「ドリフト拡散モデル」の版間の差分

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この式で<math>x</math>を更新していくことによりエビデンスの蓄積過程をシミュレートできる。図2の各軌道はこの方法により得られたものである。
この式で<math>x</math>を更新していくことによりエビデンスの蓄積過程をシミュレートできる。図2の各軌道はこの方法により得られたものである。


 標準的なドリフト拡散モデルでは,開始点とドリフト率,および非決定時間は,試行間で変動すると仮定される<ref name=Ratclif1978 />。ドリフト率の試行間変動は,刺激に対する注意の変動などに対応すると考えられ,標準偏差<math>\eta</math>の正規分布に従って変動すると仮定される。この変動を仮定することで,正反応より誤反応の方が反応時間が長くなるという現象が説明可能となる。これは,ドリフト率が小さくなる試行では,ノイズの影響が強くなるため誤反応が起こりやすくなり,かつ反応時間が長くなるためである。
 標準的なドリフト拡散モデルでは,開始点とドリフト率,および非決定時間は,試行間で変動すると仮定される<ref name=Ratclif1978 />。ドリフト率の試行間変動は,刺激に対する注意の変動などに対応すると考えられ,標準偏差<math>\eta</math>の正規分布に従って変動すると仮定される。この変動を仮定することで,正反応より誤反応の方が反応時間が長くなるという現象が説明可能となる。これは,ドリフト率が小さくなる試行において,ノイズの影響が強くなるため誤反応が起こりやすくなり,かつ反応時間が長くなるためである。


 開始点の試行間変動は区間<math>[z-s_{z}, z+s_{z}]</math>の一様分布に従うと仮定される。これは,ある特定の刺激がどの程度呈示されやすいかについての期待が試行間で変動することを表現する。この変動により,誤反応が起こる試行で反応時間が短くなることが説明できる。これは,開始点が誤反応側の境界に寄っているときに,早い時間帯で誤反応が起きやすくなるためである。一度正反応の方に決定係数が近づけば,開始点の影響はなくなるため,遅い時間帯では開始点の影響による誤反応は生じにくい。また,非決定時間も区間<math>[T_{er}-s_{t}, T_{er}+s_{t}]</math>の一様分布に従うと仮定される。
 開始点の試行間変動は区間<math>[z-s_{z}, z+s_{z}]</math>の一様分布に従うと仮定される。これは,ある特定の刺激がどの程度呈示されやすいかについての期待が試行間で変動することを表現する。この変動により,誤反応が起こる試行で反応時間が短くなることが説明できる。これは,開始点が誤反応側の境界に寄っているときに,早い時間帯で誤反応が起きやすくなるためである。一度正反応の方に決定係数が近づけば,開始点の影響はなくなるため,遅い時間帯では開始点の影響による誤反応は生じにくい。また,非決定時間も区間<math>[T_{er}-s_{t}, T_{er}+s_{t}]</math>の一様分布に従うと仮定される。
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