「ショウジョウバエ」の版間の差分

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 [[wikipedia:ja:昆虫網|昆虫網]]、[[wikipedia:ja:双翅目|双翅目]]に属する[[wikipedia:ja:ショウジョウバエ科|ショウジョウバエ科]]には2000種以上の種が存在するが、このうち一般にショウジョウバエと呼ばれるものはキイロショウジョウバエである。
 [[wikipedia:ja:昆虫網|昆虫網]]、[[wikipedia:ja:双翅目|双翅目]]に属する[[wikipedia:ja:ショウジョウバエ科|ショウジョウバエ科]]には2000種以上の種が存在するが、このうち一般にショウジョウバエと呼ばれるものはキイロショウジョウバエである。


 [[wikipedia:ja:完全変態|完全変態]]昆虫で、摂氏25度では、胚期(1日)、1齢[[wj:幼虫|幼虫]]期(1日)、2齢幼虫期(1日)、3齢幼虫期(2日)、[[wj:蛹|蛹]]期(5日)を経て約10日で[[wj:成虫|成虫]]になる。体長が小さく(成虫で3mm)、飼育が容易で、世代期間が短いことから、遺伝学的解析に適している。また、遺伝的組換えを抑制する[[wikipedia:ja:バランサー染色体|バランサー染色体]]を用いて[[wj:突然変異体|突然変異体]]を安定に継代維持することができるのも大きな利点である。神経細胞の数は幼虫で約1万、成虫で10万程度。
 [[wikipedia:ja:完全変態|完全変態]]昆虫で、摂氏25度では、胚期(1日)、1齢[[wj:幼虫|幼虫]]期(1日)、2齢幼虫期(1日)、3齢幼虫期(2日)、[[wj:蛹|蛹]]期(5日)を経て約10日で[[wj:成虫|成虫]]になる。体長が小さく(成虫で3mm)、飼育が容易で、世代期間が短いことから、遺伝学的解析に適している。また、遺伝的組換えを抑制する[[wikipedia:ja:バランサー染色体|バランサー染色体]]を用いて[[wj:突然変異体|突然変異体]]を安定に継代維持することができるのも大きな利点である{{要出典|date=2016年5月}}。神経細胞の数は幼虫で約1万、成虫で10万程度{{要出典|date=2016年5月}}。


== よく用いられる遺伝学的手法 ==
== よく用いられる遺伝学的手法 ==
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=== 機能欠失型変異 ===
=== 機能欠失型変異 ===
 古典的には、[[突然変異体]]の解析により遺伝子機能の解析が行われた。[[wikipedia:ja:クリスティアーネ・ニュスライン=フォルハルト|Nusslein-Volhard]]と[[wikipedia:ja:エリック・ヴィーシャウス|Wieschaus]]が行った胚発生に関わる遺伝子の系統的解析に代表されるように、X線や化学物質を用いて人工的に変異を誘導し、大量の変異体のなかから着目する表現型を示すものを探す[[順遺伝学的手法]](forward genetics)は[[動物]]発生や行動の解析において大きな威力を発揮した(section3に具体例を紹介)。
 古典的には、[[突然変異体]]の解析により遺伝子機能の解析が行われた。[[wikipedia:ja:クリスティアーネ・ニュスライン=フォルハルト|Nusslein-Volhard]]と[[wikipedia:ja:エリック・ヴィーシャウス|Wieschaus]]が行った胚発生に関わる遺伝子の系統的解析{{要出典|date=2016年5月}}に代表されるように、X線や化学物質を用いて人工的に変異を誘導し、大量の変異体のなかから着目する表現型を示すものを探す[[順遺伝学的手法]](forward genetics)は[[動物]]発生や行動の解析において大きな威力を発揮した(section3に具体例を紹介)。


 1976年には[[トランスポゾン]][[P因子]]が発見され、個体への遺伝子導入が可能になるとともに、突然変異の原因遺伝子のクローニングが一挙に進んだ。さらに2000年頃に完了した[[wikipedia:ja:ゲノム|ゲノム]]解読後、P因子挿入部位のマッピングが進み、現在では60%以上の遺伝子についてデータベースを[[検索]]するだけでP因子挿入の変異体を得ることができる。さらに再転移法を用いて近傍のP因子から欠失変異体を得ることができるので、P因子を頼りに大多数の遺伝子の機能欠失体を得ることが可能となっている。
 1976年には[[トランスポゾン]][[P因子]]が発見され{{要出典|date=2016年5月}}、個体への遺伝子導入が可能になるとともに、突然変異の原因遺伝子のクローニングが一挙に進んだ。さらに2000年頃に完了した[[wikipedia:ja:ゲノム|ゲノム]]解読後、P因子挿入部位のマッピングが進み、現在では60%以上の遺伝子についてデータベースを[[検索]]するだけでP因子挿入の変異体を得ることができる。さらに再転移法を用いて近傍のP因子から欠失変異体を得ることができるので、P因子を頼りに大多数の遺伝子の機能欠失体を得ることが可能となっている。


 さらに、[[RNAi]]による遺伝子機能[[ノックダウン]]を可能にする系統(UAS-RNAi)もほとんどすべての遺伝子について利用可能である。RNAiの場合、遺伝子機能を完全には阻害することができないという問題がある一方で、下記の[[Gal4-UASシステム]]と組み合わせることで、特定の細胞においてのみ遺伝子機能を阻害できるという利点がある。一方、[[マウス]]で用いられる[[相同組み替え]]のように特定の遺伝子を狙って欠失変異体を作成する手法は長年存在せず、遺伝学モデルとしての弱点のひとつであったが、組換え酵素[[FLP]]を利用して相同組換えを誘導する系が最近開発された。さらにごく最近では[[ゲノム編集]]を用いることで、より効率的に変異体を作成することが可能となっている。
 さらに、[[RNAi]]による遺伝子機能[[ノックダウン]]を可能にする系統(UAS-RNAi)もほとんどすべての遺伝子について利用可能である。RNAiの場合、遺伝子機能を完全には阻害することができないという問題がある一方で、下記の[[Gal4-UASシステム]]と組み合わせることで、特定の細胞においてのみ遺伝子機能を阻害できるという利点がある。一方、[[マウス]]で用いられる[[相同組み替え]]のように特定の遺伝子を狙って欠失変異体を作成する手法は長年存在せず、遺伝学モデルとしての弱点のひとつであったが、組換え酵素[[FLP]]を利用して相同組換えを誘導する系が最近開発された。さらにごく最近では[[ゲノム編集]]を用いることで、より効率的に変異体を作成することが可能となっている。