「トゥレット障害」の版間の差分

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<font size="+1">[http://researchmap.jp/read0046287 金生 由紀子]</font><br>
''東京大学 医学系研究科・こころの発達医学''<br>
DOI:<selfdoi /> 原稿受付日:2013年3月11日 原稿完成日:2013年10月3日<br>
担当編集委員:[http://researchmap.jp/read0141446 漆谷 真](滋賀医科大学 医学部 神経内科)<br>
</div>
英語名:Tourette’s disorder 独:Tourette-Syndrom 仏: maladie de Tourette, syndrome de Tourette
英語名:Tourette’s disorder 独:Tourette-Syndrom 仏: maladie de Tourette, syndrome de Tourette


同義語:ジル・ド・ラ・トゥレット症候群、トゥレット症候群
同義語:ジル・ド・ラ・トゥレット症候群、トゥレット症候群


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 多様性の運動チックと1つ以上の音声チックを有して、何らかのチックを認める期間が1年以上に及ぶ場合に、トゥレット障害と診断される。[[強迫性障害]]([[obsessive-compulsive disorder]]: [[OCD]])及び[[注意欠陥・多動性障害]]([[attention-deficit/hyperactivity disorder]]: [[ADHD]])など様々な精神神経疾患を併発する。4~11歳頃に発症することが多く、10~15歳頃に最悪時を迎えるが、成人期初めまでに消失や軽快に転じる場合が多い。[[皮質-線条体-視床-皮質回路]]([[cortico-striato-thalamo-cortical circuit]]: [[CSTC回路]])、特に[[ドーパミン]]系の異常が想定されてる。治療には薬物療法、[[認知行動療法]]が用いられる。
 多様性の運動チックと1つ以上の音声チックを有して、何らかのチックを認める期間が1年以上に及ぶ場合に、トゥレット障害と診断される。[[強迫性障害]]([[obsessive-compulsive disorder]]: [[OCD]])及び[[注意欠陥・多動性障害]]([[attention-deficit/hyperactivity disorder]]: [[ADHD]])など様々な精神神経疾患を併発する。4~11歳頃に発症することが多く、10~15歳頃に最悪時を迎えるが、成人期初めまでに消失や軽快に転じる場合が多い。[[皮質-線条体-視床-皮質回路]]([[cortico-striato-thalamo-cortical circuit]]: [[CSTC回路]])、特に[[ドーパミン]]系の異常が想定されてる。治療には薬物療法、[[認知行動療法]]が用いられる。
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==トゥレット障害とチック==
==トゥレット障害とチック==
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 過去にはトゥレット障害はかなり稀な疾患と考えられていたが、複数の国の14の疫学研究では5~18歳での頻度が0.4~3.8%に分布し、全体では約1%であった。
 過去にはトゥレット障害はかなり稀な疾患と考えられていたが、複数の国の14の疫学研究では5~18歳での頻度が0.4~3.8%に分布し、全体では約1%であった。
== 病因・病態 ==
== 病因・病態 ==


 トゥレット障害は生物学的な基盤のある神経発達障害と考えられている<ref name=ref2><pubmed>21880899</pubmed></ref> <ref name=ref3><pubmed>20807062</pubmed></ref> <ref name=ref4><pubmed>22064610</pubmed></ref>。
 トゥレット障害は生物学的な基盤のある神経発達障害と考えられている<ref name=ref4><pubmed>22064610</pubmed></ref><ref><pubmed>21880899</pubmed></ref><ref><pubmed>20807062</pubmed></ref>。


 [[wikipedia:ja:双生児研究|双生児研究]]、[[wikipedia:ja:家族研究|家族研究]]から、トゥレット障害に遺伝的要因の関与が大きいことが明らかになっている。慢性運動チックやOCDがトゥレット障害と遺伝的に関連する可能性が指摘されている。詳細な家族研究から単一遺伝子による疾患と仮説されたこともあったが、現在では複数の遺伝子と環境要因が関与する[[wikipedia:ja:多因子遺伝|多因子遺伝]]と考えられている。最近では、遺伝子変異を有する患者の知見に基づいて、[[wikipedia:ja:膜タンパク質|膜タンパク質]]をコードする[[SLITRK1]]遺伝子、[[ヒスタミン|<small>L</small>‑ヒスチジン脱炭酸酵素]]をコードする[[HDC]]遺伝子の関与が示唆されている。
 [[wikipedia:ja:双生児研究|双生児研究]]、[[wikipedia:ja:家族研究|家族研究]]から、トゥレット障害に遺伝的要因の関与が大きいことが明らかになっている。慢性運動チックやOCDがトゥレット障害と遺伝的に関連する可能性が指摘されている。詳細な家族研究から単一遺伝子による疾患と仮説されたこともあったが、現在では複数の遺伝子と環境要因が関与する[[wikipedia:ja:多因子遺伝|多因子遺伝]]と考えられている。最近では、遺伝子変異を有する患者の知見に基づいて、[[wikipedia:ja:膜タンパク質|膜タンパク質]]をコードする[[SLITRK1]]遺伝子、[[ヒスタミン|<small>L</small>‑ヒスチジン脱炭酸酵素]]をコードする[[HDC]]遺伝子の関与が示唆されている。
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== 参考文献 ==
== 参考文献 ==
<references />
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(執筆者:金生由紀子 担当編集委員:高橋良輔)

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