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<font size="+1">[http://researchmap.jp/masahikowatanabe 渡辺 雅彦]</font><br>
<font size="+1">[http://researchmap.jp/masahikowatanabe 渡辺 雅彦]</font><br>
''北海道大学大学院医学研究科解剖学講座''<br>
''北海道大学大学院医学研究科解剖学講座''<br>
DOI [[XXXX]]/XXXX 原稿受付日:2013年6月14日 原稿完成日:2013年XX月XX日<br>
DOI:<selfdoi /> 原稿受付日:2013年6月14日 原稿完成日:2013年10月16日<br>
担当編集委員:[http://researchmap.jp/2rikenbsi 林 康紀](独立行政法人理化学研究所 脳科学総合研究センター)<br>
担当編集委員:[http://researchmap.jp/2rikenbsi 林 康紀](独立行政法人理化学研究所 脳科学総合研究センター)<br>
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英語名:Nissl staining 独:Nissl-Färbung 仏:coloration de Nissl
英語名:Nissl staining 独:Nissl-Färbung 仏:coloration de Nissl
{{box|text=ニッスル染色は、塩基性色素を用いた[[wj:粗面小胞体|粗面小胞体]]や[[wj:ポリゾーム|ポリゾーム]]に親和性が高い[[wj:ポリゾーム|ポリゾーム]]組織染色法で、神経組織の染色に用いられる。[[大脳皮質]]や[[海馬]]の[[錐体細胞]]、[[小脳]]の[[プルキンエ細胞]]、[[脊髄]]や[[脳幹]]の[[運動ニューロン]]など、大型[[投射ニューロン]]の[[wj:ポリゾーム|ポリゾーム]]細胞質が顆粒状に強く染色される。この特性は、ニューロンの高いタンパク質合成能と関連している。}}
{{box|text=ニッスル染色は、塩基性色素を用いた[[wj:粗面小胞体|粗面小胞体]]や[[wj:ポリゾーム|ポリゾーム]]に親和性が高い組織染色法で、神経組織の染色に用いられる。[[大脳皮質]]や[[海馬]]の[[錐体細胞]]、[[小脳]]の[[プルキンエ細胞]]、[[脊髄]]や[[脳幹]]の[[運動ニューロン]]など、大型[[投射ニューロン]]の[[wj:ポリゾーム|ポリゾーム]]細胞質が顆粒状に強く染色される。この特性は、ニューロンの高いタンパク質合成能と関連している。}}
==ニッスル染色とは==
==ニッスル染色とは==
[[image:ニッスル染色.jpg|thumb|250px|'''図.ニッスル染色'''<br>紫に濃染するニッスル小体が観察される<br>([[前庭神経核]]の大型ニューロン)]]
[[image:ニッスル染色.jpg|thumb|250px|'''図.ニッスル染色'''<br>紫に濃染するニッスル小体が観察される<br>([[前庭神経核]]の大型ニューロン)]]
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 ニューロンが、塩基性色素で特異的に染色されることを最初に示したのは、ドイツの[[w:Franz Nissl|フランツ・ニッスル]]である。19世紀末、[[wj:ミュンヘン大学|ミュンヘン大学]]の医学生であったニッスルは、病理学教授の出した懸賞論文「大脳皮質の神経細胞の病的変化」で一等を獲得し、ニッスルの考案した染色法により染め出される[[ニッスル小体]]([[虎斑物質]])をニューロンの特性の1つと考えた。20世紀の半ばに[[wj:電子顕微鏡|電子顕微鏡]]が登場し、ニッスル小体は粗面小胞体の集まりであることが明らかとなった。
 ニューロンが、塩基性色素で特異的に染色されることを最初に示したのは、ドイツの[[w:Franz Nissl|フランツ・ニッスル]]である。19世紀末、[[wj:ミュンヘン大学|ミュンヘン大学]]の医学生であったニッスルは、病理学教授の出した懸賞論文「大脳皮質の神経細胞の病的変化」で一等を獲得し、ニッスルの考案した染色法により染め出される[[ニッスル小体]]([[虎斑物質]])をニューロンの特性の1つと考えた。20世紀の半ばに[[wj:電子顕微鏡|電子顕微鏡]]が登場し、ニッスル小体は粗面小胞体の集まりであることが明らかとなった。


 ニッスル染色液という固有の染色剤があるのではなく、[[wj:クレシルバイオレット|クレシルバイオレット]]、[[wj:トルイジンブルー|トルイジンブルー]]、[[wj:チオニン|チオニン]]などの[[wj:塩基性アニリン色素|塩基性アニリン色素]]が用いる染色の総称がニッスル染色である。ニッスル染色を施すと、特に大脳皮質や海馬の錐体細胞、小脳のプルキンエ細胞、脊髄や脳幹の運動ニューロンなど、大型投射ニューロンの細胞質が顆粒状に強く染色される(図を参照)。また、ニッスル染色に[[髄鞘]]を染める[[ルクソールファストブルー]]と組み合わせた[[クリューバー・バレラ染色]]も頻用される。
 ニッスル染色液という固有の染色剤があるのではなく、[[w:Cresyl violet|クレシルバイオレット]]、[[w:Tolonium chloride|トルイジンブルー]]、[[w:Thionine |チオニン]]などの[[w:Aniline#Synthetic_dye_industry|塩基性アニリン色素]]が用いる染色の総称がニッスル染色である。ニッスル染色を施すと、特に大脳皮質や海馬の錐体細胞、小脳のプルキンエ細胞、脊髄や脳幹の運動ニューロンなど、大型投射ニューロンの細胞質が顆粒状に強く染色される(図を参照)。また、ニッスル染色に[[髄鞘]]を染める[[ルクソールファストブルー]]と組み合わせた[[クリューバー・バレラ染色]]も頻用される。


==細胞学的背景==
==細胞学的背景==
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==参考文献==
==参考文献==
<references />
#'''渡辺雅彦'''<br>「脳・神経科学入門講座」<br>羊土社、2008年
#'''Eric Kandel, James Schwartz, Thomas Jessel, Steven Sieqelbaum, AJ Hudspeth'''<br>Principles of Neural Science, 5th edition<br>''McGraw-Hill'', 2012, ISBN 978-0071390118

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