「ストレス」の版間の差分

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 視床下部は脳底部に位置し、[[自律神経]]機能の制御を担う中枢で、[[交感神経]]・[[副交感神経]]機能および[[内分泌]]機能を調節している。また、視床下部は[[摂食行動]]・[[性行動]]・[[睡眠]]などの[[本能行動]]の中枢、および不安や怒りといった情動行動制御の中枢と考えられている。さらに視床下部はストレス反応の中枢であり、特に視床下部[[室傍核]]ではストレスに応答して種種の[[神経ペプチド]]・ホルモン群が産生・分泌され、生体のストレス反応に対して重要な役割を担っている。
 視床下部は脳底部に位置し、[[自律神経]]機能の制御を担う中枢で、[[交感神経]]・[[副交感神経]]機能および[[内分泌]]機能を調節している。また、視床下部は[[摂食行動]]・[[性行動]]・[[睡眠]]などの[[本能行動]]の中枢、および不安や怒りといった情動行動制御の中枢と考えられている。さらに視床下部はストレス反応の中枢であり、特に視床下部[[室傍核]]ではストレスに応答して種種の[[神経ペプチド]]・ホルモン群が産生・分泌され、生体のストレス反応に対して重要な役割を担っている。


==視床下部-下垂体-副腎系(HPA系)==
==視床下部-下垂体-副腎系==


 生体にストレッサーがかかると様々な生体反応が生じる。ストレッサーが引き金となる生体反応のうち、視床下部-下垂体-副腎系(HPA系)を介した内分泌反応は様々な[[精神疾患]]との関連が示唆されている。ストレス負荷により視床下部から[[副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン]](CRH)が分泌されると[[下垂体]]前葉からの[[副腎皮質刺激ホルモン]](ACTH)の分泌が促進される。ACTHは[[wikipedia:ja: 副腎皮質|副腎皮質]]を刺激し、コルチゾールの分泌を促進する。海馬、視床下部、下垂体にはコルチゾールと結合する受容体([[糖質コルチコイド受容体]](GR)、[[鉱質コルチコイド受容体]](MR))が存在し、コルチゾールの分泌量が増大するとこれら受容体を介してCRHやACTHの合成・分泌を抑制し、結果としてコルチゾールの分泌量が抑制される(ネガティブフィードバック制御)。HPA系はストレッサーから生体を守る正常な機構の1つであり、中でもネガティブフィードバック制御はコルチゾールの神経細胞への過度な曝露を抑制する機構と考えられている。HPA系の機能調節異常は海馬神経細胞の萎縮を引き起こすこと、[[うつ病]]や[[心的外傷後ストレス障害]](PTSD)との関連が示唆されている。
 生体にストレッサーがかかると様々な生体反応が生じる。ストレッサーが引き金となる生体反応のうち、視床下部-下垂体-副腎系(HPA系)を介した内分泌反応は様々な[[精神疾患]]との関連が示唆されている。ストレス負荷により視床下部から[[副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン]](CRH)が分泌されると[[下垂体]]前葉からの[[副腎皮質刺激ホルモン]](ACTH)の分泌が促進される。ACTHは[[wikipedia:ja: 副腎皮質|副腎皮質]]を刺激し、コルチゾールの分泌を促進する。海馬、視床下部、下垂体にはコルチゾールと結合する受容体([[糖質コルチコイド受容体]](GR)、[[鉱質コルチコイド受容体]](MR))が存在し、コルチゾールの分泌量が増大するとこれら受容体を介してCRHやACTHの合成・分泌を抑制し、結果としてコルチゾールの分泌量が抑制される(ネガティブフィードバック制御)。HPA系はストレッサーから生体を守る正常な機構の1つであり、中でもネガティブフィードバック制御はコルチゾールの神経細胞への過度な曝露を抑制する機構と考えられている。HPA系の機能調節異常は海馬神経細胞の萎縮を引き起こすこと、[[うつ病]]や[[心的外傷後ストレス障害]](PTSD)との関連が示唆されている。