「シナプス刈り込み」の版間の差分

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<font size="+1">[http://researchmap.jp/keichan3sai 上阪 直史]、[http://researchmap.jp/masanobukano 狩野 方伸]</font><br>
<font size="+1">[http://researchmap.jp/keichan3sai 上阪 直史]、[http://researchmap.jp/masanobukano 狩野 方伸]</font><br>
''東京大学大学院医学系研究科医学部''<br>
''東京大学大学院医学系研究科医学部''<br>
DOI:<selfdoi /> 原稿受付日:2016年1月14日 原稿完成日:2016年月日<br>
DOI:<selfdoi /> 原稿受付日:2016年1月14日 原稿完成日:2016年6月4日<br>
担当編集委員:[http://researchmap.jp/noriko1128 大隅 典子](東北大学 大学院医学系研究科 附属創生応用医学研究センター [脳神経科学コアセンター 発生発達神経科学分野)<br>
担当編集委員:[http://researchmap.jp/noriko1128 大隅 典子](東北大学 大学院医学系研究科 附属創生応用医学研究センター 脳神経科学コアセンター 発生発達神経科学分野)<br>
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英語名: synapse elimination, synapse pruning 独:Synapse Beseitigung 仏:élimination de la synapse
英語名: synapse elimination, synapse pruning 独:Synapse Beseitigung 仏:élimination de la synapse


{{box|text=
{{box|text= シナプス刈り込みとは、必要なシナプス結合だけが強められ、不要なシナプス結合は除去される現象である。発生、発達期の動物の脳内ではある段階になると神経結合(シナプス)が形成され始める。生後間もない時期の動物の脳では、過剰にシナプスが形成され、その密度は成熟動物でみられるよりもずっと高い。生後の発達過程において、このうち必要な結合だけが強められ、不要な結合は除去されて、成熟した機能的な神経回路が完成する。この過程は「シナプス刈り込み」と呼ばれており、生後発達期の神経回路に見られる普遍的な現象であると考えられている。}}
 シナプス刈り込みとは、必要なシナプス結合だけが強められ、不要なシナプス結合は除去される現象である。発生、発達期の動物の脳内ではある段階になると神経結合(シナプス)が形成され始める。生後間もない時期の動物の脳では、過剰にシナプスが形成され、その密度は成熟動物でみられるよりもずっと高い。生後の発達過程において、このうち必要な結合だけが強められ、不要な結合は除去されて、成熟した機能的な神経回路が完成する。この過程は「シナプス刈り込み」と呼ばれており、生後発達期の神経回路に見られる普遍的な現象であると考えられている。
}}


==様々な神経系でのシナプス刈り込み==
==様々な神経系でのシナプス刈り込み==
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 シナプス刈り込みは、様々な動物種や神経系で見られ、[[興奮性シナプス]]、[[抑制性シナプス]]の両方で観察されている。以下にシナプス刈り込みが観察される代表的なシナプスについて概説する。
 シナプス刈り込みは、様々な動物種や神経系で見られ、[[興奮性シナプス]]、[[抑制性シナプス]]の両方で観察されている。以下にシナプス刈り込みが観察される代表的なシナプスについて概説する。


===興奮性シナプスの刈り込み===
===興奮性シナプス刈り込み===
====小脳の登上線維-プルキンエ細胞シナプス====
====小脳の登上線維-プルキンエ細胞シナプス====
 中枢神経系において、シナプス刈り込みが観察される代表例として、[[延髄]]の[[下オリーブ核]]からの[[軸索]]である[[登上線維]]とその投射先である[[小脳]][[プルキンエ細胞]]の間のシナプス結合がある<ref name=ref1><pubmed>22103426</pubmed></ref>。
 中枢神経系において、シナプス刈り込みが観察される代表例として、[[延髄]]の[[下オリーブ核]]からの[[軸索]]である[[登上線維]]とその投射先である[[小脳]][[プルキンエ細胞]]の間のシナプス結合がある<ref name=ref1><pubmed>22103426</pubmed></ref>。
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===抑制性シナプスの刈り込み===
===抑制性シナプスの刈り込み===
====台形体内側核-外側上オリーブ核シナプス====
====台形体内側核-外側上オリーブ核シナプス====
 [[聴覚]]系の中継核である[[台形体内側核]]からの軸索は[[外側上オリーブ核]]細胞に[[抑制性伝達物質]]である[[γアミノ酪酸]]([[GABA]]/[[グリシン]]作動性のシナプスを形成している。このシナプスにおいて刈り込みが起こる<ref name=ref14><pubmed>12577063</pubmed></ref>。
 [[聴覚]]系の中継核である[[台形体内側核]]からの軸索は[[外側上オリーブ核]]細胞に[[抑制性伝達物質]]である[[γアミノ酪酸]]([[GABA]]/[[グリシン]]作動性のシナプスを形成している。このシナプスにおいて刈り込みが起こる<ref name=ref14><pubmed>12577063</pubmed></ref>。


 生直後のラットにおいて、多数の弱い台形体内側核からの軸索が個々の外側上オリーブ核細胞にシナプス入力している。その後、耳が聞こえ始める生後2週目までに、シナプス刈り込みが起こり、外側上オリーブ核細胞にシナプス入力している線維数が除去されるとともに、残っている線維からの入力は強くなる。
 生直後のラットにおいて、多数の弱い台形体内側核からの軸索が個々の外側上オリーブ核細胞にシナプス入力している。その後、耳が聞こえ始める生後2週目までに、シナプス刈り込みが起こり、外側上オリーブ核細胞にシナプス入力している線維数が除去されるとともに、残っている線維からの入力は強くなる。
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====登上線維-プルキンエ細胞シナプス====
====登上線維-プルキンエ細胞シナプス====
'''代謝型グルタミン酸受容体1型を介するシグナリング'''<br>
'''代謝型グルタミン酸受容体1型を介するシグナリング'''<br>
 [[グルタミン酸受容体]]である[[代謝型グルタミン酸受容体1型]](mGluR1)<ref name=ref31><pubmed>11739579</pubmed></ref>は、生後12日頃から17日頃に、弱いシナプスをプルキンエ細胞の細胞体から除去する因子として機能する<ref name=ref32><pubmed>9010206</pubmed></ref>。
:[[グルタミン酸受容体]]である[[代謝型グルタミン酸受容体1型]]([[mGluR1]])<ref name=ref31><pubmed>11739579</pubmed></ref>は、生後12日頃から17日頃に、弱いシナプスをプルキンエ細胞の細胞体から除去する因子として機能する<ref name=ref32><pubmed>9010206</pubmed></ref>。


 さらにmGluR1の下流の細胞内シグナル分子として、[[三量体Gタンパク質]][[Gαq|G<sub>αq</sub>]]<ref name=ref33><pubmed>9391157</pubmed></ref>、 [[ホスホリパーゼCβ4]] ([[PLCβ4]]<ref name=ref34><pubmed>9861037</pubmed></ref>、[[Cγタンパク質キナーゼ]]([[PKCγ]])<ref name=ref35><pubmed>8548808</pubmed></ref>が関与する。
:さらにmGluR1の下流の細胞内シグナル分子として、[[三量体Gタンパク質]][[Gαq|G<sub>αq</sub>]]<ref name=ref33><pubmed>9391157</pubmed></ref>、 [[ホスホリパーゼCβ4]] ([[PLCβ4]]<ref name=ref34><pubmed>9861037</pubmed></ref>、[[タンパク質キナーゼCγ]]([[PKCγ]])<ref name=ref35><pubmed>8548808</pubmed></ref>が関与する。


 mGluR1は、平行線維のシナプス入力により、平行線維-プルキンエ細胞シナプス後部で活性化され、そこからプルキンエ細胞内でGαq、PLCβ4、PKCγの順でシグナルが伝わり、弱いシナプスが刈り込まれると考えられている。
:mGluR1は、平行線維のシナプス入力により、平行線維-プルキンエ細胞シナプス後部で活性化され、そこからプルキンエ細胞内でGαq、PLCβ4、PKCγの順でシグナルが伝わり、弱いシナプスが刈り込まれると考えられている。


'''P/Q型カルシウムチャネル'''<br>
'''P/Q型カルシウムチャネル'''<br>
 [[P/Q型カルシウムチャネル]]は、プルキンエ細胞の主要な[[電位依存性カルシウムチャネル]]である。P/Q型[[カルシウムチャネル]]は、登上線維間のシナプス入力量に差を生じさせ、1本の登上線維の支配を強化し、その「勝者」のみが樹状突起へ進展してシナプスを形成できるようにし、生後7日頃から11日頃に弱い登上線維シナプスを除去する役割を担っている<ref name=ref16 /> <ref name=ref36><pubmed>14973254</pubmed></ref>。さらに、P/Q VDCCは後期過程においてもシナプス刈り込みに関与しており、その活性化により[[最初期遺伝子]]activity regulated cytoskeleton associated protein(Arc/Arg3.1)の発現を増加させ、シナプス刈り込みを促進している<ref name=ref37><pubmed>23791196</pubmed></ref>。
:[[P/Q型カルシウムチャネル]]は、プルキンエ細胞の主要な[[電位依存性カルシウムチャネル]]である。P/Q型[[カルシウムチャネル]]は、登上線維間のシナプス入力量に差を生じさせ、1本の登上線維の支配を強化し、その「勝者」のみが樹状突起へ進展してシナプスを形成できるようにし、生後7日頃から11日頃に弱い登上線維シナプスを除去する役割を担っている<ref name=ref16 /> <ref name=ref36><pubmed>14973254</pubmed></ref>。さらに、P/Q型カルシウムチャネルは後期過程においてもシナプス刈り込みに関与しており、その活性化により[[最初期遺伝子]][[activity regulated cytoskeleton associated protein]]([[Arc]]/[[Arg3.1]])の発現を増加させ、シナプス刈り込みを促進している<ref name=ref37><pubmed>23791196</pubmed></ref>。


'''GluRδ2、Cbln1'''<br>
'''GluD2、Cbln1'''<br>
 [[イオンチャネル]]型グルタミン酸受容体の構造を持つGlutamate receptor delta 2<ref name=ref31 />とC1qファミリー分子であるCerebellin-1<ref name=ref38><pubmed>16234806</pubmed></ref>は、平行線維-プルキンエ細胞シナプスの形成と維持に必須の分子であることが明らかにされた<ref name=ref38 /> <ref name=ref39><pubmed>9391016</pubmed></ref>。また、GluD2とCbln1はneurexinsを介したその相互作用により平行線維-プルキンエ細胞シナプスの形成と維持に必須の分子であることが明らかにされた<ref name=ref39 /> <ref name=ref40><pubmed>20395510</pubmed></ref> <ref name=ref41><pubmed>7736576</pubmed></ref> <ref name=ref42><pubmed>20537373</pubmed></ref>。平行線維シナプスは、プルキンエ細胞上の支配領域をめぐって登上線維シナプスと競合していると考えられており、GluRδ2とCbln1は平行線維シナプスを強化することで、登上線維シナプスが遠位樹状突起へ進展することを制限していると考えられている<ref name=ref41 />。
:[[イオンチャネル型グルタミン酸受容体]]の構造を持つ[[Glutamate receptor delta 2]]([[GluD2]])<ref name=ref31 />と[[C1q]]ファミリー分子である[[Cerebellin-1]]<ref name=ref38><pubmed>16234806</pubmed></ref>は、平行線維-プルキンエ細胞シナプスの形成と維持に必須の分子であることが明らかにされた<ref name=ref38 /> <ref name=ref39><pubmed>9391016</pubmed></ref>。


'''Semaphorin7A、Semaphorin3A'''<br>
:また、GluD2とCbln1はニューレキシンを介したその相互作用により平行線維-プルキンエ細胞シナプスの形成と維持に必須の分子であることが明らかにされた<ref name=ref39 /> <ref name=ref40><pubmed>20395510</pubmed></ref> <ref name=ref41><pubmed>7736576</pubmed></ref> <ref name=ref42><pubmed>20537373</pubmed></ref>。
 シナプス刈り込みにはシナプス後部の神経細胞の活動やシグナル伝達分子が重要であることがわかっていたことから、シナプス後部神経細胞からシナプス前部へと伝えられる逆行性シグナル分子が想定されてきた。最近の研究により、Semaphorin7AとSemaphorin3Aがこの役割を担うことが示された<ref name=ref43><pubmed>   24831527</pubmed></ref>。Semaphorin7Aは生後15日以降におこる後期シナプス除去過程においてmGluR1の下流で働き、弱い登上線維シナプスを除去する。一方、Semaphorin3Aは生後8日目以降に登上線維シナプスを強化および維持する。
 
:平行線維シナプスは、プルキンエ細胞上の支配領域をめぐって登上線維シナプスと競合していると考えられており、GluD2とCbln1は平行線維シナプスを強化することで、登上線維シナプスが遠位樹状突起へ進展することを制限していると考えられている<ref name=ref41 />。
 
'''セマフォリン7A、セマフォリン3A'''<br>
:シナプス刈り込みにはシナプス後部の神経細胞の活動やシグナル伝達分子が重要であることがわかっていたことから、シナプス後部神経細胞からシナプス前部へと伝えられる[[逆行性シグナル分子]]が想定されてきた。
 
:最近の研究により、[[セマフォリン7A]]と[[セマフォリン3A]]がこの役割を担うことが示された<ref name=ref43><pubmed>24831527</pubmed></ref>。セマフォリン7Aは生後15日以降におこる後期シナプス除去過程においてmGluR1の下流で働き、弱い登上線維シナプスを除去する。一方、セマフォリン3Aは生後8日目以降に登上線維シナプスを強化および維持する。


'''C1ql1'''<br>
'''C1ql1'''<br>
 Cbln1の関連分子であるC1q-like protein 1は下オリーブ核細胞に選択的に発現し、登上線維-プルキンエ細胞シナプスで機能することで登上線維シナプスの選択的強化や除去に関わることが報告されている<ref name=ref44><pubmed>25611509</pubmed></ref>。さらに、プルキンエ細胞で発現するbrain-specific angiogenesis inhibitor 3(BAI3)が下オリーブ核からのC1ql1を受け取り、登上線維シナプスの強化や除去を制御することも明らかとなっている。
:Cbln1の関連分子である[[C1q-like protein 1]]([[Clql1]])は下オリーブ核細胞に選択的に発現し、登上線維-プルキンエ細胞シナプスで機能することで登上線維シナプスの選択的強化や除去に関わることが報告されている<ref name=ref44><pubmed>25611509</pubmed></ref>。さらに、プルキンエ細胞で発現する[[brain-specific angiogenesis inhibitor 3]]([[BAI3]])が下オリーブ核からのC1ql1を受け取り、登上線維シナプスの強化や除去を制御することも明らかとなっている。


'''NMDA型グルタミン酸受容体'''<br>
'''NMDA型グルタミン酸受容体'''<br>
 NMDA型グルタミン酸受容体は、シナプス刈り込みが起こる時期にプルキンエ細胞には存在しないが、苔状線維-顆粒細胞シナプスに豊富に存在している。苔状線維からの興奮性入力を顆粒細胞の軸索である平行線維を通じて、プルキンエ細胞に伝え、mGluR1-Gαq-PLCβ4-PKCγのカスケードを駆動することにより、弱いプルキンエ細胞のシナプス除去を促進すると考えられている<ref name=ref45><pubmed>10864953</pubmed></ref> <ref name=ref46><pubmed>1352066</pubmed></ref>。
:[[NMDA型グルタミン酸受容体]]は、シナプス刈り込みが起こる時期にプルキンエ細胞には存在しないが、苔状線維-顆粒細胞シナプスに豊富に存在している。苔状線維からの興奮性入力を顆粒細胞の軸索である平行線維を通じて、プルキンエ細胞に伝え、mGluR1-Gαq-PLCβ4-PKCγのカスケードを駆動することにより、弱いプルキンエ細胞のシナプス除去を促進すると考えられている<ref name=ref45><pubmed>10864953</pubmed></ref> <ref name=ref46><pubmed>1352066</pubmed></ref>。


'''その他'''<br>
'''その他'''<br>
 その他、インシュリン様成長因子1(IGF1)<ref name=ref47><pubmed>12581172</pubmed></ref>、脳由来神経栄養因子受容体(TrkB)<ref name=ref48><pubmed>17940915</pubmed></ref> <ref name=ref49><pubmed>17463037</pubmed></ref>、細胞内の輸送タンパクのミオシンVa<ref name=ref50><pubmed>   17506494</pubmed></ref>、アストロサイト特異的なグルタミン酸トランスポーターのGLAST22)、脳で特異的に発現する受容体様膜蛋自質BSRP(Sez6)<ref name=ref51><pubmed>16814779</pubmed></ref>の関与が報告されているが、機能する場所やそのシグナリングの実体はよく分かっていない。
:[[インシュリン様成長因子1]]([[IGF1]])<ref name=ref47><pubmed>12581172</pubmed></ref>、[[脳由来神経栄養因子受容体]]([[TrkB]])<ref name=ref48><pubmed>17940915</pubmed></ref> <ref name=ref49><pubmed>17463037</pubmed></ref>、細胞内の輸送タンパクの[[ミオシンVa]]<ref name=ref50><pubmed>17506494</pubmed></ref>、アストロサイト特異的なグルタミン酸トランスポーターの[[GLAST22]]、脳で特異的に発現する受容体様膜タンパク質[[BSRP]]([[Sez6]])<ref name=ref51><pubmed>16814779</pubmed></ref>の関与が報告されているが、機能する場所やそのシグナリングの実体はよく分かっていない。


====神経筋接合部のシナプス====
====神経筋接合部のシナプス====
 ペプチド結合加水分解酵素プロテアーゼ<ref name=ref52><pubmed>6379504</pubmed></ref>、グリア由来神経栄養因子GDNF<ref name=ref53><pubmed>9497292</pubmed></ref>、細胞外シグナル分子の[[リーリン]]<ref name=ref54><pubmed>12893944</pubmed></ref>の関与が報告されている。プロテアーゼや[[GDNF]]は、シナプス後部細胞である筋細胞からシナプス前部細胞である[[運動ニューロン]]の神経線維シナプスに働きかける逆行性シグナル分子として機能すると考えられている。
 ペプチド結合加水分解酵素[[プロテアーゼ]]<ref name=ref52><pubmed>6379504</pubmed></ref>、[[グリア由来神経栄養因子]][[GDNF]]<ref name=ref53><pubmed>9497292</pubmed></ref>、細胞外シグナル分子の[[リーリン]]<ref name=ref54><pubmed>12893944</pubmed></ref>の関与が報告されている。プロテアーゼやGDNFは、シナプス後部細胞である筋細胞からシナプス前部細胞である[[運動ニューロン]]の神経線維シナプスに働きかける逆行性シグナル分子として機能すると考えられている。


====網膜-外側膝状体シナプス====
====網膜-外側膝状体シナプス====
 補体のC1qと C3の関与が報告されている<ref name=ref55><pubmed>18083105</pubmed></ref>。これらの分子は、おそらくミクログリアを介して機能し、弱いシナプスを除去すると考えられている。また、トランスフォーミング増殖因子βによるシグナルが、網膜神経節細胞やその軸索でのC1qの発現を増加させ、シナプス刈り込みを促進する可能性が示されている<ref name=ref56><pubmed>24162655</pubmed></ref>。さらに、アストロサイトに存在し、食作用に関係した受容体分子MEGF10とMERTKが、シナプス刈り込みに必要であることが報告された<ref name=ref25 />。 また、[[レット症候群]]の原因遺伝子であるMECP2の[[ノックアウトマウス]]では、視覚経験依存的なシナプス刈り込みが選択的に阻害されていることが報告されている<ref name=ref57><pubmed>21482354</pubmed></ref>。
 [[wikipedia:ja:補体|補体]]の[[C1q]]と[[C3]]の関与が報告されている<ref name=ref55><pubmed>18083105</pubmed></ref>。これらの分子は、おそらくミクログリアを介して機能し、弱いシナプスを除去すると考えられている。また、[[トランスフォーミング増殖因子β]]([[TGFβ]])によるシグナルが、網膜神経節細胞やその軸索でのC1qの発現を増加させ、シナプス刈り込みを促進する可能性が示されている<ref name=ref56><pubmed>24162655</pubmed></ref>。さらに、アストロサイトに存在し、食作用に関係した受容体分子[[MEGF10]]と[[MERTK]]が、シナプス刈り込みに必要であることが報告された<ref name=ref25 />。 また、[[レット症候群]]の原因遺伝子である[[MECP2]]のノックアウトマウスでは、視覚経験依存的なシナプス刈り込みが選択的に阻害されていることが報告されている<ref name=ref57><pubmed>21482354</pubmed></ref>。


====台形体内側核-外側上オリーブ核シナプス====
====台形体内側核-外側上オリーブ核シナプス====
 グルタミン酸トランスポーターであるvGluT3が関与することが報告されている<ref name=ref58><pubmed>20081852</pubmed></ref>。台形体内側核由来のシナプスであるGABA/glycinergicシナプスが特定の時期にグルタミン酸も放出することがこのシナプス刈り込みに重要であると考えられている。
 グルタミン酸トランスポーターである[[vGluT3]]が関与することが報告されている<ref name=ref58><pubmed>20081852</pubmed></ref>。台形体内側核由来のシナプスであるGABA/グリシン作動性シナプスが特定の時期にグルタミン酸も放出することがこのシナプス刈り込みに重要であると考えられている。


====大脳皮質内抑制性シナプス====
====大脳皮質内抑制性シナプス====

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