「パッチクランプ法」の版間の差分

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 基本的な電極内液は等張の[[wikipedia:ja:塩化カリウム|塩化カリウム]]溶液であり、解析する項目に応じて、電極内液の組成を選択する必要がある。
 基本的な電極内液は等張の[[wikipedia:ja:塩化カリウム|塩化カリウム]]溶液であり、解析する項目に応じて、電極内液の組成を選択する必要がある。
#[[wikipedia:ja:陽イオン|陽イオン]]:生体に近い条件で膜電位・電流変化を記録する時は、細胞内の主な陽イオンである[[wikipedia:ja:カリウム|カリウム]](K<sup>+</sup>)が主組成の内液を用いる。細胞を脱分極させた状態で電流を記録する際は、K<sup>+</sup>を[[wikipedia:ja:K+チャネルブロッカー|K<sup>+</sup>チャネルブロッカー]]である[[wikipedia:Cs+|Cs<sup>+</sup>]]に置換することによりK<sup>+</sup>電流の混入を排除する。<br>
#[[wikipedia:ja:陽イオン|陽イオン]]:生体に近い条件で膜電位・電流変化を記録する時は、細胞内の主な陽イオンである[[wikipedia:ja:カリウム|カリウム]](K<sup>+</sup>)が主組成の内液を用いる。細胞を脱分極させた状態で電流を記録する際は、K<sup>+</sup>を[[wikipedia:ja:K+チャネルブロッカー|K<sup>+</sup>チャネルブロッカー]]である[[wikipedia:Cs+|Cs<sup>+</sup>]]に置換することによりK<sup>+</sup>電流の混入を排除する。<br>
#[[wikipedia:ja:陰イオン|陰イオン]]:細胞内には膜非透過性の陰イオンが多く存在し、これにより細胞膜の内側がマイナスに荷電されることにより、濃度勾配によるK<sup>+</sup>の細胞外への流出を抑制している。そのため、膜非透過性の陰イオンである[[wikipedia:ja:メタンスルホン酸|メタンスルホン酸]](methanesulfonate)や[[wikipedia:ja:グルコン酸|グルコン酸]](gluconate)を電極内液に加える。しかし、上記の陰イオン使用時にはCl-使用時に比べ、[[wikipedia:ja:液間電位|液間電位]]が大きくなるため、液間電位補正が必要となる。<br>
#[[wikipedia:ja:陰イオン|陰イオン]]:細胞内には膜非透過性の陰イオンが多く存在し、これにより細胞膜の内側がマイナスに荷電されることにより、濃度勾配によるK<sup>+</sup>の細胞外への流出を抑制している。そのため、膜非透過性の陰イオンである[[wikipedia:ja:メタンスルホン酸|メタンスルホン酸]](methanesulfonate)や[[wikipedia:ja:グルコン酸|グルコン酸]](gluconate)を電極内液に加える。しかし、上記の陰イオン使用時にはCl<sup>-</sup>使用時に比べ、[[wikipedia:ja:液間電位|液間電位]]が大きくなるため、液間電位補正が必要となる。<br>
#[[wikipedia:ja:キレーター|キレーター]]:細胞内[[Ca2+|Ca<sup>2+</sup>]]濃度緩衝能は10mMの[[wikipedia:EGTA|EGTA]]によるものと同等である為、細胞内Ca<sup>2+</sup>濃度を変化させたくない場合は10mMのEGTAを加える。一方、細胞内に流入したCa<sup>2+</sup>による電流の測定や開口分泌などのCa<sup>2+</sup>の細胞内流入による生理機能を解析する際は、キレーターの濃度を低く調節する必要がある。細胞内に流入したCa<sup>2+</sup>の影響を取り除きたい場合は、EGTAの代わりにBAPTAを用いることにより、細胞内Ca<sup>2+</sup>を素早くキレートすることができる。<br>
#[[wikipedia:ja:キレーター|キレーター]]:細胞内[[Ca2+|Ca<sup>2+</sup>]]濃度緩衝能は10mMの[[wikipedia:EGTA|EGTA]]によるものと同等である為、細胞内Ca<sup>2+</sup>濃度を変化させたくない場合は10mMのEGTAを加える。一方、細胞内に流入したCa<sup>2+</sup>による電流の測定や開口分泌などのCa<sup>2+</sup>の細胞内流入による生理機能を解析する際は、キレーターの濃度を低く調節する必要がある。細胞内に流入したCa<sup>2+</sup>の影響を取り除きたい場合は、EGTAの代わりにBAPTAを用いることにより、細胞内Ca<sup>2+</sup>を素早くキレートすることができる。<br>
#ATP]]、GTP]]:細胞内液が電極内液に潅流されることにより、細胞機能維持に必要な細胞内成分が失われ、細胞機能のrundownが起きる。このrundownを防ぐ目的として、ATPならびにGTPを電極内液に加える。例えば、ATPは[[Ca<sup>2+</sup>チャネル]]の[[リン酸]]化を補うことにより、Ca<sup>2+</sup>チャネルの機能を維持し、Ca<sup>2+</sup>電流のrundownを防ぐ。GTPは[[受容体活性型Gタンパク質]]の機能維持の為に添加する。<br>
#[[wj:ATP|ATP]]、[[wj:GTP|GTP]]:細胞内液が電極内液に潅流されることにより、細胞機能維持に必要な細胞内成分が失われ、細胞機能のrundownが起きる。このrundownを防ぐ目的として、ATPならびにGTPを電極内液に加える。例えば、ATPは[[カルシウムチャネル|Ca<sup>2+</sup>チャネル]]の[[リン酸]]化を補うことにより、Ca<sup>2+</sup>チャネルの機能を維持し、Ca<sup>2+</sup>電流のrundownを防ぐ。GTPは[[GTP結合タンパク質]]の機能維持の為に添加する。<br>
#その他:細胞内因子に対する[[阻害剤]]や[[抗体]]を電極内液に加えることで、機能を担っている分子の同定ができる。また、[[wikipedia:RNase|RNase]]を除去した電極内液を使用することで、ホールセル記録後の細胞から、[[wikipedia:ja:mRNA|mRNA]]を回収し、[[wikipedia:RT-PCR|RT-PCR]]により記録細胞に発現している[[wikipedia:ja:遺伝子|遺伝子]]を解析することが可能である。
#その他:細胞内因子に対する[[阻害剤]]や[[抗体]]を電極内液に加えることで、機能を担っている分子の同定ができる。また、[[wikipedia:RNase|RNase]]を除去した電極内液を使用することで、ホールセル記録後の細胞から、[[wikipedia:ja:mRNA|mRNA]]を回収し、[[wikipedia:RT-PCR|RT-PCR]]により記録細胞に発現している[[wikipedia:ja:遺伝子|遺伝子]]を解析することが可能である。