ニューロリギン

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渡辺 拓也二井 健介
マサチューセッツ州立大学 メディカルスクール
DOI XXXX/XXXX 原稿受付日:2013年6月4日 原稿完成日:2013年7月xx日
担当編集委員:林 康紀(独立行政法人理化学研究所)

Neuroligin 1
Identifiers
Symbols NLGN1; NL1
External IDs OMIM600568 MGI2179435 HomoloGene56690 GeneCards: NLGN1 Gene
RNA expression pattern
PBB GE NLGN1 205893 at tn.png
More reference expression data
Orthologs
Species Human Mouse
Entrez 22871 192167
Ensembl ENSG00000169760 ENSMUSG00000063887
UniProt Q8N2Q7 Q99K10
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RefSeq (protein) NP_055747 NP_001156859
Location (UCSC) Chr 3:
173.11 – 174 Mb
Chr 3:
25.43 – 26.13 Mb
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Neuroligin 2
Identifiers
Symbols NLGN2; KIAA1366
External IDs OMIM606479 MGI2681835 HomoloGene69317 GeneCards: NLGN2 Gene
Orthologs
Species Human Mouse
Entrez 57555 216856
Ensembl ENSG00000169992 ENSMUSG00000051790
UniProt Q8NFZ4 Q69ZK9
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7.31 – 7.32 Mb
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69.82 – 69.84 Mb
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Neuroligin 3
Identifiers
Symbols NLGN3; HNL3
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RNA expression pattern
PBB GE NLGN3 219726 at tn.png
More reference expression data
Orthologs
Species Human Mouse
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Ensembl ENSG00000196338 ENSMUSG00000031302
UniProt Q9NZ94 Q8BYM5
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70.36 – 70.39 Mb
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101.3 – 101.33 Mb
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Neuroligin 4, X-linked
Rendering based on PDB 2WQZ​.
Identifiers
Symbols NLGN4X; ASPGX2; AUTSX2; HLNX; HNL4X; HNLX; NLGN; NLGN4
External IDs OMIM300427 HomoloGene124472 GeneCards: NLGN4X Gene
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PBB GE NLGN4X 221933 at tn.png
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Orthologs
Species Human Mouse
Entrez 57502 n/a
Ensembl ENSG00000146938 n/a
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Location (UCSC) Chr X:
5.76 – 6.15 Mb
n/a
PubMed search [7] n/a

英語名:neuroligin

 ニューロリギンはシナプス後部(postsynapse)に存在する1回膜貫通型タンパク質であり、シナプス前末端(presynapse,presynaptic terminal)に存在するニューレキシン(Neurexin: NRXN)の内因性リガンドであり、シナプスの成熟や機能を調整している[1]。ニューロリギンのアイソフォームは、グルタミン酸作動性・GABA作動性神経シナプスの構築の選別に影響すると考えられている。また、自閉症や統合失調症のリスク遺伝子として考えられており、遺伝子改変マウスは自閉症様行動を示す[1] [2] [3] [4]

歴史

 ニューレキシン1βのアフィニティーカラムを用いた実験により、ニューレキシン1βの結合タンパク質としてニューロリギン1が初めて同定された[5]

サブタイプ

 ヒトでは5つのニューロリギン遺伝子がある(NLGN1NLGN2NLGN3NLGN4NLGN4Y[5] [6] [7] [8]。また、ショウジョウバエ(4遺伝子[9] [10])やアメフラシ(1遺伝子[11])、ミツバチ(5遺伝子[12] [13]、線虫(1遺伝子[14])などの無脊椎動物においてもニューロリギン遺伝子の発現が認められている。

表1.ニューロリギンとニューレキシンのスプライス変異体の結合様式[15] [16] [17]
灰色内:結合能の相対的比較
αニューレキシン(+SS4) αニューレキシン(-SS4) βニューレキシン(+SS4) βニューレキシン(-SS4)
ニューロリギン1(-) + + +++ ++++
ニューロリギン1A + + +++ ++++
ニューロリギン1B - - ++ ++++
ニューロリギン1AB - - ++ ++++
ニューロリギン2 + + ++ ++++
ニューロリギン3 + + + ++
ニューロリギン4 +

スプライシング変異体

 ニューロリギン1は選択的スプライシング部位A(alternative splice site A:SSA)と選択的スプライシング部位B(SSB)の2つを、ニューロリギン2,ニューロリギン3とニューロリギン4はSSAのみを有しており[ニューロリギン3には2つのスプライシング部位(SSA1, SSA2)が存在]、合計12種類のスプライス変異体(ニューロリギン1:4、ニューロリギン2:2、ニューロリギン3:4、ニューロリギン4:2)が存在する[18]。ニューロリギンは選択的スプライシングの有無により、ニューレキシンとの結合親和性が異なることが報告されている(表1)。SSBを有さないニューロリギン [NLGN1(-), NLGN1A, NLGN2(-)とNLGN2A]はβニューレキシンのSS4の有無に関わらず高親和性に結合するが、ニューロリギンのSSBの挿入(NLGN1B, NLGN1AB)はβニューレキシンのスプライス変異体との結合親和性を低下させる[19] [20]。さらに、SSBを有するニューロリギンはαニューレキシンと結合しない[21]。SSBの挿入は抑制性シナプスの形成を阻害することが示唆されている[22]

構造

図1.ニューロリギンのドメイン構造
矢印:選択的スプライシング部位 SP:シグナルペプチド、CHO: carbohydrate-attachment sequence、TM:膜貫通領域、PDZ-BD:PDZ-domain-binding site
図2.興奮性シナプスにおけるニューレキシンとニューロリギンの結合模式図
ニューレキシンとニューロリギンはシナプス前末端とシナプス後部間で結合している。ニューレキシンとニューロリギンはそれぞれシナプス前末端とシナプス後部のシナプス局在分子と直接・間接的に結合している。

 ニューロリギンは1回膜貫通型蛋白質であり、細胞外ドメインと比較的短い細胞内ドメインを有している(図1)。細胞外ドメインはアセチルコチンエステラーゼ(acetylcholinesterase:AChE)と相同性を有しているが、コリンエステラーゼ活性は無く、ニューレキシン結合領域となっている[5]

 ニューロリギンとβニューレキシン複合体の3次元構造が明らかとなっている[23] [24]。AChE相同領域にはSSAがあり、加えてニューロリギン1にのみ同領域にSSBが存在する。in situ chemical cross-linking法(細胞膜表面に存在するcis複合体を保持する為)と免疫沈降法を組み合わせた解析によって、全てのニューロリギンアイソフォームがホモ二量体を形成することが示唆され、ニューロリギン1-ニューロリギン2とニューロリギン1-ニューロリギン3ヘテロ二量体の存在が確認されている[25]。上記の解析ではニューロリギン2-ニューロリギン3ヘテロ二量体は認められていないが[25]、他グループの免疫沈降法では報告されている[26]。二量体形成は、ニューロリギンの細胞膜への輸送に必要であり[25]、この形成に関与する部位はAChE相同領域に存在する[27] [25]。細胞外ドメインの膜貫通ドメイン側にはCHO配列(carbohydrate-attachment sequence)がある。細胞内ドメインのC-末端には、シナプス足場蛋白(PSD-95等)との結合に重要であると推定されるPDZドメイン[postsynaptic density (PSD)-95/ discs large/ zona-occludens-1ドメイン]結合部位が存在する[28] [29] [30]。また、膜貫通ドメインとPDZドメイン結合部位の間には、gephyrin結合ドメインと、構造が同定されていないcriticalドメインが存在する(図2)[31] [32]

発現

 ニューロリギン1とニューロリギン2はそれぞれ中枢神経系のグルタミン酸作動性神経(興奮性)シナプスとGABA作動性神経(抑制性)シナプスに発現している[33] [34] [35]。ニューロリギンの興奮性・抑制性シナプスにおける局在はシナプス足場蛋白(PSD-95とgephyrin)によって調節されていることが示唆されている[36]。また、ヒトでは、ニューロリギン2の膵島と大腸における発現が確認されている[37]。ニューロリギン3は興奮性と抑制性の両シナプスに発現しており[26]、げっ歯類ではグリア細胞にも発現が確認されている[38]。また、ヒトではニューロリギン3は心臓、骨格筋、胎盤、膵臓にも発現している[39]。ニューロリギン4は心臓、肝臓、骨格筋、膵臓に発現し、脳では低レベルで発現しており[6]、網膜のグリシン作動性神経シナプス後部に発現していることが報告されている[40]

Allen Brain Atlasでの発現パターン(Mouse) [NLGN1] [NLGN2] [NLGN3]

機能

神経

 非神経細胞でのニューロリギン強制発現は、共培養した神経細胞のシナプス前末端の分化を誘導する[41]。また、ニューロリギンはシナプス後部の分化にも重要である。    ニューロリギン1またはニューロリギン3の強制発現は興奮性シナプス伝達機能を増加させ、一方、ニューロリギン2強制発現は抑制性シナプス伝達機能を増加させる[42] [43] [44]。ニューロリギン1とニューロリギン2は、それぞれβ-、αニューレキシンと機能的なシナプスを形成することから、ニューロリギンとニューレキシンのアイソフォームの特異的な組み合わせが興奮性と抑制性シナプスの仕分けに関与していることが示唆されている。また、ニューロリギンのシナプス伝達への機能には、細胞内ドメインではなく細胞外ドメインが重要であると考えられている[45]

 ニューロリギン1はPSD-95との結合によって、選択的に興奮性シナプスを構築する[46]。一方、ニューロリギン2は抑制性シナプス後部特異的な足場蛋白であるgephyrinを介して、抑制性シナプスを構築する[47]。また、ニューロリギン1の細胞外ドメインは、NMDA型受容体と相互作用を示し、シナプス後部におけるNMDA型受容体の機能を調節していると報告されている[48]。シナプスの形成にはニューロリギンのホモ二量体、ヘテロ二量体形成が必要であることが報告されている[49] [50] [51]

 神経活動依存的にニューロリギン1は翻訳後修飾を受けることが知られている。細胞膜上のニューロリギン1は、NMDA受容体依存的に活性化されたプロテアーゼによって切断される[52] [53]。その結果、興奮性シナプス伝達能の低下する[54]。この活動依存的NLGN1切断はシナプス密度を調節し[55]、興奮性シナプス伝達効率を変化させる[56]

 ニューロリギン1は記憶と学習の分子基盤と考えられる長期増強現象(long-term potentiation:LTP)の発現に必要であり、SSBの存在が寄与している[57] [58] [59]。一方、ニューロリギン3は、knockdown実験とknockoutマウスではLTPには関与しないことが報告されているが、ミスセンス変異(Arg451Cys置換)ニューロリギン3 knockinマウスではLTPの増大が認められている[60] [2]

 PSD-95とニューロリギン1の複合体による逆行性の神経伝達物質放出機調節はβニューレキシンを介して行われていることが示唆されている[61]。遺伝子改変マウス

ニューロリギン1 knockout, knock downマウス

 空間記憶ならびに恐怖記憶の障害を示す。NMDA受容体を介したシナプス伝達応答とLTPの減弱が認められる[62] [63] [64]

ニューロリギン2 knockoutマウス

 抑制性シナプス伝達能の低下と不安様行動の増加が認められる[65] [66] [67]。パルバルブミン(Parvalbumin)陽性抑制性細胞を介した抑制性シナプス伝達効率は減弱するが、ソマトスタチン(Somatostatin)陽性抑制性細胞を介した伝達はニューロリギン2のノックアウト効果が見られない[68]。この結果は、抑制性入力に依存して異なるニューロリギンとニューレキシン結合が抑制性シナプスの機能に寄与していることを示唆している。

ニューロリギン3 knockoutマウス

 社会的行動の障害(social novelty preferenceの低下)とultrasonic vocalizationの減少を示す[4]。脳容積の減少が認められる[4]。抑制性シナプス伝達能の僅かな増加と興奮性シナプス伝達能の僅かな減少が認められるが、シナプス可塑性の変化は認められない[2]。また、海馬ではパルバルブミン陽性抑制性細胞を介した抑制性シナプス伝達効率の変化は認められないが、コレシストキニン(cholesystokinin)陽性抑制性細胞を介した伝達効率の増加が認められる[69]

ニューロリギン4 knockoutマウス

 社会的行動の障害(reciprocal social interaction)とultrasonic vocalizationの減少を示す。脳容積の減少が認められる[70]

ニューロリギン1,2,3 knockoutマウス

 呼吸器障害により生後間もなく死亡する。この呼吸器障害は神経伝達の低下によると示唆されているが、シナプスの構造は野生型マウスに比べ差異が見られない[71]。これはニューロリギンがシナプス構造構築ではなく、シナプス機能を制御していることを示唆している。

ニューロリギン3 Arg451Cys knockinマウス

 自閉症患者より発見されたニューロリギン3の変異を模倣したノックインマウス。

 体性感覚皮質(somatosensory cortex)において抑制性シナプス伝達能の増加が認められ[1]、海馬では興奮性シナプス伝達効率およびLTPの増加が認められる[2]。さらに、海馬ではパルバルブミン陽性抑制性細胞を介した抑制性シナプス伝達効率の減弱と、コレシストキニン陽性抑制性細胞を介した伝達効率の増加が認められる[72]。皮質においてパルバルブミン陽性細胞の数が減弱している[73]。社会的行動障害を示すことが報告されているが[1] [2]、明白な障害を示さないという報告もある[74]

ニューロリギン3 Arg704Cys knockinマウス

 Arg704Cysのアミノ酸置換はニューロリギン4において発見されたが、ニューロリギン3でのArg704Cysの影響が検討されている。ニューロリギン3 Arg704Cys knockinマウスではシナプス構造の著名な変化は認められないが、AMPA型受容体を介したシナプス伝達応答の減弱が認められる[75]

血管

 ニューロリギン1は腫瘍形成環境下において血管新生を促進する[76]

膵臓

 ニューロリギン2はβ細胞からのインスリン分泌を調節している[77] [78]

疾患との関連

自閉症

 X染色体に局在するニューロリギン3とニューロリギン4の変異が報告されている[79] [80] [81]。ニューロリギン3の細胞外ドメインのArg451がCysに変異した兄弟において、一人は自閉症を、もう一人はアスペルガー症候群を示し、自閉症スペクトラムの中でも異なる症状を示すことは興味深い[82]。  

統合失調症

 ニューロリギン2に変異が発見されている[83]。  

アルツハイマー病

 ニューロリギン1はアミロイドβ蛋白と結合することが報告されており、アルツハイマー病発症への関与が示唆されている[84]。また、アミロイド前駆体蛋白を切断するADAM10(A disintegrin and metalloproteinase 10)やγ-secretase、アミロイドβ蛋白の代謝に関与するMMP-9がニューロリギン1の切断にも関与することが報告されている[85] [86]

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    引用エラー: 無効な <ref> タグ; name "ref1"が異なる内容で複数回定義されています
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