「ナトリウムチャネル」の版間の差分

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 また心筋に発現しているNav1.5の変異は、[[先天性QT延長症候群]](LQT)、特発性の[[wikipedia:ja:心室細動|心室細動]]等の[[wikipedia:ja:不整脈|不整脈]]を引き起こす。LQTを引き起こす変異は複数存在するが、その多くはチャネルの不活性化が不完全になる変異である<ref><pubmed> 8917568 </pubmed></ref> <ref><pubmed> 7651517 </pubmed></ref> <ref><pubmed> 8620612 </pubmed></ref>。このため持続的にナトリウム電流が流れ膜の再分極が遅れるため、QT間隔が伸長する。LQTの患者のうちNav1.5に変異を持つのは約10%である。  
 また心筋に発現しているNav1.5の変異は、[[先天性QT延長症候群]](LQT)、特発性の[[wikipedia:ja:心室細動|心室細動]]等の[[wikipedia:ja:不整脈|不整脈]]を引き起こす。LQTを引き起こす変異は複数存在するが、その多くはチャネルの不活性化が不完全になる変異である<ref><pubmed> 8917568 </pubmed></ref> <ref><pubmed> 7651517 </pubmed></ref> <ref><pubmed> 8620612 </pubmed></ref>。このため持続的にナトリウム電流が流れ膜の再分極が遅れるため、QT間隔が伸長する。LQTの患者のうちNav1.5に変異を持つのは約10%である。  


 中枢神経系で発現しているNav1.1の変異は[[てんかん]]の原因になる。これまで、[[wikipedia:Generalized epilepsy with febrile seizures plus|全般てんかん熱性痙攣プラス]](generalized epilepsy with febrile seizures plus, GEFS+)および[[wikipedia:SMEI|乳児重症ミオクロニーてんかん]](severe myoclonic epilepsy of infant, SMEI)を引き起こすNav1.1の変異が多数例、報告されている。不活性化が不完全になり持続的にナトリウム電流が流れるような変異や、不活性化がより高い電位で起こるような変異が報告されている。またGEFS+を引き起こす変異はβ1サブユニットにも見だされ、この変異を持ったβサブユニットは、αサブユニットの機能の調整をすることができない<ref><pubmed> 12486163 </pubmed></ref> <ref><pubmed> 9697698 </pubmed></ref>。 [[侵害受容]]に関わる[[wikipedia:sensory neuron|一次知覚ニューロン]]に発現しているNav1.7の変異は、[[先天性無痛症]](congenital insensitivity to pain, CIP)や[[先端紅痛症]](erythromelalgia, IEM)、[[発作性神経痛]](paroxysmal extreme pain disorder, PEPD)に関わっている。これまで知られているCIPを引き起こす変異はすべてNav1.7をコードする遺伝子の途中に[[wikipedia:ja:終止コドン|終止コドン]]が挿入され、チャネルとしての機能を喪失することが分かっている<ref name="refa"><pubmed> 20101409 </pubmed></ref>。またIEMでは遺伝子の変異により、低い電位でナトリウムチャネルが開口するため、[[閾値]]が低くなり活動電位が生じやすくなる17。PEPDの患者では速い不活性化に関わっているリピートIIIとIVの間に変異が見つかっている。この変異を持ったナトリウムチャネルは速い不活性化が起こる膜電位が高い電位にシフトする。そのため低い[[膜電位]]でも電気的に興奮しやすくなり、PEPDの症状が現れると考えられている<ref name="refa" />。  
 中枢神経系で発現しているNav1.1の変異は[[てんかん]]の原因になる。これまで、[[wikipedia:Generalized epilepsy with febrile seizures plus|全般てんかん熱性痙攣プラス]](generalized epilepsy with febrile seizures plus, GEFS+)および[[wikipedia:SMEI|乳児重症ミオクロニーてんかん]](severe myoclonic epilepsy of infant, SMEI)を引き起こすNav1.1の変異が多数例、報告されている。不活性化が不完全になり持続的にナトリウム電流が流れるような変異や、不活性化がより高い電位で起こるような変異が報告されている。またGEFS+を引き起こす変異はβ1サブユニットにも見だされ、この変異を持ったβサブユニットは、αサブユニットの機能の調整をすることができない<ref><pubmed> 12486163 </pubmed></ref> <ref><pubmed> 9697698 </pubmed></ref>。 [[侵害受容]]に関わる[[一次知覚ニューロン]]に発現しているNav1.7の変異は、[[先天性無痛症]](congenital insensitivity to pain, CIP)や[[先端紅痛症]](erythromelalgia, IEM)、[[発作性神経痛]](paroxysmal extreme pain disorder, PEPD)に関わっている。これまで知られているCIPを引き起こす変異はすべてNav1.7をコードする遺伝子の途中に[[wikipedia:ja:終止コドン|終止コドン]]が挿入され、チャネルとしての機能を喪失することが分かっている<ref name="refa"><pubmed> 20101409 </pubmed></ref>。またIEMでは遺伝子の変異により、低い電位でナトリウムチャネルが開口するため、[[閾値]]が低くなり活動電位が生じやすくなる17。PEPDの患者では速い不活性化に関わっているリピートIIIとIVの間に変異が見つかっている。この変異を持ったナトリウムチャネルは速い不活性化が起こる膜電位が高い電位にシフトする。そのため低い[[膜電位]]でも電気的に興奮しやすくなり、PEPDの症状が現れると考えられている<ref name="refa" />。


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