「ステロイド」の版間の差分

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===  アンドロゲン   ===
===  アンドロゲン   ===


アンドロゲンとは、雄性化作用を持つホルモンの総称である。アンドロゲンの90%を占めるテストステロンの他、アンドロステンジオンやデヒドロエピアンドロステロン等が挙げられる<ref name="ref2">'''近藤保彦、小川園子、菊水健史、山田一夫、富原一哉'''<br>脳とホルモンの行動学 行動神経内分泌学への招待<br>''西村書店'':2010</ref>。精巣ライディッヒ細胞がアンドロゲンの合成・分泌細胞である。アンドロゲンは精子形成に重要であり、輸精管、前立腺、精嚢、カウパー腺の維持の他、交尾などを含めた雄の性行動に重要であり、また攻撃行動などの社会行動にも関与している。周生期にアンドロゲンシャワーと呼ばれる大量のテストステロンが分泌される時期があり、このことによって脳の雌性的特徴が失われ、性分化の方向性が決定される<ref name="ref2" />。
アンドロゲンとは、雄性化作用を持つホルモンの総称である。アンドロゲンの90%を占めるテストステロンの他、アンドロステンジオンやデヒドロエピアンドロステロン等が挙げられる<ref >'''近藤保彦、小川園子、菊水健史、山田一夫、富原一哉'''<br>脳とホルモンの行動学 行動神経内分泌学への招待<br>''西村書店'':2010</ref>。精巣ライディッヒ細胞がアンドロゲンの合成・分泌細胞である。アンドロゲンは精子形成に重要であり、輸精管、前立腺、精嚢、カウパー腺の維持の他、交尾などを含めた雄の性行動に重要であり、また攻撃行動などの社会行動にも関与している。周生期にアンドロゲンシャワーと呼ばれる大量のテストステロンが分泌される時期があり、このことによって脳の雌性的特徴が失われ、性分化の方向性が決定される。

2012年3月13日 (火) 12:36時点における版

英語名:steroid    独:steroide     仏:stéroïdes  

ステロイドとは、分子中にステロイド核と称する骨格構造をもつ一連の有機化合物の総称である。ほとんどの動植物で生合成され、ステロイドホルモン、コレステロール、胆汁酸、ビタミンD等が代表例である。


ステロイドの構造

 

ステロイド核の構造

  一般にステロイド核と呼ばれるものは、シクロペンタノペルヒドロフェナントレン核のことであり、3つのイス型六員環と1つの五員環がつながった構造をしている[1]。右図のように構造式を書いた場合、それぞれの環を左下から順にA環、B環、C環、D環と呼ぶ。一部あるいはすべての炭素が水素化され、通常はC-10とC-13にメチル基を、また多くの場合C-17にアルキル基を有する。生体物質としてのステロイドはC-3位がヒドロキシル化もしくはカルボニル化されたステロール類である。


ステロイドホルモン

ステロイド核をもつホルモンをステロイドホルモンと呼ぶ。副腎、精巣、卵巣等の内分泌器官より分泌され、血流を通じて全身の標的細胞に作用する。

ステロイドホルモンの生合成

ステロイドホルモンの生合成

副腎皮質、精巣、卵巣において、ステロイドホルモンはコレステロールから作られる。ステロイドホルモンは、主にシトクロムP450系酵素群の働きによって作られ、これらの酵素は小胞体膜かミトコンドリア内膜のいずれかに局在する。以下に挙げる酵素がステロイドホルモン合成酵素として知られており、これらのうち3β-HSDと17β-HSD以外はシトクロムP450系酵素である。


・P450 scc:コレステロール側鎖切断酵素(cholesterole side chain cleavage)

・3β-HSD: 3β-ヒドキシステロイド脱水素酵素・異性化酵素 (3β-hydroxysteroid dehydrogenase)

・P450c17: 17α-水酸化・開裂酵素(17 α-hydoroxylase/17, 20 lyase)

・P450c21:21‐水酸化酵素(C21-hydroxylase)

・P450-11β: 11β-水酸化酵素(11β-hydroxylase)

・P450c18: アルドステロン合成酵素

・P450arom: アロマターゼ(aromatase)

・17β-HSD: 17β-ヒドキシステロイド脱水素酵素


炭素数27のコレステロールは、P450 sccの作用により、側鎖(炭素数6)が切断されてプレグネノロン(炭素数21)となる。この過程はホルモン分泌器官の間で共通したプロセスである。副腎では、最終的には炭素数の数は変化しないが、化学構造が変化を受けたグルココルチコイドミネラルコルチコイドが、また精巣では炭素数が2個減少したアンドロゲン(炭素数19)が、さらに卵巣では炭素数が1個減少したエストロゲン(炭素数18)が生成される。


 副腎皮質ホルモン

副腎皮質ホルモンは、グルココルチコイドミネラルコルチコイドの2種に大別され、前者の代表はコルチゾールとコルチコステロン、後者の代表はアルドステロンである。副腎皮質球状帯ではアルドステロンが合成され、束状帯と網状帯はコルチゾールもしくはコルチコステロンが合成される。糖質コルチコイドは糖代謝の調節、鉱質コルチコイドは血中の塩濃度の調節に関与する。また、糖質コルチコイドはストレスホルモンとしても知られる。束状帯と網状帯では少量のアンドロゲンが合成されるが、アンドロゲンは副腎皮質ホルモンに含めないことが多い。

 アンドロゲン 

アンドロゲンとは、雄性化作用を持つホルモンの総称である。アンドロゲンの90%を占めるテストステロンの他、アンドロステンジオンやデヒドロエピアンドロステロン等が挙げられる[2]。精巣ライディッヒ細胞がアンドロゲンの合成・分泌細胞である。アンドロゲンは精子形成に重要であり、輸精管、前立腺、精嚢、カウパー腺の維持の他、交尾などを含めた雄の性行動に重要であり、また攻撃行動などの社会行動にも関与している。周生期にアンドロゲンシャワーと呼ばれる大量のテストステロンが分泌される時期があり、このことによって脳の雌性的特徴が失われ、性分化の方向性が決定される。

  1. G. P. Moss (1989). "Nomenclature of Steroids (Recommendations 1989)". Pure & Appl. Chem. 61 (10): 1783–1822. doi:10.1351/pac198961101783. PDF
  2. 近藤保彦、小川園子、菊水健史、山田一夫、富原一哉
    脳とホルモンの行動学 行動神経内分泌学への招待
    西村書店:2010