「パルミトイル化」の版間の差分

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== ''S''-パルミトイル化タンパク質  ==
== ''S''-パルミトイル化タンパク質  ==


 これまでに多くのタンパク質がS-パルミトイル化修飾されることが明らかになってきた。Ras(H-Ras, N-Ras)やSrcキナーゼファミリー(Fyn, Lck:著者注、Srcはパルミトイル化されない)、Gタンパク質αサブユニット(Gα<sub>s</sub>, Gα<sub>i</sub>, Gα<sub>o</sub>)などのシグナルタンパク質、各種足場タンパク質(PSD-95, GRIP)、さらには、膜貫通タンパク質であるグルタミン酸受容体などのイオンチャネル、テトラスパニン(CD9,CD151)、インテグリンなどの接着分子、Gタンパク質共役型受容体、ウィルス構成タンパク質など多岐にわたる。特に近年''S''-パルミトイル化の大規模探索(5節参照)がおこなわれ、非常に多くのタンパク質が候補として挙げられている。表1に主なパルミトイル化タンパク質を示す。<br> ''S''-パルミトイル化はタンパク質内の近接する複数のシステインに付加する例も多く、また''N''-ミリストイル化やプレニル化とともに二重の脂質修飾を受けるタンパク質も複数知られている。''S''-パルミトイル化と''N''-ミリストイル化の二重修飾(dual acylation)を受けるタンパク質としてSrcキナーゼファミリーのFynやLck、Gタンパク質αサブユニット(Gα<sub>i1</sub>、Gα<sub>o</sub>など)、eNOS (endothelial NO synthase)が有名である。詳細はミリストイル化の項を参照されたい。一方プレニル化はイソプレノイドがシステイン残基にチオエーテル結合で結合する脂質修飾の総称で、15炭素鎖のファルネシル化(farnesylation)と20炭素鎖のゲラニルゲラニル化(geranylgeranylation)の2種類の修飾が存在する。H-RasやN-RasはS-パルミトイル化とプレニル化(ファルネシル化)の二重修飾を受けるタンパク質として有名であり、2つのCys残基はC末端領域の互いに近い位置にある。二重修飾の場合、パルミトイル化修飾は、ミリストイル化あるいはプレニル化された基質に対してのみ二次的に起こることが知られている。<br> パルミトイル化蛋白質すべてに共通するコンセンサス配列は現時点では決定されていないが(3節参照)、これまでの知見を基に、''S''-パルミトイル化の予測プログラムCSS-palmが開発されておりインターネット上でフリーソフトとして配布されている。詳しくは[http://csspalm.biocuckoo.org/ http://csspalm.biocuckoo.org/] を参照されたい。
 これまでに多くのタンパク質がS-パルミトイル化修飾されることが明らかになってきた。[[Ras]](H-Ras, N-Ras)や[[チロシンリン酸化#非受容体型チロシンキナーゼ|Srcキナーゼファミリー]](Fyn, Lck:著者注、Srcはパルミトイル化されない)、Gタンパク質αサブユニット(Gα<sub>s</sub>, Gα<sub>i</sub>, Gα<sub>o</sub>)などのシグナルタンパク質、各種[[足場タンパク質]](PSD-95, GRIP)、さらには、膜貫通タンパク質である[[グルタミン酸受容体]]などの[[イオンチャネル]]、[[テトラスパニン]](CD9,CD151)、[[インテグリン]]などの接着分子、Gタンパク質共役型受容体、ウィルス構成タンパク質など多岐にわたる。特に近年''S''-パルミトイル化の大規模探索(5節参照)がおこなわれ、非常に多くのタンパク質が候補として挙げられている。表1に主なパルミトイル化タンパク質を示す。<br> ''S''-パルミトイル化はタンパク質内の近接する複数のシステインに付加する例も多く、また''N''-ミリストイル化や[[プレニル化]]とともに二重の脂質修飾を受けるタンパク質も複数知られている。''S''-パルミトイル化と''N''-ミリストイル化の二重修飾(dual acylation)を受けるタンパク質としてSrcキナーゼファミリーのFynやLck、Gタンパク質αサブユニット(Gα<sub>i1</sub>、Gα<sub>o</sub>など)、[[内皮型一酸化窒素合成酵素]](endothelial NO synthase、eNOS)が有名である。詳細はミリストイル化の項を参照されたい。一方プレニル化は[[wikipedia:ja:イソプレノイド|イソプレノイド]]がシステイン残基にチオエーテル結合で結合する脂質修飾の総称で、15炭素鎖の[[ファルネシル化]](farnesylation)と20炭素鎖の[[ゲラニルゲラニル化]](geranylgeranylation)の2種類の修飾が存在する。H-RasやN-RasはS-パルミトイル化とプレニル化(ファルネシル化)の二重修飾を受けるタンパク質として有名であり、2つのCys残基はC末端領域の互いに近い位置にある。二重修飾の場合、パルミトイル化修飾は、ミリストイル化あるいはプレニル化された基質に対してのみ二次的に起こることが知られている。


&nbsp;[[Image:Palmitoylation table 1.png|thumb|left|400px]]  
 パルミトイル化蛋白質すべてに共通するコンセンサス配列は現時点では決定されていないが(下記参照)、これまでの知見を基に、''S''-パルミトイル化の予測プログラムCSS-palmが開発されておりインターネット上でフリーソフトとして配布されている。詳しくは[http://csspalm.biocuckoo.org/ こちら]を参照されたい。


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&nbsp;[[Image:Palmitoylation table 1.png|thumb|left|400px]]
 
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== パルミトイル化サイクルの責任酵素  ==
== パルミトイル化サイクルの責任酵素  ==