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<font size="+1">[http://profiles.umassmed.edu/profiles/ProfileDetails.aspx?Person=3324 渡辺 拓也]、[http://researchmap.jp/kennyfutai 二井 健介]</font><br>
<font size="+1">[http://profiles.umassmed.edu/profiles/ProfileDetails.aspx?Person=3324 渡辺 拓也]、[http://researchmap.jp/kennyfutai 二井 健介]</font><br>
''マサチューセッツ州立大学 メディカルスクール''<br>
''マサチューセッツ州立大学 メディカルスクール''<br>
DOI [[XXXX]]/XXXX 原稿受付日:2013年6月4日 原稿完成日:2013年8月xx日<br>
DOI:<selfdoi /> 原稿受付日:2013年6月4日 原稿完成日:2013年8月17日<br>
担当編集委員:[http://researchmap.jp/2rikenbsi 林 康紀](独立行政法人理化学研究所 脳科学総合研究センター)
担当編集委員:[http://researchmap.jp/2rikenbsi 林 康紀](独立行政法人理化学研究所 脳科学総合研究センター)
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==パッチクランプ法とは==
==パッチクランプ法とは==
 パッチクランプ法は[[電位固定法]]を基に、[[wikipedia:Erwin Neher|Erwin Neher]]と[[wikipedia:Bert Sakmann|Bert Sakmann]]によって開発された電気生理学的記録方法である<ref name=ref1><pubmed>1083489</pubmed></ref>。
 パッチクランプ法は[[電位固定法]]を基に、[[wikipedia:Erwin Neher|Erwin Neher]]と[[wikipedia:Bert Sakmann|Bert Sakmann]]によって開発された電気生理学的記録方法である<ref name=ref1><pubmed>1083489</pubmed></ref><ref name=okada>'''岡田泰伸'''<br>新パッチクランプ実験技術法<br>''吉岡書店'' (2001) ISBN 4-8427-0296-6</ref><ref name=mikoshiba>''Tritsch D. Chesnoy-Marchais D. Feltz A.'''(translation supervised by Mikoshiba K.)<br>ニューロンの生理学<br>''京都大学学術出版会'' ISBN 978-4-87698-773-3</ref>。


 パッチクランプ法が開発される以前は、パッチクランプ法で使用される電極よりも先端が細い電極([[微小電極]]、Sharp glass electrode)を細胞内に刺入して電流を記録する[[細胞内記録法]]が用いられていた。この方法では、電極刺入口において絶縁性が得られ、正確な[[膜電位]]測定が可能であったが、電極と細胞膜間のシール抵抗が細胞膜の抵抗([[入力抵抗]])よりも十分に大きくないと正確な測定は行えず、小さな細胞には不向きであった。
 パッチクランプ法が開発される以前は、パッチクランプ法で使用される電極よりも先端が細い電極([[微小電極]]、sharp glass electrode)を細胞内に刺入して電流を記録する[[細胞内記録法]]が用いられていた。この方法では、電極刺入口において絶縁性が得られ、正確な[[膜電位]]測定が可能であったが、電極と細胞膜間のシール抵抗が細胞膜の抵抗([[入力抵抗]])よりも十分に大きくないと正確な測定は行えず、小さな細胞には不向きであった。


 一方、パッチクランプ法はガラス電極と細胞膜の間に非常に抵抗の高い(1ギガオーム以上)シール(gigaohm seal:ギガシール)を形成させることにより、電極先端と同程度の大きさの小さな細胞からの電位測定が可能となった。これにより、細胞膜上のイオンチャネルによる微小電流を測定することが可能となった。
 一方、パッチクランプ法はガラス電極と細胞膜の間に非常に抵抗の高い(1G&Omega;以上)シール(gigaohm seal:ギガシール)を形成させることにより、電極先端と同程度の大きさの小さな細胞からの電位測定が可能となった。これにより、細胞膜上のイオンチャネルによる微小電流を測定することが可能となった。


 Erwin NeherとBert Sakmannはこの方法により[[筋]]線維における単一[[アセチルコリン]]電流を直接的に検出し、イオン通過路としてのチャネルの存在を初めて証明した。その後、パッチクランプ法を応用した様々な方法の追加開発により、多くの細胞系に用いられるようになった。この技法を発明し、発展させたことにより、1991年にErwin NeherとBert Sakmannは[[wikipedia:ja:ノーベル生理学・医学賞|ノーベル生理学・医学賞]]を受賞した。
 Erwin NeherとBert Sakmannはこの方法により[[筋]]線維における単一[[アセチルコリン]]電流を直接的に検出し、イオン通過路としてのチャネルの存在を初めて証明した。その後、パッチクランプ法を応用した様々な方法の追加開発により、多くの細胞系に用いられるようになった。この技法を発明し、発展させたことにより、1991年にErwin NeherとBert Sakmannは[[wikipedia:ja:ノーベル生理学・医学賞|ノーベル生理学・医学賞]]を受賞した。
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 基本的な電極内液は等張の[[wikipedia:ja:塩化カリウム|塩化カリウム]]溶液であり、解析する項目に応じて、電極内液の組成を選択する必要がある。
 基本的な電極内液は等張の[[wikipedia:ja:塩化カリウム|塩化カリウム]]溶液であり、解析する項目に応じて、電極内液の組成を選択する必要がある。
#[[wikipedia:ja:陽イオン|陽イオン]]:生体に近い条件で膜電位・電流変化を記録する時は、細胞内の主な陽イオンである[[wikipedia:ja:カリウム|カリウム]](K<sup>+</sup>)が主組成の内液を用いる。細胞を脱分極させた状態で電流を記録する際は、K<sup>+</sup>を[[wikipedia:ja:K+チャネルブロッカー|K<sup>+</sup>チャネルブロッカー]]である[[wikipedia:Cs+|Cs<sup>+</sup>]]に置換することによりK<sup>+</sup>電流の混入を排除する。<br>
#[[wikipedia:ja:陽イオン|陽イオン]]:生体に近い条件で膜電位・電流変化を記録する時は、細胞内の主な陽イオンである[[wikipedia:ja:カリウム|カリウム]](K<sup>+</sup>)が主組成の内液を用いる。細胞を脱分極させた状態で電流を記録する際は、K<sup>+</sup>を[[wikipedia:ja:K+チャネルブロッカー|K<sup>+</sup>チャネルブロッカー]]である[[wikipedia:Cs+|Cs<sup>+</sup>]]に置換することによりK<sup>+</sup>電流の混入を排除する。<br>
#[[wikipedia:ja:陰イオン|陰イオン]]:細胞内には膜非透過性の陰イオンが多く存在し、これにより細胞膜の内側がマイナスに荷電されることにより、濃度勾配によるK<sup>+</sup>の細胞外への流出を抑制している。そのため、膜非透過性の陰イオンである[[wikipedia:ja:メタンスルホン酸|メタンスルホン酸]](methanesulfonate)や[[wikipedia:ja:グルコン酸|グルコン酸]](gluconate)を電極内液に加える。しかし、上記の陰イオン使用時にはCl-使用時に比べ、[[wikipedia:ja:液間電位|液間電位]]が大きくなるため、液間電位補正が必要となる。<br>
#[[wikipedia:ja:陰イオン|陰イオン]]:細胞内には膜非透過性の陰イオンが多く存在し、これにより細胞膜の内側がマイナスに荷電されることにより、濃度勾配によるK<sup>+</sup>の細胞外への流出を抑制している。そのため、膜非透過性の陰イオンである[[wikipedia:ja:メタンスルホン酸|メタンスルホン酸]](methanesulfonate)や[[wikipedia:ja:グルコン酸|グルコン酸]](gluconate)を電極内液に加える。しかし、上記の陰イオン使用時にはCl<sup>-</sup>使用時に比べ、[[wikipedia:ja:液間電位|液間電位]]が大きくなるため、液間電位補正が必要となる。<br>
#[[wikipedia:ja:キレーター|キレーター]]:細胞内[[Ca2+|Ca<sup>2+</sup>]]濃度緩衝能は10mMの[[wikipedia:EGTA|EGTA]]によるものと同等である為、細胞内Ca<sup>2+</sup>濃度を変化させたくない場合は10mMのEGTAを加える。一方、細胞内に流入したCa<sup>2+</sup>による電流の測定や開口分泌などのCa<sup>2+</sup>の細胞内流入による生理機能を解析する際は、キレーターの濃度を低く調節する必要がある。細胞内に流入したCa<sup>2+</sup>の影響を取り除きたい場合は、EGTAの代わりにBAPTAを用いることにより、細胞内Ca<sup>2+</sup>を素早くキレートすることができる。<br>
#[[wikipedia:ja:キレーター|キレーター]]:細胞内[[Ca2+|Ca<sup>2+</sup>]]濃度緩衝能は10mMの[[wikipedia:EGTA|EGTA]]によるものと同等である為、細胞内Ca<sup>2+</sup>濃度を変化させたくない場合は10mMのEGTAを加える。一方、細胞内に流入したCa<sup>2+</sup>による電流の測定や開口分泌などのCa<sup>2+</sup>の細胞内流入による生理機能を解析する際は、キレーターの濃度を低く調節する必要がある。細胞内に流入したCa<sup>2+</sup>の影響を取り除きたい場合は、EGTAの代わりにBAPTAを用いることにより、細胞内Ca<sup>2+</sup>を素早くキレートすることができる。<br>
#ATP]]、GTP]]:細胞内液が電極内液に潅流されることにより、細胞機能維持に必要な細胞内成分が失われ、細胞機能のrundownが起きる。このrundownを防ぐ目的として、ATPならびにGTPを電極内液に加える。例えば、ATPは[[Ca<sup>2+</sup>チャネル]]の[[リン酸]]化を補うことにより、Ca<sup>2+</sup>チャネルの機能を維持し、Ca<sup>2+</sup>電流のrundownを防ぐ。GTPは[[受容体活性型Gタンパク質]]の機能維持の為に添加する。<br>
#[[wj:ATP|ATP]]、[[wj:GTP|GTP]]:細胞内液が電極内液に潅流されることにより、細胞機能維持に必要な細胞内成分が失われ、細胞機能のrundownが起きる。このrundownを防ぐ目的として、ATPならびにGTPを電極内液に加える。例えば、ATPは[[カルシウムチャネル|Ca<sup>2+</sup>チャネル]]の[[リン酸]]化を補うことにより、Ca<sup>2+</sup>チャネルの機能を維持し、Ca<sup>2+</sup>電流のrundownを防ぐ。GTPは[[GTP結合タンパク質]]の機能維持の為に添加する。<br>
#その他:細胞内因子に対する[[阻害剤]]や[[抗体]]を電極内液に加えることで、機能を担っている分子の同定ができる。また、[[wikipedia:RNase|RNase]]を除去した電極内液を使用することで、ホールセル記録後の細胞から、[[wikipedia:ja:mRNA|mRNA]]を回収し、[[wikipedia:RT-PCR|RT-PCR]]により記録細胞に発現している[[wikipedia:ja:遺伝子|遺伝子]]を解析することが可能である。
#その他:細胞内因子に対する[[阻害剤]]や[[抗体]]を電極内液に加えることで、機能を担っている分子の同定ができる。また、[[wikipedia:RNase|RNase]]を除去した電極内液を使用することで、ホールセル記録後の細胞から、[[wikipedia:ja:mRNA|mRNA]]を回収し、[[wikipedia:RT-PCR|RT-PCR]]により記録細胞に発現している[[wikipedia:ja:遺伝子|遺伝子]]を解析することが可能である。


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 先端が開口しているガラス電極に実験目的に応じて選択された電極内液を満たす。電極内液を満たす際は、フィルターを介して行い、電極内部へのゴミの侵入を防ぐ。また、電極内部に気泡が入った場合は電極を軽く叩いて、気泡を取り除く。[[wikipedia:ja:塩化銀|塩化銀]]の金属線が付いた電極ホルダーへ電極を装着する。電極内液と接触している塩化銀の金属線により、プレアンプへ電流・電圧が伝えられる。電極内部へ繋がっているチューブを介し陽圧をかけることで、電極先端へのゴミや組織の付着を防ぎ、ギガシールを形成し易くする。
 先端が開口しているガラス電極に実験目的に応じて選択された電極内液を満たす。電極内液を満たす際は、フィルターを介して行い、電極内部へのゴミの侵入を防ぐ。また、電極内部に気泡が入った場合は電極を軽く叩いて、気泡を取り除く。[[wikipedia:ja:塩化銀|塩化銀]]の金属線が付いた電極ホルダーへ電極を装着する。電極内液と接触している塩化銀の金属線により、プレアンプへ電流・電圧が伝えられる。電極内部へ繋がっているチューブを介し陽圧をかけることで、電極先端へのゴミや組織の付着を防ぎ、ギガシールを形成し易くする。


 矩形波電位パルス(通常数mV)を繰り返し与え、矩形波電流をオシロスコープ上でモニターする事で電極先端の抵抗を測定し、その状態を把握しつつ実験を進めていく。(図1A)。
 矩形波電位パルス(通常数mV)を繰り返し与え、矩形波電流をオシロスコープ上でモニターする事で電極先端の抵抗を測定し、その状態を把握しつつ実験を進めていく(図1A)<ref name=okada />。


;'''細胞へのアプローチと接触'''
;'''細胞へのアプローチと接触'''
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[[image:パッチクランプ.jpg|thumb|350px|'''図2.パッチクランプ法の様々な方法'''<br>研究目的によって以下のパッチクランプ法が使い分けられる(図2)。セルアタッチ法とインサイド−アウト法、アウトサイド−アウト法は、電極で取り囲んだ領域のイオンチャネルの挙動を記録するために用いられる(単一チャネル記録法)。ホールセル法とパーフォレイテッド法は単一チャネル電流ではなく、細胞膜全体の電気現象を記録することができる(全細胞電流記録法)。]]
[[image:パッチクランプ.jpg|thumb|350px|'''図2.パッチクランプ法の様々な方法'''<br>研究目的によって以下のパッチクランプ法が使い分けられる(図2)。セルアタッチ法とインサイド−アウト法、アウトサイド−アウト法は、電極で取り囲んだ領域のイオンチャネルの挙動を記録するために用いられる(単一チャネル記録法)。ホールセル法とパーフォレイテッド法は単一チャネル電流ではなく、細胞膜全体の電気現象を記録することができる(全細胞電流記録法)。]]


 研究目的によって以下のパッチクランプ法が使い分けられる(図2)。[[セルアタッチ法]]と[[インサイド-アウト法]]、[[アウトサイド-アウト法]]は、電極で取り囲んだ領域のイオンチャネルの挙動を記録するために用いられる([[単一チャネル記録法]])。[[ホールセル法]]と[[パーフォレイテッド法]]は単一チャネル電流ではなく、細胞膜全体の電気現象を記録することができる([[全細胞電流記録法]])。
 研究目的によって以下のパッチクランプ法が使い分けられる(図2)<ref name=okada />。[[セルアタッチ法]]と[[インサイド-アウト法]]、[[アウトサイド-アウト法]]は、電極で取り囲んだ領域のイオンチャネルの挙動を記録するために用いられる([[単一チャネル記録法]])。[[ホールセル法]]と[[パーフォレイテッド法]]は単一チャネル電流ではなく、細胞膜全体の電気現象を記録することができる([[全細胞電流記録法]])。


=== セルアタッチ法 ===
=== セルアタッチ法 ===
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=== パーフォレイテッド法===
=== パーフォレイテッド法===


 穿孔パッチ法ともいう(図2E)。ホールセル法の代替法であり、HornとMartyによって開発された<ref name=ref2><pubmed>2459299</pubmed></ref>。ギガシールを形成後、陰圧によって膜を破るのではなく、パッチ電極内液に含まれた[[wikipedia:ja:ナイスタチン|ナイスタチン]]、[[wikipedia:ja:アンホテリシンB|アンホテリシンB]]や[[wikipedia:ja:グラミシジン|グラミシジン]]のような[[wikipedia:ja:抗生物質|抗生物質]]によって細胞膜に小さな穴をあける方法である。これらの抗生物質が、ほとんどの細胞膜に一価イオン(編集コメント:イオンの選択性はどうでしょうか。陽イオン電流、陰イオン電流同程度測れるのでしょうか)や10Å以下の径を持つ分子を通過させる孔をあけることを利用している。そのため、膜を破らずに全細胞膜での電流を記録することができる。また、細胞の内容成分の漏出を軽減し、細胞内環境を保持することが可能となる。しかし、いくつかの欠点がある。まず、ホールセル法と比較して、シリーズ抵抗が高くなり、電気的解像能が低下する。また、抗生物質による細胞膜の穿孔には時間がかかる(10-30分間)。さらに、抗生物質により形成された孔によって電極先端の膜は弱くなっているため、その膜が破れて、ホールセル法に移行する危険性がある。ニスタチン、アンホテリシンBは一価の陽イオン(Na<sup>+</sup>、K<sup>+</sup>、Cs<sup>+</sup>、Li<sup>+</sup>など)に加え、一価の陰イオン(Cl-)に対して透過性を有しているが、グラミシジンは陰イオンに対する透過性が無く、グラミシジンによるパーフォレイテッドパッチは細胞内のCl-濃度を保持したまま記録することが可能である。ホールセル法では電極内液のCl-により、細胞内Cl-濃度が上昇するため、ホールセル法とグラミシジンによるパーフォレイテッドパッチ法では、固定電位によってCl-チャネルを介した電流応答の向きが異なる。
 穿孔パッチ法ともいう(図2E)。ホールセル法の代替法であり、HornとMartyによって開発された<ref name=ref2><pubmed>2459299</pubmed></ref>。ギガシールを形成後、陰圧によって膜を破るのではなく、パッチ電極内液に含まれた[[wikipedia:ja:ニスタチン|ニスタチン]]、[[wikipedia:ja:アンホテリシンB|アンホテリシンB]]や[[wikipedia:ja:グラミシジン|グラミシジン]]のような[[wikipedia:ja:抗生物質|抗生物質]]によって細胞膜に小さな穴をあける方法である。これらの抗生物質が、ほとんどの細胞膜に一価イオンや10Å以下の径を持つ分子を通過させる孔をあけることを利用している。そのため、膜を破らずに全細胞膜での電流を記録することができる。また、細胞の内容成分の漏出を軽減し、細胞内環境を保持することが可能となる。
 
 ニスタチン、アンホテリシンBは一価の陽イオン(Na<sup>+</sup>、K<sup>+</sup>、Cs<sup>+</sup>、Li<sup>+</sup>など)に加え、一価の陰イオン(Cl<sup>-</sup>)に対して透過性を有しているが、グラミシジンは陰イオンに対する透過性が無く、グラミシジンによるパーフォレイテッドパッチは細胞内のCl<sup>-</sup>濃度を保持したまま記録することが可能である。ホールセル法では電極内液のCl<sup>-</sup>により、細胞内Cl<sup>-</sup>濃度が上昇するため、ホールセル法とグラミシジンによるパーフォレイテッドパッチ法では、固定電位によってCl<sup>-</sup>チャネルを介した電流応答の向きが異なる。
 
 しかし、いくつかの欠点がある。まず、ホールセル法と比較して、Rsが高くなり、電気的解像能が低下する。また、抗生物質による細胞膜の穿孔には時間がかかる(10-30分間)。さらに、抗生物質により形成された孔によって電極先端の膜は弱くなっているため、その膜が破れて、ホールセル法に移行する危険性がある。


=== ルーズパッチ法 ===
=== ルーズパッチ法 ===
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== 参考文献 ==
== 参考文献 ==
<references />
<references />
  7.'''岡田泰伸'''<br>   新パッチクランプ実験技術法<br>   ''吉岡書店'' (2001) ISBN 4-8427-0296-6
  8.'''Tritsch D. Chesnoy-Marchais D. Feltz A.'''(translation supervised by Mikoshiba K.)<br>   ニューロンの生理学<br>   ''京都大学学術出版会'' ISBN 978-4-87698-773-3

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