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 H1受容体作動薬としては、2-メチルヒスタミン、H2受容体作動薬としては、4-メチルヒスタミン、ジマプリット、イムプロミジン、H3受容体作動薬としては、イメピップ、イメティット、R--メチルヒスタミン、H4受容体作動薬としては、クロザピン、4-メチルヒスタミンがある。
 H1受容体作動薬としては、2-メチルヒスタミン、H2受容体作動薬としては、4-メチルヒスタミン、ジマプリット、イムプロミジン、H3受容体作動薬としては、イメピップ、イメティット、R--メチルヒスタミン、H4受容体作動薬としては、クロザピン、4-メチルヒスタミンがある。


 このうち、H4受容体作動薬のクロザピンは、5-HT2A、D4、M1,α1受容体に拮抗作用を示し、統合失調症治療薬として用いられている。
 このうち、H4受容体作動薬のクロザピンは、5-HT2A、D4、M1,α1受容体に[[拮抗作用]]を示し、[[統合失調症]]治療薬として用いられている。


 H1受容体拮抗薬は一般に抗ヒスタミン薬と言われているものである。第一世代H1受容体拮抗薬には、ジフェンヒドラミン、クロルフェニラミン、メピラミン(ピリラミン)、プロメタジンなどがあり、第二世代H1受容体拮抗薬には、フェキソフェナジン、エバスチン、エピナスチン、オロパタジン、セチリジンなどがある。これらは、蕁麻疹、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎などのアレルギー疾患に対する第一選択薬である。第一世代の拮抗薬は、血液脳関門を通過して脳内に入るため、中枢抑制作用による眠気、抗コリン作用による口渇などの副作用が出る。第二世代の拮抗薬は血液脳関門を通過しにくいためこれらの副作用は少なく、通常はこちらを選択すべきである。
 H1受容体拮抗薬は一般に[[抗ヒスタミン]]薬と言われているものである。第一世代H1受容体拮抗薬には、ジフェンヒドラミン、クロルフェニラミン、メピラミン(ピリラミン)、プロメタジンなどがあり、第二世代H1受容体拮抗薬には、フェキソフェナジン、エバスチン、エピナスチン、オロパタジン、セチリジンなどがある。これらは、蕁麻疹、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎などのアレルギー疾患に対する第一選択薬である。第一世代の拮抗薬は、血液脳関門を通過して脳内に入るため、中枢抑制作用による眠気、[[抗コリン作用]]による口渇などの副作用が出る。第二世代の拮抗薬は血液脳関門を通過しにくいためこれらの副作用は少なく、通常はこちらを選択すべきである。


 H2受容体拮抗薬には、シメチジン、ファモチジン、ラニチジンなどがある。消化性潰瘍治療薬として用いられる。
 H2受容体拮抗薬には、シメチジン、ファモチジン、ラニチジンなどがある。消化性潰瘍治療薬として用いられる。


 H3受容体拮抗薬には、チオペラミド、クロベンプロピット、プロキシファンがある。H3拮抗薬は、アルツハイマー病、注意欠陥・多動性障害(ADHD)、統合失調症、多発性硬化症の治療薬としての開発が進められている。
 H3受容体拮抗薬には、チオペラミド、クロベンプロピット、プロキシファンがある。H3拮抗薬は、アルツハイマー病、注意欠陥・多動性障害(ADHD)、統合失調症、[[多発性硬化症]]の治療薬としての開発が進められている。


 H4拮抗薬には、チオペラミド、JNJ7777120(Johnson & Johnson社)がある。アレルギー性疾患や、リューマチなどの自己免疫疾患の治療薬としての可能性がある。
 H4拮抗薬には、チオペラミド、JNJ7777120(Johnson & Johnson社)がある。アレルギー性疾患や、リューマチなどの[[自己免疫疾患]]の治療薬としての可能性がある。


インバースアゴニストについて: 
インバースアゴニストについて: 
H1受容体を例にとり説明する。受容体は、活性化状態と不活性化状態という2つの状態(コンフォメーション)をとりうる。アゴニスト(ヒスタミン)が結合した場合には、ほとんどが活性化状態になる。アゴニストがない状況では、大部分は不活性化状態にあるが一部は活性化状態にある。従って、わずかではあるが、受容体シグナル伝達が起こっている。アンタゴニスト(拮抗薬)は、通常受容体結合部位に結合して、アゴニストの結合を邪魔する(受容体に結合するが反応を起こさない)ものを言う。その定義においては、アンタゴニストは、受容体の活性化状態、不活性化状態の割合に影響を与えない。インバースアゴニストは、受容体のほとんどを不活性状態に移行させるものを言う。従ってインバースアゴニストが存在すると、アゴニストがなくてもわずかに起こっていた受容体反応を抑えることができる。この概念が有用になるのは、例えばアレルギー鼻炎の場合である。この症状が進んだ場合にはH1受容体レベルの上昇が考えられる[20]。すると、ヒスタミンが遊離されていない場合でも、H1受容体反応が進行しアレルギー反応が出てしまう。この反応はさらにH1受容体レベルを上げる。この悪循環を断ち切るには、H1受容体のインバースアゴニストを、できる限り早期に利用するのが有効である[21]。ほとんどのH1受容体拮抗薬はインバースアゴニストである。
 H1受容体を例にとり説明する。受容体は、活性化状態と不活性化状態という2つの状態(コンフォメーション)をとりうる。[[アゴニスト]](ヒスタミン)が結合した場合には、ほとんどが活性化状態になる。アゴニストがない状況では、大部分は不活性化状態にあるが一部は活性化状態にある。従って、わずかではあるが、受容体シグナル伝達が起こっている。[[アンタゴニスト]](拮抗薬)は、通常受容体結合部位に結合して、アゴニストの結合を邪魔する(受容体に結合するが反応を起こさない)ものを言う。その定義においては、アンタゴニストは、受容体の活性化状態、不活性化状態の割合に影響を与えない。


 H1受容体の結晶構造がX線解析から明らかになった[22]。インバースアゴニストであるドキセピンが結合した不活性化状態の構造を見たものである。今後さらに特異性の高いH1拮抗薬の開発に役立つと考えられる。
 [[インバースアゴニスト]]は、受容体のほとんどを不活性状態に移行させるものを言う。従ってインバースアゴニストが存在すると、アゴニストがなくてもわずかに起こっていた受容体反応を抑えることができる。この概念が有用になるのは、例えばアレルギー鼻炎の場合である。この症状が進んだ場合にはH1受容体レベルの上昇が考えられる<ref>'''堀尾修平'''<br>ヒスタミン受容体をめぐるクロストーク<br>''生物物理: 50:290-293 '':2010</ref>[20]。すると、ヒスタミンが遊離されていない場合でも、H1受容体反応が進行しアレルギー反応が出てしまう。この反応はさらにH1受容体レベルを上げる。この悪循環を断ち切るには、H1受容体のインバースアゴニストを、できる限り早期に利用するのが有効である[21]。ほとんどのH1受容体拮抗薬はインバースアゴニストである。


 H3受容体、H4受容体はconstitutive activityがかなり高い受容体である[23,24](すなわち、アゴニストがなくても受容体のかなりの割合が活性化状態にある)。H3受容体拮抗薬のチオペラミド、クロベンプロピットはインバースアゴニストである。H4受容体拮抗薬のチオペラミド、JNJ7777120は、動物種によって、インバースアゴニスト、パーシャルインバースアゴニスト、パーシャルアゴニスト、ニュートラルアンタゴニストと性質が異なるので注意が必要である[25]。
 H1受容体の結晶構造がX線解析から明らかになった<ref><pubmed>21697825</pubmed></ref>[22]。インバースアゴニストであるドキセピンが結合した不活性化状態の構造を見たものである。今後さらに特異性の高いH1拮抗薬の開発に役立つと考えられる。
 
 H3受容体、H4受容体はconstitutive activityがかなり高い受容体である<ref><pubmed>11130725</pubmed></ref><ref><pubmed>24903527</pubmed></ref>[23,24](すなわち、アゴニストがなくても受容体のかなりの割合が活性化状態にある)。H3受容体拮抗薬のチオペラミド、クロベンプロピットはインバースアゴニストである。H4受容体拮抗薬のチオペラミド、JNJ7777120は、動物種によって、インバースアゴニスト、パーシャルインバースアゴニスト、パーシャルアゴニスト、ニュートラルアンタゴニストと性質が異なるので注意が必要である<ref><pubmed>26084539</pubmed></ref>[25]。


== 末梢機能 ==
== 末梢機能 ==