「バーグマングリア」の版間の差分

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=== 分子発現  ===
=== 分子発現  ===


バーグマングリアは[[中間系フィラメント]][[GFAP (glial fibrillary acidic protein)]]、グリア型[[グルタミン酸輸送体|グルタミン酸輸[[Image:Kengaku Fig 4.jpg|thumb|right|350px|図4 平行線維(PF)ープルキンエ細胞スパイン(PC)間のシナプスを被包するバーグマングリア線維突起 (BG)(スケールバーは0.5 µm) 写真提供:京都府立医大 小野勝彦博士]]送体]][[EAAT1(GLAST)]]、脂質結合分子[[BLBP(brain lipid-binding protein]](別名FABP7)などのアストロサイト系譜細胞のマーカー分子の多くを発現する。その他、成熟したアストロサイトには消失する[[ヴィメンチン(vimentin)]]の強い発現が見られ、Sox1,Sox2,Hes1,RC1抗原などの幹細胞マーカーの発現がある。[[網膜ミューラーグリア]]と共に、放射状線維をもつ形態的特徴と未分化なアストロサイト特有の分子発現から胚性[[神経幹細胞]]の[[放射状グリア]]と比較されるが、2012年現在ではバーグマングリアが幹細胞として機能する証拠はない。   
バーグマングリアは[[中間系フィラメント]][[GFAP (glial fibrillary acidic protein)]]、グリア型[[グルタミン酸輸送体|グルタミン酸輸[[Image:Kengaku Fig 4.jpg|thumb|right|350px|図4 平行線維(PF)ープルキンエ細胞スパイン(PC)間のシナプスを被包するバーグマングリア線維突起 (BG)(スケールバーは0.5 µm) 写真提供:京都府立医大 小野勝彦博士]]送体]][[EAAT1(GLAST)]]、脂質結合分子[[BLBP(brain lipid-binding protein]](別名FABP7)などのアストロサイト系譜細胞のマーカー分子の多くを発現する。その他、成熟したアストロサイトには消失する[[ヴィメンチン(vimentin)]]の強い発現が見られ、Sox1,Sox2,Hes1,RC1抗原などの幹細胞マーカーの発現がある<ref><pubmed> 20169146 </pubmed></ref>。[[網膜ミューラーグリア]]と共に、放射状線維をもつ形態的特徴と未分化なアストロサイト特有の分子発現から胚性[[神経幹細胞]]の[[放射状グリア]]と比較されるが、2012年現在ではバーグマングリアが幹細胞として機能する証拠はない。&nbsp;  


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== 発生  ==
== 発生  ==


バーグマングリアは、[[興奮性ニューロン]]を除く多くの小脳皮質細胞(プルキンエ細胞、抑制性介在ニューロン、各種グリア細胞)が産生される[[第4脳室]]に面する[[脳室帯]]の放射状グリア(神経幹細胞)から分化する。同じ脳室帯からアストロサイトや[[オリゴデンドロサイト]]などが胎生期から生後の長い期間に産生され続けるのに対し、バーグマングリアはプルキンエ細胞の産生が終る直後の短い期間(マウスでは胎生13.5日から14.5日)に誕生することが確かめられている<ref><pubmed> 21795554 </pubmed></ref>。脳室帯で誕生したバーグマングリアは小脳皮質へ細胞移動し、生後1週目(マウス)までにプルキンエ細胞層周辺に配置して複数の放射状線維を形成する<ref><pubmed> 10701759 </pubmed></ref><ref><pubmed> 8849669 </pubmed></ref>(Yamada 2000, Yuasa 1996)。この時期にもバーグマンクリアは分裂により数を増やしているとされる<ref><pubmed> 4817907 </pubmed></ref><ref><pubmed> 6614505 </pubmed></ref>。放射状線維は生後発達中に次第に径を増し、グルタミン酸輸送体EAAT1が集積する薄片状突起を多数形成する。薄片状突起はまず細胞体付近で形成され、プルキンエ細胞樹状突起の伸展に伴い徐々に先端へ広がり、プルキンエ細胞樹状突起上のスパインを被包する<ref><pubmed> 5044254 </pubmed></ref><ref><pubmed> 12418089 </pubmed></ref>(Altman 1972; Yamada 2000)。プルキンエ細胞樹状突起に発現する[[Notch]]リガンドのDNER (Delta/Notch-like EGF-related protein)の欠損動物で放射状線維の分化が遅延することから、プルキンエ細胞との相互作用によりバーグマングリアのNotchシグナルが活性化することが放射状線維分化を促進すると考えられる<ref><pubmed> 15965470 </pubmed></ref>。  
バーグマングリアは、[[興奮性ニューロン]]を除く多くの小脳皮質細胞(プルキンエ細胞、抑制性介在ニューロン、各種グリア細胞)が産生される[[第4脳室]]に面する[[脳室帯]]の放射状グリア(神経幹細胞)から分化する。同じ脳室帯からアストロサイトや[[オリゴデンドロサイト]]などが胎生期から生後の長い期間に産生され続けるのに対し、バーグマングリアはプルキンエ細胞の産生が終る直後の短い期間(マウスでは胎生13.5日から14.5日)に誕生することが確かめられている<ref><pubmed> 21795554 </pubmed></ref>。脳室帯で誕生したバーグマングリアは小脳皮質へ細胞移動し、生後1週目(マウス)までにプルキンエ細胞層周辺に配置して複数の放射状線維を形成する<ref><pubmed> 10701759 </pubmed></ref><ref><pubmed> 8849669 </pubmed></ref>。この時期にもバーグマンクリアは分裂により数を増やしているとされる<ref><pubmed> 4817907 </pubmed></ref><ref><pubmed> 6614505 </pubmed></ref>。放射状線維は生後発達中に次第に径を増し、グルタミン酸輸送体EAAT1が集積する薄片状突起を多数形成する。薄片状突起はまず細胞体付近で形成され、プルキンエ細胞樹状突起の伸展に伴い徐々に先端へ広がり、プルキンエ細胞樹状突起上のスパインを被包する<ref><pubmed> 5044254 </pubmed></ref><ref><pubmed> 12418089 </pubmed></ref>。プルキンエ細胞樹状突起に発現する[[Notch]]リガンドのDNER (Delta/Notch-like EGF-related protein)の欠損動物で放射状線維の分化が遅延することから、プルキンエ細胞との相互作用によりバーグマングリアのNotchシグナルが活性化することが放射状線維分化を促進すると考えられる<ref><pubmed> 15965470 </pubmed></ref>。  


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=== 支持構造  ===
=== 支持構造  ===


 バーグマングリアの放射状線維は分子層を柵状に縦断し、小脳皮質の支持構造となる一方、先端部のendfeetは軟膜境界を覆い、軟膜外と皮質の[[グリア境界膜]](glia limitans)として機能する。Endfeetと軟膜の結合には[[Β1-インテグリン]]が関与し、β1-インテグリン欠損動物ではendfeetの発達が阻害され、著しい小脳皮質形成不全が起こる<ref><pubmed> 11516395 </pubmed></ref>。  
 バーグマングリアの放射状線維は分子層を柵状に縦断し、小脳皮質の支持構造となる一方、先端部のendfeetは軟膜境界を覆い、軟膜外と皮質の[[グリア境界膜]](glia limitans)として機能する。Endfeetと軟膜の結合にはβ1-[[インテグリン]]が関与し、β1-インテグリン欠損動物ではendfeetの発達が阻害され、著しい小脳皮質形成不全が起こる<ref><pubmed> 11516395 </pubmed></ref>。  


=== 分化制御  ===
=== 分化制御  ===
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