「スライス培養」の版間の差分

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<font size="+1">[http://researchmap.jp/read0080364 宮田 卓樹]</font><br>
''名古屋大学 大学院医学系研究科 機能構築医学専攻 大学院医学系研究科 機能構築医学専攻''<br>
DOI:<selfdoi /> 原稿受付日:2012年5月8日 原稿完成日:2013年3月26日<br>
担当編集委員:[http://researchmap.jp/noriko1128 大隅 典子](東北大学 大学院医学系研究科 附属創生応用医学研究センター 脳神経科学コアセンター 発生発達神経科学分野)<br>
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英語名:Slice culture
英語名:Slice culture


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 細胞を生かしたまま解析する培養(culture)という技術のうち、三次元構築を保持しつつ行なう[[wikipedia:JA:組織培養|組織培養]](tissue culture)手法のひとつであり、特定の断面視を得られるようスライス処理を施した組織片を培養に供する方法を指す。
 細胞を生かしたまま解析する培養(culture)という技術のうち、三次元構築を保持しつつ行なう[[wikipedia:JA:組織培養|組織培養]](tissue culture)手法のひとつであり、特定の断面視を得られるようスライス処理を施した組織片を培養に供する方法を指す。
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== スライス培養とは ==
== スライス培養とは ==
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===スライス方法===
===スライス方法===


 スライス作業の方法としては、(1)マニュアル法と(2)スライス作成装置を用いる方法の2通りがある。いずれの場合も、通常300マイクロメーター程度の厚さのものを得る。
 スライス作業の方法としては、(1)マニュアル法と(2)スライス作成装置を用いる方法の2通りがある。いずれの場合も、通常300マイクロメーター程度の厚さのものを得る。


====マニュアル法====
====マニュアル法====
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===培養法===
===培養法===


 多孔質膜(フィルター)にスライスを載せる方法、培養皿の底面にスライスを置く方法の2通りがある。「細胞培養」の場合、インキュベーターのガスは5% CO2 + 95%大気という組成である。この方法でスライスの培養を「底式」で行なうと、スライスの深部において[[wikipedia:JA:壊死|壊死]]が起こりやすい。そのため、酸素濃度を40%〜95%の高レベルに設定することが試みられる。酸素の供給とその毒性との折り合いがつく箇所がスライス中のどこかに確保できるとの意識、経験則にもとづいて対象に応じた工夫がなされている。「フィルター式」でも高酸素を与える場合もある。また、培地の静置ではなく灌流が行なわれることもある。
 多孔質膜(フィルター)にスライスを載せる方法、培養皿の底面にスライスを置く方法の2通りがある。「細胞培養」の場合、インキュベーターのガスは5% CO2 + 95%大気という組成である。この方法でスライスの培養を「底式」で行なうと、スライスの深部において[[wikipedia:JA:壊死|壊死]]が起こりやすい。そのため、酸素濃度を40%〜95%の高レベルに設定することが試みられる。酸素の供給とその毒性との折り合いがつく箇所がスライス中のどこかに確保できるとの意識、経験則にもとづいて対象に応じた工夫がなされている。「フィルター式」でも高酸素を与える場合もある。また、培地の静置ではなく灌流が行なわれることもある。


====多孔質膜(フィルター)にスライスを載せる方法====
====多孔質膜(フィルター)にスライスを載せる方法====
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 「フィルター式」か「底式」かによって相性の善し悪しはあるが、いずれの培養法に対しても、[[wikipedia:ja:正立型顕微鏡|正立型顕微鏡]]および[[wikipedia:ja:倒立型顕微鏡|倒立型顕微鏡]]のどちらも使い得る。高倍率レンズを用いて倒立型顕微鏡での観察を行なう場合は、必ずガラス底の培養皿を用いる。
 「フィルター式」か「底式」かによって相性の善し悪しはあるが、いずれの培養法に対しても、[[wikipedia:ja:正立型顕微鏡|正立型顕微鏡]]および[[wikipedia:ja:倒立型顕微鏡|倒立型顕微鏡]]のどちらも使い得る。高倍率レンズを用いて倒立型顕微鏡での観察を行なう場合は、必ずガラス底の培養皿を用いる。


==展望==
== 展望 ==
 顕微鏡、培養装置、画像撮影装置、コンピューターなどの進歩にともなって、ますますスライス培養の利用される機会が増す事が予想されるが、一方で、この手法があくまでも「培養」であることも忘れてはならない。組織学的解析などにもとづく生体内の現象との比較を通じて、適切な利用がなされる必要がある。
 
 顕微鏡、培養装置、画像撮影装置、コンピューターなどの進歩にともなって、ますますスライス培養の利用される機会が増す事が予想されるが、一方で、この手法があくまでも「培養」であることも忘れてはならない。組織学的解析などにもとづく生体内の現象との比較を通じて、適切な利用がなされる必要がある。  
 
== 関連項目 ==
 
*[[初代培養]]
*[[細胞培養]]
*[[スライス]]


== 参考文献 ==


(執筆者:宮田卓樹 担当編集委員:大隅典子)
#'''安田國雄'''編<br>「図・写真で観る発生・再生実験マニュアル」遺伝子医学別冊<br>''株式会社 メディカル ドゥ''
#'''Gary Banker and Kimberly Goslin''' ed.<br>Culturing Nerve Cells, 2nd Edition<br>''MIT press''<br>

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