「サブスタンスP」の版間の差分

ナビゲーションに移動 検索に移動
編集の要約なし
編集の要約なし
133行目: 133行目:


=== 精神疾患 ===
=== 精神疾患 ===
 上位中枢神経系において[[情動]]や不安恐怖反応に関与すると考えられている中隔野、[[海馬]]、[[扁桃体]]、視床下部、あるいは[[中脳]][[中心灰白質]]にNK1とNK3受容体が豊富に存在している<ref name=ref9 /> <ref name=ref10 />。ラットに拘束[[ストレス]]をかけたり、高架台に乗せると、扁桃体内側核のSP放出が上昇し、同部位へNK1受容体拮抗薬を微量投与すると、不安関連行動が減弱する<ref name=ref31><pubmed>15024126</pubmed></ref>。新生仔に母仔分離ストレスを与えると扁桃体前部基底外側核においてNK1受容体の細胞内取り込み(internalization)がおきることから、内因性SP放出の増加が示唆されている<ref name=ref32><pubmed>9733503</pubmed></ref>。一方、[[抗不安薬]]をラットに投与すると海馬と中脳中心[[灰白質]]においてSPの合成が減少する<ref name=ref33><pubmed>7518054</pubmed></ref>。NK1受容体遺伝子ホモ欠失マウスでは、[[高架式十字迷路]]試験において、不安関連行動および血清[[コルチゾール]]上昇の減少が観察され、伴って[[背側縫線核]]セロトニンニューロンの発火頻度が増加する<ref name=ref34><pubmed>   11172050</pubmed></ref>。居住者-侵入者試験では攻撃性が減少する22)。不安及びうつ症状に対するNK1拮抗薬の臨床応用に関しては、まだ上市されている薬物はない。
 上位中枢神経系において[[情動]]や不安恐怖反応に関与すると考えられている中隔野、[[海馬]]、[[扁桃体]]、視床下部、あるいは[[中脳]][[中心灰白質]]にNK1とNK3受容体が豊富に存在している<ref name=ref9 /> <ref name=ref10 />。ラットに拘束[[ストレス]]をかけたり、高架台に乗せると、扁桃体内側核のSP放出が上昇し、同部位へNK1受容体拮抗薬を微量投与すると、不安関連行動が減弱する<ref name=ref31><pubmed>15024126</pubmed></ref>。新生仔に母仔分離ストレスを与えると扁桃体前部基底外側核においてNK1受容体の細胞内取り込み(internalization)がおきることから、内因性SP放出の増加が示唆されている<ref name=ref32><pubmed>9733503</pubmed></ref>。一方、[[抗不安薬]]をラットに投与すると海馬と中脳中心[[灰白質]]においてSPの合成が減少する<ref name=ref33><pubmed>7518054</pubmed></ref>。NK1受容体遺伝子ホモ欠失マウスでは、[[高架式十字迷路]]試験において、不安関連行動および血清[[コルチゾール]]上昇の減少が観察され、伴って[[背側縫線核]]セロトニンニューロンの発火頻度が増加する<ref name=ref34><pubmed>11172050</pubmed></ref>。居住者-侵入者試験では攻撃性が減少する<ref name=ref22 />。不安及びうつ症状に対するNK1拮抗薬の臨床応用に関しては、まだ上市されている薬物はない。


 SP-NK1神経系は薬物依存や報酬系にも関わっている。オピオイドの報酬効果に関しては、条件付け場所嗜好性試験において、NK1受容体遺伝子ホモ欠失マウスではmorphineによる場所嗜好性の獲得が抑制され、離脱症状の一部も減少する<ref name=ref35><pubmed>10821273</pubmed></ref>。Cocaineや食物の嗜好性は影響を受けないという<ref name=ref35 />。ラットにおけるheroinの自己投与や消費の動機付けがNK1受容体拮抗薬で抑制される<ref name=ref36><pubmed>    23303056</pubmed></ref>。またheroinの投与で[[前頭前野]]と側坐核でNK1が増加が見られている<ref name=ref36 />。アルコールに関しては、NK1受容体遺伝子ホモ欠失マウスでは自発的アルコール摂取の増加が抑制され、アルコール[[依存症]]患者ではNK1受容体拮抗薬の投与でアルコールに対する欲求が改善している<ref name=ref37><pubmed>    18276852</pubmed></ref>。健常者を対象にした機能的磁気共鳴撮像法による研究では、報酬予測時の側坐核の脳活動(BOLD信号)が、NK1受容体拮抗薬の単回投与によりプラセボと比較して有意に減少することが報告されている<ref name=ref38><pubmed>23406545</pubmed></ref>。
 SP-NK1神経系は薬物依存や報酬系にも関わっている。オピオイドの報酬効果に関しては、条件付け場所嗜好性試験において、NK1受容体遺伝子ホモ欠失マウスではmorphineによる場所嗜好性の獲得が抑制され、離脱症状の一部も減少する<ref name=ref35><pubmed>10821273</pubmed></ref>。Cocaineや食物の嗜好性は影響を受けないという<ref name=ref35 />。ラットにおけるheroinの自己投与や消費の動機付けがNK1受容体拮抗薬で抑制される<ref name=ref36><pubmed>    23303056</pubmed></ref>。またheroinの投与で[[前頭前野]]と側坐核でNK1が増加が見られている<ref name=ref36 />。アルコールに関しては、NK1受容体遺伝子ホモ欠失マウスでは自発的アルコール摂取の増加が抑制され、アルコール[[依存症]]患者ではNK1受容体拮抗薬の投与でアルコールに対する欲求が改善している<ref name=ref37><pubmed>    18276852</pubmed></ref>。健常者を対象にした機能的磁気共鳴撮像法による研究では、報酬予測時の側坐核の脳活動(BOLD信号)が、NK1受容体拮抗薬の単回投与によりプラセボと比較して有意に減少することが報告されている<ref name=ref38><pubmed>23406545</pubmed></ref>。