「ハンチントン病」の版間の差分

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 いくつかの神経変性疾患において、凝集体内にその構成成分の断片が含まれることが知られており、蓄積タンパク質の切断は病態機序に関係していると考えられている。ハンチンチンのN末端領域を含む切断産物は特に[[線条体]]において多く認められ、ハンチントン病患者脳やモデルマウスで切断産物が増加していることから、病態との関与が示唆される。ハンチントン病患者脳の核内封入体はN末端領域の抗体によってのみ検出されること、細胞に発現させるとN末端断片は全長型よりも速く凝集し、より毒性が強いことから、N末端断片が毒性を持つと考えられてきた。特にマウスモデルを用いた研究から、N末端領域に相当する144-150リピートを含むexon1[[トランスジェニックマウス]](R6/2マウス)は全長型を発現するトランスジェニックマウスと同様の症状及び病理変化をより早期からより急速に呈すること、150リピートを含むハンチンチンノックインマウス(HdhQ150ノックインマウス)では症状発現前から第1エクソンに相当するN末端領域の断片の蓄積が見られること<ref><pubmed>20086007</pubmed></ref>、586番アミノ酸で切断する[[カスパーゼ6]]による切断を受けない変異を導入した全長型のトランスジェニックマウスは運動症状や線条体の変性を来さないこと<ref><pubmed>16777606</pubmed></ref>が示されており、その推察を裏付ける根拠となっている。  
 いくつかの神経変性疾患において、凝集体内にその構成成分の断片が含まれることが知られており、蓄積タンパク質の切断は病態機序に関係していると考えられている。ハンチンチンのN末端領域を含む切断産物は特に[[線条体]]において多く認められ、ハンチントン病患者脳やモデルマウスで切断産物が増加していることから、病態との関与が示唆される。ハンチントン病患者脳の核内封入体はN末端領域の抗体によってのみ検出されること、細胞に発現させるとN末端断片は全長型よりも速く凝集し、より毒性が強いことから、N末端断片が毒性を持つと考えられてきた。特にマウスモデルを用いた研究から、N末端領域に相当する144-150リピートを含むexon1[[トランスジェニックマウス]](R6/2マウス)は全長型を発現するトランスジェニックマウスと同様の症状及び病理変化をより早期からより急速に呈すること、150リピートを含むハンチンチンノックインマウス(HdhQ150ノックインマウス)では症状発現前から第1エクソンに相当するN末端領域の断片の蓄積が見られること<ref><pubmed>20086007</pubmed></ref>、586番アミノ酸で切断する[[カスパーゼ6]]による切断を受けない変異を導入した全長型のトランスジェニックマウスは運動症状や線条体の変性を来さないこと<ref><pubmed>16777606</pubmed></ref>が示されており、その推察を裏付ける根拠となっている。  


 しかしながら、N末端断片のみの毒性に焦点を当てたCAGリピートの伸長したexon1の過剰発現は、細胞モデル・動物モデルの構築に簡便ではあるものの、ハンチンチンの有する多くの機能を無視した人工的なモデルであるとの批判もあり、真に病態を反映しているか疑問視する議論もある。またハンチンチンはカスパーゼ、[[カルパイン]]、[[カテプシン]]といった[[プロテアーゼ]]によって切断され、多種の断片が存在することが明らかになってきていることからも、病態を模倣するためには全長型ハンチンチンを用いた研究が重要であろう。  
 しかしながら、N末端断片のみの毒性に焦点を当てたCAGリピートの伸長したexon1の過剰発現は、細胞モデル・[[動物モデル]]の構築に簡便ではあるものの、ハンチンチンの有する多くの機能を無視した人工的なモデルであるとの批判もあり、真に病態を反映しているか疑問視する議論もある。またハンチンチンはカスパーゼ、[[カルパイン]]、[[カテプシン]]といった[[プロテアーゼ]]によって切断され、多種の断片が存在することが明らかになってきていることからも、病態を模倣するためには全長型ハンチンチンを用いた研究が重要であろう。  


=== プロテアソーム機能異常  ===
=== プロテアソーム機能異常  ===