「ヒストンメチル基転移酵素」の版間の差分

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 近年の研究により、ヒストンリジンメチル基転移酵素に加え、タンパク質アルギニンメチル基転移酵素も[[中枢神経系]]の発生や維持に関与していることが報告されており、Prmt6は、発達中のマウス[[大脳皮質]]における神経前駆細胞の分化・増殖に必須であることが明らかになった<ref name=Bouchard2018><pubmed>30232013</pubmed></ref>。
 近年の研究により、ヒストンリジンメチル基転移酵素に加え、タンパク質アルギニンメチル基転移酵素も[[中枢神経系]]の発生や維持に関与していることが報告されており、Prmt6は、発達中のマウス[[大脳皮質]]における神経前駆細胞の分化・増殖に必須であることが明らかになった<ref name=Bouchard2018><pubmed>30232013</pubmed></ref>。


 Prmt1はマウス胚の神経幹/前駆細胞で高発現しており、神経幹/前駆細胞でのPrmt1のノックダウンは[[アストロサイト]]への分化を抑制するという報告がある<ref name=Honda2017><pubmed>28695568</pubmed></ref>。神経幹/前駆細胞のアストロサイト分化には転写因子である[[signal transducer and activator of transcription 3]] ([[STAT3]])が重要であることが知られているが<ref name=Nakashima1999><pubmed>10205054</pubmed></ref> 、Prmt1はSTAT3のアルギニン残基をメチル化してSTAT3の転写活性化能を増強することにより、神経幹/前駆細胞のアストロサイト分化を促進する<ref name=Honda2017><pubmed>28695568</pubmed></ref>。またPrmt1の中枢神経系特異的欠損マウスでは、野生型マウスと同様に出生するものの生後2週間ほどで死亡し、脳では成熟[[オリゴデンドロサイト]]やその[[オリゴデンドロサイト前駆細胞|前駆細胞]]の減少が認められた<ref name=Hashimoto2016><pubmed>26637354</pubmed></ref>。
 Prmt1はマウス胚の神経幹/前駆細胞で高発現しており、神経幹/前駆細胞でのPrmt1のノックダウンは[[アストロサイト]]への分化を抑制するという報告がある<ref name=Honda2017><pubmed>28695568</pubmed></ref>。神経幹/前駆細胞のアストロサイト分化には転写因子である[[シグナル伝達兼転写活性化因子3]] ([[signal transducer and activator of transcription 3]], [[STAT3]])が重要であることが知られているが<ref name=Nakashima1999><pubmed>10205054</pubmed></ref> 、Prmt1はSTAT3のアルギニン残基をメチル化してSTAT3の転写活性化能を増強することにより、神経幹/前駆細胞のアストロサイト分化を促進する<ref name=Honda2017><pubmed>28695568</pubmed></ref>。またPrmt1の中枢神経系特異的欠損マウスでは、野生型マウスと同様に出生するものの生後2週間ほどで死亡し、脳では成熟[[オリゴデンドロサイト]]やその[[オリゴデンドロサイト前駆細胞|前駆細胞]]の減少が認められた<ref name=Hashimoto2016><pubmed>26637354</pubmed></ref>。


 Prmt5は大脳皮質の神経幹細胞発生時に[[Schwann cell factor 1]]([[SC1]])によって標的遺伝子にリクルートされることで、神経幹細胞の増殖能と多分化能を維持することが報告されている<ref name=Chittka2012><pubmed>23048031</pubmed></ref>。
 Prmt5は大脳皮質の神経幹細胞発生時に[[Schwann cell factor 1]]([[SC1]])によって標的遺伝子にリクルートされることで、神経幹細胞の増殖能と多分化能を維持することが報告されている<ref name=Chittka2012><pubmed>23048031</pubmed></ref>。