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<font size="+1">[http://researchmap.jp/read0078290 有波 忠雄]</font><br> | |||
''筑波大学 医学医療系''<br> | |||
DOI:<selfdoi /> 原稿受付日:2013年5月7日 原稿完成日:2013年5月14日<br> | |||
担当編集委員:[http://researchmap.jp/tadafumikato 加藤 忠史](独立行政法人理化学研究所 脳科学総合研究センター)<br> | |||
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[[統合失調症]]の病態に関する仮説の一つで、[[精神疾患]]の病態仮説としては最も長く精力的に検証が行われてきた仮説の一つである。この仮説の最も確実な根拠は、統合失調症の症状を軽減するのに有効な[[抗精神病薬]]の共通の特徴が[[ドーパミン]][[D2受容体]]の[[アンタゴニスト]]である点である。 初めに提唱された[[ドーパミン]]仮説は、統合失調症の病態はドーパミン神経機能の過活動、とするものであったが、その後、[[前頭葉]]のドーパミン神経機能の低活動性を伴う皮質下のドーパミン神経機能の過活動、と修正された。さらに多くの病因が引き起こす共通病態としてドーパミン仮説が捉え直されるようになり今日に至っている。 | [[統合失調症]]の病態に関する仮説の一つで、[[精神疾患]]の病態仮説としては最も長く精力的に検証が行われてきた仮説の一つである。この仮説の最も確実な根拠は、統合失調症の症状を軽減するのに有効な[[抗精神病薬]]の共通の特徴が[[ドーパミン]][[D2受容体]]の[[アンタゴニスト]]である点である。 初めに提唱された[[ドーパミン]]仮説は、統合失調症の病態はドーパミン神経機能の過活動、とするものであったが、その後、[[前頭葉]]のドーパミン神経機能の低活動性を伴う皮質下のドーパミン神経機能の過活動、と修正された。さらに多くの病因が引き起こす共通病態としてドーパミン仮説が捉え直されるようになり今日に至っている。 | ||
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== 歴史 == | == 歴史 == | ||
=== 統合失調症の古典的ドーパミン仮説の登場 === | === 統合失調症の古典的ドーパミン仮説の登場 === | ||
1951年に[[クロルプロマジン]] (chlorpromazine)がCharpentierやCourvoisierらにより合成され<ref><pubmed> 12677184 </pubmed></ref>、1952年にはDelayとDenikerにより[[躁病]] | 1951年に[[クロルプロマジン]] (chlorpromazine)がCharpentierやCourvoisierらにより合成され<ref><pubmed> 12677184 </pubmed></ref>、1952年にはDelayとDenikerにより[[躁病]]と”精神病”の患者に投与した結果が報告された。また、その有効用量が[[パーキンソン病]]様症状など神経学的副作用を起こすことも知られ、chlorpromazineは神経遮断作用がある、とされた。[[wikipedia:ja:アルビド・カールソン|Carlsson]]とLindqvistは動物実験によりchlorpromazineやその後開発された[[抗精神病薬]][[ハロペリドール]] (haloperidol)がドーパミン合成を亢進させることを発見した。これとは別に精神病治療に導入されていた[[レセルピン]]がドーパミンや他の[[モノアミン]]を枯渇させることが発見された。また、使用による精神病が記載されていた[[アンフェタミン]]の中枢神経刺激薬としての作用がドーパミン系に対するものであることが示され、[[ドーパミン#受容体|ドーパミン受容体]][[作動薬]]が統合失調症の精神症状を悪化させることなどの根拠によりJ. van Rossumはドーパミンの過剰産生・放出あるいはドーパミン受容体の過剰刺激や感受性の異常などによるドーパミン系の変調が統合失調症の病因に関与していることを示唆した<ref><pubmed> 5954044 </pubmed></ref>。これにより統合失調症には脳の神経化学的変化が関係していることが初めて示された。 | ||
70年代に入り、ドーパミン受容体が同定され、神経遮断薬が[[ドーパミン#ドーパミン神経系|中脳-辺縁ドーパミン系]]や[[ドーパミン#ドーパミン神経系|黒質-線条体ドーパミン系]]に作用することが発見され、抗精神病薬の臨床効果がドーパミン受容体の結合能に強く相関することが発見され、ドーパミン仮説はより明確なものとなった<ref><pubmed> 1145194 </pubmed></ref><ref><pubmed> 945467 </pubmed></ref>。 | 70年代に入り、ドーパミン受容体が同定され、神経遮断薬が[[ドーパミン#ドーパミン神経系|中脳-辺縁ドーパミン系]]や[[ドーパミン#ドーパミン神経系|黒質-線条体ドーパミン系]]に作用することが発見され、抗精神病薬の臨床効果がドーパミン受容体の結合能に強く相関することが発見され、ドーパミン仮説はより明確なものとなった<ref><pubmed> 1145194 </pubmed></ref><ref><pubmed> 945467 </pubmed></ref>。 | ||
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=== 統合失調症のリスクとなる環境要因 === | === 統合失調症のリスクとなる環境要因 === | ||
社会的孤立など統合失調症のリスクとして知られている環境要因は動物実験ではドーパミン機能過活動を引き起こすことが知られている。例えば、[[ | 社会的孤立など統合失調症のリスクとして知られている環境要因は動物実験ではドーパミン機能過活動を引き起こすことが知られている。例えば、[[wj:妊娠|妊娠]]、[[wj:出産|出産]]時の合併症、胎児期、新生児期の[[wj:細菌性内毒素|細菌性内毒素]]、感染も動物実験では中脳線条体ドーパミン系の過活動を引き起こす。周産期、新生児期の[[ストレス]]もドーパミン代謝や放出を増やす。 | ||
[[中枢神経刺激薬]]や[[カンナビス]]使用などの統合失調症リスクを高める薬物はドーパミン放出を亢進させる。[[ | [[中枢神経刺激薬]]や[[カンナビス]]使用などの統合失調症リスクを高める薬物はドーパミン放出を亢進させる。[[NMDA型グルタミン酸受容体]]遮断薬である[[ケタミン]]はドーパミン放出を高める。 | ||
=== 統合失調症に関連する精神疾患/状態 === | === 統合失調症に関連する精神疾患/状態 === | ||
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