「シナプス小胞」の版間の差分

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<font size="+1">[http://researchmap.jp/read0148418 高森 茂雄]、<font size="+1">[http://researchmap.jp/read0191133 熊丸 絵美]</font><br>
<font size="+1">[http://researchmap.jp/read0148418 高森 茂雄]、[http://researchmap.jp/read0191133 熊丸 絵美]</font><br>
''同志社大学''<br>
''同志社大学''<br>
DOI XXXX/XXXX 原稿受付日:2014年4月22日 原稿完成日:2014年月日<br>
DOI XXXX/XXXX 原稿受付日:2014年4月22日 原稿完成日:2014年月日<br>
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===エキソサイトーシスの分子機構===
===エキソサイトーシスの分子機構===
(図3)
(図3)


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===pH感受性GFP(pHluorin)を用いたシナプス小胞リサイクリングの解析===
===pH感受性GFP(pHluorin)を用いたシナプス小胞リサイクリングの解析===
 緑色蛍光蛋白質(GFP)の蛍光強度は溶液のpHにより変化する。GFPの遺伝子に変異を加え蛍光強度のpH依存的変化を増幅させた変異体がpHluorinである[44]。pHluorinは7.1程度のpKa値を示し、中性域では強い蛍光を発するが、弱酸性域では蛍光が減弱する。この蛍光変化は可逆的である。シナプス小胞内腔はV-ATPaseの働きにより弱酸性に保たれているため、pHluorinをシナプス小胞タンパク質の内腔側に融合させて遺伝子導入させると、小胞内腔に存在する時は蛍光を発せず、エキソサイトーシスに伴って細胞外の中性溶液に暴露された時に強い蛍光を発する。その後形質膜に移行したpHluorinを持つシナプス小胞タンパク質がエンドサイトーシスによって新たな小胞に回収されると、小胞内腔が酸性化され、再び蛍光が消失する。最初に用いられたSynaptobrevinに融合させたSynaptopHluorinは細胞表面への局在が多くシグナル−ノイズ比が低いことが問題となっていたが、その後SynaptophysinやVGLUT1の内腔側に融合させた改良版が作られ[45, 46]、1小胞イメージングなども可能となり、エンドサイトーシスや小胞酸性化の動態や速度論的解析が現在活発に進められている[47]。ただし、厳密に言えばpHluorinを融合させたタンパク質の動態を観察しているのであり、小胞「膜」のエンドサイトーシスを直接観察している訳ではないことに留意する必要がある。
 緑色蛍光蛋白質(GFP)の蛍光強度は溶液のpHにより変化する。GFPの遺伝子に変異を加え蛍光強度のpH依存的変化を増幅させた変異体がpHluorinである[44]。pHluorinは7.1程度のpKa値を示し、中性域では強い蛍光を発するが、弱酸性域では蛍光が減弱する。この蛍光変化は可逆的である。シナプス小胞内腔はV-ATPaseの働きにより弱酸性に保たれているため、pHluorinをシナプス小胞タンパク質の内腔側に融合させて遺伝子導入させると、小胞内腔に存在する時は蛍光を発せず、エキソサイトーシスに伴って細胞外の中性溶液に暴露された時に強い蛍光を発する。その後形質膜に移行したpHluorinを持つシナプス小胞タンパク質がエンドサイトーシスによって新たな小胞に回収されると、小胞内腔が酸性化され、再び蛍光が消失する。最初に用いられたSynaptobrevinに融合させたSynaptopHluorinは細胞表面への局在が多くシグナル−ノイズ比が低いことが問題となっていたが、その後SynaptophysinやVGLUT1の内腔側に融合させた改良版が作られ[45, 46]、1小胞イメージングなども可能となり、エンドサイトーシスや小胞酸性化の動態や速度論的解析が現在活発に進められている[47]。ただし、厳密に言えばpHluorinを融合させたタンパク質の動態を観察しているのであり、小胞「膜」のエンドサイトーシスを直接観察している訳ではないことに留意する必要がある。


== 有芯顆粒 ==
== 有芯顆粒 ==
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 このようなシナプス活性帯からの距離的な差異や、活性化させる受容体の違い、またシナプス前膜と膜融合を起こすのに必要なカルシウムの応答性の相違などによって、LDCV内の伝達物質はシナプス小胞内の神経伝達物質よりも遅い速度でポストシナプス側に作用する。更に、シナプス小胞は伝達物質の放出後、エンドサイトーシスによって再合成され、プレシナプス局所で伝達物質の再充填が行われるのに対し、LDCVは一度きりの放出で、新たなLDCVはトランスゴルジネットワークから生成される、というように生成過程においても違いがある。プレシナプスにシナプス小胞とLDCVの両方が存在するシナプスが脳の各部位で見つかっている。そのようなシナプスではひとつのシナプス前終末に神経伝達物質を2種類以上有することになるが、この伝達物質の組み合わせは脳の部位によって異なり、 これがそれぞれのシナプスにおけるシナプス伝達の多様性に寄与していると考えられる[51]。
 このようなシナプス活性帯からの距離的な差異や、活性化させる受容体の違い、またシナプス前膜と膜融合を起こすのに必要なカルシウムの応答性の相違などによって、LDCV内の伝達物質はシナプス小胞内の神経伝達物質よりも遅い速度でポストシナプス側に作用する。更に、シナプス小胞は伝達物質の放出後、エンドサイトーシスによって再合成され、プレシナプス局所で伝達物質の再充填が行われるのに対し、LDCVは一度きりの放出で、新たなLDCVはトランスゴルジネットワークから生成される、というように生成過程においても違いがある。プレシナプスにシナプス小胞とLDCVの両方が存在するシナプスが脳の各部位で見つかっている。そのようなシナプスではひとつのシナプス前終末に神経伝達物質を2種類以上有することになるが、この伝達物質の組み合わせは脳の部位によって異なり、 これがそれぞれのシナプスにおけるシナプス伝達の多様性に寄与していると考えられる[51]。
== 参考文献 ==
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