「トリプレット病」の版間の差分

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'''筋緊張性ジストロフィー 1型 (DM1)'''  
'''筋緊張性ジストロフィー 1型 (DM1)'''  


ミオトニア(筋強直症、myotonia)と進行性の筋萎縮・筋力低下を主徴とする常染色体優性遺伝性疾患で、白内障、心伝導障害、インスリン抵抗性糖尿病、睡眠障害、精巣萎縮、高ガンマグロブリン血症、認知症、若年禿頭などを伴う全身性の疾患である。変異アレルでは''DMPK''遺伝子の3’UTR領域に存在するCTGリピートが50から数1000の範囲で伸長している。表現促進現象が認められ、ほとんど無症状の母親患者が重症型の臨床症状を示す子供を出生することがある。先天型DM1は生下時の筋緊張低下と全身の著明な筋力低下が特徴で、しばしば呼吸不全を来たし早期に死亡する。 DM1の発症機構として、変異アレルから転写された伸長CUGリピートを有するRNAのtoxic gain of functionの機構が考えられている。患者筋では転写された伸長CUGリピートを有するRNAの多くは細胞質内へは移行せず核内にfociを形成してとどまる。伸長CUGリピートは、少なくとも2種類の選択的スプライシングの制御に関与するRNA結合タンパク(MBLNとCUG-BP1)のRNA結合能に影響を及ぼすことが知られている。MBLNとCUG-BP1いずれもCUGリピートに結合するが、DM1細胞においては、MBLNの機能が低下し、一方CUG-BP1の機能が亢進し、結果として特定の遺伝子の選択的スプライシングに変化をきたし、病態発症に導くというモデルが提唱されている<ref name="ref2"><pubmed>16776586</pubmed></ref>。実際DM1患者組織においては、特定の遺伝子 (CLCN-1, IR, SERCA2, RYR1, APP, MAPTなど)の選択的スプライシングに異常が認められている<ref name="ref2" />。例えば、患者筋組織では塩化物イオンチャネルの1つCLCN-1チャネルの胎児型アイソフォームの発現の残存が認められるが、このアイソフォームは成人型チャネルと比較して分解を受けやすい不安定なチャネルに翻訳されるため、患者筋組織ではCLCN-1チャネルの発現が低下し、ミオトニアを発症させると考えられる。  
ミオトニア(筋強直症、myotonia)と進行性の筋萎縮・筋力低下を主徴とする常染色体優性遺伝性疾患で、白内障、心伝導障害、インスリン抵抗性糖尿病、睡眠障害、精巣萎縮、高ガンマグロブリン血症、認知症、若年禿頭などを伴う全身性の疾患である。変異アレルでは''DMPK''遺伝子の3’UTR領域に存在するCTGリピートが50から数1000の範囲で伸長している。表現促進現象が認められ、ほとんど無症状の母親患者が重症型の臨床症状を示す子供を出生することがある。先天型DM1は生下時の筋緊張低下と全身の著明な筋力低下が特徴で、しばしば呼吸不全を来たし早期に死亡する。 DM1の発症機構として、変異アレルから転写された伸長CUGリピートを有するRNAのtoxic gain of functionの機構が考えられている。患者筋では転写された伸長CUGリピートを有するRNAの多くは細胞質内へは移行せず核内にfociを形成してとどまる。伸長CUGリピートは、少なくとも2種類の選択的スプライシングの制御に関与するRNA結合タンパク(MBLNとCUG-BP1)のRNA結合能に影響を及ぼすことが知られている。MBLNとCUG-BP1いずれもCUGリピートに結合するが、DM1細胞においては、MBLNの機能が低下し、一方CUG-BP1の機能が亢進し、結果として特定の遺伝子の選択的スプライシングに変化をきたし、病態発症に導くというモデルが提唱されている<ref name="ref2"><pubmed>16776586</pubmed></ref>。実際DM1患者組織においては、特定の遺伝子 (CLCN-1, IR, SERCA2, RYR1, APP, MAPTなど)の選択的スプライシングに異常が認められている<ref name="ref2" />。例えば、患者筋組織では塩化物イオンチャネルの1つCLCN-1チャネルの胎児型アイソフォームの発現の残存が認められるが、このアイソフォームは分解を受けやすい不安定なチャネルに翻訳されるため、患者筋組織ではCLCN-1チャネルの発現が低下し、ミオトニアを発症させると考えられる。  




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