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英語名:monoamine 独:Monoamine 仏:monoamine
{| class="wikitable"
 
!化合物!!ClinicalTrials.gov Identifier !! 年 !! 国 !! 対象疾患 !! Phase !! 結果
 [[モノアミン]]とは[[ドーパミン]]、[[ノルアドレナリン]]、[[アドレナリン]]、[[セロトニン]]、[[ヒスタミン]]などの[[神経伝達物質]]の総称である。いずれの神経伝達物質も一つのアミノ基が2つの炭素鎖により[[wikipedia:ja:芳香環|芳香環]]につながる化学構造を有する。[[wikipedia:ja:霊長類|霊長類]]、[[wikipedia:ja:齧歯類|齧歯類]]ではモノアミン含有神経細胞の細胞体は[[脳幹]]部にあり、ほぼ脳全体に[[神経軸索]]を投射するため、モノアミン神経系(モノアミン系)は広汎投射神経系としての特徴を有する。
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[[Image:4MA fig1.jpg|thumb|200px|'''図.モノアミン神経伝達物質''']]
| Taltirelin Hydrate || [https://www.clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT04107740 NCT04107740] || 2019- || 韓国 || SCD全般 || 4 || 現在進行中
==モノアミンとは==
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 神経科学において、モノアミンとは、主にセロトニン([[wikipedia:ja:インドール|インドール]]アミンの一種)、およびドーパミン、ノルアドレナリン、アドレナリン(この3つはカテコールアミンの一種)を主に指す。また、[[ヒスタミン]]もモノアミン神経伝達物質の一種である。これらは神経系において、[[神経伝達物質]]または[[神経修飾物質]](neuromodulator)として働く。主要な共通する特徴は以下の通りである<ref name=cooper>'''Cooper JR, Bloom FE, Roth RH''' (2003)<br>The Biochemical Basis of Neuropharmacology, 8th ed. <br>''Oxford University Press, New York.''<br>(邦訳 神経薬理学、樋口宗史監訳、メディカル・サイエンス・インターナショナル、東京、2005) </ref>。
| KPS-0373(Rovatirelin) || [https://www.clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT01970098 NCT01970098] || 2013-2015 || 日本 || 軽度~中等度のSCD || 3 || [https://jnnp.bmj.com/content/91/3/254 部分的に有効]
 
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=== 構造 ===
| Riluzole || [https://www.clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT03347344?cond=Spinocerebellar+Degeneration&draw=3&rank=11 NCT03347344] || 2018-2019 || フランス || SCA2 || 3 || 不明
 アミノ基 を一つ持つ()。セロトニンはインドール基をもつので、インドールアミンといえる。またドーパミン、ノルアドレナリン、アドレナリンはカテコール基をもつので、カテコールアミンとも呼ばれる。
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| Transcranial Magnetic Stimulation || [https://www.clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT03347344 NCT01975909] || 2013-2016 || 米国 || genetically-confirmed SCA || Not Applicable || 有効性なし
===合成===
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| Lithium Carbonate || [https://www.clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT00683943 NCT00683943] || 2008-2010 || 米国 || SCA1 || 1 ||
 カテコールアミンおよびインドールアミン(セロトニン、ドーパミン、ノルアドレナリン、アドレナリン)の合成には、[[テトラヒドロビオプテリン]](BH4)が必須である。すなわち、セロトニン生合成の律速酵素は[[トリプトファン水酸化酵素]]、またカテコールアミン生合成の律速酵素は[[チロシン水酸化酵素]]であるが、いずれもBH4を補酵素とする<ref name="ref3"><pubmed> 10727395 </pubmed></ref>。
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| Intravenous Immune Globulin || [https://www.clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT02287064 NCT02287064] || 2015-2016 || 米国 || SCA types 1, 2, 3, 6, 10, or 11 || 1 || まだ発表なし
 BH4はGTPより[[GTP cyclohydrolase 1]](GCH1)、[[6-Pyruvoyltetrahydrobiopterin synthase (PTS)]]、[[Sepiapterin reductase(SPR]])の3つの酵素により生合成される<ref name="ref3" />。
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| Oral Trehalose || [https://www.clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT04399265 NCT04399265] || 2020ー- || マレーシア || Genetically confirmed SCA 3 || Not Applicable || 進行中
===小胞性トランスポーター===
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| Varenicline (Chantix®) || [https://www.clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT00992771 NCT00992771] || 2009-2012 || 米国 || SCA3 || 2 || [https://n.neurology.org/content/78/8/545.long 有効]
 モノアミンのシナプス小胞への取り込みは、[[vesicular monoamine transporter]] (vMAT)ファミリーが担う。[[vMAT1]]、[[vMAT2]]からなり、vMAT1はおもに[[副腎]]の[[クロム親和性細胞]]、vMAT2は神経細胞で発現している。vMATはH<sup>+</sup>との[[交換輸送]]によりモノアミンを小胞内に蓄積させる<ref name="ref4"><pubmed> 11099462 </pubmed></ref>。
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| Umbilical Cord Mesenchymal Stem Cells || [https://www.clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT03378414 NCT03378414] || 2017- || 中国 || SCA1,2,4,6 || 2 || 詳細不明
===再取り込み===
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| Troriluzole || [https://www.clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT02960893 NCT03701399] || 2018- || 米国 || SCA1,2,3,6,7,8,10 || 2,3 || 進行中
 細胞外のモノアミンの再取り込みは、[[セロトニントランスポーター]](SERT)、[[ドーパミントランスポーター]](DAT)、[[ノルエピネフリントランスポーター]](NET)などが行うが、各トランスポーターは他のモノアミンを取り込む能力も有する。シナプス間隙におけるモノアミン濃度の調節は、再取り込みの寄与が高い<ref name="ref5"><pubmed> 10769386 </pubmed></ref>。
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| Sodium Phenylbutyrate || [https://www.clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT01096095 NCT01096095] || 2010-2012 || ブラジル || SCA3 || 2 || 中止
===代謝分解===
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| Dalfampridine || [https://www.clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT01811706 NCT01811706] || 2013-2015 || 米国 || SCA1,2,3,6 || Not Applicable || 有効性なし
 モノアミンの代謝分解においては、[[モノアミン酸化酵素]](monoamine oxidase, MAO)が共通して重要な酵素である。MAOはモノアミンの[[アミノ基]]を[[アルデヒド基]]に酸化する。MAOは[[ミトコンドリア]]外膜に局在し、細胞内のノルアドレナリン(再取込みされたものを含む)の分解に関与する。ただしMAOに比べてvMAT2の方がノルアドレナリンに対する親和性がずっと高いため、シナプス小胞への取り込みの方がMAOによる分解よりも優先されると考えられる<ref name="ref6"><pubmed> 16552415</pubmed></ref>。MAOにはMAO-AとMAO-Bがあり、二つの別の遺伝子によりコードされている。MAO-AとMAO-Bはモノアミン作動性神経細胞およびグリア細胞に発現しているが、発現量は細胞の種類により異なり、また動物種によっても違いが見られる<ref name="ref6" />。
|-
 
| CAD-1883 || [https://www.clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT04301284 NCT04301284] || 2020- || 米国 || SCA1,2,3,6,7,10,17 || 2 || 延期(COVID-19のため
===神経修飾因子としての機能 ===
|-
 
| Docosahexaenoic Acid (DHA) || [https://www.clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT03109626 NCT03109626] || 2015-2018 || イタリア || SCA38 || Not Applicable || [https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1002/ana.25059 有効]
 モノアミン神経伝達物質は脳・神経機能を「修飾(modulate)」すると言われる。すなわち、例えば代表的な神経伝達物質である[[グルタミン酸]]は、[[イオンチャンネル]]型[[グルタミン酸受容体]]を介して速い神経興奮を引き起こし、また短期・長期の可塑性を示す([[シナプス可塑性]])。一方、モノアミン神経伝達物質は、神経細胞の興奮性やシナプス可塑性を様々な経路を介して調節し、脳機能に影響を与えると考えられている。
|-
 
| Stemchymal® || [https://www.clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT02540655 NCT02540655] || 2015- || 台湾 || SCA2,3 || 2 || 不明
=== 精神疾患との関連 ===
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| Intravenous Cabaletta || [https://www.clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT02147886 NCT02147886] || 2014-2016 || イスラエル || SCA3 || 2 || 結果?
 モノアミンが脳の精神的活動に重要とされる根拠の一つは、[[精神疾患]]に用いられる薬物の多くがモノアミン神経伝達を標的にしていることである。例えば、代表的な精神疾患である[[統合失調症]]に用いられる薬の多くは、[[ドーパミンD2受容体]]に対する阻害効果を示す。うつ病に用いられる薬、SSRIは、[[セロトニン再取り込みの阻害剤]]である。しかしながら、これらの精神疾患の発症においてモノアミン系神経伝達の異常が原因であるかは必ずしも明らかではない<ref name="ref1">'''E R Kandel, J H Schwartz, T M Jessell'''<br> Principles of Neural Science, Fourth Edition<br>''Mc Graw Hill (New York)'':2000</ref><ref name="ref2">'''N R Carlson'''<br> Physiology of Behavior, Tenth Edition<br>''Pearson Education (Boston)'':2009</ref><ref name=inoue>'''井上 猛、中川 伸、小山 司''' (2009) <br>大うつ病性障害の薬理/抗うつ薬 .樋口輝彦,小山 司,神庭重信編,<br>臨床精神薬理ハンドブック(第二版)<br>''医学書院''、pp158-178.
|-
</ref>。
| Coenzyme Q10 || [https://www.clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT00957216 NCT00957216] || 2009-2018 || 米国 || 弧発性SCD || 1 || 結果?
 
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===受容体===
| BHV-4157 || [https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT03408080 NCT03408080] || 2018- || 米国 || SCA1,2,3,6 || 3 || エントリー中止中
 
|-
 モノアミンの[[受容体]]は[[イオンチャンネル型]]である[[5-HT3型受容体]]を除き、いずれも[[Gタンパク質共役型]]である。共役するG<sub>α</sub>タンパク質の種類により、下流のシグナル伝達経路が異なる。
| Vatiquinone || [https://www.clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT04577352 NCT04577352] || 2020- || 米国 || Friedreich Ataxia || 2,3 || 開始前
 
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== ノルアドレナリン==
| CTI-1601 || [https://www.clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT04519567 NCT04519567] || 2020- || 米国 || Friedreich Ataxia || 1 || 開始前
 
|-
 ノルエピネフリン (norepinephrine)  とも呼ぶ。''詳細は[[ノルアドレナリン]]の項目参照。''
| Etravirine || [https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT04273165 NCT04273165] || 2020- || イタリア || Friedreich Ataxia || 2 || 開始前
 
|-
=== 神経解剖===
| RT001 || [https://www.clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT04102501 NCT04102501] || 2019- || 米国 || Friedreich Ataxia || 3 || 進行中
 
|-
 ノルアドレナリンを神経伝達物質とする神経([[ノルアドレナリン神経]])の細胞体は中枢神経系では主として[[橋中心灰白質]]内の[[青斑核]]にあり、そこから脳全体に投射する。
| Resveratrol || [https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT03933163 NCT03933163] || 2019- || 米国 || Friedreich Ataxia || 2 || 進行中
 
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=== 合成・代謝===
| MIN-102 || [https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT03917225 NCT03917225] || 2019- || EU || Friedreich Ataxia || 2 || リクルート終了
 
|-
 ノルアドレナリンは[[wikipedia:ja:チロシン|チロシン]]からドーパミンを経由して合成される。[[チロシン水酸化酵素]]が律速段階で、ノルアドレナリン合成はノルアドレナリン作動性神経のインパルス量に依存し、さらにシナプス前[[ノルアドレナリン受容体]]([[自己受容体]]、[[α2アドレナリン受容体|α<sub>2</sub>アドレナリン受容体]])刺激によって抑制される。ノルアドレナリンはMAOと[[カテコールO-メチル基転移酵素]](COMT)により主たる代謝産物である[[3-メトキシ-4-ヒドロキシフェニルグリコール]] (MHPG)まで代謝される。
| gamma interferon || [https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT03888664 NCT03888664]<br>[https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT02797080 NCT02797080]<br>[https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT02593773 NCT02593773]<br>[https://www.clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT01965327 NCT01965327]||  ||  || Friedreich Ataxia || 2、3 ||
 
|-
=== 放出の制御===
| Nicotinamide || [https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT03761511 NCT03761511] || 2018- || EU || Friedreich Ataxia || 2 || 進行中
 
|-
 [[ストレス]]などのノルアドレナリン作動性神経のインパルス流量を増やす刺激により、[[シナプス小胞]]から[[シナプス間隙]]へのノルアドレナリン放出が促進され、細胞外ノルアドレナリン濃度は増加する。いったん放出されたノルアドレナリンはノルアドレナリン作動性神経の[[神経終末]]にある[[ノルアドレナリン・トランスポーター]](以前はノルアドレナリン取り込み部位と呼ばれていた)というタンパク質により[[神経終末]]に再取り込みされ、シナプス間隙のノルアドレナリン濃度は調節されている。ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(ほとんどの[[三環系抗うつ薬]]、[[四環系抗うつ薬]]、[[セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害剤]] (SNRI)のほか、2009年4月に[[注意欠陥/多動性障害]]ADHDの治療薬として承認された[[アトモキセチン]])投与はほぼ全脳で細胞外ノルアドレナリン濃度を増加させる。自己受容体であるα<sub>2</sub>アドレナリン受容体遮断は細胞外ノルアドレナリン濃度を増加させる。
| TAK-831 || [https://www.clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT03214588 NCT03214588] || 2017-2019 || 米国 || Friedreich Ataxia || 2 || 有効性なし
 
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=== 受容体=== 
| Rosuvastatin || [https://www.clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT02705547 NCT02705547] || 2016-2018 || 米国 || Friedreich Ataxia || 1 || リクルート終了
 
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 ノルアドレナリンとアドレナリンが作用する受容体は[[アドレナリン受容体]]と呼ばれる(なお、中枢神経系ではアドレナリン作動性神経はノルアドレナリン作動性神経に比べてはるかに数は少ない)。アドレナリン受容体のサブタイプは[[α1アドレナリン受容体|α<sub>1</sub>]]がA, B, Dの3種類、α<sub>2</sub>がA, B, Cの3種類、[[βアドレナリン受容体|β]]が1,2,3の3種類あり、計9種類ある。そのうち、脳に多いのはα<sub>1A</sub>、α<sub>1B</sub>、α<sub>1D</sub>、α<sub>2A</sub>、α<sub>2C</sub>、β<sub>1</sub>といわれている。[[抗うつ薬]]服用によって増えた細胞外ノルアドレナリンがどの受容体サブタイプを介して抗うつ効果を惹起しているのかについてはまだわかっていない。
| (+)-Epicatechin || [https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT02660112 NCT02660112] || 2016-2019 || 米国 || Friedreich Ataxia || 2 || 有効性なし
 
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== ドーパミン ==
| Methylprednisolone || [https://www.clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT02424435 NCT02424435] || 2015-2020 || 米国 || Friedreich Ataxia || 1 || リクルート終了
 
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=== 神経解剖 ===
| EPI-743(alpha-tocotrienol quinone) || [https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT01962363 NCT01962363] || 2013-2016 || 米国 || Friedreich's Ataxia with Point Mutations || 2 || [https://n.neurology.org/content/86/16_Supplement/P5.388 効果あり]
 
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 [[ドーパミン神経]]の長い投射系は大きく3つに分けることができる。起始核はいずれも脳幹部にあり、[[黒質]](A9)から[[線条体]]([[尾状核]]、[[被殻]])に投射する[[黒質線条体系]]ドーパミン投射、[[腹側被蓋]]ドーパミン細胞(腹側被蓋野A10)から[[辺縁系]][[皮質]]([[前頭前野]]、[[帯状回]]、[[嗅内領野]])に投射する[[中脳皮質系]]ドーパミン投射、[[腹側被蓋]]ドーパミン細胞([[赤核後野]]A8, [[腹側被蓋野]]A10)からそれ以外の辺縁系([[側坐核]]、[[中隔野]][[嗅結節]]、[[扁桃体]]、[[梨状葉皮質]])に投射する[[中脳辺縁系]]ドーパミン投射がある。黒質線条体系は[[運動系]]に、中脳皮質系は[[作業記憶]]などの[[認知機能]]に、中脳辺縁系は報酬系などに関連しているといわれている。
| Omaveloxolone || [https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT02255435 NCT02255435] || 2014- || 米国 || Friedreich Ataxia || 2 || リクルート停止
 
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=== 合成・代謝 ===
| Acetyl-L-Carnitine || [https://www.clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT01921868 NCT01921868] || 2013-2017 || 米国 || Friedreich Ataxia || Not Applicable || 結果未報告
 
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 ドーパミンの前駆物質であるチロシンは[[wikipedia:ja:必須アミノ酸|必須アミノ酸]]ではなく、食物からタンパク質として摂取される他、体内で必須アミノ酸である[[wikipedia:ja:フェニルアラニン|フェニルアラニン]]から変換される。チロシン水酸化酵素がドーパミン合成の律速段階である。ドーパミン合成はドーパミン作動性神経のインパルス量に依存し、さらにシナプス前[[ドーパミン受容体]](自己受容体、D2受容体)刺激によって抑制される。ドーパミンはMAOとCOMTにより主たる代謝産物である[[ホモバニリン酸]] (HVA)まで代謝される。
| VP 20629 || [https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT01898884 NCT01898884] || 2013-2016 || 米国 || Friedreich Ataxia || 1 || リクルート終了
 
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=== 放出の制御 ===
| EPI-743 || [https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT01728064 NCT01728064] || 2012-2015 || 米国 || Friedreich Ataxia || 2 || 有効性なし
 
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 [[ストレス]][[運動]]などのドーパミン作動性神経のインパルス流量を増やす刺激により、シナプス小胞からシナプス間隙へのドーパミン放出が促進され、細胞外ドーパミン濃度は増加する。ストレスでは中脳皮質ドーパミン系が特に活発化し、運動では黒質線条体ドーパミン系が特に活発化する。いったん放出されたドーパミンは側坐核や線条体では主としてドーパミン作動性神経の神経終末にある[[ドーパミン・トランスポーター]](以前はドーパミン取り込み部位と呼ばれていた)というタンパク質により神経終末に再取り込みされ、シナプス間隙のドーパミン濃度は調節されている。[[ドーパミン再取り込み阻害薬]](抗うつ薬の[[ブプロピオン]]、[[ナルコレプシー]]の治療薬である[[メチルフェニデート]]、試薬の[[GBR12909]]、[[麻薬]]の[[コカイン]]、[[メタンフェタミン]]などがドーパミン再取り込み阻害作用を有する)やドーパミン放出促進薬(メタンフェタミン、メチルフェニデート)は前述した3つのドーパミン投射系(黒質線条体、中脳皮質、中脳辺縁系)で細胞外ドーパミン濃度を増加させる。特にメタンフェタミンによるドーパミン増加作用はブプロピオンに比べると顕著であり、ブプロピオンによる増加が2〜3倍程度なのに対して、メタンフェタミンによる増加は10〜20倍までになる。また、[[選択的セロトニン再取り込み阻害剤]] (SSRI)である[[セルトラリン]]も弱いながらドーパミン再取り込み阻害作用を有する。
| Bupropion and Citalopram || [https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT01716221 NCT01716221] || 2012-2016 || 米国 || Friedreich Ataxia || 4 || 終了
 
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 [[三環系抗うつ薬]]、[[四環系抗うつ薬]]、[[SNRI]]などのノルアドレナリン再取り込み阻害作用を有する抗うつ薬の投与は、黒質線条体系と中脳辺縁系の神経終末領域の細胞外ドーパミン濃度には影響しないが、中脳皮質系([[前頭前野]]など)の細胞外ドーパミン濃度を増加させることが1990年代に発見された。これらの抗うつ薬はドーパミン再取り込み阻害作用を有さないのに、ドーパミン再取り込み阻害薬のように前頭前野で細胞外ドーパミン濃度を増やすことは興味深く、それまで抗うつ薬の作用機序から見逃されていた点であった。
| Resveratrol || [https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT01339884 NCT01339884] || 2011-2014 || オーストラリア || Friedreich Ataxia || 1,2 || 終了
 
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 その作用機序としては以下の2つの機序が考えられる。
| Idebenone || [https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT01303406 NCT01303406] || 2011-2016 || EU || Friedreich Ataxia || 3 || 有効性なし
#ノルアドレナリン作動性神経からノルアドレナリンがシナプス間隙に放出されるときに、[[wikipedia:ja:前駆物質|前駆物質]]であるドーパミンも一緒に放出される、
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#ノルアドレナリン作動性神経とドーパミン作動性神経([[側坐核]]、[[線条体]]以外では前頭前野に投射している)から放出されるドーパミンはドーパミン・トランスポーターのみならず、ノルアドレナリン・トランスポーターからも神経細胞内に再取り込みされるため、ノルアドレナリン再取り込み阻害薬投与によりドーパミンのノルアドレナリン・トランスポーターへの取り込みが阻害される。
| A0001(alpha-tocopherolquinone) || [https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT01035671 NCT01035671] || 2009-2011 || 米国 || Friedreich Ataxia || 2 || [https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1002/mds.25058 容量依存性にFRDA評価スケール改善]
 
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 以上の2つの機序に加えて、前頭前野ではドーパミン作動性神経に比べて、ノルアドレナリン作動性神経の神経終末が比較的多いという解剖学的特徴が寄与して、ノルアドレナリン再取り込み阻害薬投与により前頭前野細胞外ドーパミン濃度が増加すると考えられる。一方、線条体や側坐核では、ドーパミン作動性神経の神経終末のほうがノルアドレナリン作動性神経の神経終末よりも圧倒的に多く、細胞外のドーパミンはほとんどドーパミン作動性神経終末にあるドーパミン・トランスポーターにより取り込まれる。
| Erythropoietin || [https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT01016366 NCT01016366] || 2009-2016 || EU || Friedreich Ataxia || 2 || 有効性なし
 
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 多くの抗精神病薬、三環系抗うつ薬、四環系抗うつ薬が有する[[セロトニン#5-HT2.E5.8F.97.E5.AE.B9.E4.BD.93|5-HT<sub>2C</sub>受容体]]遮断作用は3つのドーパミン投射系(黒質線条体、中脳皮質、中脳辺縁系)で細胞外ドーパミン濃度を増加させる。したがって、5-HT<sub>2C</sub>受容体はドーパミン作動性神経に対して、おそらく[[細胞体]]レベルで緊張性の抑制作用を有すると考えられる<ref name=inoue />。
| idebenone || [https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT00993967 NCT00993967] || 2009-2016 || EU || Friedreich Ataxia || 3 || 認容性を副作用の確認
 
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=== 受容体 === 
| deferiprone || [https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT00530127 NCT00530127] || 2007-2009 || EU || Friedreich Ataxia || 1,2 || [https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1002/ana.24248 非重症例で進行抑制の可能性(+)]
 
|-
 ドーパミンが作用する受容体は[[ドーパミン受容体]]と呼ばれ、D<sub>1、</sub>D<sub>2</sub>、D<sub>3</sub>、D<sub>4</sub>、D<sub>5</sub>の5種類の受容体サブタイプがある。
| EGb 761 || [https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT00824512 NCT00824512] || 209-2013 || フランス || Friedreich Ataxia || 2 || 有効性なし
 
|-
== セロトニン ==
| pioglitazone || [https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT00811681 NCT00811681] || 2008-2013 || フランス || Friedreich Ataxia || 3 || 終了
 
|-
=== 神経解剖 === 
| varenicline || [https://www.clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT00803868 NCT00803868] || 2008-2010 || 米国 || Friedreich Ataxia || 2,3 || 途中で中止
 
|-
 [[セロトニン神経]]の細胞体は[[橋]]や[[脳幹]]にある[[縫線核群]](B1〜B9)から[[大脳]]・[[小脳]]・[[脊髄]]全体に[[軸索]]を投射している。大脳皮質、扁桃体には[[背側縫線核]]から、[[海馬]]には[[正中縫線核]]から投射があり、それぞれの起始核は異なる。
| Triheptanoin || [https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT04513002 NCT04513002] || 2020- || オーストラリア || Ataxia Telangiectasia || 2 || リクルート開始前
 
|-
=== 合成・代謝 ===
| vitamin B3 || [https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT03962114 NCT03962114] || 2019- || オランダ || Ataxia Telangiectasia || 2 || リクルート中
 
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 セロトニンは必須アミノ酸である[[wikipedia:ja:トリプトファン|トリプトファン]]から合成される。セロトニン合成の律速段階である[[トリプトファン水酸化酵素]]は基質によって飽和されていないため、トリプトファンの取り込み、血中の遊離トリプトファン濃度がセロトニン合成に影響を与える。トリプトファンの脳内への取り込みは能動的取り込み機構を介しているが、[[wikipedia:ja:芳香族アミノ酸|芳香族アミノ酸]]や[[wikipedia:ja:分枝鎖アミノ酸|分枝鎖アミノ酸]]によって阻害される。トリプトファンの過剰摂取はセロトニン合成を増加させる。また、トリプトファンは血中では蛋白に結合しており、トリプトファンの蛋白結合を阻害する薬物(例えば[[バルプロ酸]])の投与により血中の遊離トリプトファン濃度は上昇するため、脳内セロトニン濃度は上昇する。セロトニンはMAO-Aによって5-HIAAに代謝されるが、MAO-Bによる代謝はうけない。興味深いことに、セロトニン作動性神経内に、MAO-Bは存在するが、MAO-Aは存在しない。したがって、セロトニンの代謝はセロトニン作動性神経内ではなく、それ以外の細胞で行われると考えられる。
| N-Acetyl-L-Leucine || [https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT03759678 NCT03759678] || 2018- || 米,英,独 || Ataxia Telangiectasia || 2 || リクルート中
 
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=== 放出の制御 ===
| Metformin,Pioglitazone || [https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT02733679 NCT02733679] || 2016-2019 || 英国 || Ataxia Telangiectasia || 4 || 終了
 
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 ドーパミンやノルアドレナリンと同様に、ストレスによりセロトニン作動性神経のインパルス流量は増え、シナプス間隙へのセロトニン放出が促進され、細胞外セロトニン濃度は増加する。放出されたセロトニンはセロトニン作動性神経の神経終末にある[[セロトニン・トランスポーター]](以前はセロトニン取り込み部位と呼ばれていた)というタンパク質により神経終末に再取り込みされ、シナプス間隙のセロトニン濃度は調節されている。[[セロトニン再取り込み阻害薬]](3級アミンの三環系抗うつ薬と[[SSRI]])投与はほぼ全脳で細胞外セロトニン濃度を増加させる。
| Somatropin, Clonidine, L-Arginin-Hydrochloride, Estradiol valerate || [https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT01052623 NCT01052623] || 2010-2011 || ドイツ || Ataxia Telangiectasia || 4 || 結果?
 
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 セロトニン作動性神経の自己受容体は3種類あり、細胞体に[[セロトニン#5-HT1.E5.8F.97.E5.AE.B9.E4.BD.93|5-HT<sub>1A</sub>]]受容体が、神経終末に5-HT<sub>1B</sub>受容体と5-HT<sub>1D</sub>受容体が存在する。これらの自己受容体はいずれもセロトニン作動性神経の発火とセロトニン放出を抑制する。5-HT<sub>1B</sub>受容体と5-HT<sub>1D</sub>受容体は相同性が高く、片方のアゴニストあるいはアンタゴニストは他方の受容体にも親和性を有することが多い。SSRIとの併用では、5-HT<sub>1B</sub>受容体アンタゴニストも5-HT<sub>1A</sub>受容体アンタゴニストも細胞外セロトニン濃度をさらに増加させ、両アンタゴニストの併用はより効果的であるという報告もある。動物実験ではSSRI急性投与による細胞外セロトニン濃度の増加は2〜3倍であり、反復投与によって低用量の効果は増強するが、高用量のSSRIによる細胞外セロトニン濃度増加の程度は反復投与によって増強しない。しかし、セロトニンの自己受容体アンタゴニスト(特に5-HT<sub>1A</sub>受容体アンタゴニスト)をSSRIと併用するとSSRIの細胞外セロトニン濃度に対する効果がさらに大きくなる。
| amantadine sulphate || [https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT00950196 NCT00950196] || 2009-2011 || イスラエル || Ataxia Telangiectasia || 4 || [https://journals.sagepub.com/doi/10.1177/0883073812441999 運動症状を改善]
 
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 5-HT<sub>1A</sub>受容体の自己受容体を介したネガティブ・フィードバックのみならず、セロトニン作動性神経が投射する神経細胞にある5-HT<sub>1A</sub>受容体を介したlong-loopネガティブ・フィードバックによってもセロトニン作動性神経は調節されている。
| Baclofen || [https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT00640003 NCT00640003] || 2008-2011 || 米国 || Ataxia Telangiectasia || 1 || 結果?
 
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 細胞外セロトニン濃度は異種受容体であるα<sub>2</sub>アドレナリン受容体による制御もうけており、α<sub>2</sub>アドレナリン受容体遮断薬のSSRIとの併用はセロトニン再取り込み阻害作用による細胞外セロトニン濃度増加作用を増強する。
 
=== 受容体 ===
 
 [[セロトニン#.E3.82.BB.E3.83.AD.E3.83.88.E3.83.8B.E3.83.B3.E5.8F.97.E5.AE.B9.E4.BD.93|セロトニン受容体]]サブタイプはドーパミン、アドレナリン受容体と比べてより多彩であり、1A、1B、1D、1E、1F、2A、2B、2C、3、4、5A、5B、6、7の14種類ある。
 
== ヒスタミン ==
 
 ヒスタミンは中枢神経系において神経伝達物質として働く<ref name="ref7"><pubmed> 11793338</pubmed></ref><ref name="ref8"><pubmed> 18626069</pubmed></ref>。脳におけるヒスタミンの作用は、[[覚醒]]の維持を助けるものであると考えられている。また、[[抗アレルギー薬]]のもつ眠気の副作用は中枢神経系での作用であると考えられている。
 
=== 神経解剖 ===
 ヒスタミン作動性神経細胞は、[[視床下部]]の[[隆起乳頭体核]]に存在する。投射は脳の広範囲に及ぶ。
 
=== 受容体 ===
 
 [[ヒスタミン受容体]]はH1からH4型が存在し、そのうちH1、H2、H3が脳で発現している。
 
== 関連項目 ==
 
*[[アドレナリン]]
*[[ノルアドレナリン]]
*[[ドーパミン]]
*[[セロトニン]]
*[[ヒスタミン]]
*[[神経修飾物質]]
 
== 参考文献  ==
<references />
 
 
 
 
(執筆者:「抄録」「ノルアドレナリン」「ドーパミン」「セロトニン」井上猛、「モノアミンとは」「アドレナリン」「ヒスタミン」徳岡宏文、一瀬宏 担当編集委員:加藤忠史、林康紀)