である。
 ミクロスケールなコネクトーム構築には、電子顕微鏡で観察するための多数の連続切片を失うことなく作製し、撮影し、その画像を保存し、結合性を解析していくための技術開発が行われてきている(後述)。その結果、[[マウス]][[網膜]]、[[ショウジョウバエ]]視覚系、マウス[[大脳]][[視覚野]]の部分的なコネクトームなどが構築された。これらの情報を総合的に収集しているのは、[http://www.openconnectomeproject.org/ Open Connectome project]である。


 一方、Olaf Spornsによるヒト・コネクトームの提唱以来、脳の機能と病態を理解するためにヒトの脳で研究されているのは、メソレベルのコネクトームより更にスケールの大きな'''「マクロスケール Macroscale」'''のコネクトームである<ref name=sporns>'''Olaf Sporns'''<br>Discovering the Human Connectome<br>''MIT Press'' 2012 ISBN 0262017903</ref><ref>'''Henry Kennedy, David C. Van Essen, Yves Christen (eds.)'''<br>Micro-, Meso- and Macro-Connectomics of the Brain<br>''Springer'', 2016 [http://link.springer.com/book/10.1007%2F978-3-319-27777-6 [OpenAccess]]</ref>。これは小型の動物ではなく、ヒト、サルなど比較的大型の動物での脳の活動部位から推定されるコネクトームである。ヒトを中心にこの情報を収集しているのは、[http://www.neuroscienceblueprint.nih.gov/connectome/ Human Connectome Project]である。これには、非侵襲な[[テンソルMRI]]などを中心に用い神経線維の走行など解剖学的な側面に注目している[http://www.humanconnectomeproject.org/ The Harvard/MGH-UCLA Project]、および脳における[[fMRI]]による活動領域の検出やゲノム情報など機能的な側面に重点を置く国際プロジェクト[http://humanconnectome.org/ The WU-Minn Project]がある。いずれも、解像度が上がれば、メソスケールのコネクトームにも近づくが、非侵襲で得られる解像度は、最大でもミリメートル程度であり、侵襲的な方法で得られる解像度とは違いがある。
 一方、Olaf Spornsによるヒト・コネクトームの提唱以来、脳の機能と病態を理解するためにヒトの脳で研究されているのは、メソレベルのコネクトームより更にスケールの大きな'''「マクロスケール Macroscale」'''のコネクトームである<ref name=sporns>'''Olaf Sporns'''<br>Discovering the Human Connectome<br>''MIT Press'' 2012 ISBN 0262017903</ref><ref>'''Henry Kennedy, David C. Van Essen, Yves Christen (eds.)'''<br>Micro-, Meso- and Macro-Connectomics of the Brain<br>''Springer'', 2016 [http://link.springer.com/book/10.1007%2F978-3-319-27777-6 [OpenAccess]]</ref>。これは小型の動物ではなく、ヒト、サルなど比較的大型の動物での脳の活動部位から推定されるコネクトームである。ヒトを中心にこの情報を収集しているのは、[http://www.neuroscienceblueprint.nih.gov/connectome/ Human Connectome Project]である。これには、非侵襲な[[テンソルMRI]]などを中心に用い神経線維の走行など解剖学的な側面に注目している[http://www.humanconnectomeproject.org/ The Harvard/MGH-USC Project](かつて、UCLA)、および脳における[[fMRI]]による活動領域の検出やゲノム情報など機能的な側面に重点を置く国際プロジェクト[http://humanconnectome.org/ The WU-Minn Project]がある。いずれも、解像度が上がれば、メソスケールのコネクトームにも近づくが、非侵襲で得られる解像度は、最大でもミリメートル程度であり、侵襲的な方法で得られる解像度とは違いがある。


 以上、肉眼、光学顕微鏡のレベルである「メソスケール」、電子顕微鏡レベルである「ミクロスケール」、そして非侵襲で観察される脳の構造や活動を観察する「マクロスケール」の3つの階層での断絶が、コネクトームの研究では認識されているのが現状である。しかし、例えば、深度のある組織の観察を可能にする[[多光子励起顕微鏡]]、広い範囲を高速で観察できる[[光シート顕微鏡]]、光学顕微鏡の解像度を著しく向上させる[[超高解像度顕微鏡]]([[PALM]]、[[STORM]]など)<ref><pubmed>23063602</pubmed></ref>、が改良されれば、これらのスケールの間の断絶を埋めることができる。
 以上、肉眼、光学顕微鏡のレベルである「メソスケール」、電子顕微鏡レベルである「ミクロスケール」、そして非侵襲で観察される脳の構造や活動を観察する「マクロスケール」の3つの階層での断絶が、コネクトームの研究では認識されているのが現状である。しかし、例えば、深度のある組織の観察を可能にする[[多光子励起顕微鏡]]、広い範囲を高速で観察できる[[光シート顕微鏡]]、光学顕微鏡の解像度を著しく向上させる[[超高解像度顕微鏡]]([[PALM]]、[[STORM]]など)<ref><pubmed>23063602</pubmed></ref>、が改良されれば、これらのスケールの間の断絶を埋めることができる。


==細胞レベルのコネクトームとコネクトミクス==
==細胞レベルのコネクトームとコネクトミクス==
 解像度の観点からは、メソスケール、ミクロスケール、マクロスケールに分類されるコネクトームであるが、特にメソスケール、ミクロスケールで注目されるのは、神経細胞レベル、神経細胞のSubcellularレベルでの神経細胞同士の結合性である。つまり、どの神経細胞同士がシナプスで結合しているか、更にシナプスが[[細胞体]]や[[樹状突起]]のどの部分に存在しているか、という中核的な情報である。更に、ミエリンに代表されるように、グリア細胞も様々な機作で神経細胞間のコミュニケーションに大きな影響を与えるので、神経回路の理解には無視はできないが、ここでは神経細胞同士の結合性の問題に焦点を絞る。
 解像度の観点からは、メソスケール、ミクロスケール、マクロスケールに分類されるコネクトームであるが、特にメソスケール、ミクロスケールで注目されるのは、神経細胞レベル、神経細胞のSubcellularレベルでの神経細胞同士の結合性である。つまり、どの神経細胞同士がシナプスで結合しているか、更にシナプスが[[細胞体]]や[[樹状突起]]のどの部分に存在しているか、という中核的な情報である。更に、ミエリンに代表されるように、[[グリア細胞]]の存在も様々な機作で神経細胞間のコミュニケーションに大きな影響を与えるので、神経回路の理解には無視はできないが、ここでは神経細胞同士の結合性の問題に焦点を絞る。


 神経細胞同士の結合性を決定するには、上述した歴史的に利用されてきた方法論に加えて、最近の動向としては、以下のような6つの現代的なアプローチがあるが、それぞれのアプローチに長所、短所があり、互いに相補的なアプローチとなっていくものと予想される。
 神経細胞同士の結合性を決定するには、上述した歴史的に利用されてきた方法論に加えて、最近の動向としては、以下のような6つの現代的なアプローチがあるが、それぞれのアプローチに長所、短所があり、互いに相補的なアプローチとなっていくものと予想される。


====生理学的方法====
====生理学的方法====
 生理学的な方法を利用し、神経細胞間の結合性を調べる。これには、複数神経細胞の[[全細胞記録]]法、[[ケージド試薬|ケージド神経伝達物質]]のレーザー光刺激法、[[光遺伝学]]、[[カルシウム]]イオンのセンサー([[カルシウム感受性蛍光色素]]、[[GCaMP]]などの遺伝学的なリポーター)、[[電位感受性センサー]]などが利用される<ref><pubmed>25959713</pubmed></ref><ref><pubmed>26967281</pubmed></ref><ref><pubmed>27104976</pubmed></ref><ref><pubmed>26468193</pubmed></ref>。また、神経活動によって誘起される[[最初期遺伝子]](immediate early genes)の発現を利用する方法も利用される<ref><pubmed>25558063</pubmed></ref>。
 生理学的な方法を利用し、神経細胞間の結合性を調べる。これには、複数神経細胞の[[全細胞記録]]法、[[ケージド試薬|ケージド神経伝達物質]]のレーザー光刺激法、[[光遺伝学]]、[[カルシウム]]イオンのセンサー([[カルシウム感受性蛍光色素]]、[[GCaMP]]などの遺伝学的なリポーター)、[[電位感受性センサー]]などが利用される<ref><pubmed>25959713</pubmed></ref><ref><pubmed>26967281</pubmed></ref><ref><pubmed>27104976</pubmed></ref><ref><pubmed>26468193</pubmed></ref>。また、神経活動によって誘起される[[最初期遺伝子]](immediate early genes)の発現(レトロスペクティブな方法)を利用する方法もある<ref><pubmed>25558063</pubmed></ref>。


 将来的に、[[哺乳類]]の神経系全体のコネクトームの解明には大規模生理学に適した方法論の開発が必要である(下記、「機能的コネクトーム」の項参考)。
 将来的に、[[哺乳類]]の神経系全体のコネクトームの解明には大規模生理学に適した方法論の開発が必要である(下記、「機能的コネクトーム」の項参考)。
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 当初は、個々の神経細胞を蛍光タンパク質などで標識する方法が用いられていたが、コネクトーム構築には、多数の神経細胞を同時に観察する必要がある。そのために開発された方法論の1つが、[[Brainbow]]と呼ばれる技術である<ref><pubmed>18446160</pubmed></ref>(図4)。この技術は、ランダムに、異なる色を持ついくつかの蛍光タンパク質の組み合わせの発現を利用したもので、 各ニューロンは、Creリコンビナーゼによる基質となる[[lox配列]]の組み換えを利用することで、異なる色の蛍光を発色することになり、細胞体とその突起が異なる色として区別することが可能になっている。
 当初は、個々の神経細胞を蛍光タンパク質などで標識する方法が用いられていたが、コネクトーム構築には、多数の神経細胞を同時に観察する必要がある。そのために開発された方法論の1つが、[[Brainbow]]と呼ばれる技術である<ref><pubmed>18446160</pubmed></ref>(図4)。この技術は、ランダムに、異なる色を持ついくつかの蛍光タンパク質の組み合わせの発現を利用したもので、 各ニューロンは、Creリコンビナーゼによる基質となる[[lox配列]]の組み換えを利用することで、異なる色の蛍光を発色することになり、細胞体とその突起が異なる色として区別することが可能になっている。


 これらの遺伝学的なツール(ドライバー、レポーター)の利用には、トランスジェニック動物、[[ノックイン動物]]、そして各種ウイルスベクターを用いることができる。中でも、神経細胞に効率的に遺伝子導入が可能である[[アデノ随伴ウイルスベクター|アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター]]は、広く用いられている。また、[[CRISPR・CAS9法]]の開発によって簡便になった[[ゲノム編集]]の技術の発達とともに、このような遺伝学的ツールはますます広汎に用いられるようになると予想される。
 これらの遺伝学的なツール(ドライバー、レポーター)の利用には、トランスジェニック動物、[[ノックイン動物]]、そして各種ウイルスベクターを用いることができる。中でも、神経細胞に効率的に遺伝子導入が可能である[[アデノ随伴ウイルスベクター|アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター]]は、広く用いられている。また、[[CRISPR/Cas9]]法の開発によって簡便になった[[ゲノム編集]]の技術の発達とともに、このような遺伝学的ツールはますます広汎に用いられるようになると予想される。


 特に、遺伝的なリポーターとして、電子顕微鏡でその発現を観察できる方法は、[[コネクトーム#電子顕微鏡|上記]]の全体を電子顕微鏡で再構築する方法と併用することで、様々なコンテキストで利用可能になるので注目される<ref><pubmed>25362474</pubmed></ref>。とりわけ、最近開発された[[ARTEMIS法]]は、[[ペルオキシダーゼ]]活性を持つレポーター遺伝子を発現した神経細胞を、高品質な電子顕微鏡画像の中で識別することができる<ref> eLife 2016 Reconstruction of genetically identified neurons imaged by serial-section electron microscopy</ref>。
 特に、遺伝的なリポーターとして、電子顕微鏡でその発現を観察できる方法は、[[コネクトーム#電子顕微鏡|上記]]の全体を電子顕微鏡で再構築する方法と併用することで、様々なコンテキストで利用可能になるので注目される<ref><pubmed>25362474</pubmed></ref>。とりわけ、最近開発された[[ARTEMIS法]]は、[[ペルオキシダーゼ]]活性を持つレポーター遺伝子を発現した神経細胞を、高品質な電子顕微鏡画像の中で識別することができる<ref><pubmed>27383271</pubmed></ref>。


 また、神経細胞同士の結合を記述するコネクトームの本質の一面は、シナプスを介した神経細胞間の[[細胞接着]]の記述でもある。シナプス結合しているパートナーを調べるために、シナプス結合したパートナー細胞同士のシナプス結合を[[シナプス接着分子]]に融合させた分割GFPで検出する[[GRASP法]]という方法が開発され、線虫、ショウジョウバエなどで利用されている<ref><pubmed>22221865</pubmed></ref><ref><pubmed>22355283</pubmed></ref>。また、GRASP法の他にも、その感度の低さを補うことが可能な[[split HRP法]]が開発され、哺乳類の神経系でも利用できることが示された<ref><pubmed>27240195</pubmed></ref>。
 また、神経細胞同士の結合を記述するコネクトームの本質の一面は、シナプスを介した神経細胞間の[[細胞接着]]の記述でもある。シナプス結合しているパートナーを調べるために、シナプス結合したパートナー細胞同士のシナプス結合を[[シナプス接着分子]]に融合させた分割GFPで検出する[[GRASP法]]という方法が開発され、線虫、ショウジョウバエなどで利用されている<ref><pubmed>22221865</pubmed></ref><ref><pubmed>22355283</pubmed></ref>。また、GRASP法の他にも、その感度の低さを補うことが可能な[[split HRP法]]が開発され、哺乳類の神経系でも利用できることが示された<ref><pubmed>27240195</pubmed></ref>。
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====生体試料観察の工夫 ====
====生体試料観察の工夫 ====
 細胞レベルでのコネクトームを理解するためには、それぞれの神経細胞とその突起の形態を高解像度で観察することが重要である。その一つの方法は顕微鏡の改良であるが、もう一つの方法論は神経組織の生体試料を観察しやすいように処理することである。特に、神経組織をホールマウントでその深部まで明確に観察できるようにするための方法論の開発が活発である<ref><pubmed>26914203</pubmed></ref>。
 細胞レベルでのコネクトームを理解するためには、それぞれの神経細胞とその突起の形態やシナプス局在分子を高解像度で観察することが重要である。その一つの方法は顕微鏡の改良であるが、もう一つの方法論は神経組織の生体試料を観察しやすいように処理することである(例、Array Tomography<ref><pubmed>21041404</pubmed></ref>)。特に、近年、神経組織をホールマウントでその深部まで明確に観察できるようにするための方法論の開発が活発である<ref><pubmed>26914203</pubmed></ref>。


 古くからグリセロールなどを用いて組織を透明化する技術は用いられてきたが、[[wj:宮脇敦|Atsushi Miyawaki]]らによる[[Scale]]の発表以来、[[CLARITY]]、[[iDisco]]、[[SeeDB]]やその改良法により、より優れたプロトコールの開発と改良が行われてきている<ref><pubmed>25652426</pubmed></ref><ref>http://clarityresourcecenter.org/</ref>。また、[[w:Edward Boyden|Edward Boyden]]のグループは、組織そのものを拡大することができる[[Expansion Microscopy]]と名付けた方法を開発して注目されている<ref><pubmed>25592419</pubmed></ref>。
 古くからグリセロールなどを用いて組織を透明化する技術は用いられてきたが、[[wj:宮脇敦|Atsushi Miyawaki]]らによる[[Scale]]の発表以来、[[CLARITY]]、[[iDisco]]、[[SeeDB]]やその改良法など、より優れたプロトコールの開発と改良が行われてきている<ref><pubmed>25652426</pubmed></ref><ref>http://clarityresourcecenter.org/</ref>。また、[[w:Edward Boyden|Edward Boyden]]のグループは、組織そのものを拡大することができる[[Expansion Microscopy]]と名付けた方法を開発して注目されている<ref><pubmed>25592419</pubmed></ref>。


====構成論的手法====
====構成論的手法====
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[[ファイル:Diffusion FA.JPG|サムネイル|250px|'''図6.dMRI'''<br>Fractional anisotropy (top), and principal diffusion directions (bottom) images from the HCP dMRI. <br>Image courtesy of the [http://humanconnectome.org WU-Minn HCP consortium]]]
[[ファイル:Diffusion FA.JPG|サムネイル|250px|'''図6.dMRI'''<br>Fractional anisotropy (top), and principal diffusion directions (bottom) images from the HCP dMRI. <br>Image courtesy of the [http://humanconnectome.org WU-Minn HCP consortium]]]


 Olaf Spornsによるヒト・コネクトームの提唱以来、脳の機能と病態を理解するために[[ヒト]]の脳で研究されているのは、メソレベルのコネクトームより更に大きく、脳全体を視野にいれた「マクロスケール Macroscale」の巨視的なコネクトームである。これは、しばしば、様々なタスクに伴う脳の活動領域を観察する[[脳マッピング]]と同時に関心を持たれている。米国の脳科学プロジェクトである[[BRAINイニシアティブ]]の一部として実施されている国際プロジェクトで[http://www.neuroscienceblueprint.nih.gov/connectome Human Connectome Project]では、[[functional MRI]] ([[fMRI]])('''図5''')による活動領域の検出など機能的な側面に重点を置く国際プロジェクト[https://www.humanconnectome.org/ The WU-Minn Project]と、非侵襲なテンソルMRIなどを中心に用い神経線維の走行を重視する[http://www.humanconnectomeproject.org/ The Harvard/MGH-UCLA Project]が実施されてきた('''図6''')。いずれも、解像度が上がれば、メソスケールのコネクトームにも近づくが、非侵襲で得られる解像度は、最大でもミリメートル程度であり、侵襲的な方法で得られる解像度とは違いがある。
 Olaf Spornsによるヒト・コネクトームの提唱以来、脳の機能と病態を理解するために[[ヒト]]の脳で研究されているのは、メソレベルのコネクトームより更に大きく、脳全体を視野にいれた「マクロスケール Macroscale」の巨視的なコネクトームである。これは、しばしば、様々なタスクに伴う脳の活動領域を観察する[[脳マッピング]]と同時に関心を持たれている。米国の脳科学プロジェクトである[[BRAINイニシアティブ]]の一部として実施されている国際プロジェクトで[http://www.neuroscienceblueprint.nih.gov/connectome Human Connectome Project]では、[[functional MRI]] ([[fMRI]])('''図5''')による活動領域の検出など機能的な側面に重点を置く国際プロジェクト[https://www.humanconnectome.org/ The WU-Minn Project]と、非侵襲なテンソルMRIなどを中心に用い神経線維の走行を重視する[http://www.humanconnectomeproject.org/ The Harvard/MGH-USC Project]が実施されてきた('''図6''')。いずれも、解像度が上がれば、メソスケールのコネクトームにも近づくが、非侵襲で得られる解像度は、最大でもミリメートル程度であり、侵襲的な方法で得られる解像度とは違いがある。


 ⾮侵襲脳計測法として、現在、ヒトの脳活動解析技術の主役となっているのは、[[fMRI]]である。fMRIでは、MRIにより、⾎流の流れと、脱酸素化[[wj:ヘモグロビン|ヘモグロビン]]の濃度変化をみる([[BOLD効果]])ことで、神経活動に伴う変動を検出する。つまり、ニューロンの活動を直接観察しているわけではないので、実際のニューロンの活動とは、秒単位の時間的なズレがある。そして、休⽌状態の⼤脳のある領域と別の領域が同調して⾃発的に変動するということが、結合状態にあるということを意味していると仮定すれば、fMRIを使って、領域間のつながりも推定することもできる(休⽌状態fMRI)。この⽅法は、領域間の結合関係、つまりコネクトーム推定の有⼒な⼿段になっている。
 ⾮侵襲脳計測法として、現在、ヒトの脳活動解析技術の主役となっているのは、[[fMRI]]である。fMRIでは、MRIにより、⾎流の流れと、脱酸素化[[wj:ヘモグロビン|ヘモグロビン]]の濃度変化をみる([[BOLD効果]])ことで、神経活動に伴う変動を検出する。つまり、ニューロンの活動を直接観察しているわけではないので、実際のニューロンの活動とは、秒単位の時間的なズレがある。そして、休⽌状態の⼤脳のある領域と別の領域が同調して⾃発的に変動するということが、結合状態にあるということを意味していると仮定すれば、fMRIを使って、領域間のつながりも推定することもできる(休⽌状態fMRI)。この⽅法は、領域間の結合関係、つまりコネクトーム推定の有⼒な⼿段になっている。
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 fMRIは、高度な脳機能の理解に利用されている。例えば、2016年、[[wj:カリフォルニア大学バークレー校|California大学Berkeley校]]のグループは、自然[[言語]]のそれぞれの単語と大脳皮質活動領域を関連づける脳マップを作製した<ref><pubmed>27121839</pubmed></ref>。このような脳マップの中で、コネクトームを理解することが重要である。
 fMRIは、高度な脳機能の理解に利用されている。例えば、2016年、[[wj:カリフォルニア大学バークレー校|California大学Berkeley校]]のグループは、自然[[言語]]のそれぞれの単語と大脳皮質活動領域を関連づける脳マップを作製した<ref><pubmed>27121839</pubmed></ref>。このような脳マップの中で、コネクトームを理解することが重要である。


 ⼀⽅、[[拡散MRI]]([[dMRI]])、テンソルMRI、そしてより新しい方法である[[拡散スペクトラムイメージング]] ([[diffusion spectrum imaging]], [[DSI]])]]と[[拡散強調イメージング]] ([[High angular resolution diffusion imaging, HARDI]])は、脳内にある[[軸索]]の束となった⻑距離の接続の様⼦をマッピングする。この⽅法を使うと、⽣きた脳の中で、そのまま神経の⾛⾏を観察することができる。しかし、神経線維の⾛⾏をみているだけで、実際の結合性を⾒ているものではないが、今後のコネクトーム理解の方法論として期待ができる<ref>http://www.the-scientist.com/?articles.view/articleNo/41266/title/White-s-the-Matter/</ref>。
 更に、安静状態にある脳での活動の同調の観察から、「[[Default mode network(DMN)]]」と呼ばれる複数脳領域を結ぶネットワークが意識や精神・神経疾患などについての理解の観点から注目されている<ref><pubmed>25938726</pubmed></ref>。DMNは、機能的にはネットワーク内の領域同士の何らかの結合性と関係していると考えられるが、物理的な結合性であるコネクトームとどのような関係にあるのかは、今後の課題である。
 ⼀⽅、米[[wj: Harvard大学|Harvard大学]]/MGH(マサチューセッツ総合病院Martinos Center)と南カリフォルニア大学(以前はカリフォルニア大学ロスアンゼルス校)を中心に進められてきたのは、[[拡散MRI]]([[dMRI]])、テンソルMRIを用いる方法である。更に、新しい方法である[[拡散スペクトラムイメージング]] ([[diffusion spectrum imaging]], [[diffusion spectrum imaging|DSI]])と[[拡散強調イメージング]] ([[High angular resolution diffusion imaging, HARDI]])は、脳内にある[[軸索]]の束となった⻑距離の接続の様⼦をマッピングする。これらの⽅法を使うと、⽣きた脳の中で、そのまま神経の⾛⾏を観察することができる。しかし、神経線維の⾛⾏をみているだけで、実際の結合性を⾒ているものではないが、今後のコネクトーム理解の方法論として期待ができる<ref>http://www.the-scientist.com/?articles.view/articleNo/41266/title/White-s-the-Matter/</ref>。


==機能的コネクトーム==
==機能的コネクトーム==
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 機能的コネクトームの情報が、構造的コネクトームの情報とともに不可欠なのは、線虫とは対照的に、ヒトを含めた哺乳類の神経系では構造的な[[可塑性]]が見られるということである。例えば、神経細胞の[[スパイン]]は動的な構造であり、出現したり消失したりする<ref><pubmed>14708001</pubmed></ref>。
 機能的コネクトームの情報が、構造的コネクトームの情報とともに不可欠なのは、線虫とは対照的に、ヒトを含めた哺乳類の神経系では構造的な[[可塑性]]が見られるということである。例えば、神経細胞の[[スパイン]]は動的な構造であり、出現したり消失したりする<ref><pubmed>14708001</pubmed></ref>。


 つまり、シナプスの結合性や構造は神経系が機能する際、大きく変化しているので、構造的コネクトームだけで、神経回路の働きを把握することは全く不十分であり、神経活動の情報を含めた機能的コネクトームの考慮が大切であるという議論が背景にある。
 つまり、シナプスの結合性や構造は神経系が機能する際、大きく変化しているので、構造的コネクトームだけで、神経回路の働きを把握することは全く不十分であり、神経活動の情報を含めた機能的コネクトームの考慮が大切であるという議論が背景にある。環境による変化(広義の[[エピジェネティックス]])や個体ごとの差をどのようにコネクトーム研究の中で考慮していくのかは、今後の大きな課題であろう。


==コネクトームの利用==  
==コネクトームの利用==  
[[ファイル:Connectome.jpg|サムネイル|250px|'''図7.コネクトームを簡便に表現する模式的なイメージ図'''<br>A, aなどの各要素は、脳の各領域または各神経細胞で、オレンジ色の線や升は結合の強さの情報を示す。(左)結合ダイアグラム。(右)結合マトリックス。]]
[[ファイル:Connectome.jpg|サムネイル|250px|'''図7.コネクトームを簡便に表現する模式的なイメージ図'''<br>A, aなどの各要素は、脳の各領域または各神経細胞で、オレンジ色の線や升は結合の強さの情報を示す。(左)結合ダイアグラム。(右)結合マトリックス。]]


 コネクトームのプロジェクトは、[[wj:ヒトゲノムプロジェクト|ヒトゲノムプロジェクト]]がそうであったように、多数の研究者や技術者の共同作業によって行なわれきており、米国のオバマ政権が提唱した脳科学研究プロジェクトであるBRAINイニシアティブなどによって積極的にサポートされてきた。また、欧州のHuman Brain Project、日本の[[Brain/MINDSプロジェクト]]などを含めた国際的な脳科学プロジェクトの中核的なテーマの一つになっている。
 コネクトームのプロジェクトは、[[wj:ヒトゲノムプロジェクト|ヒトゲノムプロジェクト]]がそうであったように、多数の研究者や技術者の共同作業によって行なわれきており、米国のオバマ政権が提唱した脳科学研究プロジェクトであるBRAINイニシアティブなどによって積極的にサポートされてきた。また、欧州のHuman Brain Project、日本の[[Brain/MINDSプロジェクト]]などを含めた国際的な脳科学プロジェクトの主要なテーマの一つになっている。


 このような電子顕微鏡やfMRIなどを用いて得られたデータは、神経科学の大規模データとして、誰でもそのデータが利用できるオープンデータとなる<ref><pubmed>24401992</pubmed></ref><ref><pubmed>25349916</pubmed></ref>。コネクトームのデータは生データとしてサーバーに保存されるが、コネクトームの簡便な表現法としては、'''図7'''に示したような結合のダイアグラムを示す方法や結合マトリックスを用いた方法がしばしば用いられてきている。
 このような電子顕微鏡やfMRIなどを用いて得られたデータは、神経科学の大規模データとして、誰でもそのデータが利用できるオープンデータとなる<ref><pubmed>24401992</pubmed></ref><ref><pubmed>25349916</pubmed></ref>。コネクトームのデータは生データとしてサーバーに保存されるが、コネクトームの簡便な表現法としては、'''図7'''に示したような結合のダイアグラムを示す方法や結合マトリックスを用いた方法がしばしば用いられてきている。


 また、コネクトームに関係したプロジェクトは大きな研究費と多くの研究者の存在が必要となり、そのデータの取得と公開が神経科学者などのコミュニティに広く有用であるため、米国では[[National Brain Observatory]](国立脳天文台)設立の提案がなされている<ref><pubmed>26481036</pubmed></ref>[[w:Argonne National Laboratory|Argonne National Laboratory]](イリノイ州)などにそのような組織を作ることが計画され始めている<ref>http://www.sciencemag.org/news/2015/10/neuroscientist-team-calls-national-brain-observatory</ref>。  
 また、コネクトームに関係したプロジェクトは大きな研究費と多くの研究者の存在が必要となり、そのデータの取得と公開が神経科学者などのコミュニティに広く有用であるため、米国では[[National Brain Observatory]](国立脳天文台)設立の提案がなされ<ref><pubmed>26481036</pubmed></ref>[[w:Argonne National Laboratory|Argonne National Laboratory]](イリノイ州)などにそのような組織を作ることが計画されている<ref>http://www.sciencemag.org/news/2015/10/neuroscientist-team-calls-national-brain-observatory</ref>。  


 このようなコネクトームのデータは、脳科学、神経科学全般の基礎研究情報として、ヒトと動物の脳の働き、神経回路の構造と機能の理解のために広く利用されることになる。
 このようなコネクトームのデータは、脳科学、神経科学全般の基礎研究情報として、ヒトと動物の脳の働き、神経回路の構造と機能の理解のために広く利用されることになる。


 特に、医学領域では、[[認知症]]、[[うつ病]]、[[統合失調症]]を含めた[[精神疾患|精神]]・神経疾患、[[自閉症]]などの[[発達障害]]、神経組織の損傷などに伴う様々な病態や症状の理解の基礎データにもなる。将来はこれらの疾患の客観的な診断への活用が注目されている。そして遺伝子情報を活用した[[精密医療(precision medicine)]]<ref>https://www.nih.gov/precision-medicine-initiative-cohort-program</ref>とともに、有効な治療法の開発と個々の患者への適用にも貢献するであろう。
 特に、医学領域では、[[認知症]]、[[うつ病]]、[[統合失調症]]を含めた[[精神疾患|精神]]・神経疾患、[[自閉症]]などの[[発達障害]]、神経組織の損傷などに伴う様々な病態や症状の理解の基礎データにもなる。将来はこれらの疾患の客観的な診断への活用が注目されている。そして遺伝子情報を活用した[[精密医療(Precision medicine)]]<ref>https://www.nih.gov/precision-medicine-initiative-cohort-program</ref>とともに、有効な治療法の開発と個々の患者への適用にも貢献するであろう。


 更に、脳を神経回路の仕組みを模倣した人工知能の開発のための基礎情報としても役立つと思われる。コネクトームの知見を活用することで、[[心理学]]、[[言語学]]、経済学、商業、犯罪、保険、教育、政治、芸術、倫理学などのヒトの脳活動が関係した分野に、神経回路の観点から、これまでにない概念が提供されることも考えられ、その社会的な影響も大きいとの予想もある<ref name=seung>'''Sebastian Seung'''<br>Connectome: How the Brain's Wiring Makes Us Who We Are<br>''Mariner Books'', 2013  ISBN 9780547678597<br>邦訳'''セバスチャン・スン''' (著)、 '''青木 薫''' (訳)<br>コネクトーム:脳の配線はどのように「わたし」をつくり出すのか<br>草思社</ref><ref name=sporns>'''Olaf Sporns'''<br>Discovering the Human Connectome<br>''MIT Press'' 2012 ISBN 0262017903</ref><ref>'''Gary Marcus, Jeremy Freeman (Eds), May-Britt Moser, Edvard I. Moser (Contributors)'''<br>The Future of the Brain: Essays by the World's Leading Neuroscientists<br> ''Princeton University Press'', 2014, ISBN 069116276X</ref>。
 更に、脳を神経回路の仕組みを模倣した人工知能の開発のための基礎情報としても役立つと思われる。コネクトームの知見を活用することで、[[心理学]]、[[言語学]]、経済学、商業、犯罪、保険、教育、政治、芸術、宗教、倫理学などのヒトの脳活動が関係した分野に、神経回路の観点から、これまでにない概念が提供されることも考えられ、その社会的な影響も大きいとの予想もある<ref name=seung>'''Sebastian Seung'''<br>Connectome: How the Brain's Wiring Makes Us Who We Are<br>''Mariner Books'', 2013  ISBN 9780547678597<br>邦訳'''セバスチャン・スン''' (著)、 '''青木 薫''' (訳)<br>コネクトーム:脳の配線はどのように「わたし」をつくり出すのか<br>草思社</ref><ref name=sporns>'''Olaf Sporns'''<br>Discovering the Human Connectome<br>''MIT Press'' 2012 ISBN 0262017903</ref><ref>'''Gary Marcus, Jeremy Freeman (Eds), May-Britt Moser, Edvard I. Moser (Contributors)'''<br>The Future of the Brain: Essays by the World's Leading Neuroscientists<br> ''Princeton University Press'', 2014, ISBN 069116276X</ref><ref>'''Michio Kaku'''<br>
The Future of the Mind: The Scientific Quest to Understand, Enhance, and Empower the Mind <br>''Doubleday'', 2015, ISBN 038553082X<br>邦訳'''ミチオ・カク'''  (著)、 '''斉藤 隆央''' (訳) <br>フューチャー・オブ・マインド―心の未来を科学する<br>NHK出版</ref>。


 コネクトームの情報をどのように利用していくのか、その是非を含めて、社会の広い分野での議論の必要性が高まってきている。
 コネクトームの情報をどのように利用していくのか、その是非を含めて、社会の広い分野での議論の必要性が高まってきている。

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