「ソニック・ヘッジホッグ」の版間の差分

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== ソニック・ヘッジホッグシグナルを細胞レベルで解析する実験手法 ==
== ソニック・ヘッジホッグシグナルを細胞レベルで解析する実験手法 ==
 細胞レベルでの解析においてShhシグナルに反応する細胞は少なく、よく使われるのはマウスの繊維芽細胞NIH3T3細胞<ref><pubmed>25833741</pubmed></ref> やヒト角化細胞<ref><pubmed>16880536</pubmed></ref> 、ニワトリやマウスの神経前駆細胞([[胚性幹細胞]]から分化させたものや胚から単離したもの)である<ref><pubmed>26972603</pubmed></ref><ref><pubmed>25026549</pubmed></ref> 。Shhシグナルを受容する1次繊毛は、[[細胞周期]]のG0/G1期にのみ生じるため、特にNIH3T3でShhシグナルの実験を行う際にはあらかじめ血清飢餓状態にしてG0/G1期の細胞を多数得ることが重要である。細胞において実験的にShhシグナルを活性化する場合、大腸菌で作成した(つまりコレステロール修飾がされていない)リコンビナントタンパク質も活性は持っている<ref><pubmed>26972603</pubmed></ref><ref><pubmed>10564658</pubmed></ref><ref><pubmed>18046410</pubmed></ref> 。化合物としては、purmorphamineとSAGがSmoを標的とし<ref><pubmed>16408082</pubmed></ref> 、Shhのアゴニストとして用いられている。一方、cyclopamineとSANT-1は同じくSmoを標的とし、その活性を阻害することによりShhシグナルの[[アンタゴニスト]]として働くChen, 2002 #47;Dixit, 2013 #49}。
 細胞レベルでの解析においてShhシグナルに反応する細胞は少なく、よく使われるのはマウスの繊維芽細胞NIH3T3細胞<refname=ref69><pubmed>25833741</pubmed></ref>やヒト角化細胞<ref><pubmed>16880536</pubmed></ref>、ニワトリやマウスの神経前駆細胞([[胚性幹細胞]]から分化させたものや胚から単離したもの)である<ref name=ref71><pubmed>26972603</pubmed></ref><ref><pubmed>25026549</pubmed></ref>。Shhシグナルを受容する1次繊毛は、[[細胞周期]]のG0/G1期にのみ生じるため、特にNIH3T3でShhシグナルの実験を行う際にはあらかじめ血清飢餓状態にしてG0/G1期の細胞を多数得ることが重要である。細胞において実験的にShhシグナルを活性化する場合、大腸菌で作成した(つまりコレステロール修飾がされていない)リコンビナントタンパク質も活性は持っている<ref name=ref71><pubmed>26972603</pubmed></ref><ref><pubmed>10564658</pubmed></ref><ref name=ref74><pubmed>18046410</pubmed></ref> 。化合物としては、purmorphamineとSAGがSmoを標的とし<ref><pubmed>16408082</pubmed></ref> 、Shhのアゴニストとして用いられている。一方、cyclopamineとSANT-1は同じくSmoを標的とし、その活性を阻害することによりShhシグナルの[[アンタゴニスト]]として働くChen, 2002 #47;Dixit, 2013 #49}。


 Shhシグナルの強度を計測する方法としては、luciferaseまたはGFPのレポーターコンストラクトが多用され<ref name=ref45><pubmed>9118802</pubmed></ref><ref><pubmed>22265416</pubmed></ref> 、ほかの方法として、定量PCRを用いてShhシグナルのターゲット遺伝子であるGli1やPtc1の発現量を解析してもよい<ref><pubmed>25833741</pubmed></ref><ref><pubmed>18046410</pubmed></ref> 。NIH3T3では、Shhシグナルの添加時間とともにGli1やPtc1の発現量が増加する<ref><pubmed>25833741</pubmed></ref> 。一方、神経前駆細胞内ではShhシグナルは数時間以内にいったん活性化し、その後、負のフィードバックが起こって鎮静化する<ref><pubmed>18046410</pubmed></ref><ref><pubmed>22265416</pubmed></ref><ref><pubmed>20532235</pubmed></ref> 。この負のフィードバックが起きるメカニズムとしては、Ptcが細胞膜上に多数存在するようになってShhタンパク質が枯渇するというもの<ref><pubmed>18046410</pubmed></ref> や、活性型Gliタンパク質が不活性型に比べて不安定であるというもの<ref name=ref40><pubmed>20360384</pubmed></ref> などがあるが、全容はまだ明らかになっていない。
 Shhシグナルの強度を計測する方法としては、luciferaseまたはGFPのレポーターコンストラクトが多用され<ref name=ref45><pubmed>9118802</pubmed></ref><ref><pubmed>22265416</pubmed></ref> 、ほかの方法として、定量PCRを用いてShhシグナルのターゲット遺伝子であるGli1やPtc1の発現量を解析してもよい<refname=ref69><pubmed>25833741</pubmed></ref><ref name=ref74><pubmed>18046410</pubmed></ref>。NIH3T3では、Shhシグナルの添加時間とともにGli1やPtc1の発現量が増加する<refname=ref69><pubmed>25833741</pubmed></ref>。一方、神経前駆細胞内ではShhシグナルは数時間以内にいったん活性化し、その後、負のフィードバックが起こって鎮静化する<ref name=ref74><pubmed>18046410</pubmed></ref><ref><pubmed>22265416</pubmed></ref><ref><pubmed>20532235</pubmed></ref> 。この負のフィードバックが起きるメカニズムとしては、Ptcが細胞膜上に多数存在するようになってShhタンパク質が枯渇するというもの<ref name=ref74><pubmed>18046410</pubmed></ref> や、活性型Gliタンパク質が不活性型に比べて不安定であるというもの<ref name=ref40><pubmed>20360384</pubmed></ref> などがあるが、全容はまだ明らかになっていない。


==疾患との関わり==
==疾患との関わり==