「ニューロスフェア」の版間の差分

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== 培養法とその歴史  ==
== 培養法とその歴史  ==


1992年、カナダのWeissとReynoldsは、成体マウスの線条体から取り出した細胞にEGFを添加すると、分裂増殖しながら神経細胞やグリア細胞を生み出す細胞塊を分離することができることを発表し<ref>< pubmed>1553558</pubmed></ref>、その後この細胞塊をニューロスフェアと名付けた。また、この線条体由来ニューロスフェアは、後に脳室下帯に存在する神経幹/前駆細胞に由来することが示された<ref><pubmed>7946346</pubmed></ref>。Weissらは当初、神経細胞死の抑制にEGFなどの成長因子を利用できないかどうかを、成体マウス線条体組織細胞を用いて検討していたが、その際に細胞増殖が起きていることに気付きこの発見に至った。その後、基本的にはこの培養法を踏襲した方法による、ヒトを含めた多くの哺乳動物の胎児から成体にいたるまで全ての中枢神経の領域や、神経誘導後のESおよびiPS細胞からの神経幹/前駆細胞の選択的増殖が報告されており、神経幹/前駆細胞の増殖培養法としては最も普及している方法である。具体的には、プロゲステロン、インシュリン、トランスフェリンやセレニウムなどの神経細胞培養用添加物を加えた無血清培地に、神経幹/前駆細胞の増殖因子であるFGFやEGFを添加し浮遊培養を行うだけという簡便な方法である。神経幹/前駆細胞の神経細胞やグリア細胞への分化は、ニューロスフェアそのものかあるいはそれらを分散したものを、増殖因子非存在下で接着培養することによって誘導する。
1992年、カナダのWeissとReynoldsは、成体マウスの線条体から取り出した細胞にEGFを添加すると、分裂増殖しながら神経細胞やグリア細胞を生み出す細胞塊を分離することができることを発表し<ref><a=ref>< pubmed>1553558</pubmed></ref>&lt;/ref&gt;、その後この細胞塊をニューロスフェアと名付けた。また、この線条体由来ニューロスフェアは、後に脳室下帯に存在する神経幹/前駆細胞に由来することが示された<ref><pubmed>7946346</pubmed></ref>。Weissらは当初、神経細胞死の抑制にEGFなどの成長因子を利用できないかどうかを、成体マウス線条体組織細胞を用いて検討していたが、その際に細胞増殖が起きていることに気付きこの発見に至った。その後、基本的にはこの培養法を踏襲した方法による、ヒトを含めた多くの哺乳動物の胎児から成体にいたるまで全ての中枢神経の領域や、神経誘導後のESおよびiPS細胞からの神経幹/前駆細胞の選択的増殖が報告されており、神経幹/前駆細胞の増殖培養法としては最も普及している方法である。具体的には、プロゲステロン、インシュリン、トランスフェリンやセレニウムなどの神経細胞培養用添加物を加えた無血清培地に、神経幹/前駆細胞の増殖因子であるFGFやEGFを添加し浮遊培養を行うだけという簡便な方法である。神経幹/前駆細胞の神経細胞やグリア細胞への分化は、ニューロスフェアそのものかあるいはそれらを分散したものを、増殖因子非存在下で接着培養することによって誘導する<ref><a=ref2 /></ref>。
 
== 参考文献  ==
 
<references />

2012年3月19日 (月) 18:31時点における版

英語名:neurosphere


 神経幹/前駆細胞の浮遊増殖培養によって形成される球状の細胞凝集塊。細胞播種時の細胞濃度によって単一細 胞由来コロニーと複数細胞の凝集塊由来コロニーの二種類が存在し得る。ニューロスフェアを構成する細胞は主に未分化な神経幹/前駆細胞ではあるが、分化し た神経細胞やグリア細胞も含んでいる。

培養法とその歴史

1992年、カナダのWeissとReynoldsは、成体マウスの線条体から取り出した細胞にEGFを添加すると、分裂増殖しながら神経細胞やグリア細胞を生み出す細胞塊を分離することができることを発表し[1]</ref>、その後この細胞塊をニューロスフェアと名付けた。また、この線条体由来ニューロスフェアは、後に脳室下帯に存在する神経幹/前駆細胞に由来することが示された[2]。Weissらは当初、神経細胞死の抑制にEGFなどの成長因子を利用できないかどうかを、成体マウス線条体組織細胞を用いて検討していたが、その際に細胞増殖が起きていることに気付きこの発見に至った。その後、基本的にはこの培養法を踏襲した方法による、ヒトを含めた多くの哺乳動物の胎児から成体にいたるまで全ての中枢神経の領域や、神経誘導後のESおよびiPS細胞からの神経幹/前駆細胞の選択的増殖が報告されており、神経幹/前駆細胞の増殖培養法としては最も普及している方法である。具体的には、プロゲステロン、インシュリン、トランスフェリンやセレニウムなどの神経細胞培養用添加物を加えた無血清培地に、神経幹/前駆細胞の増殖因子であるFGFやEGFを添加し浮遊培養を行うだけという簡便な方法である。神経幹/前駆細胞の神経細胞やグリア細胞への分化は、ニューロスフェアそのものかあるいはそれらを分散したものを、増殖因子非存在下で接着培養することによって誘導する[3]

参考文献

  1. <a=ref>< pubmed>1553558</pubmed>
  2. Morshead, C.M., Reynolds, B.A., Craig, C.G., McBurney, M.W., Staines, W.A., Morassutti, D., ..., & van der Kooy, D. (1994).
    Neural stem cells in the adult mammalian forebrain: a relatively quiescent subpopulation of subependymal cells. Neuron, 13(5), 1071-82. [PubMed:7946346] [WorldCat] [DOI]
  3. <a=ref2 />